オーディオ機器を選ぶということ(再会という選択・その3)
「いまさらねぇ……」
これを口にするは、別に難しいことでもなんでもない。
誰でも、いおうと思えばいえる。
「いまさらLNP2ねぇ……」「いまさら4343ねぇ……」、
そんなことは懐古趣味だとばかりに短絡的判断を下す人がいる。
そう思いたければ、ずっとそう思っていればいい。
私だって、「いまさらLNP2ねぇ……」「いまさら4343ねぇ……」と誰かにいったりはしなかったものの、
私は私自身に対して、そんなことをつぶやいていた時期がある。
「いまさらねぇ……」を口にする人の中には、
LNP2や4343を実際に使ってきた人、憧れをもっていた人もいる。
そういう人の「いまさらLNP2ねぇ……」「いまさら4343ねぇ……」には、
自分はとっくに、それらのオーディオ機器から卒業した、
もしくはいまの自分にとっては、自分の要求するところからは、
力不足のオーディオ機器、さらにいえば役立たずのオーディオ機器、と暗にいいたいのかもしれない。
「いまさらねぇ……」の裏からは、
いまの自分は、もうそんなところにはいないよ、といった自負が臭ってくることがないわけではない。
「いまさらねぇ」のあとにオーディオ機器の型番を続ける人と話したことが、数回ある。
話してみれば、わかる。
自分にもそういう時期があったからこそ、わかるものがある。
ほんとうに、この人は「いまさらねぇ」の後に続けるオーディオ機器を、理解しているのだろうか。
私は、人でもオーディオ機器でも再会するということは、
再会する自分が、実は試されているところがあると、いまは感じている。
「いまさらねぇ……」は、その試されることから逃げるには、最適の言い草であるからだ。