Date: 7月 18th, 2012
Cate: D130, JBL
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D130とアンプのこと(その20)

Standard Speaker System、
試作の3ウェイのスピーカーシステムにつけられた、この名称に、
このスピーカーシステムの開発にかかわった人たちのスピーカーとアンプについての考え方の、
その一部ではあるものの、推し量れることがある。

少なくとも、このStandard Speaker Systemを開発していた時点でビクターは、
スピーカーの駆動方法として、一般的な定電圧駆動ではなく定電流駆動が望ましい、
という判断を下していた、ということだ。

だからこそ一般的な定電圧駆動ではなく、定電流駆動を採用しながらも、
Standard Speaker Systemと、その名称に”standard”をつけている。
standardの意味はいうまでもなく、標準とか基準である。

標準となるべきスピーカーシステム、基準となるべきスピーカーシステムに、
1978年ごろのビクターの開発者たちは、定電流駆動を採用していることを強調しておきたい。

このころ、テクニクスも試作品のスピーカーシステムに、やはり定電流駆動を採用している。
リニアフォースドライブスピーカーと名付けられた、この方式は、スピーカーの徹底した低歪化を目指したもので、
スピーカーの歪をBl歪と電流歪にわけて考えられることから、
前者のBl歪(ボイスコイルに信号が流れることによって生じる磁束密度の変調によるもの)には、
外磁型マグネットの前後にプレートを配することで対称構造としたうえで、
このふたつのプレートの間に磁束コイルをおき、
ボイスコイルの両端に捲いてある制御コイルからの信号により、
磁束コイルに対し専用アンプによる磁束フィードバックをかけている。
電流歪(ボイスコイルがセンターポールやプレートなどのヒステリシスをもつ材質に囲まれているために発生)には、
対称構造としたプレートに対し、それぞれボイスコイルをおき(つまり2組ある)、
こちらも専用アンプでドライヴする、という仕組みである。

磁束フィードバック用アンプも、ボイスコイル用アンプも、定電圧出力ではなく定電流出力となっていることも、
リニアフォースドライブスピーカーの、大きな特徴といえる。

リニア(linear)は、直線の、直線的な、の意味をもつわけだから、
リニアフォース(直線的な力、言い換えれば非直線的な要素のない力)を実現するために、
テクニクスは定電流駆動を選択した、とも受け取れる。

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