Archive for category テーマ

Date: 6月 6th, 2016
Cate: audio wednesday, LNP2, Mark Levinson

LNP2になぜこだわるのか(その5)

今回のaudio sharing例会でかけた曲をあげれば、
スーパーギタートリオの”Friday Night In San Francisco”が、
LNP2のゲイン切り替えによる音の変化について説明しやすい。

LNP2のゲインを20dBから10dBにする。
もうこれだけで録音会場の雰囲気が大きく変化する。
10dBの時の音は、狭い空間のライヴハウスのようになる。
天井も低く感じられる。

そのことにより演奏しているパコ・デ・ルシアとアル・ディ・メオラとの距離が近くに感じられる。
そういう捉え方もできなくはないが、
どうしても窮屈な印象が出てきてしまう。

それに試聴に使った一曲目の”Mediterranean Sundance”での、
ふたりのギターの音色が、20dBの時ほど鮮明になってこない。
どこか似たような音色に感じられるし、
狭い空間での演奏と感じてしまうのは、どこか音が飽和しているような感じがつきまとうからである。

こういうことが関係してなのだが、
演奏している場の空気もどこか澱んでいるようにさえ聴こえる。
一言で表すなら、聴感上のS/N比が悪い音なのだ。

そういう場での演奏を好む人がいるを知っている。
そういうふうになってしまうのを知った上で、あえて10dBの音、さらには0dBの音を選ぶのならば、
私がとやかくいうことではない。

でも”Friday Night In San Francisco”は、そういう場での演奏ではない。
少なくとも、音場と音場感についてこだわりをもっているのならば、
10dB、0dBの音を選択することはありえない。

Date: 6月 5th, 2016
Cate: Noise Control/Noise Design

聴感上のS/N比と聴感上のfレンジ(その3)

CR方法を、今回のaudio sharing例会で実際にやってみた。
おそらく私以外の人は、誰も知らなかったようだ。

何も説明せずにスピーカーの後にまわりこんで取り付けて、音を聴いてもらった。
ちょうど山口百恵のCDをかけている時だった。

山口百恵が声量を抑え気味に歌っているところでは、いい感じで鳴ってくれていても、
サビの部分での盛り上りに伴い声量が増したときに、
どうしても定位が不鮮明になるし、声の表情に関しても抑えているときと比較すると不満も出てくる。

この問題はすべてスピーカー側に原因があるとはいわないが、
スピーカー側でまだまだ良くできる余地がある。

CR方法のパーツを取り付けたのは、今回はJBLの2441だけである。
できればウーファーのアルテック416-8Cにも取り付けたかったが、
416-8Cはフロントバッフルの裏側から取り付けられているために、
CR方法のパーツを取り付けるには、バッフル板を外して、ということになる。

電動工具を用意していれば、時間は短縮できるが、
手回しのドライバーではある程度の時間がかかってしまうため、2441だけにした。

エンクロージュアの入力端子に取りつけてもよさそうに思われがちだが、
あくまでもCR方法のパーツはスピーカーユニットの入力端子に最短距離で取り付けるものである。

それから安価な抵抗、コンデンサーを使うのもやめたほうがいい。
私が使ったのはDALEの無誘導巻線抵抗とディップマイカコンデンサーである。
どちらも秋葉原の海神無線で購入した。

Date: 6月 5th, 2016
Cate: audio wednesday, LNP2, Mark Levinson

LNP2になぜこだわるのか(その4)

マークレビンソンのLNP2というコントロールアンプは、使いやすいのだろうか。
音量レベルの設定にしても、
インプットレベル(左右独立)とアウトプットレベル、
ふたつのポテンショメーターが使われている。

この他にインプットアンプのゲインを切り替えられる。
このゲインの切り替えはNFB量をかえて行っている。

音のことに無関心であれば、使いやすいコントロールアンプといえよう。
けれど、LNP2を使いながら音に無関心ということはない。
そうなると、意外にゲイン設定とレベル設定が、
組み合わせるパワーアンプの入力感度、スピーカーの能率、
それに聴き手が望む音量によっては、シビアになることもないわけではない。

まずインプットアンプのゲイン。
初期のLNP2は0、10、20dBの三段階。
時期によっては0、10、20、30、40dBの五段階のモノもある。

このゲイン設定による音の変化がわずかであれば問題にはならないけれど、
この部分での音は変化はかなり大きい。
0dB、10dBの音は聴けばすぐにわかる。私は、0dB、10dBにしようとは絶対に思わない。

もっと言えば、0dB、10dBのLNP2の音を選ぶ人がいたら、
しかも音場を重視するといっていたとしたら、その人の耳は信用できない。

このゲインによる音の違いは、ステレオサウンドの試聴室で何度も確認したし、
JC2(ML1)のステップ式の左右のレベルコントロールもNFB量を変えていて、
この変化に関してもJC2を使っていた経験でも確認している。

今回のaudio sharing例会でも確認した。
0dBもしくは10dBに設定したLNP2の音は、私にとってはLNP2の音ではない、とはっきりといえる。

Date: 6月 5th, 2016
Cate: audio wednesday

第66回audio sharing例会のお知らせ

7月のaudio sharing例会は、6日(水曜日)です。

テーマは未定です。
音出しになるのかそうでないのかも決めていません。
決まり次第、お知らせします。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 6月 4th, 2016
Cate: Noise Control/Noise Design

聴感上のS/N比と聴感上のfレンジ(その2)

CR方法の抵抗値とコンデンサー値の算出方法を読んで、
高音域におけるインピーダンス補正と早合点された方もいるのではないだろうか。

スピーカーのボイスコイルのもつインダクタンスによって、
高音域ではインピーダンスが上昇する。
これを抑えインピーダンスをできるだけフラットにするために、
抵抗とコンデンサーを直列接続したもので補正する。

回路的にはまったく同じになる。
違うのは主にコンデンサーの容量の違いである。

実際に計算してみればすぐにわかることだが、
インピーダンス補正ではμFの容量となり、CR方法ではpFの容量である。
コンデンサーの容量が大きく違い、作用してくる周波数も大きく違ってくる。

インピーダンス補正は可聴帯域内で作用してくるが、
CR方法はコンデンサーの容量の小ささから推測できるように作用するのは可聴帯域外である。

それから抵抗とコンデンサーを直列接続したアクセサリーも、市場に登場したこともある。
それらを分解したわけではないが、コンデンサーの容量はpFではないと思われる。

CR方法のコンデンサーはpF。そんなに小容量のコンデンサーと抵抗を取り付けて、
どれだけの音の変化があるのか。
それに電波科学には電源トランスに対して使うものとして説明されていた。
それをスピーカーに応用したわけだ。

実はCR方法は電波科学を読んで、一年くらいして試したことがある。
国産の3ウェイ・ブックシェルフ型スピーカーのユニットを外して、
まずはウーファーから試してみようと考えた。

けれどユニット取り付けネジを外してもユニットはバッフル板にくっついたままだった。
ウーファーがダメならばトゥイーターで試した。こちらもはずれない。
ゴム系の接着剤かなにかでくっついているようだった。

ゆっくり時間をかけてやってみれば外させたかもしれない。
けれどユニットのフレームは、そう頑丈そうでもなかった。
いわゆるプレスフレームだったから、あまり無理するとフレームが歪みそうでもあった。

それでしかたなくスピーカー入力端子にテスターをあてて直流抵抗を計った。
この場合は、ウーファーのユニットとコイルの直流抵抗の合成値となる。
当時は田舎暮らしだったから、ごく一般的な抵抗とコンデンサーでの実験だった。

正直、その効果ははっきりとはわからなかった。
やはりウーファーなりスコーカー、トゥイーターの入力端子に取り付けるべきであり、
使用する抵抗とコンデンサーも優秀なモノにすべきなのか、と保留することにした。

Date: 6月 3rd, 2016
Cate: Noise Control/Noise Design

聴感上のS/N比と聴感上のfレンジ(その1)

「五味オーディオ教室」にこう書いてあった。
     *
 くり返して言うが、ステレオ感やスケールそのものは、〈デコラ〉もわが家のマッキントッシュで鳴らすオーグラフにかなわない。クォードで鳴らしたときの音質に及ばない。しかし、三十畳のわがリスニング・ルームで味わう臨場感なんぞ、フェスティバル・ホールの広さに較べれば箱庭みたいなものだろう。どれほど超大型のコンクリート・ホーンを羅列したって、家庭でコンサート・ホールのスケールのあの広がりはひき出せるものではない。
 ——なら、私たちは何に満足すればいいのか。
 音のまとまりだと、私は思う。ハーモニィである。低音が伸びているとか、ハイが抜けているなどと言ったところで、実演のスケールにはかないっこない。音量は、比較になるまい。ましてレンジは。
 したがって、メーカーが腐心するのはしょせん音質と調和だろう。その音づくりだ。私がFMを楽しんだテレフンケンS8型も、コンソールだが、キャビネットの底に、下向けに右へウーファー一つをはめ、左に小さな孔九つと大穴ひとつだけが開けてあった。それでコンクリート・ホーン(ジムランのウーファー二個使用)などクソ喰えという低音が鳴った。キャビネットの共振を利用した低音にきまっているが、そういう共振を響かせるようテレフンケン技術陣はアンプをつくり、スピーカーの配置を考えたわけだ。しかも、スピーカーへのソケットに、またコードに、配線図にはない豆粒ほどのチョークやコンデンサーが幾つかつけてあった。音づくりとはそんなものだろうと思う。
     *
「五味オーディオ教室」を読んだのは中学二年の時。
テレフンケンS8型のスピーカーのソケットについている豆粒ほどのパーツがなんなのか、
実際にどのくらいの値のパーツが取り付けてあるのか、まったくわからなかった。

配線図にはない、と書かれているから、
S8の回路図を手に入れたいとも考えなかった。
これらのパーツがなんなのかを確かめるにはS8の実物にあたるしかない。

それでも豆粒ほどのパーツの正体を知りたい、とは思っていた。

「五味オーディオ教室」を読んでそれほど経っていなかったと記憶している。
電波科学にそれらしい記述があった。
後ろの方に掲載されている連載コラムに、CR方法について書かれていた。
確か出原眞澄氏の担当のページだった、と記憶している(記憶違いかもしれない)。

CR方法とは、まず電源トランスの巻線の直流抵抗値を計る。
仮に20Ωあったとしたら、20Ωの抵抗と20pFのコンデンサーを直列に接続したものを、
電源トランスの巻線に並列に接続する、というもの。

コンデンサー(C)と抵抗(R)とでCR方法というらしく、
私が読んだのは1970年代後半だったが、かなり以前から知られている手法と書いてあった。

記憶違いでなければ、CR方法は電源トランスの一次側巻線に対してだったのを、
試しに二次側にも試してみたら、二次側にも効果があった、と。

この記事を読んで思い出していたのが、テレフンケンS8型の豆粒ほどのパーツの正体である。
これなのでは、と直感した。

電源トランスとスピーカーユニットとでは違うと思われるかもしれないが、
片やトランスフォーマー、片やトランスデューサーである。
構造的にもコイルがあり、コイルの中心には磁性体が配置されている。

トランスに効果的であるならば、スピーカーユニットにも効果的のはず。
そう考えた。

Date: 6月 2nd, 2016
Cate: オーディスト

「オーディスト」という言葉に対して(ステレオサウンドの別冊)

今日はステレオサウンド 199号の発売日。
どんな内容なのか、ステレオサウンドのウェブサイトで確認しようとして気づいた別冊があった。
耳が喜ぶ補聴器選び」である。

これは面白そうだと思う。
書店に行って、どの程度の内容なのか確認したいが、
面白そうであれば、ひさしぶりに買いたい、と思うステレオサウンドの別冊である。

補聴器のフィッティングについて、どこまで取り上げているのか。
私が、この別冊に望む(期待している)のは、そこである。

「耳が喜ぶ補聴器選び」には、こういう関心の他に、
あることをどうしても思ってしまう。

これは私が
「オーディスト(audist = 聴覚障害者差別主義者)」について書いてきているのと関係したことであり、
いわば勘ぐりともいえることだと自覚はしている。

株式会社ステレオサウンドは、ステレオサウンドにおいて、オーディストという言葉を使った。
姉妹誌のHiViでも使っている。

ステレオサウンドの読者をオーディスト(聴覚障害者差別主義者)と呼んだわけであり、
ある意味自らをオーディスト(聴覚障害者差別主義者)と名乗った、ともいえる。

その後、だんまりを決め込んでいる。
その株式会社ステレオサウンドが、今回「耳が喜ぶ補聴器選び」を出している。
これはオーディスト(聴覚障害者差別主義者)ではない、という表明なのでは……、
と私は受けとっている。

Date: 6月 2nd, 2016
Cate: audio wednesday, LNP2, Mark Levinson

LNP2になぜこだわるのか(その3)

ウーファーのアルテック416-8CとドライバーのJBL・2441とでは、
出力音圧レベルの差がけっこうある。
前々回ではラックスのAS10を使った。

今回は抵抗アッテネーターを作って持っていった。
この他に、もうひとつ考えていた案もある。

ラインレベル(プリ−パワー間)で800Hz以上をステップダウンさせるもの。
片チャンネルあたり抵抗二本とコンデンサーひとつで構成できる。

昨夜とったのは、このふたつのどちらかではない。

audio sharing例会での音出しは、
セッティングを一からやっていく。
だから会が終了すると、元の状態に戻して帰る。

会がはじまる二、三時間前から準備を始めていく。
昨日はやることがいくつかやって、時間が押していた。
直列型ネットワークを接続して、とにかく音を出した。

この時点では抵抗アッテネーターを接続していない。
2441の音が優った鳴り方だ。

でも、鳴っている音を聴いて、これならばLNP2のトーンコントロールで補整できる範囲だと感じた。
実は第三の案として、これも考えていた。
ただこればかりは実際にやってみないと確実なことはいえなかった。

LNP2のトーンコントロールは3バンドである。
一般的な低域・高域の2バンドであったなら、最初からアッテネーターを挿入して鳴らす。
でも中域もコントロールできる。

LNP2はライン入力に関しては、ふたつのモジュールを信号は通る。
音の鮮度こそ重要だ、そのためには経路の単純化しかない、という短絡的な思考の人だと、
LNP2でもモジュールがひとつしか通らない使い方をする。

そうやればモジュールだけではない、
接点もポテンショメーターも、ケーブルも通る個所が少なくなる。
わかりやすい音の鮮度は、確かに向上する。

でも、それだったら、他のコントロールアンプを使えばいいだろう、と私は思う。
それこそパッシヴ型フェーダーを使えばいい。

ある機能は使う。
LNP2のトーンコントロールを調整する。
高域を下げ、低域を上げ、その上で中域のレベルを調整。
結果としてはトーンコントロールの三つのツマミが水平を向く位置で、バランスがとれた。

そんなにうまくいくのか、と思われるかもしれない。
なにもトーンコントロールだけの調整だけでなく、
スピーカーの設置も、それを見越して今回はやっている。

見てわかるところで、セッティングを変えている。

そして今回、スピーカーの設置を短辺の壁から長辺の壁とは変えたのは、
LNP2を聴くから、である。

Date: 6月 2nd, 2016
Cate: audio wednesday, LNP2, Mark Levinson

LNP2になぜこだわるのか(その2)

昨夜の試聴器材は、喫茶茶会記のシステムを基本的に使っている。
スピーカーはアルテックの416-8Cに、上はJBLの2441+2397(これは私が持ち込んだ)。
本来ならアルテックの807-8A+811Bだったのが、トラブルにより満足に音出しできないということで、
急遽JBLを使用することにした。

ネットワークは6dB直列型である。
前々回(muscle audio Boot Camp vol.1)で使用したものと基本的には同じだが、
クロスオーバー周波数を800Hzにし、音質向上を計って手を加えた。

スピーカーは、いわば高能率の2ウェイであり、お世辞にもワイドレンジ型とはいえないモノだ。

パワーアンプはマッキントッシュの管球式プリメインアンプMA2275を使った。
MA2275はプリ−パワー分離できるので、パワーアンプ部のみを使用。
意外にも、というべきか、MA2275のパワーアンプ部の入力感度はさほど高くない。
これはLNP2の試聴で、プラス面に働いてくれた。

CDプレーヤーはラックスのD38uだ。

こうやってラインナップを書いていくと(読んでいくと)、
LNP2の試聴環境として満足とはいえないと感じられる方もいよう。

私にだって、そんな気持があった。

私にとって、LNP2の音はつねにJBLの4343とともにあった。
マッキントッシュのパワーアンプとの組合せも、私にとっては例外的なことである。

わがままがとおれば、スピーカーは……、パワーアンプは……、CDプレーヤーは……、
といいたくなるが、そんなことをいっても、あるモノを使っていくしかないし、
それをいいわけにするわけにもいかない。

それでもLNP2の音を、うまく抽き出せるだろうか、という不安は少しはあった。
せめてJBLの2405をどこからか調達してきて、3ウェイにしたい……、という気持もあった。

でもないモノはない。

Date: 6月 2nd, 2016
Cate: audio wednesday, LNP2, Mark Levinson

LNP2になぜこだわるのか(その1)

昨夜のaudio sharing例会は「LNP2になぜこだわるのか」で、
二台のLNP2を五時間ほど聴いていた。

もう何度も書いているので詳しくは書かないが、
二台のLNP2とはバウエン製モジュールのLNP2とマークレビンソン(MLAS)製モジュールのLNP2のことだ。
もちろん違いはモジュールだけにとどまらない。

モジュールの違うLNP2の比較試聴は、これで四回目だ。
最初はステレオサウンドの試聴室。その後は個人のリスニングルームにおいてである。

MLAS製モジュールLNP2といっても、
製造時期によって細部が異るから、
すべてのMLAS製モジュールLNP2を同じにはできないこともわかったうえでいうのだが、
私はこれまでMLAS製モジュールLNP2に惹かれてきた。

でも昨夜の試聴は、そのへんが自分の中で微妙になっていく変化を感じていた。

試聴は最初のうちは一枚のCDを二台のLNP2で聴いて、次のディスクにうつる。
そこでももちろん二台のLNP2を聴く。
切替スイッチは、もちろん使わない。

バウエン製モジュールLNP2の音が、初めていいなぁ、と思えた。
そうなると、MLAS製モジュールLNP2の音の気になる点が耳につくようになってくる。

どういう違いが音にあったのか、
それをここで書いてもあまり意味のないことである。
あくまでも昨夜の音の違いは、そこでの音の違いであり、
部屋が異り、スピーカーや組み合わせるアンプ類も違い、
鳴らす音量、かけるレコード、そして鳴らす人が違えば、また違う結果になることは明白だからだ。

Date: 6月 1st, 2016
Cate: 戻っていく感覚, 書く

毎日書くということ(戻っていく感覚・その2)

毎日書いている。
六千本以上書いている。
そのうちのかなりの数、これまでのことを振り返ってのことである。

だから、あいつは過去のことしか書かない、過去にとらわれ過ぎている、
そんなふうに感じている(読んでいる)方がいるのも知っている。

そう思いたい人はそう思ってくれていい。
つい先日の瀬川先生のことを書いた。
これまでにかなりの数、書いてきている。
まだまだこれから先も書いていくし、書きたいことはまだまだある。

瀬川先生のことだけではない。
そうやって書いていくのは、私にとって大切なことをきちんとしまっていく行為のような気がする。

誰にでも大切なことはある。
長く生きていれば、それだけ増えていくはずである。

けれど、その大切なことを、
もう使わないから、とか、古くなったから、
でも捨てるのはしのびない、と理由でダンボールに詰め込んでしまう。

そういうことをいつのまにしてはないないだろうか。
しまうにしても、きちんとしまっておく。
そのために書いている。
そう感じることがある。

Date: 5月 31st, 2016
Cate: audio wednesday

第65回audio sharing例会のお知らせ(LNP2になぜこだわるのか)

明日(6月1日)のaudio sharing例会のテーマは、
すでに書いているとおり、マークレビンソンのLNP2について、である。

1970年代後半にオーディオの世界に足を踏み入れた私にとって、
あのころのオーディオには、狂気を感じさせるモノがあった。
それは私だけが感じていたのではなく、
私よりも年上のオーディオマニアと話していても、狂気というキーワードがどこかに出てくる。

ステレオサウンド 43号に瀬川先生は、こう書かれていた。
     *
 スピーカーならJBLの4350A、アンプならマークレビンソンのLNP2LやSAE2500、あるいはスレッショールド800A、そしてプレーヤーはEMT950等々、現代の最先端をゆく最高クラスの製品には、どこか狂気をはらんだ物凄さが感じられる。チューナーではむろんセクエラだ。
     *
《どこか狂気をはらんだ物凄さ》。
これこそがこの時代のオーディオの空気を支配していたもの、
これがオーバーな表現(捉え方)ならば、
1970年代のオーディオの空気のどこかにひそんでいたもの、といいかえてもいい。

この狂気に感化されてしまった者と感化されなかった者がいる。
LNP2にこだわる理由は、どうもそこにあるような気がしている。

わがままが許されるのであれば、
明日鳴らすスピーカーは別のモノにしたいし、パワーアンプも同じだ。
でも、そういうわけにはいかない。

けれど、あるディスクのある一曲だけは、
どこか狂気をはらんだ音で鳴らしてみたい、と思っている。

実際にやるかどうかは、明日の流れ次第だ。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 5月 31st, 2016
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その24)

ステレオサウンド 52号に、QUADの新型コントロールアンプ44が登場する。
405の登場とともに、33に代るコントロールアンプの噂はあったけれど、三年遅れての登場である。

型番の44は、多くの人が予想した通りだった。
大きさは33よりも大きくなっていて、
そのかわり405とのバランスがとれるようになっている。

アンプの内部構成も44と33はずいぶん違う。
モジュール構成を採る44は、使い手の要求に応じて入力モジュールを自由にかえられる。
ある種の融通性が加わっているし、
密閉されたモジュールではないから、モジュールごとの修理となるわけで、
メンテナンスのしやすさも考慮されての構成といえよう。

QUADアンプの愛好家、405の愛好家にとって、待ちに待ったコントロールアンプの登場だった。
44と405の組合せの音は、けっこうな回数聴いている。
いい組合せだと思う。

若いころもそう思っていたし、いまもそう思う。
でも、当時は44と405の組合せをそれほど欲しい、とは思っていなかった。

405は欲しいパワーアンプのひとつだった。
でも組み合わせるコントロールアンプは、44が出る前も出た後も、
私にとってはAGIの511(初期モデルか並行輸入のブラックパネル)が魅力的に思えたからだった。

44と405は純正組合せなわけで、それがいい音がするのは当り前、
コンポーネントの楽しさは、あえて純正とは違う組合せにある──、
若いころはそういう気持が強かったからだ。

AGIの511も、405も44も、小改良を受けている。
511と405はモデルチェンジもしている。
時間が経てば、人も変るわけで、いまでは44と405の組合せを欲しい、と思うようになった。

それでも44と405の組合せが、黄金の組合せかと問われれば、
そうではない、と即答する。

Date: 5月 30th, 2016
Cate: きく

ひとりで聴くという行為(その1)

コンサート会場にいけば、まわりに大勢の人がいる。
人気のある演奏家によるコンサートであれば空席はないが、
知名度のあまりない演奏家の場合だと、空席の方が多いことだってある。

私も一度だけ、そういうコンサートに行ったことがある。
両隣の席、前、後の席にも誰もいなかった。
観客の入りは五割を切っていたのかもしれない。

あまり人のいないコンサートは、どこか奇妙な感じすらする。
満員になるコンサートの場合、そのホールに入った瞬間に、
先に入っている観客のざわめきに包まれる。
がらがらのコンサートではそれがなかった。

演奏が始まる前の、こういったバイアスのかかりかたが、
こちらの聴き方になんら影響を与えないとは考えていない。
バイアスの影響から人は完全に逃れることはできないはずだから、
仮にまったく同じ演奏が舞台上でなされたとしても、
満員のコンサートとがらがらのコンサートでは、感じ方も違ってくるはず。

ここまでは昔から思っていたことであり、
そう思っている人もけっこういるであろう。

先日、ある記事を読んだ。
タイトルは「映画のシーンによって、人は異なる化学物質を放出している:研究結果」とついていた。

これから研究は進んでいくのだろうが、
映画のシーン(内容)によって人は異る化学物質を放出している、ということは、
ひとりで音楽を聴く(映画を観る)のと、
大勢で音楽を聴く(映画を観る)のとでは、感じ方が違ってくることになる。

異なる化学物質が放出されているということは、
放出された化学物質を吸っているということでもある。

体の中に取り込んだ化学物質の影響が聴く・観るに影響を与えないわけがない。

Noise Control/Noise Designという手法(45回転LPのこと・その4)

最初に聴いたCDの音に、驚いたことは前にも書いている。
発表前夜、ステレオサウンド試聴室で聴いた小沢征爾指揮「ツァラトゥストラはかく語りき」、
この音は、いまもすぐに思い出せるほど強烈な印象を残してくれた。

パイオニアExclusive P3とマランツ(フィリップス)CD63。
ディスクのサイズがコンパクトになったのと同じように、
プレーヤーのサイズもコンパクトになっていて、まさにコンパクトディスクなわけで、
それでも肝心の音が冴えなければ、それで終りである。

でも違っていた。

Exclusive P3が色褪てしまった。
私だけが感じていたのではなく、そのとき試聴室にいた編集者全員がそう感じていた。

Exclusive P3はよく出来たアナログプレーヤーである。
いまでも中古市場で人気があるのも、そうだろうな、と思う。

それでもテーブルの上にポンと置いただけのCD63から出て来た音は、
技術の進歩を感じざるをえなかった。

この時のディスクは一枚だけだった。
短い試聴時間だった。
それだからよけいに印象に残っていた。

その後CDは正式に発表され、各社からCDプレーヤーが一斉に登場した。
レコード会社からのタイトルも増えていった。

CDプレーヤーの総テストもあった。
各社のCDプレーヤーをほぼすべて並べて聴いていると、
あの日の衝撃はそこにはなく、けっこう冷静に聴いていた。

そうなってくると、CDとLPの音の違いについて、
初めてCDを聴いた後に、編輯部の先輩と話したことと、
その内容は変化していく。

いまから30年ほど前のことになるわけだが、
LPの音は気持ちいい、ということになった。
なぜ気持ちいい音のことが多いのか。

「それはこすっているからだ」と言った。
続けて「オーディオに限らず、こするのは気持ちいい行為でしょう」とも言った。

半分冗談でも半分は本気でいっていた。

CDは非接触で、LPは接触。
デジタルなのかアナログなのかという変調方式の違いも音に大きく関係していても、
非接触か接触か、という違いもまた音に大きく関係している、と思ったからだ。

そして接触することによって生じるノイズがある。
サーフェスノイズである。