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Date: 2月 16th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続々・モジュール構成について)

JC2はほんとうにゲインが高いのだろうか。
オーバーオールで51.4dBのゲインは、同時代のアンプと比較してみて高いといえるだろうか。

ステレオサウンド別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の’76年度版の実測値を書き出してみよう。
括弧内の数字は最初の値がオーバーオールのゲイン、後の値がフォノイコライザーのゲインである。

アキュフェーズ:C200X(59.8dB、39.7dB)
デンオン:PRA1000B(41.5dB、39.4dB)
ダイヤトーン:DA-P10(54.1dB、37.2dB)
ラックス:C1010(51.8dB、35.6dB)
パイオニア:Exclusive C3(58.3dB、35.8dB)
ヤマハ:C2(51.3dB、35.2dB)
GAS:Thaedra(61.8dB、41.8dB)
マランツ:Model 3600(60.1dB、39.5dB)
マッキントッシュ:C28(63.8dB、42.5dB)

これらの値をみていくと、JC2のゲインは平均的な値であり、高くないことがわかる。
けれど、実際にJC2を使ってみると、ゲインを高く感じることがある。

コントロールアンプのゲインが適切かそれとも高い(もしくは低い)と感じるかは、
コントロールアンプのゲインだけで決るものではなく、
パワーアンプのゲイン、それにスピーカーの出力音圧レベルも関係してくる。

そしてもうひとつボリュウムの減衰量も大きく関係している。

Date: 2月 16th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々続々・バッファーアンプについて)

バッファーアンプの追加によってLNP2の音はどう変化するのかを正確に知るには、
同一ロットのLNP2を二台用意して、片方にバッファーアンプを追加して聴くという方法しかない。

それもできれば新品のLNP2でやりたい。
LNP2は1973年に登場し1983年に製造中止になっている。

最初のころのLNP2はもう40年前のアンプということになり、
最後のロットのモノでも30年前のアンプである。

これだけの年月が経っているLNP2(に限らない、どんなアンプでもそうだが)だと、
どんな人がどういう使い方をしてきたかによって、そのくたびれ方は違ってくる。
シリアルナンバーの近いLNP2を二台用意したところで、
比較試聴してみれば、意外にその差が大きいこともあり得ることに気づかされる。

ようするにいまとなっては、自分の耳で正確にバッファーアンプ追加のメリットを試聴することは、
無理な話である。

けれど、とにかくステレオサウンドにあったシリアルナンバー1614のLNP2は何度も聴いている。
その音のイメージはしっかりと掴んでいる。
他のコントロールアンプとも比較したこともある。

そういう経験を元に判断するに、バッファーアンプを追加することで、
LNP2の中低域あたりの量感がうまいこと増すように、私は感じている。

他にもバッファーアンプを追加したことによるメリットではないかと感じている点もあるけれど、
それはもしかすると気のせいといえるレベルかもしれないが、
この中低域あたりの量感に関しては、かなりはっきりといえる。

バッファーアンプなしのLNP2は中低域あたりの量感が抑えられ気味に、
バッファーアンプを追加したLNP2を聴いた私の耳に、そう聴こえる。

Date: 2月 15th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その2)

私も変換ミスはけっこうやっているほうなので、あまりとやかくいえないけれど、
それでもオーディオマニアが、試聴を視聴としているのをみると、やっぱりいいたくなる。

試聴が視聴となるのは変換ミスなのだが、
それでも視聴が使われるのが増えてきているをみていると、
時代は変ってきているんだなぁ……、と思うこともあるし、
試聴ではなく視聴を使う人は、若い人なのだろうか……、ともおもっていたことがある。

だから、あるオーディオ店でのディスクをかけ替け、
なぜそうするのかの理由をきいて、勝手に若い人相手の時なんだろう、とおもっていた。

少なくとも私と同世代までの人であれば、試聴はやはり試聴であり、
試聴のためには同じディスクを何度もかけるのが常識であり、
それは自分のシステムを調整していくときでも、
同じディスクを何度も何度もしつこく聴いていくものだとおもっていた。

私が高校生のとき、熊本のオーディオ店の招きで定期的に来られていた瀬川先生も、
いつもレコードを複数枚を持ってこられて、
その中からさらに数枚を選んで、オーディオ機器を交換したら、同じところをかけてくれていた。

ステレオサウンドでの試聴もまったくそうである。
同じディスクの同じところも何度も何度も聴いていく。

これが試聴の基本的なことであり、
ほとんどのオーディオマニアがそうしていると思っていたのだが、
どうもそうではないことがわかってきた。

Date: 2月 15th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々続・バッファーアンプについて)

続々バッファーアンプを追加することでLNP2の値段がどのくらい高くなるのかも、
当時はすごく気になっていた。
もともと高価なコントロールアンプであるLNP2がバッファーアンプを追加すれば、もっと高価になる。

モジュール一個の値段が10万円だとしたら、単純計算でも20万円のアップになる。
実際はもっとかかっていたのかもしれない。

1970年代後半の20万円は、いまの20万円よりもずっと高い20万円だった。
その20万円を追加して、バッファーアンプという、いわば余分な回路を追加する。

20万円出して、足りなかった回路を追加するのではない。
バッファーアンプがなくとも、LNP2はLNP2である。

日本にどれだけのバッファーアンプ搭載のLNP2があるのはわからない。
けれど意外に多いような気がする。
バッファーアンプ搭載のLNP2を所有している人を何人か知っている。

瀬川先生のことばを信じて、バッファーアンプを追加した人がいるわけだ。
私も信じていたひとりである。

だからステレオサウンドの試聴室でバッファーアンプを追加したLNP2が聴けるのは嬉しかった。
けれど、シリアルナンバー1614のLNP2の音を聴いても、
それだけではバッファーアンプがあるのとないのとでの音の違いについてはわからない。

ステレオサウンド 68号の記事のために四台のLNP2が一時期に集まった。
けれどこれらはロットの違うLNP2であり、
シリアルナンバー1614のLNP2とシリアルナンバー2667のLNP2を比較したところで、
細部の違いがずいぶんあるLNP2なのだから、
結局のところバッファーアンプによる「音質向上」を確認することはできなかった。

Date: 2月 15th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々・バッファーアンプについて)

シリアルナンバー1614のLNP2がバッファーアンプ仕様になっていたのは、
瀬川先生の意見を取り入れてのことである。

瀬川先生はLNP2についてふれるときに、バッファーアンプを追加したほうが音質が向上すると書かれていた。
たとえばステレオサウンド別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の78年度版でも、
「できればオプション(別売)のバッファーアンプを回路に追加してもらう方が音質が向上する。」
と書かれている。

私も何度か、瀬川先生のこれらの意見を読んでは、
いつの日かLNP2を手に入れるときが来たら、バッファーアンプを追加してもらうんだ、と夢想していた。

ただ「音質が向上する」とは書かれていても、具体的にどういうところが変るのかについては、
具体的に書かれたのを見たことがない。

このことはずっと気になっていた。
バッファーアンプを追加して、音が良くなるようには考えにくい。
それでも何度か瀬川先生が書かれているだから、きちんとした理由があるはずだ。
それが、どういうことなのか、どういう変化(向上)なのかがわからなかったからだ。

私がバッファーアンプを追加したLNP2を聴いたのは、
ステレオサウンドのシリアルナンバー1614のLNP2が最初である。

Date: 2月 15th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続・モジュール構成について)

ヘッドアンプ・モジュールのJC1SMのゲインの正確な値はわからないが、極端には高くないはずだ。
おそらく30dBぐらいだろう。

JC1DCにもJC1ACもゲイン切替えが可能だった。
JC1SMは、どうだったろうか。

仮にゲインが30dBあったとして、JC1SM搭載のJC2のオーバーオールのゲインは81.4dBとなる。
JC2のカタログによると、フォノイコライザーのゲインは36dB、ラインアンプのゲインは21dBである。

21dBという値は、HIGHポジションのときであり、
フロントパネルのレバーをLOWにすると11dBとなり、ここで-10dBとなる。

あとはフロントパネルの中央近くにある左右のレベルコントロールを使う。
1dBステップの、このロータリスイッチは+5dB、-4dB、つまり9dB分の調整が可能である。
ここで-4dBにセットすれば、14dBの減衰量が稼げる。

ただしこの左右チャンネルのレベルコントロールは、ラインアンプのNFB量を変えているために、
-4dBにすれば、0dBのポジション使用時よりも4dB余分にNFBがかかることになる。
+5dBでは5dB分だけNFB量が減る。

このNFB量の変化はゲインの変化だけではなく、音も変化する。

これらのことはおそらくすでに試されている、と思う。
その上でゲインが高すぎる、と感じられているのだろう。

ここではっきりしておきたいのは、JC2のゲインが絶対的に高すぎるのか、ということがある。
JC1SMを搭載して80dBのゲイン。実はLNP2のオーバーオールのゲインも80dBである。

Date: 2月 15th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(モジュール構成について)

マークレビンソンのNP2のバッファーアンプについて、いま書いているところだが、
ここである方からJC2についての質問の投稿があった。
メールアドレスもあったので、直接メールで返事をしようかとも思ったけれど、
JC2のことで困っている方が、もしかすると他にもおられるかもしれない、と思い、
こちらで書くことにした。

質問された方によると、JC2のゲインが高すぎる、とまずある。
JC2のゲインは実測値で、オーバーオールで51.4dB、フォノイコライザーが32.5dB、
ML1になってからはオーバーオールで58.8dB、フォノイコライザーが37.8dBである。
いずれもステレオサウンド別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」での値だ。

JC2にしてもML1にしても極端に高い値ではない。
なのになぜゲインが高すぎるのかというと、
その方のJC2にはMCカートリッジ用のヘッドアンプ・モジュールJC1SMが搭載されているからだ。

マークレビンソンの初期のラインナップはLNP2、JC2の他に、ヘッドアンプのJC1があり、
JC1には三つのヴァリエーションがあった。
JC1ACが一般的なAC電源仕様、JC1DCがバッテリー電源仕様、JC1SMがJC2専用となっている。

JC2のモジュール配置は左側からフォノイコライザー・モジュール(×2)、ラインアンプモジュール(×2)、
フォノイコライザー・モジュール用の電源フィルターとなっていて、
左右のチャンネルのフォノイコライザー・モジュールは近接しておらず、
JC1SM搭載のためのスペースが空けられている。

JC2のゲインを落すには、ではどうすればいいのか。
JC1SMのモジュールを引き抜いても簡単には解決しない。
JC1SMを抜いてしまうと、アナログディスクはそのままでは聴けない。
配線をやり直す必要がある。

これは少々面倒である。
ではどうすればいいのか。

Date: 2月 14th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson
1 msg

Mark Levinson LNP-2(続・バッファーアンプについて)

ステレオサウンドのリファレンスアンプとして活躍したシリアルナンバー1614のLNP2には、
このバッファーアンプが取り付けられていた。

バッファーアンプだからゲインは0dB。
バッファーアンプ用にLD2モジュールを一組追加しても、LNP2のトータルゲインに変化はない。

LNP2はローノイズであることを誇っていたアンプだが、
モジュールがひとつ追加されれば、それだけノイズは増えることになる。

それに電源から見た時にアンプのモジュールが少ないことは、音質的なメリットでもある。

JC2を使っていたことがある。
少しばかり特殊なJC2だった。
このJC2については、いずれ書くかもしれない。

JC2もLNP2同様、モジュール構成になっている。
そこでライン入力(つまりCD)で聴くとき、フォノイコライザーのモジュールを外した状態にする。
これだけではっきりと音は良くなることが確認できる。

これは何もマークレビンソンのコントロールアンプだけの話ではなく、
たとえば、これも使っていたアンプなのだが、GASのThaedraでもフォノイコライザーの基板を抜けば、
それだけでライン入力の音は良くなる。

このことについてはメーカーも気づいていて、
国内メーカーのアンプでは入力セレクターをPHONO以外にしているときには、
フォノイコライザーへの電源を落す機能を採用しているモノもあった。

信号が通過しないモジュール(アンプ回路)があるだけで、
音はあきらかに変化する(悪くなる傾向にある)。

Date: 2月 14th, 2014
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その1)

ドイツにLightweight(ライトウェイト)というメーカーがある。

自転車のホイールを専門としている。
カーボンをリムに使用したライトウェイトのホイールは、最高のホイールとして高い評価を得ている。

プロ選手も自費で購入し、Lightweightのロゴを消してレースで使用している、
そういうホイールである。

値段もかなりのものである。
前後ペアで、最も高いモノだと81万円(税別)、
その他のモノも前後ペアで60万円を超える。
いうまでもなく自転車一台の価格ではなく、あくまでもホイールだけの価格である。

ライトウェイトは、これまでホイールのみをつくってきた。
そのライトウェイトから今年フレームが発表された。
やはりホイール同様、カーボンを使ったフレームである。
価格は61万円。ホイールよりもほんのちょっとだけ安い。

このフレームには、”FRAME MY WHEELS”とプリントされている。

自転車はまずフレームを決め、使用パーツを選んでいく。
そういうものだと思ってきた。いまもそう思っているけれど、
ライトウェイのフレームにある”FRAME MY WHEELS”を見ると、
自転車の主役というか、もっとも大事なのは、回転体であるホイールであることに気づかされる。

ライトウェイトのフレームは、
最高のホイールという評価を得ている同社のホイールのためのフレームなのである。

自転車もオーディオと同じで、相性というものがある。
大きくとらえればフレームとホイールの相性がある。
オーディオにおけるスピーカーとアンプの相性のようなものである。

Date: 2月 14th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(バッファーアンプについて)

LNP2にさほど関心のない人にとってはどうでもいいことなのだが、
LNP2に憧れてきた者にとっては、
バッファーアンプを取り付けたLNP2は、ほんとうに音質上のメリットがあるのか、と話題になることがある。

LNP2には片チャンネルあたり三つのモジュールを搭載している。
その他にメーター用のモジュールがあり、
両チャンネルで計八つのモジュール構成となる。

天板をとってみると、モジュールが取り付けられているメインのプリント基板には、
あと二つ、モジュールを取り付けられるようになっている。
ここにバッファーアンプとして、モジュールを追加できる。

つまりアナログディスクを聴く場合には、
標準仕様のLNP2では三つのモジュールを信号が通過、
バッファーアンプを追加したLNP2では四つのモジュールを信号が通過することになる。

LNP2はトーンコントロール、モードセレクターなど、
コントロールアンプと呼ぶに必要な機能はもっている。

マークレビンソンからはJC2という、コントロール機能を簡略化した薄型のコントロールアンプもあった。
LNP2をコントロールアンプと呼ぶならば、
JC2はコントロールアンプとは呼びにくい。プリアンプのほうがしっくりくる。

LNP2、JC2が日本に入ってきたころから、
日本のアンプにはトーンコントロールを省いたり、
搭載していても信号がトーンコントロール回路をパスするディフィートスイッチがつけられたりして、
信号経路を少しでも単純化し、音の劣化を最少限にとどめようとする傾向がはっきりとしてきた。

Date: 2月 14th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(serial No.1001・その2)

マークレビンソンの本をつくることになったら、
それからハイエンドオーディオについての本をつくることになったら、
なにがなんでもLNP2のシリアルナンバー1001そのものを取材することになる。

マークレビンソンの本をつくるのに、シリアルナンバー1001のLNP2についての記事がなければ、
あえてつくる意味があるのだろうか、とも私は思う。

シリアルナンバー1001のLNP2がアメリカにある、というのならば、
もしくは所在がわからないというのであれば、
諦めざるをえないわけだが、シリアルナンバー1001のLNP2は日本にある。

なぜ日本にあるのか。
ステレオサウンドを以前から読まれている方ならばご存知である。

シリアルナンバー1001のLNP2は、マーク・レヴィンソンから、
日本の輸入元であったR.F.エンタープライゼスの社長・中西康雄氏に、
感謝の意を込めて贈られているからだ。

LNP2がどれだけつくられたのかは、シリアルナンバーからおおよその数字はわかる。
ステレオサウンド 68号掲載の岡先生による「LNP-2 Story」には、
シリアルナンバー2667のLNP2が撮影されている。

フォノイコライザーにローノイズタイプのLD3モジュールが搭載されている仕様のLNP2であり、
この2667のLNP2は、ほぼ最終モデルであるから、
シリアルナンバーが1001から始まっているわけで、1000番はいわゆる捨て番であり、
1600台以上のLNP2が作られたことになる。

このうちの半数は、日本に輸入されたのではないか、と思っている。
根拠はなにもないし、その手の資料もないから、単なる私の推測でしかないけれど、
1970年代後半から1980年代前半のステレオサウンドをはじめとするオーディオ雑誌の、
ユーザー訪問記事では、LNP2がかなりの頻度で登場していた。

Date: 2月 13th, 2014
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その6)

録音・再生というオーディオの系は、
音を電気信号に変換し記録し、その記録した電気信号をふたたび音に変換するものであり、
記録することは可能でも、記憶することはできない系である。

エレクトロニクスとメカニズムで構成されるオーディオの系だから、
記録は可能でも記憶はできないのは理論的にも技術的にも当然のことなのだが、
それでもほんとうにオーディオは記憶できないものなのか、と思うようになったのは、
「Harkness」でソニー・ロリンズのSaxophone Colossusを聴いてからであり、
聴くたびに実感している。

私の「Harkness」は何度も書いているように、岩崎先生が鳴らされていたそのものである。
だから別項「終のスピーカー」でも書いている。

Saxophone Colossusを鳴らすと、
岩崎先生がどうこのレコードを聴かれていたのか、
もっといえばSaxophone Colossusとどう対峙されていたのかが、感覚的に伝わってくる鳴り方をする。

それはもう「Harkness」というスピーカーシステムが、
これに搭載されているD130というユニットが、岩崎先生の聴き方・鳴らし方を記憶しているかのようである。

そんなのは、岩崎千明という男の鳴らし方のクセが残っているだけのこと。
そう考える人がいるのも無理もない。
だが聴けば、そうとしか思えない音が鳴ってくる。

なぜ 「Harkness」は記憶しているのか。
「Harkness」は岩崎先生のリスニングルームにあって、
岩崎先生が鳴らされる音を聴いていたからだ。
私は、これで納得している。

Date: 2月 12th, 2014
Cate: 楽しみ方, 老い

(改めておもう)歳を重ねるということ

オーディオをいつかはやめるかも……、
そうおもっている人はいる。
どのくらいいるのかはわからないけれど、きっといる。

オーディオにこれまで熱中してきたけれど、そろそろ、そんな予感がしている。
だから、そんな言葉が出てくるのか。

昨日もある人とそういう話になった。

なにもやめることはない、とおもう。
休めばいいだけのことだ。

それに歳を重ねなければ出せない音があることを、私は知っている。
これは2008年9月27日にも書いたことである。

9月27日は、菅野先生の誕生日であるから、これを書いた。
これをあらめたておもっている。

どんなにオーディオの才能があり、知識もあり、知恵もあり、
経済的に恵まれていようとも、歳を重ねないとたどり着けない領域の音が確実にある。

歳をとれば、その「音」が出せるという保証はないけれど、
歳を重ねなければ出せないということは、はっきりとしている。

Date: 2月 12th, 2014
Cate: ラック

ラックのこと(その10)

ヤマハのGTR1Bには脚と呼べるものがない。
底板がそのまま床に触れている。
そのため床の条件によっては、どこかすこし浮きがちになる。

これをそのままほっておくわけにはいかない。
せっかくの重量級のラックがガタついていては、あえてGTR1Bを使う意味が薄れてしまう。

ガタツキを簡単にとる方法は浮いている箇所にクサビ状のものを挿し込む。
ガタツキはこれでとれるけれど、
このクサビにどういった材質のものを使うのか、
それにクサビをいれても、浮いている面積が広い場合は、
床とGTR1Bの底板との間に、わずかな隙間が生じてしまう。

そうなると底板が床とべったり接している部分と隙間が生じている部分、クサビを介して接している部分とができる。
これはけっして望ましいとはいえない。

そうなると……、と頭を使う。

こうやってGTR1Bにしても、ただポンと床に置いて、
そのGTR1Bの上にまたポンとオーディオ機器を置くのと、
これまで書いてきたこと、また書いていないことも含めて、
きっちりとセッティングしたのとでは、結果として出てくる音に差が生じるのは当然のことである。

これらのことをラックの使いこなしと書いてしまうと、
少々おかしなことになるが、GTR1Bに限らず、世評の高いラックを購入したからといって、
それだけでうまくいくわけがないことは、私があえて書くまでもないことのはずだ。

Date: 2月 12th, 2014
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(続・音を鳴らさないゆえの楽しさ)

昔、山中先生がいわれたことがある。

われわれが若いころは、とにかくいまのように情報がなかった、少なかった。
オーディオ雑誌に載る海外のオーディオ機器の写真にしても、
いまのようにカラー写真で細部まで見えるのとは違って、白黒で目の粗い、そんな写真だった。
でも、その写真を、文字通り穴が開くほどじっと見ていた。
ここはどうなっているんだろうかと、知識を総動員して見えない部分を想像で補ってきた。

こういった主旨のことだった。

いまはどんなことでも知りたいと思えば、たいていのことはインターネットで検索すればわかる。
画像も充分すぎるほどある場合もある。

山中先生が若いころのような粗い、低解像度の写真ではない。
(山中先生は1932年生れ)

その意味では恵まれている。
けれど、山中先生がいわれていたような接し方をしているとはいえない。

いまのほうが 情報量は豊かなのだから、そんなことはそもそも必要ではないし、
時代が違ってきているのに、一緒くたに考える方がおかしい、という反論もあるのはわかっている。

それでも私が若いころは、山中先生と同じようなことをやっていた。
(私は1963年生れ)
山中先生の若いころとくらべると、オーディオ雑誌の写真もずいぶんまともなになってきていたとはいえ、
いまのようにカラーページが多いわけではなく、
紙質もあまりよくなく、モノクロの写真は細部が不鮮明であることも少なくなかった。

だからとにかくじっと見つめていた。
インターネットもない。他に情報を得る手段がないわけだから、
とにかくそこにある写真を見つめるしかないのだ。

そして何度も同じ文章を読んできた。
そうやって想像力を鍛えていた、といえよう。

それにこれが大事なだが、想像力を鍛えてくれる文章が、
私が若かったころには、あったことだ。

話すよりも音を鳴らすだけでの方が楽な面もある。
面倒なこともある。

音を鳴らさないことにこだわるつもりはないし、
必要があって、条件が整えば音を出していく会もやりたい。

それでも音を出さずに、という会を続けていくのがあってもいいと思っているし、
音を鳴らさないのがいい、といってくれる人もいる。