Date: 7月 12th, 2011
Cate: アナログディスク再生
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私にとってアナログディスク再生とは(その17)

ステレオサウンド 58号に、瀬川先生によるトーレンス・リファレンスとEMT・927Dstの比較試聴記が載っている。
そこで、
ヴァイオリンは「リファレンス」、チェロは927……などと思わず口走りたくなるような気さえする、
と書かれている。

私が感じているベルトドライヴとリムドライヴ、駆動方式による本質的な音の違いも、
まさにこのとおりである。
930st、927Dstなどのリムドライヴでは、ヴァイオリンよりもチェロの方が魅力的に響く。
同じ弦楽器でも、ヴァイオリンとチェロでは大きさが違い、
ヴァイオリンは演奏者が肩に乗せて弾く、チェロはエンドピンによって床に立てて弾く。
このことに起因する音の違いが、ベルトドライヴ、リムドライヴにもある、と感じている。

チェロではエンドピンを交換すると、ずいぶん音が変る、と聞いている。
材質もいくつかの種類がある。
つまりエンドピンによってチェロが発生している振動は床に伝わっている、と考えるべきだろう。
床もチェロという楽器の振動系の一部となる。
だからチェロの振動を床に伝えることになるエンドピンの交換によって響きが変化する。

もしチェロにエンドピンがなかったら、いったいどういう音になってしまうのだろうか。
チェロを再生するときには、だからなのか、実在感が、ヴァイオリンのソロ以上に求めてしまうところがある。
エンドピンによって床に固定され、朗々と響くチェロは、
高トルクのモーターを使ったリムドライヴの優秀なプレーヤーのほうが、すくっと目の前に音像が立ち実在感がある。

低トルク・モーターのベルトドライヴでもチェロの響きは美しい。
でもどこか実在感が、ほんのわずかとはいえ、リムドライヴのプレーヤーと比較すると弱い。
がっしりと床にエンドピンで固定されている感じが薄れる、
というか、エンドピンが細く頼りないものに交換されたような、とでもいおうか、そんな印象を拭えない。

もちろんベルトドライヴだけを聴いていたら、そんなふうには思わないはず。
でも927Dstの音を聴いてしまっている耳には、トーレンスのリファレンスでも、
チェロに関しては不満とまではいかないまでも、
チェロは927……と口走りたくなるという瀬川先生の気持は心情的に理解できる。

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