私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その12)
RX5000 + RY5500が得た高い評価は、
マイクロ以外のガレージメーカーからも、類似の製品が少なからず出たことからもわかる。
後発のターンテーブルは、RX5000よりも重いターンテーブルプラッターを採用したりしていた。
ただ、どれもステレオサウンドに載った広告をみるかぎり、
決して完成度の高い、とはいえないRX5000が、完成度の点では上に思えるものばかりだった。
マイクロのSZ1は、それらを蹴散らす意図もあったのかもしれない、
それからプレーヤーシステムとして完成させようとしていたのだとも思える。
SZ1が、RX5000、SX8000、RX1500となにが大きく異るかといえば、ベースである。
RX5000、SX8000、RX1500、これらはどれもベースの大きさはレコードジャケットサイズとほほ同じである。
だからアームベースは、どのアームベースを使ってもベースからはみ出るような形でつく。
このことが良くも悪くも石臼的な姿につながっているし、
使い勝手の悪さの元にもなっている。
馴れないとカートリッジの上げ下げに不安をおぼえる人もいたと思う。
通常のプレーヤーだと手のひらの小指側の側面をベースにのせてカートリッジの操作ができるのに、
RX5000ではベースに、手を乗せるスペースがほとんどない。
だから実際に使用にあたっては、小指をのばしてベースにふれるようにするか、
右手の下に左手置いて、という使い方になってしまう。
SZ1は、マイクロの最高のプレーヤーとして登場した。
物量はRX5000、SX8000以上に投入し、それまで培ってきた技術はもちろん、
プレーヤーシステムとして使い勝手に関しても考慮して、
SZ1のシルエットは、通常のプレーヤーと同じになっている。
このこと自体は、とくに悪いことだとは思わない。
けれどSZ1は、プレーヤーシステムはLPというアナログディスクを再生する機器であることを、
その長いキャリアのどこかに忘れてきてしまったのではないか、
そういう印象を見た人に、そして触ってみると、そのことを確信できてしまうほど、
冷たく無機的で、これでアナログディスクを聴きたいとは思わせない、
私にとってはそういうアナログプレーヤーでしかない。