私にとってアナログディスク再生とは(その11)
アナログプレーヤーの音を駆動方式で語るのは難しいことではあると充分判っているつもりだが、
それでもベルトドライヴ型のプレーヤーで、私が圧倒的に音がいい、というレベルをこえて凄い! と感じたのは、
やはりトーレンスのリファレンスだけである(Anna Logはまだ聴いていない)。
リファレンスは、1980年に358万円という、おそろしい価格だった。重量は約100kg。
堂々とした、その偉容に反して、モーターは、あれっ? と思うほど小型だった。
リファレンスのシャフトとその軸受けは、EMTの930stのものをそのまま流用した、と思われる。
寸法的にも見た感じも同じである(ただし資料には新開発のもの、とある)。
そのリファレンスのターンテーブル・プラッターの重量は6.6kg。930stよりも2倍以上重くなっている。
このターンテーブル・プラッターの内側には分厚いドーナツ状の合板が、鳴き止めのため打ち込まれている。
外周裾に取りつけられているストロボスコープ用のパターンは、930stのそれとまったく同じ。
930stのよりも物量を投入してつくられているリファレンスなのに、モーターに関してだけは930stの方が上だ。
リファレンスのモーターはハイトルクのシンクロナスモーターとうたっているが、
930stのモーターとの比較でははっきりと、
比較的トルクが弱いといわれていたダイレクトドライヴ型と比較しても、トルクは弱いと思う。
瀬川先生も、ステレオサウンド 56号に書かれているが、
「レコードをのせてプリーナーを押しあてると、回転が停ってしまう」くらいの弱さである。
358万円もするプレーヤーなのに、こんなところでケチることないのに……、1980年の私は思っていた。