私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・余談)
アナログプレーヤーのデザインのことについて書いていて浮んでくることは、
自転車のことである。
自転車もアナログプレーヤーと同じところをもっている。
自転車を構成するものは、大きくわければ3つある。
まずはフレーム、リム、タイヤ、スポークを含めたホイール,
そしてそれ以外のパーツ、
つまりブレーキ、フロント・リアディレイラー(変速機)、クランク、チェーンなどのコンポーネントパーツ。
この3つの構成要素のなかで、もっとも大きく、自転車のデザインを大きく左右するのはフレームだと思い、
1995年、ロードバイクを買おう、としたときに、まず決めたのは当然フレームだった。
オーディオへの取組みと自転車への取組みは若干違うところがある。
自転車はプロの選手になろうんて考えていたわけでもないし、
アマチュアとしても速い選手になりたかったわけでもない。
自転車という趣味を、ひとりでただ楽しみたかった。
そのためには性能の優れた自転車であってもデザインが気に入らなければ買いたい、とは思わず、
逆にデザインが気に入れば、最高の性能を持っていなくてもいい──、
それが私の、そのときの自転車の選び方であり、
とにかく気に入ったフレームで、自分に合うサイズが見つかったら、それで組もうとしていた。
自転車の専門店に行けば、吊し、とよばれる、フレームだけが単体で展示してある。
フレームだけの状態でみていると、イタリアのチネリはカッコイイ。
1995年はスーパーコルサだけでなく、チノ・チネリの復刻フレームが残っていた。
サイズも合うのが見つかった。やっぱりチネリだな、と思っていたし、
チネリとともにイタリアを代表する老舗のフレーム・ビルダーであるデ・ローザは、いかにも武骨だった。
仕上げもチネリの方がいい。フロントフォークの肩の部分が、チネリはなだらかなカーヴを描いているが、
デ・ローザは昔の自転車のフロントフォークのように、肩の部分が水平であり、
チネリに感じられるスマートさが、まったく感じられない。
色も私が見たのは、オレンジ色のデ・ローザだった。
デ・ローザがいいフレームであることは知ってはいたけれど、
デ・ローザにすることはないな、と思い、
チネリを第一候補として、次はどの自転車店で購入するかを決めるために、いくつもの店をまわった。
そうやって結局最初に行った浜松町にあるシミズサイクルで購入することにして、ふたたび向った。
デ・ローザのオレンジ色のフレームを見たのは、このシミズサイクルだった。
二度目のシミズサイクルで見たのは、完成されていたデ・ローザのオレンジ色の自転車だった。
フレーム単体で見ているときと、完成車で見ているときとでは、こうも印象が変ってくるものか。
そのことを実感しながら、フレーム単体で見ていたときには候補から外していたデ・ローザに決めてしまった。
フレーム単体では武骨な見え、欠点のように思えていたところが、
完成されると、そこが力強さを感じさせる長所へと変っていることに気づかされる。
フレーム単体では、雑な仕上げにみえる塗装も完成されてしまうと、
映える印象へとうつっていく。
オレンジ色のフレームなんて、と思っていたのが、いかにもイタリアらしい、とさえ思ってしまうほど、
印象が変る。
アナログプレーヤーもシステムであるのと同じように、
自転車もシステムであることを一瞬にして実感・理解できた。