私にとってアナログディスク再生とは(その20)
ノイマンのDSTに、エンパイアの4000D/III……、
どちらも旧製品ではないか、現行製品にはないのか、と思われる人もいるだろうな、と思いながらも、
それでも思い浮んできたのは、このふたつの旧製品のカートリッジだった。
現行製品で使ってみたいカートリッジがないわけではない。
数は少ないけれどある。
けれど、ステレオサウンドのベストバリュー(以前のベストバイ)に選ばれているカートリッジの中にはない。
177号に載っているカートリッジは写真付きコメント付きで紹介されているのが12機種。
ブランドと型番、価格、それに点数だけが載っているのが17機種。
これらの価格を眺めていると、わかっていることとはいえ、
改めて50万円超えのカートリッジが複数機種あるのには、なんともいえない感情を抱いてしまう。
そうかと思えば、デンオン(いまはデノンなのはわかっいても、やっぱりデンオン)のDL103R、DL-A100、
オーディオテクニカのAT-OC9/III、AT33PTG/IIに対する感情は、以前とは違ったものになってくる。
カートリッジの市場規模を考えれば、以前と較べて価格が上昇してしまうことは理解できる。
理解はできる、と書いたものの、それにはやはり限度というものが、それぞれ受け取る側にある。
限度は人によって違う。だから50万円のカートリッジをあたりまえのこととして受けとめる人がいるし、
疑問に思う人もいて、当然のことだ。
物価も変動している。だから以前と較べて、どのくらいがカートリッジの適正価格なのかを決めるのは困難だし、
無理なことなのかもしれない。
それでもひとつの目安として、デンオンのDL103Rの価格は33,000円(税込み)。
このDL103RはDL103をベースにしていて、変更点は発電コイルの線材を6N銅線にしただけである。
つまり以前のDL103とほぼ同じモノといえる。
1977年当時、DL103は19,000円していた。
33年経ち、約1.73倍の価格になっている。以前は消費税はなかったから税抜きの価格では約1.65倍。
大ざっぱに言って、30数年前のカートリッジの価格は、
いま1.6倍から2倍程度には上昇しているとみていいように思うし、それが目安となるだろう。