Date: 9月 17th, 2012
Cate: SUMO
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SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その4)

プッシュプルといっても、真空管アンプのそれとトランジスターアンプのそれとは、
微妙に異るところがある。

トランジスター、FETといった半導体にはNPN型とPNP型、N型とP型とがあるのに対して、
真空管にはNPN型、PNP型に相当するものは存在しない。
真空管に相当するのはトランジスターでいえばNPN型であって、
つまりPNP型トランジスター的な真空管はない。

そのためトランジスターアンプでのプッシュプルといえば、
NPN型トランジスターとPNP型トランジスター、
このふたつのトランジスターを組み合わせた回路ということになるが、
真空管アンプでのプッシュプルは、同一の真空管を2本使用することになる。
つまり真空管アンプのプッシュプルをトランジスターでつくるとなると、
NPN型トランジスターのみを使う、ということになるわけだ。

このことはトランジスターアンプのプッシュプルはアンバランス増幅であるのに対し、
真空管アンプのプッシュプルは、いわゆるバランス増幅ということになる。

だから真空管のプッシュプルアンプには、原則として位相反転回路が必要となる。
コンシューマー用アンプでは、いまでこそバランス接続が装備されるものが増えてきているが、
1980年代以前はほぼすべてアンバランス接続であった。
アンバランスによって送られてきた信号をそのまま増幅しただけではシングル動作になってしまう。
プッシュプルを形成する下側の真空管には位相を反転した信号を加えなければならない。
もちろんバランス信号を受けてそのまま増幅する回路であれば位相反転回路は要らない。

一方トランジスターのプッシュプルアンプには位相反転回路は要らない。
NPN型トランジスターとPNP型トランジスターからなるプッシュプルは真空管のプッシュプルと違い、
実際にはバイアス回路が必要であっても、信号の位相は同じである。

トランジスターアンプでのブリッジ構成(バランス回路)は、
出力段はNPN型トランジスターとPNP型トランジスターによるプッシュプル回路を、
+側と−側用にそれぞれ用意して、−側には位相を反転した信号が加えられる。

SUMOのThe GoldとヤマハのA-S2000、A-S1000は、
いま説明したようなトランジスターアンプのプッシュプルではなく、
真空管アンプのプッシュプル的な回路といえる。

もちろん出力トランスは必要としないし、
プッシュプルの真空管アンプの真空管をNPN型トランジスターにそのまま置き換えた回路ではない。
真空管アンプのプッシュプルと違う点は、出力段用にフローティング電源を用意している点にある。

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