ステレオサウンドについて(その11)
ベストバイという企画は、人気のある特集である。
だからこそ43号以降、毎年一回、ステレオサウンドはベストバイを特集にもってきている。
実際にベストバイの号の売行きはいい、ときいているし、
最近では年末の号(ベストバイが第二特集となっている)では、特別定価である。
つまりベストバイの号だけ買う読者がいる、ということである。
その一方で、ベストバイの号だけは買わない、という読者がいる、ということもきいている。
買わないという人たちに共通する意見として、
ベストバイはカタログ誌(号)である、というのがある。
口の悪い人になると、ベストバイだけではない、最近のステレオサウンドすべてがカタログ誌だ、と。
以前も書いたことだが、ほんとうにいまのステレオサウンドはカタログ誌だろうか、
もっといえばカタログ誌たりえているだろうか。
昔からステレオサウンド、その別冊を読んできた者にとっては、
年二回刊行されていたHI-FI STEREO GUIDE(のちのStereo Sound YEAR BOOK)こそが、
カタログ誌と呼べる内容の本だった。
ベストバイの号をカタログというのは、侮蔑の意味が込められている。
けれどカタログは必要でもあり、
カタログ誌も必要なものである。
カタログはメーカーや輸入商社、もしくはオーディオ店から貰うものかもしれないが、
これらはカタログは、当然のことながら、
そのメーカーの、スピーカーならスピーカーだけ、アンプならアンプだけのカタログであることが多い。
けれど、これがカタログ誌となると、すべてのブランドの、すべての機種を一冊で網羅している。
HI-FI STEREO GUIDEは、その意味でカタログ誌であり、そこには侮蔑の意味はまったくない。
HI-FI STEREO GUIDEは地味な存在である。
けれど大切にしなければならない存在でもあった。