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Date: 10月 23rd, 2010
Cate: 音楽性

AAとGGに通底するもの(その11)

音は空気の振動(疎密波)である。

そんな物理現象のひとつに「肉体」などなくて当然。
その音を発しているスピーカーも、電気の力によって振動しているのであって、
そこになんらかの手の力が加わっているわけではない。
アンプにしても、オーディオ機器すべて、音を鳴らしているときに、人は直接介在していない。

だから「肉体のない音」こそ、純然たる音、と定義づけもできる。

だが、ときとして、物理現象のである空気の振動に、演奏者の息吹を感じることがある。
それはもう、肉体の存在を感じるときでもある。
それは虚構の肉体、事実そうであろうが、少なくともそう感じられたとき、
音は「音楽」になっている、と思う。

音楽を構成しているのは、音。
では、音と音楽をわけるものは、いったいなんなのか。
結局のところ、それが「肉体」だと、いまは思えるようになった。

Date: 10月 22nd, 2010
Cate: 現代スピーカー, 言葉

現代スピーカー考(ことばについて)

“straight wire with gain”──、
アンプの理想は、増幅度を持ったワイアー(導線)だ、というこの表現は、
アメリカのオーディオ評論家、ジュリアン・ハーシュによるもの。
1970年代の後半ごろステレオ・レヴューに登場した、この言いまわしはなかなか巧みだと思う。

そのころも、ケーブルによる音の違いはすでに認識されていたけれど、いまほどではなかった。
いまでは、ケーブルでも音が変化するのだから……、と反論めいたことを言う人もいるかもしれないし、
そんな揚げ足とり的な反論ではなく、正面から、この表現には賛同できないという人もいるだろうけど、
でも、そういう人でも、この表現のうまさは認めるところだろう。

では、スピーカーについて、どうだろうか。
“straight wire with gain” 的な表現はあっただろうか。

あなたのめざしているスピーカー(音)は? という問いに、ほぼすべてのスピーカーエンジニアは、
「non coloration(色づけのない)」という答えがかえってくると、瀬川先生が以前書かれていた。

non coloration は理想にちがいない。ただ、それはスピーカーにかぎらない。
“straight wire with gain” のように、アンプのありかたを的確に表現した言葉とは、ニュアンスが異る。

スピーカーのありかたを、同じくらい、できればそれ以上に的確に表現したことばがうまれたら、
スピーカーの理想とはいったいどういうものなのか、スピーカーとはいったいどういうものなのか、
そういったことがらが明確になってくるはず。

Date: 10月 22nd, 2010
Cate: よもやま

Western Electric の表記について(おまけ)

瀬川先生も、ウェスタンではなく「ウェスターン・エレクトリック」と、伸ばされている。

Date: 10月 21st, 2010
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(その29)

ハイ・フィデリティ再生──、英語で表記するとどうなるか。
ハイ・フィデリティはそのまま High Fidelity、再生は play back だったりreplay。

High Fidelity ということばが生れたのはモノーラル時代で、ただしくは High Fidelity Reproduction と表記する。
このとき対することばとして、Good Reproduction もつくられている。
どちらにも reproduction が使われている。

reduction の意味は、複製、模造、再生、再現、再生産があり、
re(リ) をはずせば、production(プロダクション)だ。

別項の「音を表現するということ」で書いてるが、
リモデリング、リレンダリングと同じように、リプロダクションにも、「リ(Re )」が頭についている。

ハイ・フィデリティ・リプロダクションとグッド・リプロダクション。

ふたつのことばが生れたときと現在とでは、その関係に変化が生じているところもあると感じているし、
モノーラルからステレオへの変化にともなって High Fidelity Reproduction も変化している。
その変化に対しての受けとめ方、とらえ方の相異が、五味先生と高城重躬氏の相異であり、
のちの訣別へと関係していくように、思えてならない。

そして、高城氏にとってのハイ・フィデリティ再生は、High Fidelity Play backであり、
五味先生にとっては、High Fidelity Reproduction だったように思えてならない。

Date: 10月 20th, 2010
Cate: 真空管アンプ
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真空管アンプの存在(その73)

人それぞれの考え方がある。
だから真空管のヒーターの点火についても、定電流方式はよくない、という人もいる。

ただ、不思議な理由づけで、定電流点火を否定されているのを、数年前、みかけた。
オーディオ関係の会社のサイトに掲載されていたもので、現在は削除されている。
だから、そこがどの会社なのか、そういったことの詳細についてはふれないが、
そこに定電流点火は真空管の寿命を短くする、とあり、そのことが否定の大きな理由だった、と記憶している。

真空管のヒーターの定格は、6.3V / 300mA、といったぐあいに規格表に載っている。
この規格の真空管だとヒーターの抵抗値は、オームの法則から6.3(V)÷0.3(A)=21(Ω) だ。

導線の直流抵抗は、その温度によって変化する。温度が増せば抵抗値も増える。
だから、定電流点火に否定的な人は、21Ωの抵抗値が、ヒーターがあたたまってくると抵抗値が増す。
21Ωよりも高くなる。そこに定電流点火で300mAの電流を流し込んだら、仮に25Ωになっているなら、
25(Ω)×0.3(A)=7.5(V)で、ヒーターにかかる電圧が7.5Vになってしまい、
定格を超えてしまうから絶対に定電流点火を行なってはいけない、とあった。

だから、この人は、真空管の寿命のためにも定電圧点火がいいということだった。
定電圧点火なら、ヒーターにかかる電圧はつねに6.3V。ヒーターの抵抗値が増してもそれは変らない。
ヒーターに流れる電流が減るだけ、だから、という。

真空管を扱い馴れている人には不要な説明だろうが、真空管の規格表に載っている定格値は、
ヒーターが十分に暖まった状態でのものだ、ということ。

少なくとも真空管の全盛時代に製造されていたモノに関しては、そうだ。
暖まってヒーターの抵抗値が増した状態において、6.3V / 300mAとなる。
言いかえれば、暖まったヒーターの抵抗値が、上記の規格の真空管であれば21Ωということだ。

冷たい状態ならば21Ωよりも低い値になっている。

仮に19Ωになっているとしよう。
定電流点火ならば、ヒーターの抵抗値に関係なく300mAの電流を流す。
つまりこのときヒーター電圧は、19(Ω)×0.3(A)=5.7(V)。
定電圧点火ならば、ヒーターの抵抗値に関係なく6.3Vの電圧をかける。
つまりこのときヒーター電流は、6.3(V)÷19(Ω)=0.33157…(A)。

ヒーター電力でみると、定電流点火は5.7(V)×0.3(A)=1.71(W)。定電圧点火は6.3(V)×0.33(A)=2.079(W)。
定格値で計算すると、6.3(V)×0.3(A)=1.89(W)。

定電圧点火では、ヒーターが冷たい状態では定格値を超える電流(パワー)が加わることになる。
定電流点火では、定格値よりも小さな電力(パワー)だ。

どちらが真空管のヒーターが長持ちするかは、すぐにわかることだ。

Date: 10月 19th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その1)

HIGH-TECHNIC SERIES-1は1977年に発売された。
2年後にSOUND SPACEが出た。

1979年ごろは、ステレオサウンドに「ひろがり溶け合う響きを求めて」が連載されていた。
50号から54号に載っている(52号休載)。

SOUND SPACEという本のタイトルからも想像がつくように、
この本で紹介されている組合せは、
すべて部屋(リスニングルームであったり、リビングルーム、書斎、寝室など)とのかかわり合いを示している。

「華麗なる4ウェイシステムの音世界」とつけられた瀬川先生の組合せは、10畳の洋室──、
これは自らのリスニングルームのあり方をベースにしたもので、
壁は瀬川先生のリスニングルームと同じ漆喰塗り。床はイタリアタイル、天井も漆喰塗りと、いうもの。
そこにアルフレックスのソファをL字型に配置し、
スピーカーとパワーアンプを収めたラックは、部屋の長手の壁に置かれる。

肝心のスピーカーだが、JBLのユニットを中心に組んだもの。
低音域は2231Aをダブルで使用。中音域は2420ドライバーと2397ホーンの組合せ。
高音域は、やはり2405。そしてその上にテクニクスのリーフトゥイーター、10TH1000をつけ加えられている。

これらのユニットをすべて専用のパワーアンプでドライブするマルチアンプ構成という、
そうとうに大がかりなシステムだ。

アンプはすべてマークレビンソン。
コントロールアンプはML6。
パワーアンプは2231A、2420用にML2L、2405、10TH1000用にML3Lとなっている。
これについては、好みに応じて帯域分担を交換させてもいいと書かれている。

エレクトロニッククロスオーバーネットワークはLNC2Lで、クロスオーバー周波数は800Hzと8kHz。
これだけで2台のLNC2Lを使う(LNC2Lは2ウェイ専用なので)。

となると10TH1000はどうなるかというと、LCネットワークで分割するか、
LNC2LにOSCモジュールを使いすれば、3ウェイ仕様にできる。ただしスロープ特性は本来18dB/oct.だが、
追加分のクロスオーバーのみ6dB/oct.になる。

とにかく4ウェイではあるが、High Technic シリーズVol. 1のフルレンジからはじまる構想とは、あきらかに違う。
だから、正直、この記事を読んだとき、驚いた。なぜだろう? という疑問もわいた。
この組合せに関する詳細をもっと知りたい、と思った……。

Date: 10月 18th, 2010
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その31)

注目したいのはM60ではなくて、Exclusive M4である。

4350のミッドハイのドライバーは2440。375のプロ用ヴァージョンであり、
菅野先生自宅の3ウェイの中音域は、あらためて書くまでもなく、375と537-500の組合せ。
パラゴンの中音域も375だ。

はっきりと記憶しているわけではないけれど、スイングジャーナルでの組合せでも、
JBLのユニットを組み合わせての3ウェイのマルチアンプドライブの組合せにも、
M4を使われていたような気がする。

JBLの375(2440)とパイオニアのExclusive M4は、意外にも相性がいいのではないか、と思いたくなる。
コンポーネントの相性は、簡単には言い切れない難しさがあることは承知のうえで、
ここでは「相性がいい」といいたい。

「コンポーネントステレオの世界 ’78」のなかで、
「JBLの中・高域ユニットを、あるレベル以上のいい音で鳴らすためには、
M4を組合すのがいちばん安全だというふうに、私は思っています」とある。
これに対して瀬川先生も
「ぼくもいろいろなところで4350を鳴らす機会が多いんだけど、
M4を中・高域に使うとじつにうまくいんですよ」と語られている。

4343とM4の組合せは聴く機会があった。
M4の改良モデルM4aで鳴らした音を聴いたことがある。
M4はたしかに魅力的なアンプだ。
パワーアンプとしての完成後はM4aの方が高いのだろうが、個人的に魅力を感じるのはM4だ。

パラゴンに組み合わせるパワーアンプになにをもってくるのか、
そのヒントは、M4にあるのかもしれない。

Date: 10月 18th, 2010
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その30)

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」のなかで、
オーディオ・ラボのレコード(つまり菅野録音)を、
制作者の意図したイメージで聴きたい、という読者の要望に菅野先生がつくられた組合せがある。

スピーカーシステムはJBLの4350A、
パワーアンプは低域用がアキュフェーズのM60、中高域用がパイオニアのExclusive M4だ。
ちなみにコントロールアンプはアキュフェーズのC220、エレクトロニック・クロスオーバーもアキュフェーズでF5、
プレーヤーはテクニクスのSP10MK2にフィデリティ・リサーチのFR64SにカートリッジはオルトフォンMC20。
目を引くのは、グラフィックイコライザー(ビクターSEA7070)を使われていること。

ただ、本文を読んでいただくとわかることだが、菅野先生は/SEA7070を、トーンコントローラーといわれている。
その理由として、イコライザーという言葉が好きではない、ということだ。
それにSEA7070は、その後に登場してきた1/3バンドの33分割のグラフィックイコライザーではなく、10分割。

すこし話がそれてしまった。
パワーアンプに話を戻すと、このころ、菅野先生が自宅でJBLの3ウェイのマルチシステム用は、
低域用がやはりアキュフェーズのM60、中域用がこれまた同じパイオニアのExclusive M4、
高域用はサンスイのプリメインアンプAU607のパワーアンプ部を使われている。

低音用のM60は、その後、ステレオサウンド 60号の記事中でも変らず。いま現在も使われている。
M60に落ちつくまでには、マッキントッシュのMC2105、アキュフェーズのP300,
パイオニアのExclusive M3などを試された、とHigh Technic シリーズVol. 1に書かれている。

Date: 10月 17th, 2010
Cate: 「本」, 瀬川冬樹
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オーディオの「本」(瀬川冬樹氏のこと)

はっきりと書いているわけではないが、私のTwitterもあわせて読んでいただいている方は、お気づきのように、
いま瀬川先生に関するオーディオの「本」の作業にかかりっきりになっている。

電子書籍として、まず11月7日に、そして来年の1月10日に出す予定で、いまやっている。
おそらく3月ごろまで最終的にかかるだろう。

最初は11月7日までにすべてまとめあげたいと考えていたが、やりはじめると、
せっかくやるのだから、あれもこれもとやりたいこと、おさめたいことが増えていき、
ページ数に制限のない電子書籍だから、すべてやろうと変更したため、11月7日には、
ともかくいま出せるところをダウンロードできるようにする。

とにかくいまは、瀬川先生の文章を集め入力している。

ステレオサウンドから出ていた「世界のオーディオ」シリーズのラックス号に載っていた「私のラックス観」、
これをさきほど入力し了えた。

ステレオサウンドにいた頃、ふるい号を読もうと思えばいくらでも読めた。もちろん仕事の合間にずいぶん読んだ。
でもそれは読んだつもりだった、としか、いまはいえない。
瀬川先生の「私のラックス観」を、なぜか読んでいなかったからだ。

「世界のオーディオ」シリーズは、
Vol. 1・ラックス、Vol. 2・マッキントッシュ、Vol. 3・サンスイ、Vol. 4・アルテック、Vol. 5・ビクター、
Vol. 6・パイオニア、Vol. 7・テクニクス、Vol. 8・ソニー、Vol. 9・オンキョー、Vol. 10・タンノイ、が出ている。

読んでいたのは、マッキントッシュ、アルテック、タンノイだけだった。
そのあとずいぶん経ってからサンスイとパイオニアを読んだだけだった。
手もとにある本とコピーをあわせると、ビクター以外はすべて読んだ。

そのどれとも、「ラックス観」はちがい、なにかちがうものが現れている。
     *
このメーカーは、ときとしてまるで受精直後の卵子のように固く身を閉ざして、外からの声を拒絶する姿勢を見せることがある。その姿勢は純粋であると同時に純粋培養菌のようなもろさを持ち、しかも反面のひとりよがりなところをも併せ持つのではなかろうか。
     *
これは、ラックスについてのことだけを語られているのではない。
「瀬川冬樹」についても語られている。
この数行前に、こうある。
     *
このメーカーの根底に流れる体質の中にどこか自分と共通の何か、があるような、一種の親密感があったためではないかという気がする。
     *
説明は要らないはずだ。

Date: 10月 16th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その18)

フルレンジユニットをなにか用意する。できれば素直な音のモノがいい。
このフルレンジユニットのインピーダンスが8Ωなら、直列に1mHのコイルをいれると、
6dB/oct.のカーヴで、カットオフ周波数はだいたい1.2kHzになる。

同じ1.2kHz以上をカットするのに、アンプ側にフィルターをもうける方法がある。
同じカットオフ周波数にしても、ネットワークでカットした音と、アンプ側のフィルターでカットした音を比較する。

ほぼ同じ周波数特性になっているはずだが、出てきた音は、似てはいるけれど、違うところもある。
できのよいフルレンジユニットがもつ、ある種の素直さと、そのことに関係してくる情報量にちがいが出る。

音楽のメロディの音域を得意とするフルレンジのよさをできるかぎり損なわず鳴らすには、
やはりコイルをいれるのはできるだけさけたい。

フルレンジユニットのよさは、パワーアンプとのあいだにネットワークがないこと──、これは無視できない。

こんなふうにかんがえてゆくと、瀬川先生の4ウェイ構想で、
ミッドバスにもネットワークを使われない理由が、浮びあがってくる。

そしてフルレンジユニットが中心にあることもはっきりしてくる。
4341(4343)とのわずかな違いもはっきりしてくる。

もうひとつはっきりしてくることは、このフルレンジを中心とした、ということにおいて、
瀬川先生と井上先生のスピーカに対しての共通点だ。

Date: 10月 16th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その17)

ウーファーにだけ独立したパワーアンプを用意するバイアンプドライブでなく、
ミッドバスまでマルチアンプドライブとされたことと、
4ウェイ構想をフルレンジユニットからはじめることは、
瀬川先生はふれられていないが、密接に関わっていると考えたほうがいいと思っている。

瀬川先生はマルチアンプの方が調整が容易で失敗が少ないため、と書かれている。
それだけとは思えない。

フルレンジからはじめるということは、パワーアンプとフルレンジユニットのあいだにはネットワークが介在しない。
とくに音楽のメロディの音域を受け持つユニットが、パワーアンプと直結されることの、音質的なメリットは大きい。

フルレンジからはじまり、フルレンジの音域をひろげるように発展していく瀬川先生の4ウェイ構想は、
フルレンジの音の特質の、ほんとうにおいしいところだけを活かしていくことでもあろう。

4340と同じバイアンプドライブでは、
ミッドバス(フルレンジ)に対してハイカットフィルターがパワーアンプとの間にはいる。
12dB/oct.のハイカットフィルターはコイルが直列にはいり、コンデンサーが並列にはいる。
4341(4343)では、1.7mHのコイルがはいっている。

この直列に挿入されるコイルを取り除いたマルチウェイのスピーカーシステムは、いくつか存在している。
よく知られるところではダイヤトーンの2S305である。
1.5kHzのクロスオーバー周波数の2ウェイ・システムだが、ウーファーにはネットワークはいっさい介在しない。
JBLの3ウェイのブックシェルフ型の4311もウーファーにはネットワークはない。
1990年代ごろのモダンショートもそうだった(輸入が再開されている現在の製品の詳細については知らない)。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その16)

瀬川先生の4ウェイ構想を整理しておくと、
ウーファーはスペースのゆるすかぎり大口径のものを、ということで、38cm口径を選択。
ウーファーの重い振動板に、音楽のメロディの音域を受け持たせたくないのと、
小〜中口径のフルレンジの得意とする帯域を活かすために、
ウーファーとミッドバス(フルレンジ)のクロスオーバー周波数は100Hzから300Hzの範囲に。

フルレンジは口径によって1kHzから2kHzまで受けもたせ、
ミッドハイにはJBLの175DLHもしくは同等のホーン型を、そして8kHz以上はスーパートゥイーターに。
ネットワークの使用はミッドハイとスーパートゥイーターのところだけ。

こう書いていくと、JBLの4343に近い構成だということがわかる。
High Technic シリーズVol. 1にも書かれているように、
JBLの4ウェイのスタジオモニター・シリーズが発表されたとき、
「あれ俺のアイデアが応用されたのかな? と錯覚した」とある。

4343よりも、その前身の4341にはバイアンプドライブ専用モデルの4340があった。
ウーファーとミッドバス間のLCネットワークがないこの4340は、4343(4341)より、
瀬川先生の4ウェイ構想に近いスピーカーシステムである。

にもかかわらず4340ではなく、ネットワーク仕様の4341を選ばれたのは、
自宅でアンプの試聴もしなくてはならないため、である。

それにして4340、4343にしても、瀬川先生の4ウェイ構想に近い。
ウーファーは、当時のJBLのウーファーのなかでは、もっともf0の低い2231A。ミッドバスは25cm口径の2121。
ミッドハイは2420に音響レンズつきのホーンの組合せ。形状は大きくちがうが、175DLHも音響レンズつき。
スーパートゥイーターは2405。

4341(4343)がもし登場してなかったら、JBLのユニット群からほぼ同じユニットを選択され、
自作の4ウェイを実現されていたかもしれない。
そして、ウーファーだけでなくミッドバスまではマルチアンプドライブされていたと思う。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その15)

この4ウェイ構想にいまも惹かれるのは、
フルレンジからスタートでき、すこしずつ段階を踏んでシステムを構築できるところがあるからだ。

オーディオのキャリアのながいひとで、腕にも自信があり、最初から予算にも余裕がある人なら、
いきなり4ウェイのシステムに取りくむのもいいけれど、
すこしでも不安を感じる人は、フルレンジからはじめたほうがいい。

スピーカーシステムの調整において、フルレンジスピーカーを鳴らした経験があるかないかは、
あとになってあらわれてくる。勘どころのつかみかた、とでもいおうか、
そういうところに違いがあらわれてくるように感じている。

だから、もしいま瀬川先生のこの構想に取り組もうという人がいたら、
予算が最初から十分にあっても、まずはフルレンジからはじめたほうがいい、とすすめる。

フルレンジ一発からはじめ、その次にトゥイーターを加える。
ここでは良質のLCネットワークとアッテネーターを使う。

フルレンジユニットにトゥイーターを加え、高音の領域を拡大するということは、
ほぼ、楽器の倍音の領域を補強すること、といいかえていいだろう。
これは重要な経験となる。
クロスオーバー周波数は、選んだトゥイーターの種類によって大きく違ってくるが、
2kHzから8kHzの範囲になる。

つぎの段階でウーファーを追加して、ここでマルチアンプドライブへと発展していく。
クロスオーバー周波数はさきにも書いたように100Hzから300Hzの範囲にする。
ここでカットオフ周波数をあれこれ試してみてほしい。
同じ周波数にしたり離してみたり、オーバーラップさせてみたり、
エレクトロニッククロスオーバーネットワークを使うことのメリットを最大限に利用する。
誰かが見ているわけでも聴いているわけでもないから、大胆に思いつくかぎりの設定を試したい。

最後にミッドハイを加える。
クロスオーバー周波数は1kHz付近と8kHz付近。
とうぜんだが、ここでスーパートゥイーター用のネットワークはつくりかえることなる。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その14)

ミッドバスとミッドハイ間もマルチアンプドライブする理由として、
自作の場合、失敗が少なくなるから、とされている。

マルチアンプドライブはたいへんそうに思えるが、自分だけのスピーカーシステムを構築していく上では、
マルチアンプの方がネットワークでやるよりも、やりやすい面がある。

たしかにパワーアンプの台数は増え、システム全体の規模は大きくなるが、
スピーカーの設計・調整に必要なクロスオーバー周波数の設定、スロープ特性の設定は、
エレクトロニッククロスオーバーネットワーク次第のところが多少あるものの、
自由度は比較にならないほど高く、試行錯誤もどれだけでも可能になる。

LCネットワークの設計ではスピーカーユニットのインピーダンス特性にも十分な配慮が必要となるが、
マルチアンプドライブでは無視できる。
そしてクロスオーバー周波数もツマミひとつで自由に変えられる。
できれば、クロスオーバー周波数ではなく、
それぞれのユニットのカットオフ周波数が個別に設定できるもののほうが、ずっといい。

たとえばウーファーのハイカット周波数を200Hzにしたからといって、
なにもミッドバスのローカット周波数も200Hzに合わせなければならない、というものではない。
200Hzでうまくいくこともあれば、250Hzにしたほうがよかったり、
さらには300Hzにして、スロープ特性も変えてみたほうがいいこともある。
もっといえばミッドバスのローカットを200Hzよりも低い値にして、オーバーラップさせるのもあり、だ。

こういったことをLCネットワークでやろうとすると、コイルやコンデンサーをいくつも用意して、
そのたびにネットワークをつくりかえる手間がかかる。

それにこまかいことを書けば、つくりかえるたびにハンダづけをやりなおしていたら、
熱によって部品は、多少なりとも劣化していく。そのたびに新品の部品を購入する……。
そうなると、意外にもマルチアンプドライブの方が最終的な費用は抑えられることもあろう。

Date: 10月 15th, 2010
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その13)

瀬川先生のこの構想では、ウーファーとミッドバスのあいだ、
ミッドバスとミッドハイのあいだにはLCネットワークを介さずにマルチアンプドライブ、
スーパートゥイーターとミッドハイのあいだにのみネットワークが介在する。
つまり6チャンネル分のパワーアンプを使うことになる。

ウーファーとミッドバスにネットワークをつかわないのは、
クロスオーバー周波数を自由に低い周波数に設定するためである。
瀬川先生は、高くても300Hz、できれば150Hz以下にしたいと書かれている。

4343が300Hz。LCネットワークでシステムを構成するには、これより下のクロスオーバー周波数をもってくるのは、
LCネットワークの設計上、そうとうに無理が生じる。
300Hzでも、 LCネットワークにとってはかなり低い周波数で、ネットワークの設計面からいえば、
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は、もうすこし高くしたいところ。
最低でも500Hzくらいにまであげたい。だがそんなことをしてしまったら、ミッドバスを追加する意味合いが薄れる。

ミッドバスの存在を十分に活かすには、
いっそマルチアンプドライブにクロスオーバー周波数を自由に設定できるようにしたほうがいい。

瀬川先生の話は、既製品のスピーカーシステムに関してのもではなく、
あくまでも自分でつくる自分のためのスピーカーシステムの話だから、
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数を、
LCネットワークにすることで中途半端な値で妥協するくらいなら、
豊富な既製品のスピーカーシステムが揃っている時代において、わざわざ自作をする意味はなくなってしまう。

やはりウーファーとミッドバス間にネットワークは使わない。