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Date: 9月 3rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その37)

こんなふうに思いはじめていただけに、この春、早瀬さんと、
JBLの4341 をいま鳴らすとしたら、どんな組合せにするか、どんなアンプをもってくるか、
電話で話していた時、当時のパワーアンプ、SAEのMark 2500やGASのAmpzillaで鳴らすのも、
おもしろいだろうけど、スピーカーという難物を駆動することにかけては、
確実に、現代のよく出来たパワーアンプほうが、過去のアンプよりも優れている。

そんな、現代の優れたパワーアンプのなかから、何を選ぶか。

人の個性を表立って感じさせないブランドのモノを選ぶのも、
ヴェテラン・エンジニアの手によるモノ、
クレル、パスラボ、ジェフ・ロゥランドDGといったブランドから選ぶのも、人それぞれだろう。

早瀬さんが、DD66000のために、クレルとウエスギアンプという、
日米の、ヴェテランエンジニアの手によるアンプを導入されたことを意外に思う人もいるかもしれないが、
私は、すごく納得できるし、興味深く思っている。

Date: 9月 3rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その36)

優れた処女作がもつ「絶妙な味わい」に惹かれてきたわけだ。

厳密な意味では、いつの時代の、どのアンプの音も、それでしか鳴らし得ない音ではあるのだが、
フィッシャー・ディスカウほどの名歌手が、一生に一度しかうたえない歌という意味では、
処女作の絶妙な味わいが、それに近いといえるのではないか。

クレルにしてもスレッショルドにしても、第二弾、第三弾……と、アンプの完成度は増していく。
それに伴い、絶妙な味わいは薄れていく。
そのことが完成度が高くなっていくことの証なのだが、
だからといって、アンプとしての魅力が、それに比例しているとは、正直、私は思っていない。

そんな私も歳をとった。いろんな音を聴いてきた。
そして、「音で苦労し人生で苦労したヴェテランの鋭い感覚でのみ作り出すことのできる、
ある絶妙の味わい」をもつアンプを、心底、魅力的と思えるようになった。

Date: 9月 2nd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その35)

「音で苦労し人生で苦労したヴェテランの鋭い感覚でのみ作り出すことのできる、ある絶妙の味わい」なんてものは、
しょせん、そのアンプ固有の色づけなのだから、そういうものをアンプには求めない。
求めるのは、極力色づけのない、高性能なアンプという人もいるだろうし、
だからこそ、いくつものメーカーが成り立っているし、競い合ってもいる。

つまり、どちらのアンプが優れているか、という問題ではない。
どちらのアンプを求めるか、の違いがあるだけだ。

私は、というと、「ある絶妙な味わい」のアンプに惹かれる傾向がある。
それも、ヴェテランの鋭い感覚による絶妙な味わいよりも、
どこかに未完成さを残している、初々しさが感じられる絶妙な味わいに、ころっといくことがある。

だからクレルのPAM2とKSA100の音に惹かれたのだし、初期のマークレビンソンのLNP2、JC2にもそれを感じる。
スレッショルドのデビュー作、800Aの、底力を秘めた、どこか清楚な感じのする音も魅力的に思っている。

Date: 9月 2nd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その34)

マドリガル体制になってからのマークレビンソンも、パワーアンプの開発には積極的なのは知っている。
だが、クレル、スレッショルド/パスラボ、ジェフ・ロゥランドDGは、
ひとりのエンジニアがキャリアを重ねていっているのに対し、
いまのマークレビンソンには、そういうエンジニアはいないはずだ。

初期に関わっていたジョン・カール、その後のトム・コランジェロは、かなり以前に離れているし、
No.20L開発の中心エンジニアだったケビン・バーグ(だったと思う)も、いまはいない。

これは国産のアンプメーカーにも同じことがいえよう。
どのメーカーも、アンプ作りのキャリアは長い。
だが、ひとりのエンジニアのキャリアが、同程度長いわけではない。

それではたして「音で苦労し人生で苦労したヴェテランの鋭い感覚でのみ作り出すことのできる、
ある絶妙の味わい」をもつアンプをつくれるのだろうか。

Date: 9月 2nd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その33)

マッキントッシュが、
さまざまな出力管を使い(6V6、6L6G、6BG6、1614、6550/KT88、7027A、7591、6LQ6/6JE6Bなど)、
回路構成も、位相反転段がオートバランス回路、カソード結合型、P-K分割型があり、
出力段の前段にカソードフォロワーをもってきているものもある。
アンプそのもの規模も、初期の15E-1と真空管アンプの最後を飾ったMC3500とでは、
プリアンプと大型パワーアンプぐらいの違いがある。

クレルもスレッショルド/パスラボがつくってきたパワーアンプも、実に豊富だ。
いろいろなことを試みている。
クレルがModel 250Mで採用した、モノーラル構成ながら、左右対称の筐体構造はじつに意欲的だったし、
パスラボのアレフ・シリーズも、非対称A級シングル動作という、ひじょうにユニークな回路構成となっている。

ジェフ・ロゥランドもそうだ。初期のModel 7、8、9から、一転してパワーICを並列接続したアンプや、
スイッチングレギュレーターもいち早く採用。
さらにB&Oが開発したICEpowerへの注目・採用もはやかった。

こういうヴァリエーションの豊富さは、
ともに創立者がいたころのマランツにもマークレビンソンにはなかった。

クレルも、スレッショルド/パスラボ、ジェフ・ロゥランドDGも、
30年のキャリアの中で、意欲的にパワーンアンプに取り組んでいる。

Date: 9月 1st, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その32)

優れたコントロールアンプ、そして後々まで語られていく魅力的なコントロールアンプを生みだすには、
どこか才気走ったところが、エンジニア(プロデューサー)には、求められるのかもしれない。
そういう人間に、ひとつのところにとどまれ、というのが、ある意味、無理な要求なのかもしれない。

そういう人間は、ときに、魅力的なモノを生みだす。
だが、瀬川先生がアンプに求められた「音で苦労し人生で苦労したヴェテランの鋭い感覚でのみ作り出すことのできる、
ある絶妙の味わい」となると、どうだろうか。

そういう人間を、ヴェテランと呼べるだろうか。
やはり、いま現役のエンジニアでヴェテランとすなおに呼べるのは、
ダゴスティーノ、パス、それからジェフ・ロゥランドだろう。
特別枠で、ジェームズ・ボンジョルノもあげておく。

みな1970年代のおわりから1980年ごろにかけて会社をつくっている。
30年のキャリアをもっている。

Date: 9月 1st, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その31)

1953年に創立されたマランツは、いまでも健在だが、創立者のソウル・B・マランツは、
1967年にスーパースコープ社に譲渡し、マランツから離れている。

マッキントッシュの創立は1946年、創立者はフランク・H・マッキントッシュ。
同年にゴードン・J・ガウが入社し、以後、約30年にわたって共同経営し、
1977年からゴードン・ガウが社長を引き継ぐ。

真空管アンプ時代、マランツは、モデル2、モデル5、モデル8(B)、モデル9と、
機種数からいえば、コントロールアンプよりもパワーアンプのほうが多いが、出力管は一貫してEL34を採用。
マッキントッシュのパワーアンプは、出力管もさまざまで、機種数も多い。製品の規模も豊富で、
パワーアンプの開発に意欲的だった印象がある。

そのため、マランツはコントロールアンプのほうが得意だった、
マッキントッシュはパワーアンプが得意だった、という印象がある。

コントロールアンプを得意としていたマークレビンソンも、レヴィンソンは、創立後12年目に離れている。
ソウル・B・マランツが、マランツを離れてから、ダルキストに参画したり、
ジョン・カールと手を組んだり、といくつかの会社を渡り歩いているのと同じように、
マーク・レヴィンソンも、その後、チェロをつくり離れ、
レッドローズミュージックをつくり、と、
コントロールアンプに対して、才能を発揮するタイプは、
じっくりとひとつのブランドを成長させていこう、という気質は希薄なのかもしれない。

Date: 9月 1st, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その30)

クレル(PAM2をのぞく)とスレッショルドのコントロールアンプには、
ある種のもどかしさを感じると書いた。

同じようなもどかしさを、マークレビンソンのパワーアンプ、ML3Lにも感じていた。
ML2Lには、そんなことはまったく感じなかったのに、ML3Lにはあった。

だからというわけではないが、製品の構成を含めてみると、
マークレビンソンは瀬川先生が指摘されていたように、コントロールアンプを得意とするメーカーである。
そして、クレル、スレッショルド/パスラボは、
どちらかといえばパワーアンプを得意とするメーカーといえるし、
パワーアンプに対して意欲的な開発をするメーカーともいえる。

つまりクレルのダニエル・ダゴスティーノ、スレッショルド/パスラボのネルソン・パスは、
パワーアンプに対して意欲的なアンプエンジニアである。

理由はわからないが、マランツ、マッキントッシュのころから、
パワーアンプを得意とするほうが、ブランドが永く続いているようだ。

Date: 8月 31st, 2009
Cate: 境界線, 瀬川冬樹

境界線(その2)

人の声が中音域だとすれば、その上限は意外と低い値となる。

声楽の音域(基音=ファンダメンタル)は、バスがE〜c1(82.4〜261.6Hz)、
バリトンがG〜f1(97.9〜349.2Hz)、テノールはc〜g1(130.8〜391.9Hz)、
アルトはg〜d2(196.0〜587.3Hz)、メゾ・ソプラノはc’〜g2(261.6〜783.9Hz)、
ソプラノはg’〜c2(329.6〜1046.5Hz)と、約80Hzから1kHzちょっとまでの、ほぼ4オクターブ弱の範囲であり、
2ウェイ構成のスピーカーであれば、ウーファーの領域の音ということになる。

タンノイ、アルテックの同軸型ユニットのクロスオーバー周波数は、1kHzよりすこし上だから、
トゥイーター(ホーン型ユニット)が受け持つのは、人の声に関しては倍音(ハーモニクス)ということになり、
オーディオにおける高音域は、倍音領域ともいえるわけだ。

瀬川先生の区分けだと、人の声は、中低音域と中音域ということになり、
中高音域、高音域、超高音域と、「高」音域は、ほぼ倍音領域である。

瀬川先生の区分けは、音の感じ方を重視して、のものでもある。

Date: 8月 30th, 2009
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その20)

1970年代の終りに登場したソニーのTA-N88が、コンシューマーオーディオ用のアンプとして、
はじめてD級動作を、そして電源にもスイッチング方式を採用している。

そのあとは続かなかったが、ここ数年、B&OのICEpowerをはじめ、
各社からD級動作のアンプ(俗称デジタルアンプ)がいくつか登場している。
ソニーからも、TA-DR1が出ている。

D級アンプも、従来からのA級、AB級動作のアンプも、最終的には、設計者のセンスと技倆によって、
性能、音は決るわけで、
「デジタルアンプこそ最高」とか、「いやいや、デジタルアンプなんて、まだまだ」とはいえないし、
D級動作のアンプには、これから、といいたくなる点もいくつかある。

とはいえ、あれだけの効率の良さは、十分に魅力的である。
今日ふと思いついたのだが、スレッショルドのステイシス回路、それもプロトタイプの回路構成に、
D級動作のアンプを利用してみる、というのは、意外に有効かもしれない。

ステイシス回路のステイシスセクションは、これまでどおりA級動作のアンプを使い、
電流源となるアンプ部に、D級動作のアンプ(ICEpowerを使ってみたい)をもってくる。
A級アンプとD級アンプの組合せで、ステイシス回路を構成するわけだ。

そうすれば、大出力ながら、かなりコンパクトに仕上げられる。

Date: 8月 29th, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その25)

「寄らば大樹の陰」を、人の生き方は人それぞれだから、否定はしない。
ただ、その大樹が、「陽だまりの樹」ではないと、誰かが保証してくれるのか、
「陽だまりの樹」ではないと、誰がわかるのか。

Date: 8月 28th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その29)

初期のクレルのフロントパネルを請け負っていた職人が亡くなったことが、
パネル処理が変わっていったことの理由だと、かなり経ったころ輸入元の人からきいた。

その職人にしかできない処理で、誰にも、どうやるのかは伝えていなかったこともあり、
なんとか再現しようとあれこれやったものの、
同じシルキーホワイトのパネルをつくり出すことはできなかったそうだ。

これは傅さんからきいた話だが、
クレルは、ダニエル・ダゴスティーノと、妻のロンディーのふたりきりではじめた会社で、
最初の頃は、資金が豊潤にあるわけでなく、ダゴスティーノ夫人がアンプを製作し、
梱包し出荷までやっていた時期があったそうだ。

シルキーホワイトのパネルの時期と、同じ時期の話だろう。
PAM2とKSA100は成功をおさめる。
そうなると従業員を雇い、会社の規模は大きくなる。

初期のころの、家内工業のような体制とはまったく異る組織へと変貌していく。
それにともない、シルキーホワイトのパネルの再現とは決別し、
ダゴスティーノ夫人もアンプ製作から離れていく。

シルキーホワイトのフロントパネル、それにダゴスティーノ夫人の手によっていたこと──、
こういった、アンプの音質と直接関係しているわけではないことが、
あの頃のクレルの音を構築していた要素のひとつ、それはひじょうに小さな要素のひとつでありながら、
実は重要な要素のひとつでもあったような気がしてならない。

そんな情緒的なことが、音に関係するわけはない、そう言い切りたくとも、
いちどでもあの頃のPAM2とKSA100の組合せの音を聴いたことがあると、なかなかできない。

Date: 8月 28th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その28)

いちどかぎり、その場かぎりの演奏と、工業製品のあいだに、そういう共通性はないのかもしれないが、
それでも、クレルのPAM2とKSA100の、ごく初期のモデルを聴いていると、こじつけと言われようが、
やはり共通するものがある、と言いたい。

初期のクレルのアンプのフロントパネルは、シルキーホワイトと呼ばれるキメの細かいアルマイト処理が施され、
鳴ってきた音も、まさにフロントパネルの印象にぴったりの音で、
正直、トランジスターアンプから、こういう音が出るようになったんだ、と、
その音の素晴らしさに魅了されるだけでなく、驚いたことを、いまでもきっきりと憶えているほどだ。

しかし、このシルキーホワイトのフロントパネルは、しばらくしたらなぜか変更されてしまった。
一時期、青が濃いパネルになったときもある、なんとなく初期のモノに近いパネルにもどったときもある。
とにかく製品が入荷するたびに、パネルの処理が変わっていく、そんな感じだった。

当時は、理由がわからず、なぜ、最初のパネルに戻さないのか、不思議だったし、
パネルの変化とともに、型番は変わらなかったが、音の印象も微妙に変っていったように感じていた。

Date: 8月 28th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その27)

フィッシャー=ディースカウは、マーラーの「さすらう若人の歌」を幾度か録音している。
1952年にフルトヴェングラーと、1968年にクーベリックと、1978年にはバレンボイムと、録音している。

フルトヴェングラーとのレコードについて、黒田先生が、なにかで書かれていたのを思い出す。
クーベリック、バレンボイムとの歌唱は、
フルトヴェングラーとのレコードをうわまわるものではない、とされたうえで、
いかなる名歌手でも、一生に一度しかうたえない歌がある、と。
フルトヴェングラーとの「さすらう若人の歌」以外のものは考えられない、
そんなことを書かれていた。

アンプのエンジニアにも、そういうことがあるとしたら、
クレルのデビュー作、PAM2、KSA100が、まさにそうであろう。

Date: 8月 27th, 2009
Cate: 理由

「理由」(余談)

髪を切ってきた。

2年ほど、同じ人に切ってもらっている。
今日も、言われたのが、「来るたびに、髪質、良くなっていますよ。張りと艶が良くなってます」ということ。
今年の始めごろ、「何か変えました?」ときかれた。
髪の質が良くなってきたように感じたから、ということだった。

それで、ここ数ヵ月は、行くたびに、驚かれる。
特に食生活も変えていない。ただ量はすこし減らしている。
それでも、一般的な量よりは、けっこう多めだと思う。

以前は、一回の食事で、ご飯、三合は軽く食べていたし、四合まで食べたこともある。
それをいまは、二合ちょっとにまで減らしている。

これで髪質が良くなるとは思えない。
だから「心当たりないですね」と答えていたのだが、理由といえるものがひとつだけある。
1年半前の、サブウーファーの導入だ。

とはいえ、オーディオに全く関心のない人に、「いい音で聴いているから」と言っても、
きょとんとされるだけだろうから、だまっていた。