Date: 10月 22nd, 2010
Cate: 現代スピーカー, 言葉
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現代スピーカー考(ことばについて)

“straight wire with gain”──、
アンプの理想は、増幅度を持ったワイアー(導線)だ、というこの表現は、
アメリカのオーディオ評論家、ジュリアン・ハーシュによるもの。
1970年代の後半ごろステレオ・レヴューに登場した、この言いまわしはなかなか巧みだと思う。

そのころも、ケーブルによる音の違いはすでに認識されていたけれど、いまほどではなかった。
いまでは、ケーブルでも音が変化するのだから……、と反論めいたことを言う人もいるかもしれないし、
そんな揚げ足とり的な反論ではなく、正面から、この表現には賛同できないという人もいるだろうけど、
でも、そういう人でも、この表現のうまさは認めるところだろう。

では、スピーカーについて、どうだろうか。
“straight wire with gain” 的な表現はあっただろうか。

あなたのめざしているスピーカー(音)は? という問いに、ほぼすべてのスピーカーエンジニアは、
「non coloration(色づけのない)」という答えがかえってくると、瀬川先生が以前書かれていた。

non coloration は理想にちがいない。ただ、それはスピーカーにかぎらない。
“straight wire with gain” のように、アンプのありかたを的確に表現した言葉とは、ニュアンスが異る。

スピーカーのありかたを、同じくらい、できればそれ以上に的確に表現したことばがうまれたら、
スピーカーの理想とはいったいどういうものなのか、スピーカーとはいったいどういうものなのか、
そういったことがらが明確になってくるはず。

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