Archive for category アナログディスク再生

Date: 12月 3rd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その15)

アナログプレーヤーは、他のオーディオ機器とは違う。
それはデザインにおいて、決定的に違うところがある。

オーディオ機器のデザイン、
アナログプレーヤーのデザイン、CDプレーヤーのデザイン、チューナーのデザイン、
カセットデッキのデザイン、オープンリールデッキのデザイン、
コントロールアンプのデザイン、パワーアンプのデザイン、スピーカーシステムのデザイン、
これらのなかでアナログプレーヤーのデザインだけが、特別に違うのは、
アナログプレーヤーのデザインはアナログプレーヤーだけでは完結しない、ということと、
アナログプレーヤーにおける「主」は、ターンテーブルプラッター、トーンアーム、カートリッジなどではなく、
LP(アナログディスク)だという点にある。

コントロールアンプにはコントロールアンプのデザインの難しさ、
パワーアンプにはパワーアンプのデザインの難しさ、
スピーカーシステムにはスピーカーシステムのデザインの難しさがあるわけだが、
それでもアンプにしてもスピーカーにしても、
(部屋との調和、他の機器との調和という問題はあるにせよ)単体で完結している。

プログラムソースとなるオーディオ機器、
カセットデッキ、オープンリールデッキ、CDプレーヤーもアナログプレーヤー同様、
メディアをセットするオーディオ機器であるわけだが、
カセットデッキ、CDプレーヤーはメディアの大きさと機器との大きさが違いすぎるし、
カセットテープもCDも基本的には本体中にセットされ、
CDはほとんど見えない状態で、カセットテープも一部が外から見える程度である。

オープンリールデッキは、CD、カセットテープに比べればずっと大きいわけだが、
オープンリールデッキのデザインは、すでにリール込みのものである。
そのリールもデッキ本体と同じ金属製である。

アナログプレーヤーでは直径がLPでは30cmあり、
その材質は塩化ビニールであり、金属ではない。
艶のある漆黒の円盤がアナログディスクであり、しかも表面には溝が刻んである。
そこに音楽が刻まれていることが視覚的に確認できる。

テープにも音楽が記録されているわけだが、人間の目にはテープ表面の磁性体の変化を捉えることは出来ない。
録音されているテープとそうでないテープを目で判別は出来ない。

そういうアナログディスクを、ほぼ中央にセットして回転させるのがアナログプレーヤーであり、
アナログプレーヤーシステムを構成するのは、
ターンテーブル、トーンアーム、カートリッジ、プレーヤーキャビネットなどだけでなく、
アナログディスクがあって、はじめてプレーヤーシステムとして構成されることを、
気づいていないメーカー、それを忘れてしまったメーカーがつくるプレーヤーで、
アナログディスクを再生したいと思うだろうか。

マイクロはSZ1において、このことを忘れてしまったとしか思えないのだ。
だからSZ1を私は認めない。

Date: 12月 3rd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その14)

マイクロのターンテーブルにXがつくモデルは、
ダイレクトドライヴ型では、あの有名なDDX1000(DQX1000)がある。

おそらくターンテーブルプラッターのみだけという印象を与える構成のモデルに、
マイクロはXの型番をつけているのだと思う。
RX5000、RX3000、SX8000も、だからXが型番につく。

SZ1は、Xがつくモデルとは異り、一般的なプレーヤーと同じシルエット、
つまりベースがRX5000、SX8000よりもぐんと拡がっていることもあって、
SX1ではなく、SZ1という型番となったのだろう。

と同時にマイクロにとって、その当時の、もてる技術をすべて注ぎ込んで開発した、
いわばマイクロにとってのフラッグシップモデルでもあったわけで、
その意味も込めて、アルファベットの最後の文字であるZを型番に使っている、といわれている。

SZ1が登場したとき、私はすでにステレオサウンドにいた。
SZ1には、実を言うと、すごく期待していた。
SX8000をこえるモデルを、マイクロが開発した。
これだけでもわくわくして、SZ1の到着をまっていた。

SZ1の個々のパーツは木枠にはいって届いた。
そういう重量の製品であることが、梱包の状態からでも伝わってくる。
重量のあるプレーヤーが、必ずしもいい音を出してくれるわけではない。
そんなことはわかっていても、
やはり物量を投入しないと、どうしても出せない音があるのも同時にわかっている。

トーレンスのリファレンスをこえるアナログプレーヤーが、
日本の製品として登場してくれるのかも、とも期待していたことを思い出す。

木枠が開けられ、パーツが取り出され組み立てられていくSZ1を見て、
期待は完全に失望へと変っていた。

アナログプレーヤーは、基本メカニズムであり、
だからこそ精度が重要であることは理屈として正しい。
その精度の高さを実現しているのがSZ1なのもわかる。
けれど、なぜここまで冷たい雰囲気を漂わせなければ成らないのか。

RX5000、SX8000よりも大きくなったベース。
それだけに色、仕上げ、質感は、より大きなウェイトをもつことになるのは誰にでもわかることだ。
なのに、この色、この仕上げ、この冷たさ……。

SZ1の音のことについては書いていない。
実は、ほとんど印象に残っていないからだ。

たしかにステレオサウンドの試聴室で聴いた。
それは短い時間ではなかった。
でも記憶に残っていない。

Date: 12月 3rd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その13)

この項のタイトルにはあえて「私にとって」とつけている。

今年でCDが誕生して30年、
そのあいだにDVD-Audioも出てきて、SACDも登場してきた。
デジタルといっても、30年前はPCMのみだったのが、いまではDSDもある。
そしてCDはそろそろ消えていきそうな気配をただよわせている。

デジタルのメリットを活かした供給方法は、
インターネットによるオンラインであることは間違いないだろう。

30年前、身の廻りにあるものデジタルといえば、CDぐらいだった。
それがいまや電話もカメラもテレビも、いたるところにデジタルが、いまやふつうのものとして存在している。

そういう時代に、アナログディスクを再生することは、どういうことなのか、
と特に考えているわけではない。
ただ好きなように、アナログディスクだけは再生してみたい、という気持がつよい。

人さまからどういわれようと、やりたいことをやれる範囲内で好き勝手にやって楽しみたい、
そう思わせる時代になってきていると、私は感じている。

だからいままで言わなかったこと、書かなかったことも、
ことアナログディスク再生については、書いていこうと思っている。

昨晩書いたように、私はマイクロのSZ1をまったく認めていない。
もっと書けば、このターンテーブルを絶賛する人は、
その人が一アマチュアであればなにもいわないけれど、
オーディオを仕事としている人(オーディオ評論家と名乗っている人)が、
SZ1をマイクロの最高傑作だとか、
マイクロのフラッグシップモデルとしてふさわしい内容と音をもつとか、
そんなことを言ったり書いたりしていたら、私はその人の感性を、
その人の発言をまったく信用しない。

私は、そのぐらい、LPをSZ1で聴きたいとは思っていない。

Date: 12月 2nd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その12)

RX5000 + RY5500が得た高い評価は、
マイクロ以外のガレージメーカーからも、類似の製品が少なからず出たことからもわかる。

後発のターンテーブルは、RX5000よりも重いターンテーブルプラッターを採用したりしていた。
ただ、どれもステレオサウンドに載った広告をみるかぎり、
決して完成度の高い、とはいえないRX5000が、完成度の点では上に思えるものばかりだった。

マイクロのSZ1は、それらを蹴散らす意図もあったのかもしれない、
それからプレーヤーシステムとして完成させようとしていたのだとも思える。

SZ1が、RX5000、SX8000、RX1500となにが大きく異るかといえば、ベースである。
RX5000、SX8000、RX1500、これらはどれもベースの大きさはレコードジャケットサイズとほほ同じである。
だからアームベースは、どのアームベースを使ってもベースからはみ出るような形でつく。

このことが良くも悪くも石臼的な姿につながっているし、
使い勝手の悪さの元にもなっている。
馴れないとカートリッジの上げ下げに不安をおぼえる人もいたと思う。

通常のプレーヤーだと手のひらの小指側の側面をベースにのせてカートリッジの操作ができるのに、
RX5000ではベースに、手を乗せるスペースがほとんどない。
だから実際に使用にあたっては、小指をのばしてベースにふれるようにするか、
右手の下に左手置いて、という使い方になってしまう。

SZ1は、マイクロの最高のプレーヤーとして登場した。
物量はRX5000、SX8000以上に投入し、それまで培ってきた技術はもちろん、
プレーヤーシステムとして使い勝手に関しても考慮して、
SZ1のシルエットは、通常のプレーヤーと同じになっている。

このこと自体は、とくに悪いことだとは思わない。
けれどSZ1は、プレーヤーシステムはLPというアナログディスクを再生する機器であることを、
その長いキャリアのどこかに忘れてきてしまったのではないか、
そういう印象を見た人に、そして触ってみると、そのことを確信できてしまうほど、
冷たく無機的で、これでアナログディスクを聴きたいとは思わせない、
私にとってはそういうアナログプレーヤーでしかない。

Date: 12月 2nd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その11)

音のことだけで比較すれば、SX8000の方がRX5000よりも、いい。
音の滑らかさということに関しては、特にSX8000がいい。

まだステレオサウンドの読者で、写真の上でRX5000とSX8000を比較していたころは、
どちらも決していいデザインではないけれど、SX8000(青色ベースに関して)のほうが、
まだ良く見えていた。

それが実際に自分で自分の部屋で、SMEの3012-Rとの組合せで使ってみると、
RX5000の色合い、脚部、アームベース取付用の四隅の円柱の仕上げが好ましく感じられる。

マイクロは、この糸ドライヴシステムが思いの外ヒットしたことで、
RX1500シリーズも出す。

RX5000が出た時に、ローコスト版のRX3000 + RY3300もあった。
そう悪くはなかったはずなのに、こちらはあまり話題にならなかった、と記憶している。

RX1500はRX3000の後継機であり、外観的にもRX5000のジュニアモデルともいえる。

RX1500は細部にデザイナーの手がはいっている。
そんな感じを強く受ける。
RX5000は社内での実験機をそのまま製品化したという感じを残しているモデルであり、
SX8000、RX1500と、少しずつ製品として仕上げられている、ともいえるのだが、
それが結果として好ましいかどうかは──、
すくなくとも私にとってはあまりいい方向には進んでいないように感じていた。

マイクロのアナログプレーヤーの専業メーカーといっていい会社である。
数多くのプレーヤーに関係する製品を開発してきている。
けれどプレーヤーシステムということに関して、
素晴らしい、と素直に思える製品を出していない、アナログプレーヤーの専業メーカーでもある。

RX5000以降の糸ドライヴ(途中からベルトドライヴになる)によって、
音に関しては高い評価を得るようになったマイクロだが、
プレーヤーシステムづくりのまずさはひきずったままで、
そのことが盛大にでてしまったモデルが、SZ1だと私はみている。

Date: 12月 2nd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その10)

マイクロのRX5000とSMEの3012-Rの組合せは、
私にとって、プレーヤーシステムのデザインについて見つめ直すいいきっかけとなった。

RX5000は音の面で評判になっていた。
瀬川先生はRX5000を二台用意して二連ドライヴも試されている。
私は、この二連ドライヴの音は聴いたことがないが、いいんだろうな、とは想像できる。
けれど音のことだけでなく、プレーヤーシステムとしてのデザインを求めていくと、
二連ドライヴは大袈裟すぎて、RX5000の視覚的メリットを損なうことにもなる。

割と気に入っていたRX5000だが、欠点がないわけではない。
調整が面倒なのは、私はそれほどの欠点とは思っていないけれど、
RX5000の欠点は、耐久性にある。

砲金製のターンテーブルプラッターの重量は16kg。
軸受けが長期間の使用には耐えられない。
それに軸受けから、直接耳に聴こえるわけではないのだが、ノイズが発生していることもわかっていた。

だからマイクロは空気の力を借りてターンテーブルプラッターを浮上させ、
軸受けへの負担をなくしたSX8000を開発している。

SX80000の基本的な形はRX5000と同じだが、
ターンテーブルプラッターの材質がステンレスに変更され、
ベースの色も黒からブルーになっている。
黒も用意されてはいたのだが、私は目にしたSX8000はすべて青だったため、
SX8000イコール青の印象が強い。

それから脚部の仕上げ、トーンアームーベースを取り付ける四隅の円柱の仕上げも、
RX5000とSX8000では異る。
SX8000ではターンテーブルプラッターと同じ仕上げで、ステンレス特有のてかりがある。

機構面での変更は大きいものの、見た目の変更はわずかこれだけにもかかわらず、
ターンテーブルを縁の下の力持ちとして位置において、
RX5000とSX8000のそれぞれの位置は違ってきていると感じる。

RX5000の石臼的な存在感が影をひそめ、
ターンテーブル自体がアナログ再生の主役である、ということを、自己主張しはじめてきた。

Date: 12月 1st, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その9)

LPは、一部例外的にピンク、白などのディスクもあったけれど、
黒、それも艶のある黒のディスクである。

そのディスクをカートリッジがトレースするわけだが、
トレースしていくためにはトーンアームが必要であり、
レコード、カートリッジ、トーンアーム、
この三つが、アナログディスク再生では動きを表している。

ターンテーブルプラッターももちろん回転しているわけだが、
精度が高く静かに回転しているターンテーブルほど、
それは静止しているようにも見える。

レコードには溝が刻んであるし、中心はレーベルがあり、
どんなにターンテーブルプラッターがわずかなブレもなく静かに回転していても、
レコードが回転していることは、すぐに判別できる。

カートリッジはレコードの外周から内側に向けて、これもまた静かに移動していく。
その移動もトーンアームが弧を描きながら支えている。

レコードに反りがあれば、カートリッジ、トーンアームの動きに上下方向が加わる。
ふわっ、とほんのすこし上昇したかと思えば、すぐにさがり静かに、何事もなかったかようにトレースを続けていく。

こういう場面を頭のなかで描いてみてほしい。
そのときのターンテーブルは、意外にも、というか、当然というか、
マイクロのRX5000と同じような姿をしているのではなかろうか。

RX5000は、ターンテーブルプラッターは砲金製で金色、厚みもけっこうある。
このターンテーブルプラッターを支えるベースは必要最少限の大きさの正方形で、
四隅をカットしている。色は黒。

RX5000の外形寸法はW31.2×H13.2×D31.2cmで、
LPのジャケットサイズとほぼ等しい。

プレーヤーを明るく照らすのではなく、ほのかに照らしたような使い方だと、
ベースの部分は影に埋もれていく。
本金の金色もギラつくわけではない。
視覚的にはレコード、カートリッジ、トーンアームだけが浮び上ってくる。

ターンテーブルのRX5000は、文字通りの縁の下の力持ち的存在でいることを、
自分で使ってみてはじめて知ることとなった。
SMEの3012-Rの優美さを際立たせてくれた。

Date: 11月 30th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その8)

SME・3012-Rを取り付けるターンテーブル選びは、
ステレオサウンド 58号の瀬川先生の記事を読んだ時から、ずっと考え続けていたことである。
     *
どのレコードも、実にうまいこと鳴ってくれる。嬉しくなってくる。酒の出てこないのが口惜しいくらい、テストという雰囲気ではなくなっている。ペギー・リーとジョージ・シアリングの1959年のライヴ(ビューティ・アンド・ザ・ビート)が、こんなにたっぷりと、豊かに鳴るのがふしぎに思われてくる。レコードの途中で思わず私が「お、これがレヴィンソンのアンプの音だと思えるか!」と叫ぶ。レヴィンソンといい、JBLといい、こんなに暖かく豊かでリッチな面を持っていたことを、SMEとマイクロの組合せが教えてくれたことになる。
     *
ここのところう読んだ直後、というか、読みながら、すでに3012-Rを買う! と決心していた。
その決心と同時に、ターンテーブルは何にしようか、と考えていたわけだから、
ほぼ1年、頭のなかであれこれシミュレーションしていて、
すでに書いたようにマイクロのRX5000 + RY5500にしたわけだ。

RX5000 + RY5500はトーンアームをセットした状態でも、
プレーヤーシステムとは呼べない性格のプレーヤーである。
プレーヤーシステムではなく、プレーヤーを構成するパーツを売っているようなもので、
プレーヤーモジュールと呼ぶべきかもしれない。

デザインに関しても、洗練されているとはお世辞にもいえない。
はっきりいって武骨である。3012-Rの優美さとは似合わない、と最初は思っていた。

けれど、そんな頭のなかだけのシミュレーションと実際は違うわけで、
それはこの項の余談でも書いているように、
自転車のフレームを単体で見ていたときと自転車として組み上げた時とで、
そのフレームに対する印象がまるっきり変ってしまうのと同じことを、体験していた。

Date: 11月 28th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・余談)

アナログプレーヤーのデザインのことについて書いていて浮んでくることは、
自転車のことである。

自転車もアナログプレーヤーと同じところをもっている。
自転車を構成するものは、大きくわければ3つある。
まずはフレーム、リム、タイヤ、スポークを含めたホイール,
そしてそれ以外のパーツ、
つまりブレーキ、フロント・リアディレイラー(変速機)、クランク、チェーンなどのコンポーネントパーツ。

この3つの構成要素のなかで、もっとも大きく、自転車のデザインを大きく左右するのはフレームだと思い、
1995年、ロードバイクを買おう、としたときに、まず決めたのは当然フレームだった。

オーディオへの取組みと自転車への取組みは若干違うところがある。
自転車はプロの選手になろうんて考えていたわけでもないし、
アマチュアとしても速い選手になりたかったわけでもない。
自転車という趣味を、ひとりでただ楽しみたかった。

そのためには性能の優れた自転車であってもデザインが気に入らなければ買いたい、とは思わず、
逆にデザインが気に入れば、最高の性能を持っていなくてもいい──、
それが私の、そのときの自転車の選び方であり、
とにかく気に入ったフレームで、自分に合うサイズが見つかったら、それで組もうとしていた。

自転車の専門店に行けば、吊し、とよばれる、フレームだけが単体で展示してある。
フレームだけの状態でみていると、イタリアのチネリはカッコイイ。

1995年はスーパーコルサだけでなく、チノ・チネリの復刻フレームが残っていた。
サイズも合うのが見つかった。やっぱりチネリだな、と思っていたし、
チネリとともにイタリアを代表する老舗のフレーム・ビルダーであるデ・ローザは、いかにも武骨だった。

仕上げもチネリの方がいい。フロントフォークの肩の部分が、チネリはなだらかなカーヴを描いているが、
デ・ローザは昔の自転車のフロントフォークのように、肩の部分が水平であり、
チネリに感じられるスマートさが、まったく感じられない。

色も私が見たのは、オレンジ色のデ・ローザだった。
デ・ローザがいいフレームであることは知ってはいたけれど、
デ・ローザにすることはないな、と思い、
チネリを第一候補として、次はどの自転車店で購入するかを決めるために、いくつもの店をまわった。

そうやって結局最初に行った浜松町にあるシミズサイクルで購入することにして、ふたたび向った。

デ・ローザのオレンジ色のフレームを見たのは、このシミズサイクルだった。
二度目のシミズサイクルで見たのは、完成されていたデ・ローザのオレンジ色の自転車だった。

フレーム単体で見ているときと、完成車で見ているときとでは、こうも印象が変ってくるものか。
そのことを実感しながら、フレーム単体で見ていたときには候補から外していたデ・ローザに決めてしまった。

フレーム単体では武骨な見え、欠点のように思えていたところが、
完成されると、そこが力強さを感じさせる長所へと変っていることに気づかされる。

フレーム単体では、雑な仕上げにみえる塗装も完成されてしまうと、
映える印象へとうつっていく。
オレンジ色のフレームなんて、と思っていたのが、いかにもイタリアらしい、とさえ思ってしまうほど、
印象が変る。

アナログプレーヤーもシステムであるのと同じように、
自転車もシステムであることを一瞬にして実感・理解できた。

Date: 11月 27th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その7)

ガラード301、401とトーレンスTD124の違いは、
トーレンスには専用キャビネットが用意されていた、ということもある。
TD124を専用キャビネットにおさめた姿は、昔も今も見ていると欲しくなる魅力を放っている。
トーンアームが3012-Rというロングアームでなければ、
TD124にしてしまいたい、とすら思ってしまうほど、いいプレーヤーだと思う。

でも、そうするとトーンアームは限られてしまう。
TD124と専用キャビネットの組合せによく似合うのはSMEの3009、
それともEMTの929ぐらいである。

これはこれで私にとって魅力的なプレーヤーシステムとなるけれど、
3012-Rを中心にプレーヤーシステムの構築を考えていたのは、
一にも二にも、ステレオサウンド 58号での新製品紹介の頁での瀬川先生の書かれた文章を読んだからであり、
この文章が頭から切り離すことができなかったわけだから、
私にとって、この時期のプレーヤーシステムは、3012-Rがつねに中心にあった。

散々あれこれ迷って、結局何を選んだかは、
これも以前書いているから憶えておられる方もいるだろう、マイクロのRX5000 + RY5500だった。

できれば瀬川先生が3012-Rの試聴をされたときのターンテーブル、
同じマイクロのSX8000にしたかったのだが、それを買えるほどの余裕はなかった。
RX5000も中古で、かなり安く購入したものである。

はっきり書けば、SX8000(のちのSX8000IIではなく初代のモデルで、ベースが青色)にしても、
RX5000にしても、3012-Rのデザインと肩を並べるモノではない。
だから、正直、これか(RX5000)という気持を持ちながらの購入だった。

とはいえ、オーディオマニアゆえ、自宅にRX5000とRY5500が届いたときは、
これでやっと3012-Rを箱から取り出して、トーンアームとして機能させられる、と喜び、
その取付け作業は、楽しかった。

RX5000のベースを設置、砲金製のターンテーブルをそこにのせる、
それからトーンアームベースを仮止めして、3012-Rの取付けテンプレートで向きをきっちりと決める。
3012-Rをベースに取り付けたら、カートリッジもセットしてオーバーハングの調整。
モーターのRY5500もセットする。

このころはSX8000が登場していたおかげで糸ではなく、専用のベルトが登場していた。
砲金製のターンテーブルプラッターの周囲をきれいにクリーニングしてベルトをかける。
そしてRY5500の位置を、このあたりかな、というところでとりあえず決めて……、
こんな作業を、はやる気持を静めながら行っていたことを、思い出していた。

Date: 11月 26th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その6)

1970年代のステレオサウンドには「オーディオの名器にみるクラフトマンシップの粋」という連載記事があった。
39号ではガラード301とともに、トーレンスのTD124、TD224が取り上げられている。

「クラフトマンシップの粋」でターンテーブル、プレーヤーが取り上げられたのはこの時だけで、
ガラードだけでもなく、トーレンスだけでもなく、
ガラードとトーレンスがいっしょに取り上げられているところに、
ガラードとトーレンスの日本のオーディオ界におけるポジションをとらえている。

「クラフトマンシップの粋」の記事構成はカラーグラビアが4頁あり、
それから岩崎千明、長島達夫、山中敬三の三氏による鼎談である。

カラーグラビアの見開きでは右頁にガラード301、左頁にトーレンスTD124/IIが並んで撮られている。
301とTD124、このふたつのターンテーブルのデザインを見比べてすぐに気がつくのは、
TD124はトーンアームベースを含めてデザインされて、製品としてまとめられている。
301はあくまでもターンテーブル単体としてのデザインである。

この違いがプレーヤーシステムとしてまとめられたときのデザインの違い、完成度の違いになってあらわれる。

私はガラードの301よりも401に惹かれ、
401よりもトーレンスのTD124に惹かれる。
それはなんども書いているようにプレーヤーシステムとしてのまとまりのよさがTD124には、
はっきりと感じられるからだ。

トーレンスはプレーヤーシステムとして完成度を考えてのデザインであり、
ガラードにはプレーヤーシステムとしてのデザインという考えが、私にはどうしてもみえてこない。

ガラードは301、401で、どんなプレーヤーシステムを目ざしていたのか。
ガラードからもプレーヤーシステムは登場している。
でもそれらは301、401をベースにしたものではない。

ガラードの顔といえるのは、301であり401である。
なのに、その顔をベースにしたプレーヤーシステムがないし、その姿をイメージできない以上、
ガラードの301、401をトーレンスのTD124を比較することは、
プレーヤーシステムということを念頭におくかぎりは無理なことである。

Date: 11月 24th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その5)

ステレオサウンド 48号の表紙は、EMTの930stを真上から撮っている。
これを見るたびに、プレーヤーシステムとは、930stのことをいうものだと思っていた。

930stが高い評価を得ているのも、ステレオサウンド 48号の表紙を見れば、すぐに納得がいく。
48号は1978年発行、私はまだ15歳、930stは115万円だった。

その3年後、3012-Rを購入したときでも、アナログプレーヤーに100万円を出すことはできなかった。
9万円弱の3012-Rだって、分割払いでなんとか買っていたのだから。

それでも48号の930stの姿は、強烈だった。
930stの写真はそれ以前にも何度も見ている。
でも、48号の表紙(安齊吉三郎氏の撮影)ほど、
930stの、プレーヤーシステムとしての完成度の高さを伝えてくれる写真はなかった。

実は、いまもこれを書きながら、ステレオサウンド 48号の表紙を横目で見ている。
いい写真であり、いいプレーヤーシステムだ、と改めて実感している。

930stよりも音の点で上をいくプレーヤーはいくつかある。
でも、それらはプレーヤーシステムとして930stの上にある、とはいえないプレーヤーである。

世の中にアナログプレーヤーは、それこそ無数といっていいほどある。
けれどプレーヤーシステムとほんとうに呼べるアナログプレーヤーとなると、
その数はほんとうに少ない。しかも優れたプレーヤーシステムとなると、さらに少なくなる。

3012-Rとともに使うターンテーブル選びに悩んでいたときに気づかされたのは、
私が求めているのはプレーヤーシステムであり、
そのころの私には単体のターンテーブル、トーンアームを買ってきて、
キャビネットを自分で考え作り、プレーヤーシステムとしてまとめあげるだけのものは持っていなかった、
ということである。

そしてアナログプレーヤーのデザインは、
オーディオ機器のなかでもっとも難しいのではないか、と感じていた。

Date: 11月 24th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その4)

別項「使いこなしのこと」のところで、
SMEの3012-Rに見合うターンテーブル選びであれこれ迷ったことを書いている。

ガラードの401、301も候補として考えていた。
でも3012-Rはロングアームで、そうなるとプレーヤーキャビネットは、それなりの大きさになる。
するとどうにも3012-Rにしても301、401にしても単体で眺めているときに感じたデザインの良さが、
色褪せてしまう。

401と3012-R(301と3012-R)の組合せを、
プレーヤーシステムとしてうまくまとめあげることが、当時の私にはなかった。

いまなら、当時よりはずっとうまくまとめる自信はある。
あるけれど、それでもプレーヤーシステムとして優れたデザインでまとめられるかというと、
実際の使用面でのいくつかの問題をどう解消するかを含めて、満足できる答を見つけてはいない。

あのころはプレーヤーキャビネットの自作記事も、オーディオ雑誌には載っていた。
オーディオマニアの訪問記でもガラードが登場することはあって、
どんなキャビネットにおさめられているのかを見る機会もあった。
ステレオサウンド 48号でのアナログプレーヤーのブラインドテストにガラード301が登場している。
トーンアームはフィデリティ・リサーチのFR66S。

ロングアームだから、この組合せは、3012-Rとのターンテーブル選びのときに実物を見てみたい、
と思っていたら、あっさり見ることができた。
ステレオサウンドで働いていたおかげである。

丁寧につくられていたキャビネットだった。
それでも全体として、プレーヤーシステムとしてのまとまりに満足できなかった。
それに大きい。個人的にどうしても許せない大きさになってしまうことが、
ガラードを結局選ばなかったいちばんの理由である。

Date: 11月 24th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その3)

ガラードの401でプレーヤーシステムを組んだとしても、それほど高価になるわけではない。
当時10数万円で購入できるプレーヤーシステムよりも、音については満足のいくものになったといえる。

でも、私は不満があった。
価格や音のことではなく、プレーヤーシステムとしてのデザインのことで不満があった。

当時国内メーカーから出ていたプレーヤーシステムのデザインがどれも優れていたとはいわない。
でも、まだまとまりは感じられた。
ガラードの401を、当時はプレーヤーキャビネットも数社から発売されていたから、
それらを組み合わせればプレーヤーキャビネットを自作する必要はなく、
401をプレーヤーシステムとまとめられた。

けれど、でもプレーヤーシステムとしてのまとまりがよくない。
プレーヤーキャビネットほぼ中心に401があります、その右側にトーンアームがあります、
そんなただ指定された位置にそれぞれのパーツが配置されているだけ、
といった印象を拭えない、バラバラ感があった。

その点、ターンテーブル単体を発売していたテクニクス、ビクター、デンオンなどは、
専用キャビネットを用意していて、それが音質的にもっとも優れていたかはおいておくとしても、
専用キャビネットに取り付けた状態でのおさまりの良さは、まだあった。

ガラードの401のデザインは、どうしても旧型の301と比較して語られることが多く、
301の評価のほうが高い、といえる。

401は301とくらべると、造りが安っぽく感じられるところがある。
それが気になるといえば気になってしまうのだが、401のデザインは悪くないどころか、
いいデザインだと思うし、301と401、どちらが欲しいかとなると、401を私はとる。

でも、それでどういうプレーヤーシステムとしてまとめるかとなると、難しい。
401でも、301でも難しい。

Date: 11月 23rd, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その2)

人は生れてくる時代を選べないから、生れてきた時代をいい時代と思うようになっているのかもしれない。
そう思い込みたいのかもしれない。

たとえそうであってもアナログディスク再生ということに関していえば、
私が生れた時代(1963年)は、まだよかった、といえる。

いくつもの製品、いくつもの試みを実際にみて触れて、聴くことができたからだ。
じつにいろんなアナログプレーヤーがあった、と振り返って思う。

私がオーディオに関心をもちはじめて、ステレオサウンドを読みはじめたころ(1976年)は、
アナログプレーヤーはダイレクトドライヴ型が全盛の時だった。
それでも、ベルトドライヴ型のトーレンスのTD125、リンのLP12、デュアルの124、エンパイア698があったし、
アイドラー型も、EMT・930st、927Dstがまだ現役だったし、ガラードの401もまだ残っていた。

数は少なかったけれど、これらのプレーヤーが現役だったのは、
性能面ではダイレクトドライヴ型には及ばないものの、音質面ではそうでなかったからである。

ガラードの401については、瀬川先生がステレオサウンド 43号で、こんなことを書かれている。
     *
ワフ・フラッターなど、最近の国産DDと比較すると極めて悪いかに(数値上は)みえる。キャビネットの質量をできるだけ増して、取付けに工夫しないとゴロも出る。
     *
ダイレクトドライヴ型ならばゴロなんて発生する製品は皆無である。
なのにガラード401はターンテーブル単体で49800円(これだけ出せば国産のプレーヤーシステムが購入できた)。
これをキャビネットに取付けて、しかも専用キャビネットは販売されていなかったから、
自分で設計し作るか、市販のプレーヤーキャビネットを買ってこなければならない。
それにトーンアームも当然必要で、そうすると100000円は軽くこえてしまう。

それでもゴロの発生を完璧に抑えられるかどうかは保証されないのだ。
そんなターンテーブルである401が、ベストバイとして選ばれている。