私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その14)
マイクロのターンテーブルにXがつくモデルは、
ダイレクトドライヴ型では、あの有名なDDX1000(DQX1000)がある。
おそらくターンテーブルプラッターのみだけという印象を与える構成のモデルに、
マイクロはXの型番をつけているのだと思う。
RX5000、RX3000、SX8000も、だからXが型番につく。
SZ1は、Xがつくモデルとは異り、一般的なプレーヤーと同じシルエット、
つまりベースがRX5000、SX8000よりもぐんと拡がっていることもあって、
SX1ではなく、SZ1という型番となったのだろう。
と同時にマイクロにとって、その当時の、もてる技術をすべて注ぎ込んで開発した、
いわばマイクロにとってのフラッグシップモデルでもあったわけで、
その意味も込めて、アルファベットの最後の文字であるZを型番に使っている、といわれている。
SZ1が登場したとき、私はすでにステレオサウンドにいた。
SZ1には、実を言うと、すごく期待していた。
SX8000をこえるモデルを、マイクロが開発した。
これだけでもわくわくして、SZ1の到着をまっていた。
SZ1の個々のパーツは木枠にはいって届いた。
そういう重量の製品であることが、梱包の状態からでも伝わってくる。
重量のあるプレーヤーが、必ずしもいい音を出してくれるわけではない。
そんなことはわかっていても、
やはり物量を投入しないと、どうしても出せない音があるのも同時にわかっている。
トーレンスのリファレンスをこえるアナログプレーヤーが、
日本の製品として登場してくれるのかも、とも期待していたことを思い出す。
木枠が開けられ、パーツが取り出され組み立てられていくSZ1を見て、
期待は完全に失望へと変っていた。
アナログプレーヤーは、基本メカニズムであり、
だからこそ精度が重要であることは理屈として正しい。
その精度の高さを実現しているのがSZ1なのもわかる。
けれど、なぜここまで冷たい雰囲気を漂わせなければ成らないのか。
RX5000、SX8000よりも大きくなったベース。
それだけに色、仕上げ、質感は、より大きなウェイトをもつことになるのは誰にでもわかることだ。
なのに、この色、この仕上げ、この冷たさ……。
SZ1の音のことについては書いていない。
実は、ほとんど印象に残っていないからだ。
たしかにステレオサウンドの試聴室で聴いた。
それは短い時間ではなかった。
でも記憶に残っていない。