真空管アンプの存在(その73)
人それぞれの考え方がある。
だから真空管のヒーターの点火についても、定電流方式はよくない、という人もいる。
ただ、不思議な理由づけで、定電流点火を否定されているのを、数年前、みかけた。
オーディオ関係の会社のサイトに掲載されていたもので、現在は削除されている。
だから、そこがどの会社なのか、そういったことの詳細についてはふれないが、
そこに定電流点火は真空管の寿命を短くする、とあり、そのことが否定の大きな理由だった、と記憶している。
真空管のヒーターの定格は、6.3V / 300mA、といったぐあいに規格表に載っている。
この規格の真空管だとヒーターの抵抗値は、オームの法則から6.3(V)÷0.3(A)=21(Ω) だ。
導線の直流抵抗は、その温度によって変化する。温度が増せば抵抗値も増える。
だから、定電流点火に否定的な人は、21Ωの抵抗値が、ヒーターがあたたまってくると抵抗値が増す。
21Ωよりも高くなる。そこに定電流点火で300mAの電流を流し込んだら、仮に25Ωになっているなら、
25(Ω)×0.3(A)=7.5(V)で、ヒーターにかかる電圧が7.5Vになってしまい、
定格を超えてしまうから絶対に定電流点火を行なってはいけない、とあった。
だから、この人は、真空管の寿命のためにも定電圧点火がいいということだった。
定電圧点火なら、ヒーターにかかる電圧はつねに6.3V。ヒーターの抵抗値が増してもそれは変らない。
ヒーターに流れる電流が減るだけ、だから、という。
真空管を扱い馴れている人には不要な説明だろうが、真空管の規格表に載っている定格値は、
ヒーターが十分に暖まった状態でのものだ、ということ。
少なくとも真空管の全盛時代に製造されていたモノに関しては、そうだ。
暖まってヒーターの抵抗値が増した状態において、6.3V / 300mAとなる。
言いかえれば、暖まったヒーターの抵抗値が、上記の規格の真空管であれば21Ωということだ。
冷たい状態ならば21Ωよりも低い値になっている。
仮に19Ωになっているとしよう。
定電流点火ならば、ヒーターの抵抗値に関係なく300mAの電流を流す。
つまりこのときヒーター電圧は、19(Ω)×0.3(A)=5.7(V)。
定電圧点火ならば、ヒーターの抵抗値に関係なく6.3Vの電圧をかける。
つまりこのときヒーター電流は、6.3(V)÷19(Ω)=0.33157…(A)。
ヒーター電力でみると、定電流点火は5.7(V)×0.3(A)=1.71(W)。定電圧点火は6.3(V)×0.33(A)=2.079(W)。
定格値で計算すると、6.3(V)×0.3(A)=1.89(W)。
定電圧点火では、ヒーターが冷たい状態では定格値を超える電流(パワー)が加わることになる。
定電流点火では、定格値よりも小さな電力(パワー)だ。
どちらが真空管のヒーターが長持ちするかは、すぐにわかることだ。
REPLY))
定電圧回路や非制御電圧回路でヒーターを点灯させると突入電流が過大になります。
電熱器のニクロム線は常温から1000℃まで変化させても抵抗値は10%程度しか変化しませんが、白熱電球や真空管のヒーターに使われているタングステン等は常温から1000℃まで温まると4倍以上抵抗値が変化します。つまり常温では定格時の1/4の抵抗値になるので突入電流は4倍になります。
この熱ストレスで白熱球は切れたり寿命が短くなります。 真空管も同様です。
でも、定電流回路では通常の定格使用時も余分な電圧降下が必要でエコでありません。 尤も真空管使うことがエコでないとも云えますが、でも無駄は少ないに越したことはありません。 また、真空管の劣化が進んでヒーター抵抗値が増加した時の電圧上昇は寿命を短くするかも知れません。 定電流では抵抗値が増える分電力も大きくなりますので、P=I*I*Rですから。 一方定電圧ではP=E*E/Rなので電力は減少します。 理想としては、突入時に定電流動作させて通常時は定電圧動作させれば良いでしょう。
LED点灯用などのAC-12VDCスイッチング電源の出力を徐々に上昇する様に工夫すれば良いのです。
出力電圧検出調整用の抵抗や半固定ボリュウムに出力からコンデンサと直列の保護抵抗を追加して最初は低電圧で徐々に数十秒で規格電圧になる様に帰還する様に改造すれば突入電流は定格電流程度になります。コンデンサの容量で時間は調整すればOKです。 トランジスタのベースにコンデンサを付けて用いれば容量は1/100以下に出来ます。小信号用のトランジスタなので10円程度です。コンデンサも小型で安価にできるので総合的にスペースやコストダウンできます。