私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その17)
EMT・927Dst、トーレンスのリファレンス、
このふたつのプレーヤーシステムの音に関しては、EMTのカートリッジTSD15とかたく結びついている。
927DstはTSD15を前提としたプレーヤーであるから当然として、
トーレンスのリファレンスも最初に聴いたときがTSD15とトーンアームもEMTの929だった。
リファレンスには最大3本のトーンアームを装着できる。
TSD15 + 929は標準装備でもあったようだ。
リファレンスはステレオサウンド試聴室で一時期リファレンスプレーヤーとして使われていたことがある。
そのときに、いくつかのカートリッジを聴く機会を得たわけだが、
私にとってリファレンスの音は、
最初に聴いた時から、いまもそしてこれから先もずっとTSD15との音である。
TSD15と切り離して考えることはできないわけだ。
マイクロのSX8000IIも、ステレオサウンド試聴室のリファレンスプレーヤーであった。
私がステレオサウンドにいたまる7年間で、もっとも長くリファレンスプレーヤーとして使われていたのが、
SX8000IIとSMEの3012-R Proの組合せである。
この組合せからなるプレーヤーで、いくつもカートリッジを聴いてきた。
リファレンスプレーヤーとして、この組合せはあったけれど、
リファレンスカートリッジは、なにかひとつに決っていたわけではない。
オルトフォンのSPU-Goldがリファレンスの場合もあり、トーレンスのMCHIIのときもあり、
他のカートリッジがリファレンスのときもあった。
人により、時によりリファレンスカートリッジはその都度違っていた。
だからなのかもしれない、SX8000IIに3012-R Proの音をいいと感じてはいたものの、
その音は、ある特定のカートリッジと結びついていたわけではない。
この点が、SX8000IIにSMEのSeries Vを組み合わせた時と大きく異る。
私にとってSX8000II + Series Vの音は、オルトフォンのSPU-Goldとの組合せである。
最初に聴いたのがSPUだったことも大きく関係している、とおもう。
それでもその後、いくつもカートリッジをSeries Vに取り付けては聴いている。
Series Vに取り付けて、およそいい音で鳴らないカートリッジはなかった。
もしSeries Vでいい音で鳴らないカートリッジがあるのならば、
そのカートリッジはどこかおかしいのか、そうでなければSeries Vの調整が狂っている、
そう判断してもいいと断言できるくらいに、Series Vの音は、あの時もいまもこれに匹敵するものはない。
それでもSPUでの音は格別だった。
ずっとEMTで聴いてきた私だけに、
よけいにSX8000II + Series V + SPU-Goldの音は、より克明に記憶に刻まれているのだ、と思う。