Archive for category テーマ

Date: 5月 11th, 2023
Cate: オーディオマニア

つきあいの長い音(その46)

つきあいの長い音とは、自分にとって理想の音、最高の音よりも、
ぴったりの音のことなのかもしれない。

Date: 5月 11th, 2023
Cate: オーディオマニア

つきあいの長い音(その45)

つきあいの長い音があれば、つきあいが長すぎる音も、
つきあいが長すぎた音もあろう。

Date: 5月 11th, 2023
Cate: 使いこなし

使いこなしのこと(ステレオゆえの難しさ・その5)

八年前に書いたことを、そのまままるごと公開しておく。
別項「モニタースピーカー論(APM8とAPM6・その12)」で書いていることだ。

山中先生が《ぼくは実はこうした音楽が一番好きなのです》と語られているドビュッシー。
ステレオサウンド 88号の特集「最新コンポーネントにおけるサウンドデザイン24」、
この中に「山中敬三のサウンドデザイン論 そのバックグラウンドをさぐる」がある。
そこで語られていることを思い出していた。
     *
──好きな音楽は?
 わりと広いほうです。若いときから、その時期ごとに、一つのものに傾倒して、それがシフトしていって、結果的にかなり広いジャンルを聴くようになった。
 自分自身でレコードを買うようになったのはジャズ……スイングの後半からモダン・ジャズまでです。ベニー・グッドマンにはじまり、コルトレーンでストップ。
 兄がクレデンザの一番いいやつを持ってて、それでジャズを聴いてしょちゅう怒られました。でもあの音は素晴らしかった。
 クラシックで最初に好きになったのは、フォーレとかドビュッシーとかのフランス音楽だったんです……。
──S/Nをとるのがむずかしい……!
 苦労しましたね。低音を出そうと思ってもS/Nがとれない。フォーレのレクイエムを聴くために壁バッフル作ったり……。
 フランス音楽のあの積み重なりが好きになったんでしょう。
     *
「コンポーネントステレオの世界 ’82」でのESL63の組合せでは、
《こういったドビュッシーなんかの曲で一番難しいのは、
音が空間に漂うように再生するということだろうと思います》といわれている。

フランス音楽の積み重なり、これが漂うように再生されるかどうか。
「漂い」に関しては、88号の特集で菅野先生も語られている。
     *
──鳴らし方のコツのコツは……?
 オーディオマニアは「漂い」という言葉を使わない。「定位」という言葉がガンと存在しているからだ。「漂い」の美しさは生のコンサートで得られるもの……。それを、もうちょっとオーディオマニアにも知ってほしい。これこそ、一番オーディオ機器に欠けている部分ですね。
 最新の機械を「漂い」の方向で鳴らすと、極端にいうと、みんなよく鳴るように思います。最新の機械で「定位」という方向にいくと「漂い」がなくなって、オーディオサウンドになります。
     *
山中先生が自宅のシステムとしてAPM6ではなくESL63を選ばれた大きな理由のひとつが、
この「漂い」だと思う。

読み返してみて、そのとおりだと頷く。
モノーラルからステレオ再生になったからそ可能になったといえる漂いの再現。

茫洋とした音が漂いではない。

Date: 5月 7th, 2023
Cate: 映画

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

ゴールデンウィーク中に、
映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」を観てきた。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」についての説明は必要ないだろう。
大ヒットしているし、関心のない人でもどういう映画なのかは、おおよそ想像がつくし、
その想像通りの内容の映画でもあった。

そんな映画まで観るのか、といわれるかもしれないが、
最初は観るつもりはほとんどなかった。

映画館で流れていた最初の予告編は短いもので、
観たい、という気持にはさせてくれなかった。

それが3月に入ってからの予告編は長くなり、
これはぜひとも映画館で観たい、と一転してしまった。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」を観たからといって、
ゲーム「スーパーマリオ」シリーズをやっていたわけではない。

テレビを持っていないのだから、「スーパーマリオ」をやったことは一度もない。
なのに1993年のアメリカの実写映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」も、
映画館で観ている。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の長めの予告編をみて思い出していたのは、
2008年の映画「スピード・レーサー」だった。

「マッハGoGoGo」を原作とする映画で、興行成績も評論家による評価はひどかった。
けれど、映画館で観て楽しかった一本だった。

このことがあったから、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、
通常の上映ではなく、できればMX4Dで観たかったのだが、どこも満員で席がとれなかった。
IMAXレーザー・3Dで観てきた。

「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は「スピード・レーサー」とは違い、
興行成績は大成功といっていいほどヒットしている。

ゴールデンウィーク中ということもあってなのだろうが、映画館は満席だった。
ここ数年映画館で観るようにしているが、ここまで満員だった映画はなかった。

けれど、アメリカでの評論家による評価は、かなり低い、らしい。
でも、いいじゃないか、観て楽しかった、と思えれば、それでいい。
そういう映画があってもいいのが、映画のよさのはずだ。

Date: 5月 7th, 2023
Cate: きく

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会(その6)

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会の前売りはすべて完売とのこと。
当日券は若干数確保してあるそうだが、
状況によってはすぐの入場はできない場合もあるそうだ。

Date: 5月 7th, 2023
Cate: 映画

モリコーネ 映画が恋した音楽家(その3)

エンニオ・モリコーネの音楽ときいてまっさきに頭のなかでながれてくるのは、
「続・夕陽のガンマン」の、あの口笛のフレーズである。

有名すぎるといっていいぐらいだから、かなりの人が一度は耳にしているだろうが、
同時に、どこか別の機会で聴いているような気が、
映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」を観たあとにわいてきた。

とはいっても記憶はひどく曖昧だ。
なんだったのか、記憶を辿る糸は口笛ぐらいしかない。

子供のころに見ていたヒーローもののテレビ番組で口笛といえば、
キカイダーに登場するサブロー(ハカイダー)だ。

確かめたくてもNetflixやPrime Video、どちらも配信していない。
Prime Videoの有料チャンネル、マイ★ヒーローで配信している。
確認してみた。

サブローの口笛は、はっきりとモリコーネの影響を強く受けたものだった。

こんなことをどうでもいいことだといわれれば、そのとおりだと答える。
それでもちょっとでもひっかかっていることで、確認できる手段があるのならば、
やはり確認しておきたい。

確認できたからといって、すっきりするだけで、それ以上ではないけれど、
ウルトラセブン最終回のシューマンのピアノ協奏曲と同じで、
子供のころ、意識することなく聴いていた音楽と、十年後、二十年後に出逢う。

Date: 5月 7th, 2023
Cate: High Resolution

MQAのこれから(とTIDAL・その5)

ドイツ・グラモフォンは、TIDALでの配信でMQAをやめるのだろうか──、
そう思わせるほどけっこうな数のタイトルがMQAではなくなっているのだが、
5月5日に配信が始まったマリア・ドゥエニャスのアルバムはMQAなのだ。

MQA破綻のニュースが流れて一ヵ月が過ぎた。
TIDALでは、MQAの配信がいまも続いている。

e-onkyoは、Qobuzへのサービスの切り替えのためにMQAでの配信を終了した。
そのQobuzも、年内には日本でのサービスが開始される、といわれている。

始まるのかもしれないし、もしかすると来年以降になってしまうのかもしれない。
そんな気がしないでもないのは、TIDALがなかなか開始されないからだ。

おそらくなのだが、TIDAL、Qobuzにしてもサービス開始の障害となっているのは同じなのだろうから、
どちらかが先に始まるということは考えにくい。

始まるとしたらほぼ同時期になるのではないだろうか。

Date: 5月 4th, 2023
Cate: ディスク/ブック

花図鑑(その1)

薬師丸ひろ子の歌は、「セーラー服と機関銃」が最初だった。
けれどシングル盤、LPを買うことはなかったから、
薬師丸ひろ子の他の歌についてはほとんど知らなかった。

1986年に「花図鑑」が出た。
黒田先生がステレオサウンド 80号の連載「ぼくのディスク日記」で書かれている。
黒田先生が買われたのは、「花図鑑」のCD。

CDが登場して四年。
かなり普及していたから、LPよりもCDという時代だったから、
「ぼくのディスク日記」を読んで買ったのは、だからCDだった。

「花図鑑」が最初に買った薬師丸ひろ子のアルバムとなった。
それからぽつぽつ薬師丸ひろ子のCDを買うようになったけれど、LPを買うことはなかった。

昨日はaudio wednesday (next decade)だった。
参加されたHさんが、吉祥寺のハードオフに行ってみたい、ということだった。
ハードオフの店舗にはLPも置いてある。

吉祥寺の店舗ももちろんある。
これまで何度か吉祥寺のハードオフに行ってたけれど、
LPのコーナーを見ることは一度もなかった。

Hさんが歌謡曲のコーナーで、「花図鑑」を見つけてくれた。
ピンナップつきの初回プレス盤で、ジャケットの傷みもない。
かなりきれいなコンディションだった。

高いのかなぁ──、と思ったけれど、案外安かった。
非売品のソノシートもついている、とある。
盤面を確認することなく購入した。

帰宅して盤面をみると、そうとうにきれいだった。
新品に近いと感じるほどだった。

一人でハードオフに行っていても、たぶん出逢うことはなかった。
「花図鑑」ははじめて買った薬師丸ひろ子のアルバム(CD)であり、
初めて買った薬師丸ひろ子のLPとなった。

とはいえ「花図鑑」を聴くのはMQA(96kHz、24ビット)だったりする。

Date: 5月 4th, 2023
Cate: 老い

老いとオーディオ(とステレオサウンド・石岡瑛子氏の発言とBLUE GIANT)

4月30日、Oさんのところにうかがったときに、
映画「BLUE GIANT」が話題にのぼった。

この日、集まった五人のうち三人が観ている。
Oさんが観に行ったのは休日だったということで、
映画館は若い人が大勢いたとのこと。

平日の朝一の上映で行っている。
劇場も違うし、時間帯も違うこともあって、若い人よりも年輩の人が多かった印象だったし、
空席もけっこうあった。

なので若い人は、あまり観ていないのか──、とそんなふうに思っていただけに、
三週間前に書いている(引用している)石岡瑛子氏の発言を思い出してもいた。

Oさんは、こんなこともいわれた。
したり顔のジャズ評論家の文章よりも、「BLUE GIANT」のほうが、
若い世代の音楽の聴き手にアピールしていくはず、と。

原作となったマンガ「BLUE GIANT」はいまも連載中である。
映画「BLUE GIANT」もヒットしているようだから、二作目、三作目が制作されても不思議ではない。

したり顏のジャズ評論家の文章と「BLUE GIANT」、
どちらがラディカルなのか。

Date: 5月 1st, 2023
Cate: High Resolution

MQAのこれから(とTIDAL・その4)

TIDALは、どこの国のアカウントなのかによって、
配信のラインナップは多少違うときいている。

どのくらい違うのかは、アカウントをひとつしか持っていないので確かめようはないが、
例えばロドリーゴ・イ・ガブリエーラは、
アメリカのアカウントでアクセスするとMQAで聴けるアルバムは、
最新のアルバムぐらいしかない。

けれど、どうもカナダのアカウントだと他のアルバムもMQAで聴けるようなのだ。

さきほどfacebookを眺めていたら、
ケイト・ブッシュのアルバムもMQAで聴けなくなった、という投稿があった。

すぐさま確認したらMQAではなくなっている。
ケイト・ブッシュに関しては、e-onkyoで全アルバムをMQAで購入しているので、
しまった! と思うこともがっかりすることもないけれど、
この投稿へのコメントで、他の国の人は、数枚のアルバムはまだMQAだ、とあった。

(その3)でドイツ・グラモフォンのMQAのアルバムの多くが削除されている──、
と書いたが、これはアメリカのアカウントだからなのか、
もしかするとドイツのアカウントならば、まだMQAで聴けるアルバムが残っているのか。

Date: 5月 1st, 2023
Cate: 名器

ヴィンテージとなっていくモノ(マランツ Model 7・その2)

昨日は、Aさんの友人のOさんのところに伺っていた。
Oさんのところにも、マランツのModel 7があった。

3月、あるところでModel 7の音を聴いている。
どちらも他のコントロールアンプと比較試聴したわけではないから、
Model 7の音だけを聴いたとはいえないわけだが、
Model 7の音を続けて聴いたことは、これまでなかった。

どちらのお宅も、パワーアンプはマランツではなかった。
他社製の管球式パワーアンプとの組合せだった。

スピーカーは、どちらもラッパと呼びたくなるモノで、能率も高め。
そういう状況でModel 7の音を聴いていて思い出したのは、
その1)で書いているクラシックスタンダードということだった。

Date: 5月 1st, 2023
Cate: High Resolution

MQAのこれから(とTIDAL・その3)

昨晩遅くにTIDALで曲をさがしていて気づいたことがある。
ドイツ・グラモフォンのアルバムで、これまでMQAで配信されていたのが、
MQAではなくなってしまっている。

一枚や二枚といった規模ではなく、かなりの枚数がMQAではなくなっしまっている。
かといって、これまでMQAだったアルバムのすべてがそうだというわけではなく、
比較的最近リリースされたアルバムは、まだMQAのままである。

とはいえ、ジュリーニのマーラーの第九、ヴェルディの「リゴレット」、
グルダのモーツァルトのピアノ協奏曲、ケンプのベートーヴェンなど、
一枚一枚あげていくのがたいへんなど、MQAからFLACになってしまっている。

FLACでも、サンプリング周波数がMQAの時と同じであればまだいいのだが、
44.1kHzになっている。

不思議なことに、同じユニバーサル・ミュージックのグループのデッカは、
MQAのままである。

Date: 4月 28th, 2023
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その46)

いまでは非常に高額なスピーカーシステムが、あたりまえのように存在している。
振動板の材質、製造方法、フレームのつくり、マグネットなど、
細部にわたって意を尽くし贅を尽くした──、
そんなふうなことを謳っていたりする。

けれど磁界に関しては、どうなのか。
JBLはアルニコマグネットからフェライトマグネットに移行した時に、
対称磁界(Symmetrical Field Geometry、SFGと略されていた)を謳っていた。

JBLと同時期にアルテックもタンノイもフェライトに移行したが、
対称磁界について触れたのはJBLだけだった。

対称磁界と非対称磁界。
実際のところ、どれだけ音に影響するのか、比較試聴したことはないが、
少なからぬ影響はあるものと考えられる。

駆動のいちばんの源は、ここなのだから。

なのに現代のハイエンドのスピーカーメーカーで、
対称磁界を謳っているところはどれだけあるだろうか。

すべてのユニットの構造図を見たわけではないが、
いくつかのメーカーのユニットの構造図をみるかぎりは、対称磁界のユニットはなかった。
それでいいのだろうか。

Date: 4月 28th, 2023
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その34)

その1)を書いたのが2015年5月。
書き始めた理由は、そのころソーシャルメディアで、
五極管シングルアンプ製作は、
真空管アンプを製作したことのない人にいちばんすすめられる、と投稿を、
何度かソーシャルメディアでみかけたからだった。

(その1)でも書いているように、私が中学生だったころ、
初心者向けのアンプの自作は、五極管のシングルアンプではなく、
プッシュプルアンプだった。

凝った回路、真空管を数多く使用する回路ではなく、
アルテック(ダイナコ)方式と呼ばれる回路だったものだ。

この項で書いているように、いまでも初めて真空管アンプを作るのであれば、
シングルアンプではなくプッシュプルアンプがいいと考える。

その理由はすでに書いてきているので、ここでは省くが、
ここで考えたいのは、いまの時代に、あえて真空管アンプを作ることについてである。

若い世代の人たちには意外に思われるかもしれないが、
真空管アンプのメーカーは非常に少なくなっていた時代がある。

国内ではラックスと、ほんの数社、
海外でもコンラッド・ジョンソンやプレシジョン・フィデリティなどの、
新世代の管球式アンプメーカーが登場する前は、ダイナコぐらいしかなかった。
オーディオリサーチも、半導体アンプに移行していた時期がある。

そういう時代においては、真空管アンプは自分で作るものというイメージがあった。
いまはどうかというと、そのころよりもメーカーの数はかなり増えている。
かなり高価で大型のアンプが当り前のように存在している。

そして一方では中国製の、自作するよりも安価なアンプがいくつも売られている。
一時期は、外観的には真空管アンプなのだが、
真空管はあくまでも飾りでしかなく、実体は半導体アンプというモノもあったが、
いまではそういうインチキをやっているところはなくなったようである。

自分で作るよりも中国製を買ったほうが安い──、
そういう時代なのだ。

なのに自分で作るということは、どういうことなのか。
何を求めてなのか。

そのへんをはっきりとすることなく、
ただただ、初心者には五極管シングルアンプがおすすめ、と書いてしまう人は、
どういう考えなのだろうか。

Date: 4月 28th, 2023
Cate: きく

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会(その5)

「野口晴哉 リスニングルーム」で画像検索すると、
いくつかの写真が表示される。

1973年当時の写真もある。
1973年のFM新読本(FM fan 別冊)に掲載されたものである。
不鮮明な写真だけれども、見ることができる。

「世界のオーディオ」が1976年、さらにもう一枚の写真も検索結果として出てくる。
そこにはスタックスのコンデンサー型スピーカーESS6Aが写っている。

QUADのESLだけではなく、スタックスもある。
そしてリボン型トゥイーターのデッカ・ケリー。

ウェスターン・エレクトリックの594A、シーメンスのオイロダイン、
その他の往年のホーン型という浸透力の強い音のスピーカーをメインにすえながら、
ESL、ESS6A、デッカ・ケリーが揃っているのをみていると、
それだけであれこれ想像できて、楽しくなってくる。

「世界のステレオ」で野口晴哉氏のリスニングルームの写真を見た時、
すごいと思いながらも、聴く機会はおとずれないものと思っていた。
聴いてみたい、とは、だから思うことはなかった。
無理なのがわかっていたからだ。

それから四十年以上が経ち、聴く機会が訪れようとしている。