Archive for category アナログディスク再生

Date: 6月 26th, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その9)

この先入観が、SX8000IIのベルトテンションを緩めてしまったときの音を、
素直に、これがいい音だ、と認めることができなかったことに影響している。

リンのLP12をベルトを外してターンテーブル・プラッターを廻した音を聴いたとき、
やっと素直に認めることができた。
ベルトドライヴでは、ベルトのテンションをできるかぎり緩くしていった方がいい。

もちろんベルトドライヴならすべての機種についてそういえるわけではない、と思う。
少なくともメカニズムがしっかりと精度高くつくられたもので、
スムーズな回転を実現しているもの。
さらにある程度の慣性モーメントをもつことが、条件となってくる。

慣性モーメントを最大限利用して、回転数がぎりぎり低下しないように最低限の力をベルトによって伝える。
停止しているターンテーブルがモーターの力だけでは回転しはじめないくらいに、
ベルトのテンションを緩く、モーターのトルクを低くしたほうが、音楽がよりみずみずしく表現される。

音楽に含まれている水気が増していき、その水気のもつ味わいがよりなめらかになり、おいしさを増していく。
旬の果実を、それもとりたてのものを口にしたときの美味さに近づいていく。

どうもモーターは、それほど滑らかに廻っていないように思ってしまう。
その不完全な回転がベルトを通じてターンテーブル・プラッターに伝わると、
慣性モーメントを利用して滑らかに廻っているターンテーブルの回転を邪魔することになる。

モーターの回転を滑らかにする方法のひとつが、
シンクロナスモーターならば、トーレンスのTD125、リンLP12のヴァルハラにみられる、
発振器とアンプの組合せによるモーター駆動回路の搭載がある。

ACコンセントからノイズがまったくない、きれいな正弦波が得られるのであれば問題はないはずだが、
実際には、特にいまは、そういう状況ではない。
AC電源の汚れは、そのままモーターの回転を阻害する。
だからそのままAC電源を供給せずに、間に駆動回路を置く。

Date: 6月 26th, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その8)

SX8000IIの始まりとなったRX5000+RY5500のころから、
マイクロのこのシリーズは、ターンテーブルとモーター間の距離はユーザーが調整していくことになっている。
音を聴いて、ベルト(RX5000、SX8000は糸)のテンションを調整していく。

SX8000IIになり専用のフローティングベースが用意されたが、ターンテーブルとモーターの位置指定はなかった。
このベルトのテンションをどの程度にするかによって、音はとうぜん変ってくる。
ステレオサウンドのリファレンスプレーヤーはSX8000IIだったから、ここの調整は試してみた。

ベルトがパンパンに張るまでにテンションをかける、
つまりターンテーブル本体とモーターユニットの距離を拡げすぎると、
ターンテーブル・プラッターはうまく回転しない。
少しずつ距離をつめてベルトのテンションを緩めていく。
どこまでも緩めていくと、テンションが足らなくなって、
ターンテーブル・プラッターが静止状態から起動しなくなる。

指で少し勢いをつけてやらないと廻らなくなるほど緩くすることは、
マイクロの設定外の使い方となるだろうが、音は緩くしていった方がよくなっていく。
すくなくともそう私の耳は感じていた。

とはいうものの、この状態では試聴では使えないし、最終的にはSX8000IIが持ち込まれたとき、
マイクロの人によるセッティングと、だいたい同じテンションになるようにしていた。

リムドライヴのEMTのプレーヤーを使っていると、モーターのトルクが大きくて、
そのトルクをしっかりターンテーブルに伝えて回転させることが、音の良さにつながっている──、
実はそう思っていた(リムドライヴに関してはいまもそう思っている)。

だからベルトドライヴもリムドライヴと同じであろう、という先入観があった。

Date: 6月 25th, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その7)

1988年の取材で、リンのLP12を聴く機会があった。
ヨーロッパ製の、どちらかといえばコンパクトにまとめられたフローティング型プレーヤーを4機種集めての試聴で、
ステレオサウンド 90号に掲載されている(実は88号掲載予定だったが、ページがとれなくなり延びてしまった)。

試聴が終った後に、井上先生がつぶやかれた。
「LP12のベルトははずしてみな」と。
何をされるのか予測できなかった。
ベルトを外したLP12のターンテーブルの上にLPを乗せ、指で廻し始められた。
しばらく眺めたのちに「針を降ろせ」という指示が出た。

この時、スピーカーから出てきた音は、
LP12にヴァルハラを取り付けたときの音を思いださせてくれた。

再生中には手を下さないから、回転はしばらくすれば遅くなり止る。
33 1/3回転を維持しているわずかな時間しか、この良質な音は聴けない。
でも、このわずかな時間の音は、貴重だ。

すべてのプレーヤーで同じような結果が得られるわけではない。
ターンテーブル・プラッターの加工精度、ダイナミックバランスが優れていて、
軸受けの構造も優れたもので、スムーズな回転を実現しているモノでなければ、この時の音は聴けない。

この時の音を聴いて、思い出した音がある。
マイクロのSX8000IIのベルトのテンションを調整していたときの音だ。

Date: 6月 24th, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その6)

ステレオサウンド 65号の新製品の紹介記事に、リンのLP12 Basik Systemが登場している。
傅さんが記事を書かれている。

LP12 Basik Systemは新型のトーンアームと、
LP12本体のグレードアップキット「ヴァルハラ」と「ニルバナ」を搭載したシステムのことだ。

ニルバナは、シリアルナンバー31825以前のLP12のサスペンションを新型にするもの、
ヴァルハラはシンクロナスモーターをより正確にスムーズに動かすための、一種の電源回路である。

ヴァルハラは正弦波をつくり出す発振器とモーターを駆動するだけの電力まで増幅するアンプ部からなるもので、
LP12以前にも、トーレンスのTD125にも同じものが搭載されていた。
当時のオーディオ雑誌では、TD125にはサーボ回路が搭載されている、という記述があったが、
TD125のターンテーブルは速度検出を行なっておらず、それをフィードバックしていたわけではない。

おそらく詳細な技術資料がなかったことと、
シンクロスモーターでありながら50Hz/60Hzの電源周波数の切換えの必要がなかったこと、
それに通常、電子回路は必要としないモーターなのに、モーターのための電子回路基板があったことなどから、
サーボがかけられている、と思われていたのだろう。

このTD125をベースにしたのがEMTの928で、928もシンクロナスモーターを電子回路によって制御している。

この技術がLP12にも搭載されたのが1982年であり、
ヴァルハラありとなしのLP12の音の差は、想像以上に大きかった。

傅さんの文章を引用してみる。
     *
結果は歴然。ローエンドへ1オクターブとはいわぬが、半オクターブは伸びて、しかも従来のLP12は認めていても、文句を言えば低域の解像力、エッジの利きがいまいちだったのがキリッと構築される。
     *
ステレオサウンド 65号は12月発売の号だったから、
「これはLP12のオーナーに朗報であり、良きクリスマスプレゼントである」と傅さんはまとめられている。

Date: 6月 24th, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その5)

ノッティンガムアナログスタジオのAnna LogとEMTの927Dstのあいだに、およそ共通点はないといえる。
このふたつで近いものをあえて挙げるならば、重量くらいだろう。
Anna Logは45kg、927Dstは41kg、とカタログ上はほぼ近い値だ。

だがそれ以外の項目となると、このふたつのアナログプレーヤーはそこかしこにはっきりとした違いがある。
Anna Logはベルトドライヴ、927Dstはリムドライブ。
ここにダイレクトドライヴを比較対象にもってくれば、ベルトドライヴもリムドライヴも、近いものとなるだろうが、
ターンテーブル・プラッターを廻すことに対する考え方は大きく違う。

モーターはどちらもシンクロナス型だが、まず大きさに差違がはっきりと現れている。
927Dstのモーターはそうとうな大型で、アイドラーを介してその強力なトルクをしっかりとターンテーブルに伝える。
さらに回転の微調整とモーターの安定化のために、
シャフト中心部にフェルトパッドによるフリクションブレーキをかけるようになっている。

Anna Logのモーターは、927Dstのモーターとは正反対の低トルクのモーターを使っている。
そのためターンテーブルを廻しはじめるにはトルクが足らず、
使い手が指でターンテーブルを廻してやらなければならない。

プロ用として開発されたEMTのプレーヤーシステムでは、絶対に考えられない方法といえる。

だからAnna Logはターンテーブル・プラッターの慣性モーメントを利用する。
Anna Logの総重量の55%はターンテーブル・プラッターが占める(25kg)
927Dstは直径42cmのアルミ製のメイン・プラッターが4.7kg、
その上にのるガラス製の直径44cmのプラッターが2.58kgで、計7.28kg。
総重量に対する割合は約17%。

Date: 6月 23rd, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その4)

スピーカーシステムの試聴とはまた少し違う意味あいで、アナログプレーヤーの試聴には、
使いこなし、調整といったことが重要になってくる。

オーディオ機器の中で、もっともプリミティヴな構成なのがアナログプレーヤーは、
ほぼすべての機構が目で捉えることができる。
そこで、試聴の対象となる、その前にあるアナログプレーヤーをどう理解し調整し、使いこなしていくのか。

それができるかできないかはオーディオに対する資質も大事だけれど、
それと同じくらいに、その人の中に、アナログプレーヤーに対する理想像が存在しているかどうか、も関係してくる。

昔ながらオーソドックスなスタイルのアナログプレーヤーにおいてもそうだが、
それ以上にCDが登場し普及した後で登場してきた、
それまでのアナログプレーヤーをつくってきたメーカーとは、ひと味ちがうものをもつ新進メーカーのものを、
正しく評価するためには、評価者に「理想像」がなければ、正しく理解することができない。
つまりこれは優れたアナログプレーヤーの良さを引き出すことができないことであるだけでなく、
能書きだけの製品に騙されてしまう、ということになっていくからだ。

ノッティンガムアナログスタジオのAnna Logは、いわゆるオーソドックスなスタイルのプレーヤーではない。
だから、ステレオサウンド 133号の紹介記事がもしほかの人(あえて名前は出さないけれど)だったら、
そこに書いてあることの大半を素直に信じることはしなかった。

133号当時(1999年暮)にステレオサウンドに執筆していた人の中で、
Anna Logの記事を書くのに、最高の適任者は井上先生である。

Date: 6月 22nd, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その3)

Anna Logは、ステレオサウンド 133号の新製品紹介の記事に登場している。
カラーページでの写真は、それを見た者の、なにかインスピレーションをかきたてるものがあった。

これ以前に登場してきた数々のアナログプレーヤーの中にも、変り種といいたくなる製品は少なからずあった。
Anna Logも、変り種のひとつということになる。
でも、変り種ではあっても、ただ変り種だけのプレーヤーとは違う、という雰囲気がある。

ノッティンガムアナログスタジオのプレーヤーが評判なのは知っていたけれども、
特に強い関心をもつことは、実のところなかった。
いいプレーヤーなんだろうけど……、というところが私にあったのは、
見た目に負うところが大きかった。
石臼のような黒いターンテーブルプラッターに、それに対して薄い、これまた黒いベース。
この組合せに、使ってみたい、という印象を抱けなかった。

アナログプレーヤーは、アンプやCDプレーヤー以上に、
まずは、こちらに使ってみたいという気にさせてほしいと思っているオーディオ機器と思っているだけに、
ノッティンガムアナログスタジオのプレーヤーは関心の外にあった。

Anna Logは、使ってみたい、と強く思わせてくれる。
写真をまず一目見て、そう感じ、細部を見直していけばいくほど、「使ってみたい!」と思ってくる。

しかもAnna Logについて書かれているのが、井上先生だったことが、またよかった。

Date: 6月 21st, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その2)

「20世紀の恐竜」と捉える一方で、この時代に、
それまでのアナログディスク再生の追求の仕方とは大きく異る方向転換をするならば、という気持も同時にある。

ノイマンのDStにEMTの927Dstを選択するのは、「20世紀の恐竜」という気持からの選択であって、
DSTと927Dstからは絶対に得ることのできないであろう魅力を、アナログディスクから引き出すとなったら、
何を選択するだろうか、と考える。

ステレオサウンド 177号のベストバリュー(以前のベストバイ)で登場しているアナログプレーヤーは、少ない。
19機種で、そのうち写真とコメントが掲載されているのは9機種。
しかも9機種中リンのLP12のヴァリエーションが3機種だから、実質的な数はほんとうに少ない。

正直、これらの中に本気で欲しい、と思うものはない。
177号に登場しているアナログプレーヤーがいいとか悪いとかではなく、
いままで体験したことのないアナログディスクの魅力を音として聴きたい、という観点からは、
これだ! と予感させるものを感じとれない。

リンのLP12、オラクルのデルフィ、ミッチェルエンジニアリングのジャイロデック、ロクサンのザークシーズ、
これらは、以前のモデルをすでに聴いている。
あれからけっこうな月日が経っているから、それに似合うだけの改良が加えられていることだろうが、
基本的な設計思想に変更はない以上、いま選択しようとは思わない。

他の機種は、となると、これでアナログディスクをかけたい気にさせない未完成さを感じてしまう。

何を選ぶのかとなると、177号には登場していないモノ──、
ノッティンガムアナログスタジオのAnna Logだ。

Date: 6月 20th, 2011
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(その1)

ステレオサウンドに「スタジオの音が聴こえる」を連載されている高橋健太郎氏が、
6月17日に、Twitterでオーディオマニアに質問されている。
「死ぬまでに一度、聞いてみたいアナログ・カートリッジか、プリアンプはありますか?」と。

「死ぬまでに一度」のところをどう捉えるかによって、答えは少し違ってくる。
死ぬまでにもう一度自分のモノとして手に入れて聴きたいモノと、
死ぬまでに一度聴くことができればそれで満足できるモノとがあるからだ。

自分のモノとして手にいれたいアナログディスクの再生関連のオーディオ機器となると、
価格や程度のいいものが入手可能かどうか、そういうことを一切無視して、ということだと、
カートリッジはノイマンのDST(DST62よりもDSTのほうをとる)、
プレーヤーシステムはEMTの927Dstで、フォノイコライザーにはノイマンのWV2となる。

これらの程度のいいものを探し出して入手するとなると、どれだけの金額が必要になるのか、
まったく現実的ではない答えになってしまうけれど、
この時代にアナログディスクの再生に真剣に取り組むためにはこれらが必要なのではなくて、
むしろその逆で、これらのプレーヤーシステムで演奏することによって、
そのディスクに別れを告げるためにほしい、と思う。

1990年代の前半、サウンドステージの編集に短い期間ではあったけれど携わっていた。
そのときアナログプレーヤー関連のページをつくろう、ということになって、
「20世紀の恐竜」というタイトルを提案したことがある。

このタイトルは却下された。恐竜という単語が、ひっかかったためである。
タイトルは、たしか「アナログアクティヴ」になったと記憶している。

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その6)

渡辺氏は、EMT・930stについて、音が鮮明でクリアーであること、そして全体に音がしっかりしていて、
ことに低音が、ブラインドフォールドテストした7機種のなかで、いちばんしっかりしていて、
大太鼓の音がいかにも大太鼓らしく鳴っていた、と語られている。

他の6機種については、音がうすい、弦楽器がやや安手の音になる鮮明度に欠ける、
といった言葉が、共通して並んでいた。

この記事の2年前に、五味先生の「五味オーディオ教室」をくり返し読んでいた私にとって、
ここでの結果は、やっぱりそうなんだな、ということを確認することになった。

ステレオサウンド 48号には、
「プレーヤーシステムにおけるメカニズムとコンストラクションの重要性について」という、
井上先生と長島先生の対談記事も載っている。
この対談を読むと、ダイレクトドライブ型に対する不信感は、確実に増す。

48号を読んで、少なくともダイレクトドライブ型に関しては、これから先よくなっていくのであろうが、
この時点ではダイレクトドライブ型以外のプレーヤーに、
いわゆる音がよいとされるモノが集中している、そう受けとっていた。

Date: 10月 27th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その5)

指揮者の渡辺氏が、ステレオサウンド 48号のブラインドフォールドテストで、
試聴されたプレーヤーシステムは7機種。

①テクニクス/SP10MK2+EPA100+SH10B3(¥280,000)
②EMT/930st(¥1,150,000)
③ヤマハ/PX1(¥480,000)
④デンオン/DP7700(¥198,000)
⑤パイオニア/XL-A800(¥79,800)
⑥ビクター/TT101+UA7045+CL-P1D(¥198,000)
⑦ソニー/PS-X9(¥380,000)

価格は何れも1978年当時のもので、EMTの930st以外はすべてダイレクトドライブ型である。

試聴レコードは、コリン・デイヴィス指揮ボストン交響楽団によるシベリウスの交響曲第1番(フィリップス)と、
ポリーニによるショパンの前奏曲集(グラモフォン)の2枚。

渡辺氏は、どちらのレコードでも、②と⑦、つまりEMTの930stとソニーのPS-X9を、
好ましい音として選ばれた上で、
群を抜いている感じが②、930stにはあると語られている。

Date: 10月 26th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その4)

私もそうだが、ブラインドテスト、と、つい言ったり書いたりしてしまう。
けれど、ステレオサウンド 48号の目次をみると、
「特集=ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」という題と同時に、
レギュラー筆者による試聴記事には、
「プレーヤーシステムの音の良しあしをブラインドフォールドテストで聴く」という副題がついている。

ブラインドテストとブラインドフォールドテスト──。
この号の試聴に参加されているのは、井上卓也、岡俊雄、黒田恭一、瀬川冬樹の4氏で、
テスト後記で、ブラインドフォールドテストと書かれているのは岡先生だけで、
他の方はブラインドテスト、となっている。

ブラインドフォールド(blindfold)とブラインド(blind)は、
前者は目隠しをする、目をおおう、後者は盲目の、という意味であるから、
テストの内容からいって、ブラインドフォールドテストというべきである。

Date: 10月 24th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その3)

ステレオサウンド 43号が出たのは1977年6月。
この年の暮に出たステレオサウンド別冊の「コンポーネントステレオの世界 ’78」で、
瀬川先生はJBLの4343の組合せ2例のなかで、ひとつはEMTの930st、
もうひとつの、トータル価格を意識した組合せでは、ガラードの401を使われている。

記事の中で語られているのは、ダイレクトドライブ型では、
音楽の余韻を感じさせるニュアンスが薄らいでいる印象であること、
そして、少しダイレクトドライブ型不信みたいなところに陥っている、ことである。

こうやって、いくつか記事を読むにつれて、
少しずつ、ダイレクトドライブ型には、回転精度とは別の問題があるように思いはじめていた。

1978年9月発売の48号で、ステレオサウンドは、プレーヤーシステムのブラインドテストを行なっている。
オーディオ評論家によるブラインドテストだけでなく、
指揮者の渡辺暁雄氏によるブランドテストの記事も載っていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その2)

ガラード・401について、瀬川先生は、
「このモーターは音がいい。悠然とかまえて、しかも音の輪郭の明瞭で余韻が美しい」と書かれている。

さらにトーレンスのTD125MKIIBについては、こう書かれている。
「素晴らしく安定感のある音。艶のある余韻の美しさ。
音楽の表情を実によく生かすクリアーな音質。残念ながら国産DDでこういう音はまだ聴けない」

まず、このふたつの文章を読み、物理特性では圧倒的に優れているダイレクトドライブ型よりも、
音のよい、旧式のターンテーブルがあるという事実、
プレーヤーといえど性能だけでは語れない、ということを、それが文字の上だけのことで、
実体験が伴っていないにしても、オーディオに関心をもちはじめて、ごく早い時期に知ることとなった。

だからといって、ダイレクトドライブ型を完全に否定していたわけではなく、
方式としては、多くのメリットを持つわけだから、製品の完成度が高くなれば、
旧式のプレーヤーでは聴くことがかなわない、
優れた物理特性に裏づけられた音のよさを実現してくれるものだとも信じていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その1)

なぜダイレクトドライブ型のターンテーブルを信頼していない、その理由のひとつは、
まずはステレオサウンドの影響である。

私より上の世代のオーディオ好きの方たちが最初に手にされたプレーヤーシステムは、
ベルトドライブかアイドラードライブ。
それらにくらべて、1970年代にはいり登場したダイレクトドライブ型は、
ワウ・フラッターがほとんどない正確な回転精度、
それにアイドラー型では問題になっていたゴロも発生しない静粛性などの優位性をほこり、
多くのマニアの方たちが、ダイレクトドライブ方に買い替えられた(飛びつかれた人も多かったときいている)。

ところが、実際に自宅で使ってみると、それまでのベルトドライブ、アイドラードライブといった、
旧式のプレーヤーシステムの方が、音がよかったのではないか、という声があがりはじめ、
オーディオ誌においても、メーカーにおいても、ダイレクトドライブ型の再検討が行われはじめていた時期と、
ちょうどオーディオに関心をもちはじめた時期とが重なっていたことが、
ステレオサウンドの影響を大きくしたといえるかもしれない。

ステレオサウンドを読みはじめて3冊目の43号(ベストバイの特集号)では、
ガラードの401が取り上げられている。