Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 10月 1st, 2012
Cate: SUMO

SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その6)

Wiggins Circlotron Power Amplifierというものがある、ということはを知ったのは、
19歳のとき、AUDIO CYCLOPEDIAを購入したからだ。

まだこのころは真空管アンプの回路にそう詳しかったわけではない。
だから2ページ見開きで、回路図が載っているWiggins Circlotron Power Amplifierには惹かれたものの、
正直、動作に関して理解していたわけではなかった。

もちろんAUDO CYCLOPEDIAには解説文は載っている、英語で。
だから、もっぱら回路図を眺めるしか、理解の手はない。

ほとんどの場合、海図は片チャンネルだけ記載されることが多い。
AUDIO CYCLOPEDIAにも片チャンネル(1チャンネル)分の回路図が載っている。

Wiggins Circlotron Power Amplifierの回路図でまず目を引くのは、
整流管(6X4)が2本使われていること。
真空管アンプで、ステレオ仕様であっても整流管は通常1本のみということが多い。
2本使われていたとしても、左右チャンネル独立というものもあるけれど、
容量を増すための並列使用も、また多い。

Wiggins Circlotron Power Amplifierは、ステレオだと整流管を4本使用することになる。
なぜ、こんな大がかりなことをするのか。
電源ラインをおっていくと、通常のプッシュプルの真空管アンプとは電源のかけ方が異ることは、
AUDIO CYCLOPEDIAの他のページに載っている真空管アンプの回路図と見較べると、すぐにわかる。

Wiggins Circlotron Power Amplifierの回路図が載っている見開きの次のページには、
Wiggins Circlotron Power Amplifierの概略図も載っていた。

なにか違う……、
そのときは、ここまでの理解だった。
そして、しばらくこの回路のことは忘れていた。

Wiggins Circlotron Power Amplifierの存在を思い出したのは、
SUMOのThe Goldを手に入れて、
回路図も入手でき、The Goldの出力段の動作の解析を自分なりに行って、
自分なりに理解できて、ボンジョルノの天才性に感心していたときだった。

The Goldの購入は22歳のときだったから、3年以上の月日が、
Wiggins Circlotron Power Amplifierの理解に必要だったことになる。

Date: 9月 24th, 2012
Cate: SUMO

SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その5)

フローティング電源はその名の通り、電源ラインの片側がアースに接続されていない。
そのためフローティング電源を採用するのであれば、
フローティング電源の数だけの電源トランスの巻線が必要となる。

アースに片側が接続されている通常の電源であれば、
トランスの巻線は左右チャンネルで共通化できる。
セパレーション向上のために巻線を独立することも多く見受けられるが、
独立させなくてもアンプは動作するのに対して、
フローティング電源はそうはいかない。必ず独立させていなければならない。

だからSUMOのThe GoldもヤマハのA-S2000、A-S1000も、
フローティング電源のため、出力段用の巻線を4つ用意している。

The Goldもヤマハのプリメインアンプも、
出力段のNPN型トランジスターへの電源供給ラインは、
一種のタスキ掛けといえる結線になっている。
フローティング電源の片方のラインが+側のトランジスターのコレクターに、
もう片方は−側のトランジスターのエミッターへと接がっている。
片チャンネルあたりフローティング電源は2つ必要なので、
もうひとつのフローティング電源は、
+側のトランジスターのエミッターと−側のトランジスターのコレクター、というふうになっている。

このところが真空管の一般的なプッシュプル動作と異るわけだが、
真空管アンプに、こういう回路のアンプがなかったかというと、そうでもない。

エレクトロボイスのアンプに、出力管に6V6、EL84、6BG6などを採用したプッシュプルアンプ、
Wiggins Circlotron Power Amplifierがある。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その48)

マークレビンソンのアンプについては、3つに分けられると考えている。
ひとつめは、ジョン・カールとマーク・レヴィンソンによる時代。
その前にバウエン製モジュールを搭載したLNP2の存在があるけれど、
その時期は非常に短いし、バウエン製モジュールのLNP2の数は少ない。
なので、ここでは除外することにする。
アンプの型番でいえば、JC1、JC2、LNP2、それにML2などが、これにあたる。

ふたつめはトム・コランジェロとマーク・レヴィンソンによる時代。
アンプでいえばパワーアンプのML3、ML7、ML6A(B)などがそうだ。

それからマーク・レヴィンソンが離れたあとのマーク・グレイジャー体制になってからの時代。
アンプの型番からマーク・レヴィンソンのイニシャルであった”ML”が消え、No.シリーズになってから。
もっともこの時代も、また分けることはできるのだが、
この項では”Mark Levinson”というブランドは、
マーク・レヴィンソンという男がいたブランドとして会社についてのものであるから、
No.シリーズになってからのことについては、ここではとりあげない。

今後、No.シリーズについて書くことがあったとしても、
この項ではなく、新たな項で、ということになると思う。

どの時代のマークレビンソンのアンプの音が印象に深く残っているかは、
世代によっても違うし、同世代でも人が違えば違ってくる。
私にとってのマークレビンソン・ブランドのアンプといえば、
私がこれまで書いてきたものをお読みいただいた方はもうおわかりのように、
ジョン・カールと組んでいた時代のマークレビンソン・ブランドのアンプこそが、
私にとっての”Mark Levinson”である。

なぜ、私にとって、この時代のアンプが、
最初に音を聴いた時から30年以上が経っているにも関わらず、
いまでも、その魅力から完全に抜け出せないのか──、
その理由を考えてきている。

私は一時期、もうMark Levinsonのアンプはいいや、という時期があったにも関わらず、
再びMark Levinsonに惹かれ、離れることができずにいるのは、
“strange blood”を感じとっているからなのかもしれない。

Date: 9月 17th, 2012
Cate: SUMO

SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その4)

プッシュプルといっても、真空管アンプのそれとトランジスターアンプのそれとは、
微妙に異るところがある。

トランジスター、FETといった半導体にはNPN型とPNP型、N型とP型とがあるのに対して、
真空管にはNPN型、PNP型に相当するものは存在しない。
真空管に相当するのはトランジスターでいえばNPN型であって、
つまりPNP型トランジスター的な真空管はない。

そのためトランジスターアンプでのプッシュプルといえば、
NPN型トランジスターとPNP型トランジスター、
このふたつのトランジスターを組み合わせた回路ということになるが、
真空管アンプでのプッシュプルは、同一の真空管を2本使用することになる。
つまり真空管アンプのプッシュプルをトランジスターでつくるとなると、
NPN型トランジスターのみを使う、ということになるわけだ。

このことはトランジスターアンプのプッシュプルはアンバランス増幅であるのに対し、
真空管アンプのプッシュプルは、いわゆるバランス増幅ということになる。

だから真空管のプッシュプルアンプには、原則として位相反転回路が必要となる。
コンシューマー用アンプでは、いまでこそバランス接続が装備されるものが増えてきているが、
1980年代以前はほぼすべてアンバランス接続であった。
アンバランスによって送られてきた信号をそのまま増幅しただけではシングル動作になってしまう。
プッシュプルを形成する下側の真空管には位相を反転した信号を加えなければならない。
もちろんバランス信号を受けてそのまま増幅する回路であれば位相反転回路は要らない。

一方トランジスターのプッシュプルアンプには位相反転回路は要らない。
NPN型トランジスターとPNP型トランジスターからなるプッシュプルは真空管のプッシュプルと違い、
実際にはバイアス回路が必要であっても、信号の位相は同じである。

トランジスターアンプでのブリッジ構成(バランス回路)は、
出力段はNPN型トランジスターとPNP型トランジスターによるプッシュプル回路を、
+側と−側用にそれぞれ用意して、−側には位相を反転した信号が加えられる。

SUMOのThe GoldとヤマハのA-S2000、A-S1000は、
いま説明したようなトランジスターアンプのプッシュプルではなく、
真空管アンプのプッシュプル的な回路といえる。

もちろん出力トランスは必要としないし、
プッシュプルの真空管アンプの真空管をNPN型トランジスターにそのまま置き換えた回路ではない。
真空管アンプのプッシュプルと違う点は、出力段用にフローティング電源を用意している点にある。

Date: 9月 16th, 2012
Cate: SUMO

SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その3)

SUMOが登場したとき、最初のパワーアンプはThe Powerだった。
AB級動作で出力は400W+400W。
このThe PowerのA級動作のThe Goldが用意されていることは、同時に告知されていた。

このとき私は単純にThe PowerをそのままA級動作させたアンプだと思っていた。
ヤマハのCA2000がそうであったようにA級動作とAB級動作を切替えられるアンプはいくつかあったし、
出力段にかかる電圧をさげて、バイアス電流を増すことで、
回路構成はそのままでAB級アンプをA級アンプとすることができるからだ。

The Goldはステレオサウンド 55号の新製品紹介のページに登場した。
そこには「出力段はユニークで、独立した2組のフローティングパワーサプライによって」とある。
これ以上の詳細な技術的な解説はなかったため、
The Goldの出力段が具体的にはThe Powerとどう異るかはわからなかったものの、
すくなくとも単にThe PowerをベースにA級動作化しただけのアンプではないことだけは伝わった。

それからしばらくしてSUMOのカタログを見る機会があった。
The Goldの回路の概略図が小さく載っていた。
あくまでも概略図だから、細かいところまではわからないのだが、
すくなくともNPNトランジスターとPNPトランジスターによるプッシュプルの出力段を、
ブリッジ回路としただけではないことは、その概略図にNPNトランジスターしか書かれていないことからもわかる。

しかもカタログには、The Goldには音質に大きな影響を与えるバイアス回路が省かれている、ともあった。
いったいThe Goldはどういうアンプなのか、この時点では私の頭では理解できなかった。

The Goldがどういうアンプなのか、がはっきりとしたのは、その数年後。
実際にThe Goldを中古で手に入れて、回路図を入手したときだった。

Date: 9月 16th, 2012
Cate: SUMO

SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインプアンプ(その2)

1970年代、オーディオ用に半導体まで開発していたメーカーだったヤマハも、
一時期、オーディオへの積極的な関わり合いから離れていた。
それがA-S2000の開発により、またヤマハが戻ってきてくれた、という印象は多くの人が受けたことと思う。

CA2000に憧れていた中学生は30年以上経ったいま、
A-S2000に期待しながらも、その憧れは、残念なデザインによって消え去ってしまった。
それ以上の関心を、A-S2000には持てなかった。

そういうことなので、A-S2000がオーディオ雑誌でどういう評価を受けていたのかも知らない。
ただステレオサウンド 181号、
つまり昨年の暮れに出たステレオサウンド・グランプリとベストバリューが特集の号では、
掲載されてはいるけれども、それほど高い評価とはいえない。

A-S1000とともに20万円未満の価格帯にはいるA-S2000を推薦しているのは、三浦氏と和田氏のふたりだけ。
A-S1000は柳沢氏だけである。
この価格帯で評価が高いのは、オーラのvita、マランツのPM15S2、デノンのPMA2000SEなどである。
vitaは6人、PM15S2は5人、PMA2000SEは4人による推選である。

正直、私も、この評価に納得していたところがある。
デザインだけで関心を失い、それ以上、どういうアンプなのかについて調べもせずに、
だから音を聴くこともなく、ステレオサウンドの評価に同意していたわけだ。

そんなプリメインアンプを、こうやって取り上げているのは、
つい先日調べものをしていたら、A-S2000、A-S1000のパワーアンプ部に採用された回路が、
SUMOのThe Goldと基本的に同じことに気がついたからである。

ヤマハのサイトには、A-S2000のパワーアンプの回路を、フローティング&バランス式と名付けている。
そして概略図が載っている。
詳細な回路図を見ないことには、どこまでThe Goldと同じなのかははっきりしないが、
パワーアンプの出力段にフローティング電源を片チャンネルあたり2組用意しているところ、
そして一般的なプッシュプルがNPN型トランジスターとPNP型トランジスターを使うのに対し、
NPN型トランジスターのみを使っている点も、The Goldそのままである。

Date: 9月 15th, 2012
Cate: SUMO

SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その1)

ヤマハのプリメインアンプにA-S2000A-S1000の2機種がある。
どちらも4年ほど前に登場している。
A-S2000が208950円、A-S1000が155400円。

以前であれば高級プリメインアンプに位置づけられる価格であっても、
いまではどちらかといえは安い方の価格帯に位置することになってしまう。
ステレオサウンドのベストバイ(現在ではベストバリュー)でプリメインアンプのページをみれば、
価格帯は3つに分けられている。
20万円未満、20万円以上50万円未満、50万円以上で、しかも税込み価格ではなく税抜き価格で分類するため、
ヤマハのプリメインアンプ2機種は、それぞれ199000円と148000円で、どちらもいちばん安い価格帯になる。

A-S2000、A-S1000は、私と同世代、そして上の世代の方ならば、
その型番からすぐにわかるように往時の、
ヤマハの代名詞的なプリメインアンプであったCA2000、CA1000の21世紀版とも受け止められていると思う。

1970年代、CA2000とCA1000は高級プリメインアンプを代表するものであった。
A級/B級動作切替を備え、白木の丁寧な仕上げのケース、GKデザインによるフロントパネル……、
いまでも手に入れたいと思っているマニアは少なくないだろう。

ヤマハはその後、プリメインアンプに関しては、まったくイメージを一新したA1を発表、
それに続くシリーズとして、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9を出し、
CA2000、CA1000の後継機は登場しなかった。
1980年代後半にA2000が登場し、型番の上からはCA2000の後継機ともいえなくもないが、
フロントパネルのデザインをみるかぎり、私にとってはCA2000の後継機ではいえなかった。

そんな私にとって、A-S2000とA-S1000の登場は、
ひさびさにヤマハが本格的に取り組むことの現れであり、CA2000、CA1000の後継機であることは、
写真を見ただけで伝わってきた。(とはいえ優れたデザインとはいえないけれど)。

Date: 8月 25th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その24)

スピーカーのネットワークに並列型と直列型があることは、ずっと以前から知ってはいた。
私が中学生のときは、まだ技術的なことを解説した書籍がいくつも出ていた。
スピーカーに関する、そういう本もいくつもあった。

ラジオ技術から出ていた書籍は、中学生、高校生にとっては、
LPを一枚買うか、それとも本を買うか、迷ってしまうぐらいに、ほぼ同じ価格のが多かった。

ラジオ技術から出ていた一連の技術書は、
当時手に入れることのできる、もっとも充実した内容のものが多かった。

スピーカーの技術に関するのは「スピーカ・システム」というタイトルで、
山本武夫・編著、となっている。

この本でも当然ネットワークについて語られていて、
並列型と直列型があることも書いてある。
けれど直列型がどういうメリットがあるのかについてはふれられていない。

なにも、この本だけにかぎらない。
私が手にした本で、直列型ネットワークのメリットにふれたものは、ひとつとしてなかった。
どれも直列型がある、というだけにとどまっていた。

もっとも現実の製品をみても、
大半(90%以上)のスピーカーシステムは並列型のデヴァイディングネットワークを採用している。
直列型を採用しているのは、数えるほどしかない。
それでも現行製品で直列型を採用しているスピーカーシステムがあるのも、また事実である。

直列型のメリットは、いったいなんだろうか。
実を言うと、私もよくわかっていない。
いちど並列型と直列型の両方のネットワークを作ってみるべきなのだけど、まだやっていない。

ただデメリットは、ひとつ即いえることがある。
直列型では回路構成上、バイワイヤリングは不可能ということ。
そして、これに関連することだが、たとえばJBLの4343のようにスイッチひとつで、
バイアンプ駆動に切りかえるということも、無理である。

Date: 8月 22nd, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その23)

4つのマトリクスがある、
けれど実際にわれわれが耳にできるもののほぼすべてはピストニックモーションのスピーカーの定電圧駆動になる。
ごく一部のベンディングウェーヴのスピーカーの定電圧駆動が、ほんのわずか存在するぐらいである。

いま定電流駆動による音を聴こうとしたら、パワーアンプを自作するしかない。
どこかのメーカーが定電流出力のパワーアンプを製品化することは、まずありえない。

もし私がアンプメーカーを主宰していたとしても、
定電流出力アンプに大きなメリットを感じていても、現実の製品としてパワーアンプを開発することになったら、
それは定電圧出力のパワーアンプということになる。

なぜ、定電流出力のパワーアンプにしないかといえば、
いま現在市販されているスピーカーシステムのほとんとはマルチウェイ化されている。
フルレンジだけのシステムも少数ながら存在しているけれど、マルチウェイのシステムばかりであり、
これらのシステムには当然のことながら内部にLC型デヴァイディングネットワークをもつ。
しかもこのネットワークの大半は、並列型によって構成されている。

定電流出力のパワーアンプにとって、
この並列型ネットワークがスピーカーユニットとのあいだに介在することがネックとなるからだ。

ネルソン・パスによる自作派のためのサイト”PASS DIY“をみていくと、
定電流出力にふれてあるPDFがある。
Current Source Amplifiers and Sensitive Full Range Drivers“、
Current Source Crossover Filters“、
このふたつのPDFは定電流駆動に関心のある方はいちど読んでほしい、と思う。

タイトルからもすぐわかるように、マルチウェイのスピーカーの定電流駆動に関しては、
“Current Source Crossover Filters”にもあるように、
LC型デヴァイディングネットワークは直列型でなければならない。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その47)

LNP2のブロックダイアグラムを見ればすぐにわかることだが、REC OUTをパワーアンプの入力に接続しても、
VUメーターの両脇にあるINPUT LEVELのツマミによってボリュウム操作はできる。
こうすることによって3バンドのトーンコントロール機能をもつ最終段のモジュールをパスできる。
モジュールだけでなくOUTPUT LEVELのポテンショメーターや接点もパスできる。

中学生のころ、こうした使い方のほうが、
ボリュウム操作のため左右チャンネルで独立しているINPUT LEVELを動かす面倒はあるものの、
音の透明感ということでいえば、この使い方がいいはず、と短絡的にもそう思ったことがある。

短絡的、とあえて書いたのは、こういう使い方、そしてこういう使い方をされている方を否定するためではない。
あくまでも私にとってのLNP2というコントロールアンプの存在、
つまり、それは瀬川先生の存在と決して切り離すことのできないモノである、
ということを忘れてしまっていた己に対しての、短絡的という意味である。

まあ、それでも、したり顔で「LNP2はこうやって使った方が音が圧倒的にいい」などと面と向っていわれると、
「あなたにLNP2の魅力の何がわかっているのか」と、口にこそ出さないものの、そう思ってしまう。
そんなことをいう人と私が感じているLNP2の良さとは、実はまったく違うのかしれない。

こんなことを書いても、信号経路は単純化した方が絶対いい、と主張する人にとって、
LNP2にバッファーアンプを搭載することは、わざわざ余分なお金を費やして音を悪くしてしまうことでしかない。

理屈は、確かにそうだ。でも理屈はあくまでも理屈である。
音の世界において、理屈は時として実際に出てくる音の前では意味をなさなくなることもある。
それに理由付けなんて、後からいくらでもできるものだ。

理屈は、あくまでも、いま現在判明していることを説明しているにすぎない。
まだまだオーディオには判明していないことが無数にある。

だから、短絡的、と私は言う。
それに、そういう使い方をするのであれば、LNP2でなくて、他のアンプにした方がいい。

LNP2にあえてバッファーアンプを搭載することは、どうことなのだろうか。
過剰さ・過敏さ・過激さを研ぎ澄ますことであり、
そして、この3つの要素こそ、ジョン・カールと組んでいたマーク・レヴィンソンの「音」だと思う。

Date: 7月 31st, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その22)

電圧伝送・電圧駆動という、いわばひとつの決りごとがある。
この決りごとのおかげがあるからこそ、といえる面があれば、
この決りごとがあるために、といえる面も、少ないとはいえ、やはりある。

電圧伝送・電圧駆動という決りごとがあるからこそ、
これだけのオーディオ機器のヴァリエーションと数がある。
これまでにいったいどれだけのオーディオ機器が世の中に登場したのか、
その数を正確に把握している人はおそらくいないだろう。
そのくらい多くの機種が登場している。

それだけのオーディオ機器が世に登場したことによるヴァリエーションの豊富さがある一方で、
技術的なアプローチとしてのヴァリエーションということになると、
果して電圧伝送・電圧駆動が圧倒的主流で良いのだろうか、と思うわけだ。

特に思うのはスピーカーと、その駆動に関して、である。

世の中のスピーカーは、
電圧伝送・電圧駆動が主流なのと同じくらいにピストニックモーションによるものが主流である。
ホーン型、コーン型、ドーム型、リボン型、コンデンサー型……、
その動作方式にヴァリエーションはあっても、
目指しているのはより正確なピストニックモーションの実現である。

けれど1920年代からドイツでは非ピストニックモーションといえる方式のスピーカーが生まれている。
ベンディングウェーヴと呼ばれるスピーカーである。
ベンディングウェーヴ方式のスピーカーは、ずっと、そしていまでも少数である。

スピーカーに関しては、
ホーン型とかコーン型とか、その動作方式で分類する前に、
まずピストニックモーションかベンディングウェーヴかに分類できる。

そしてスピーカーの駆動についても、
真空管アンプかトランジスターアンプかという分類もあり、
回路や出力段の動作方式によって分類する前に、
定電圧駆動か定電流駆動かに分類できる。

つまりスピーカーとアンプの組合せでみれば、
現在圧倒的主流であるピストニックモーションのスピーカーを定電圧駆動があり、
ベンディングウェーヴのスピーカーを定電圧駆動、
ピストニックモーションのスピーカーを定電流駆動、
ベンディングウェーヴのスピーカーを定電流駆動、
──この4つのマトリクスがある。

Date: 7月 30th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(余談・D123とアンプのこと)

JBLのフルレンジユニットの歴史をふりかえってみると、
最初に登場したD101、
そしてJBLの代名詞ともいえるD130、その12インチ・ヴァージョンのD131、8インチ口径のD208があり、
ここまでがランシングの手によるモノである。
これらに続いて登場したのがD123(12インチ)だ。

D123はD130(D131)とは、見た目からして明らかに異る。
まずコーン紙の頂角からして違う。そしてD130やD131にはないコルゲーションがはいっている。
JBLのスピーカーユニットで最初にコルゲーションを採用したユニットが、D123だ。
しかも岩崎先生によると、D123にはもともと塗布剤が使われていた、とのこと。

さらに裏を見ると、フレームの形状がまったく異る。
ラジカル・ニューデザインと呼ばれているフレームである。

同じ12インチ口径でもD131が4インチのボイスコイル径なのに対し、D123は3インチ。
磁気回路もD130、D131の磁束密度が12000に対し、D123は10400ガウスと、こちらもやや低い値になっている。

同じ12インチのD131と比較するとはっきりするのは、D123の設計における、ほどほど感である。
決して強力無比な磁気回路を使うわけでもないし、ボイスコイル径もほどほど。
フレームにしてもスマートといえばスマートだが、物量投入型とはいえない。
なにか突出した技術的アピールがあるユニットではない。

井上先生はD123はいいユニットだ、といわれていたのを思い出す。

このD123はランシングによるモノではない。
では、誰かといえば、ロカンシーによるユニットで、間違いないはずだ。

ロカンシーがいつからJBLで開発に携わっていたのかははっきりしないようだが、
1952年のLE175DLHはロカンシーの仕事だとされている。
ということは1955年登場のD123もロカンシーの仕事のはず。

となるとD123とJBLのプリメインアンプのSA600を組み合わせてみたくなる。
D123が登場したころは真空管アンプの時代だったし、D123とSA600のあいだには約10年がある。

けれど、どちらもロカンシーの開発し生み出したモノである。
ただこれだけの理由で、D123をSA600で鳴らしてみたい、と思っている。
エンクロージュアはC38 Baronがいい。

Date: 7月 29th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その21)

電流に注目したところでは、ご存知の方は少ないようだが、
オーディオデバイスのMC型カートリッジ用のヘッドアンプHA1000はI/V変換方式を採ったものである。
I/V(電流・電圧変換)アンプとは、反転アンプの入力抵抗を省いた構成で、
MC型カートリッジのヘッドアンプとして使用する場合には、
カートリッジのインピーダンスがそのままアンプの入力インピーダンスとなり、
このことはヘッドアンプのゲインが接続するカートリッジのインピーダンスによって変化することでもある。

反転アンプのゲインは帰還抵抗を入力抵抗で割ったのだから、
ハイインピーダンスのカートリッジの場合、ゲインはローインピーダンス接続時よりも下る。

海外メーカーではクレルがコントロールアンプとパワーアンプ間の伝送方式、
CAST伝送も電流伝送である。

このCAST伝送をみてもわかるように電流伝送、電流駆動を採用するには、
単独では無理で必ず組み合わせる機器が指定される(専用となる)。

ヤマハのHA2は専用ヘッドシェルとの組合せだし、
ビクター、テクニクスの試作品のスピーカーシステムは、
パワーアンプとスピーカーでトータルのシステムとして設計・開発されている。
クレルのアンプも他社製のアンプと組み合わせるときには通常の電圧伝送しかない。

電流をパラメータとしたほうがいいのか、電圧をパラメータとしたほうがいいのか。
ここには考え方がいくつかあるだろうし、安易に電流をパラメータとすべきとは言い難いところがある。

つきつめていけば電流をパラメータとすべきなのかもしれない、とは考えている。
けれどもしすべてのオーディオ機器が電流伝送を採用し、スピーカーを電流駆動していたとしたら、
オーディオはここまで発展しなかったはず、とは確実にいえる。

電圧伝送、電圧駆動を採用したことにより、
コントロールアンプとパワーアンプの組合せは自由に選択できるし、
コントロールアンプへも、CDプレーヤー、テープデッキ、チューナーなど、
これらの機器を細かいことを気にせずに接続することができている。

スピーカーとパワーアンプの組合せにしても、そうだ。
極端なローインピーダンスのスピーカーを負荷としないかぎり、
スピーカーとパワーアンプの組合せは自由である。

かなり入力インピーダンスの低いパワーアンプが過去を含めてわずかとはいえ存在していたから、
そういうアンプと管球式のコントロールアンプを接続する際には注意が必要となるくらいで、
コンシューマー用機器を使う場合には、
送り出しのインピーダンスが接続される機器の入力インピーダンスよりも十分に低い値となっているので、
原則として、組合せと自由に行える。

この組合せの自由さ、つまりコンポーネントの面白さがあったからこそ、
オーディオはここまで発展してきたといえるわけだから、
電圧伝送・電圧駆動ではダメであるとは、私としてはいいたくない。

Date: 7月 18th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その20)

Standard Speaker System、
試作の3ウェイのスピーカーシステムにつけられた、この名称に、
このスピーカーシステムの開発にかかわった人たちのスピーカーとアンプについての考え方の、
その一部ではあるものの、推し量れることがある。

少なくとも、このStandard Speaker Systemを開発していた時点でビクターは、
スピーカーの駆動方法として、一般的な定電圧駆動ではなく定電流駆動が望ましい、
という判断を下していた、ということだ。

だからこそ一般的な定電圧駆動ではなく、定電流駆動を採用しながらも、
Standard Speaker Systemと、その名称に”standard”をつけている。
standardの意味はいうまでもなく、標準とか基準である。

標準となるべきスピーカーシステム、基準となるべきスピーカーシステムに、
1978年ごろのビクターの開発者たちは、定電流駆動を採用していることを強調しておきたい。

このころ、テクニクスも試作品のスピーカーシステムに、やはり定電流駆動を採用している。
リニアフォースドライブスピーカーと名付けられた、この方式は、スピーカーの徹底した低歪化を目指したもので、
スピーカーの歪をBl歪と電流歪にわけて考えられることから、
前者のBl歪(ボイスコイルに信号が流れることによって生じる磁束密度の変調によるもの)には、
外磁型マグネットの前後にプレートを配することで対称構造としたうえで、
このふたつのプレートの間に磁束コイルをおき、
ボイスコイルの両端に捲いてある制御コイルからの信号により、
磁束コイルに対し専用アンプによる磁束フィードバックをかけている。
電流歪(ボイスコイルがセンターポールやプレートなどのヒステリシスをもつ材質に囲まれているために発生)には、
対称構造としたプレートに対し、それぞれボイスコイルをおき(つまり2組ある)、
こちらも専用アンプでドライヴする、という仕組みである。

磁束フィードバック用アンプも、ボイスコイル用アンプも、定電圧出力ではなく定電流出力となっていることも、
リニアフォースドライブスピーカーの、大きな特徴といえる。

リニア(linear)は、直線の、直線的な、の意味をもつわけだから、
リニアフォース(直線的な力、言い換えれば非直線的な要素のない力)を実現するために、
テクニクスは定電流駆動を選択した、とも受け取れる。

Date: 7月 17th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その19)

アンプとスピーカーの関係について考えてゆくにつれて感じているのは、
現状の、定電圧出力のパワーアンプと、定電圧駆動を前提としたスピーカーシステムの組合せだけでなく、
もういちど定電流出力のパワーアンプによるスピーカーの駆動を再検討してみるべきではないか、ということ。

電圧をパラメータとする電圧駆動、それに電圧伝送が、オーディオの世界では標準の方法として定着している。
それでも電流をパラメータとしたオーディオ機器が、これまでにも登場している。

私がオーディオに関心をもちはじめた1976年以降の製品だけにしぼってもいくつかある。
まずヤマハのヘッドアンプのHA2がそうだ。
ヘッドシェルにヘッドアンプの初段のFETをとりつけることで、
MC型カートリッジの出力電圧を電流変換してヘッドアンプ本体まで伝送していた。

その次には登場したのはビクターのコントロールアンプのP-L10がある。
P-L10は、ヤマハのHA2のように見た目ですぐに特徴的なところがあるアンプではない。
けれど、このコントロールアンプは内部では電流伝送を行っていた。
おそらくビクターではパワーアンプとの接続に関しても電流伝送を実験していた、と私は思っている。
けれどコントロールアンプとパワーアンプをペアで必ずしも購入されるわけではなく、
他社製のパワーアンプやコントロールアンプと組み合わされることのほうが実際には多いのかもしれない。
だからコントロールアンプ・パワーアンプ間に電流伝送を搭載するということは、
他社製のオーディオ機器との使用を考慮すると、そういう冒険はやりにくい。
だからP-L10内部だけの電流伝送にとどまったのではないだろうか。

そう考えるのには、ひとつ理由がある。
ビクターが1978年ごろに発表したスピーカーシステムの試作品が、それである。
試作品だから型番はなく、たしかStandard Speaker Systemと呼ばれていた。

卵形のエンクロージュア平面型のスピーカーユニットを納めた、この3ウェイのスピーカーシステムは、
3台のパワーアンプを内蔵したマルチアンプ駆動てある。
そしてそれぞれのアンプは、すべて定電流駆動となっている。
ウーファーに関しては、さらにMFBもかけられている。

このStandard Speaker Systemは市場に登場することはなかった。
このStandard Speaker Systemのコンセプトを受け継いだスピーカーシステムも現れなかった。
けれど、いまビクターのサブウーファーのSX-DW77はDクラスアンプによる定電流駆動となっている。