Archive for 10月, 2018

Date: 10月 7th, 2018
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その32)

ではアルテックの811B、511Bはバッフルに取り付ければ、
それで十分なのか、と問われれば、検討しなければならないことはまだまだある。

バッフルの材質、サイズ、厚みも関係してくるけれど、
そのバッフルを、どう置くかも非常に重要なポイントである。

以前に書いていることだが、エンクロージュアの天板の上に、
アナログディスク再生に使うスタビライザーを乗せてみる。

できれば同じスタビライザーを、左右のスピーカーの天板の上に一つずつ、同じ位置に乗せる。
スタビライザーの重量はいろいろあるが、500g程度のモノでも、ずいぶんと音は変化する。

スタビライザーを乗せることによって、天板の振動モードが変化するためである。
同じスタビライザーでも置く位置を変えたり、
同じ位置でももっと重いモノ、軽いモノにすれば、またはまた変化する。
もちろんスタビライザーの材質による変化もある。

スタビライザーの大きさ、重量程度でも、音の変化は大きい。
ホーン型スピーカーをともなると、ホーンとドライバーの重さだけでもスタビライザーよりもずっと重い。
アルテックの811Bはカタログには4.1kg、806-8Aは2.6kgとある。
トータルで6.7kg。

これだけでもスタビライザーよりもずっと重いし、
エンクロージュア天板との接触する面の形状、面積も違う。

それにスタビライザーはほぼ均一に重量がかかるのに対し、
ホーンとドライバーの組合せでは、そういうわけにはいかない。

つまりホーン型スピーカーを鳴らさない状態、
つまり天板に、スピーカーケーブルを接続せずに乗せただけの状態での音を、
まず聴いてみると、よくわかる。

そのうえで、ホーンとドライバーの位置を前後、そして左右に動かしてみる。
これだけでも音は変化していく。

ホーン型の場合、ウーファーとホーン(ドライバー)との音源の位置あわせということがいわれる。
この場合、音源の位置の相互関係によって音は変化するだけでなく、
天板の振動モードも同時に変化しての音の変化としてあらわれる。

つまり位置を変えるということは、少なくとも二つのパラメーターを変化させていることを、
まず認識しておくべきだ。

Date: 10月 6th, 2018
Cate: 世代

世代とオーディオ(その表現・その2)

「フツーにかわいい」と「かわいい」の違いはあるのだろうか。

かわいい(kawaii)について書かれたものが、川崎先生のブログに、ある。
アニメキャラクターとそのグッズにあるkawaii」、「kawaiiからわび・さびまでは相当に遠い」などがある。

「フツーにかわいい」と「かわいい」。
何が違うのか。

単に世代の違いだけなのか。
個人的には「フツーにかわいい」とはまず使わない。

けれど「フツーにかわいい」はよく耳にする。
変らないの……、
表現が世代によって違うだけなのか、と思いつつも、
「フツーにかわいい」と「かわいい」について考えていると、
それは無垢なところを持っているかどうかではないか、と思うようになってきた。

無垢なところがあるからこその「かわいい」であって、
無垢なところを持たない、表面だけでしかないものが「フツーにかわいい」なのかもしれない。

「フツーにかわいい」をよく使う人が、
「かわいい」と「フツーにかわいい」を使い分けているのかどうかは知らない。

使い分けているとしたら、無意識のうちに、
無垢なところがあるのかないのかを見極めてのことかもしれない──、とも思っている。

Date: 10月 6th, 2018
Cate: 楷書/草書

楷書か草書か(その6)

書における手本は、オーディオの世界ではないのか。
誰かの音は、それが優れている音であれば手本にはなる。

けれど臨書での手本とは少し違う。
臨書を手本となる書を見て書く。

けれどオーディオでは、それは無理である。

たとえばまったく同じ造りで同じ音響特性の部屋が二つある。
そしてどちらにも同じシステムが用意されている。

一つの部屋のシステムは、きちんと調整されていて見事な音が出ている。
その音を聴きながら、隣の同一の部屋、同一のシステムを、
一からセッティングしてチューニングして同じ音にもっていく。

オーディオに臨書があるとすれば、こういうことになるだろう。
けれどこんなことほぼ実現できない。

実現できたとしても、それはほんの一握りの人のものになってしまうだろう。

それでは、と、誰かに自分のシステムを一からセッティング、チューニングしてもらう。
その人の力量がほんものならば、同じシステムか、と思うほどの音が鳴ってくる。
その音をじっくりと聴く。

そしてシステムをバラす。
各オーディオ機器の接続を外し、
システム全体をいったん部屋から出す。

そして、文字通り一からセッティングすることから始める。
そこで、どこまでさっきまで鳴っていた音を再現できるか。

これが現実的な、オーディオの臨書的なことだろう。

簡単なことのように思われるかもしれないが、
調整してくれた人との力量に差があればあるほど、
同じにセッティングしたつもりでも、同じではなくて、
音も同じようには鳴ってくれない。

そこでもう一度、手本の音を、と思っても、
もうそれはなくなってしまっている。

Date: 10月 6th, 2018
Cate: 楷書/草書

楷書か草書か(その5)

書道の世界には、臨書というのがある。
手本となる書を見て、そのとおりに書くことである。

書の世界に詳しいわけではない。
それでも、「書の甲子園」といわれている国際高校生選抜書展があることくらいは知っているし、
そのレベルが、そうとうに高いことくらいは知っている。

私が通っていた高校には書道部はなかった(はず)。
書道部のレベルが、どのくらいなのかも当時は知らなかった。
いまごろになって知って、その高さに驚いている。

とともに、オーディオのレベルは……、とつい思ってしまう。
書の世界とオーディオの世界は、同一に語れない点がいくつもあるのは知っている。
それでも……、とどうしてもおもう。

なぜ、これほどまでに違うのか。
その理由は多岐にわたっていて、いくつもあげられるが、
そのひとつは臨書にあたるものが、オーディオにはない、といえるからだ。

Date: 10月 6th, 2018
Cate: ディスク/ブック

Yamaha, One Passion ヤマハデザインのDNA、そして未来

AXIS増刊として10月12日に「Yamaha, One Passion ヤマハデザインのDNA、そして未来」が出る。

ヤマハのオーディオのことが載っているのかどうかは、いまのところわからない。
別項「プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン」で、
ヤマハの新しいコントロールアンプのC5000のデザインが、
プリメインのデザインにしか見えない、と書いているところに、
「Yamaha, One Passion ヤマハデザインのDNA、そして未来」の発売。

おもしろいタイミングで出てくる、と思っている。

それとは関係なく、私が面白そうと期待しているのが、
AXISに掲載されたヤマハのシリーズ広告の記事である。

そこには「これは単なる広告ではない。われわれの表現の実験場」とある。
以前ステレオサウンドは、広告の人気投票を行っていた。
巻末の記事で、ベスト3が発表されていた。

ヤマハ(当時は日本楽器製造)は、ベスト3内にほぼ毎回入っていた。
それ以前から、ヤマハのオーディオの広告は、表現の実験場だったのかもしれない。

Date: 10月 6th, 2018
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その31)

アルテックのホーンを見て気づくのは、
811B、511B、これらのホーンは開口部の周囲にバッフルに取り付けるための縁がある。

811、511と同じセクトラルホーンでも、311-60、311-90には、縁はない。
かわりに、というか、311にはデッドニングが施してある。

もっとも1978年に発売になった511Eは、アクアプラスによるデッドニングが施されている。

とはいえアルテックのホーンには、ホーンの形状ではなく、
デッドニングが施されているモノとそうでないモノとがあり、
デッドニングが施されていないホーンは、バッフルに取り付けることが前提となっていると見るべきだ。

ホーンをどう置くか。
エンクロージュアに上に置くにしても、直接置くのか、天板とホーンとのあいだになにかを挿むのか。
音は、とうぜん変ってくる。

どういうふうに置くのがいいのか。
それは実際に音を聴いて判断するわけだが、
セッティングにおいて、常に時間の余裕があるとはかぎらない。

自宅で、自分のための音であるならば、そんなことは関係なくても、
audio wednesdayのようなことをやっていると、時間の余裕はなく、
てきぱきとやっていくしかない。

そういう場合、ホーンの置き方のチェックをどうするか、といえば、
置いた状態でホーンの開口部の縁を指で弾く。

金属音がするわけだが、その音と余韻の長さが、
天板に直接置いた場合、何かを挿んだ場合、
挿んだものの種類によっても変化してくる。

こういうことによって判断する場合も、時としてある。
そのくらいホーンの鳴きは、セッティングによって変化するわけだ。
特にデッドニングなしの金属ホーンは、顕著に違いが出る。

アルテックの811、511はバッフルに取り付けて、というのが、昔からの常識であり、
実際にバッフルがあるとないとでは、ホーンの鳴きがが変る。

Date: 10月 5th, 2018
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その30)

今年は、手を動かした、といえる一年になりそうである。
野上さんのところのスピーカー作りの手伝いから、今年は始まったといえる。

喫茶茶会記でのaudio wednesday用に直列型ネットワークも作った。
そして今回、以前からやりたかった、ホーンとバッフルとの組合せをやった。

ホーン型スピーカーの使いこなしで、意外に見過されがちなのが、
そのセッティングである。

たとえばJBLの537-500と375の組合せ。
ホーンの開口部は円、ドライバーそうだから、
そのままエンクロージュアの上に置いたら、重量があるためそんなに簡単に……、とはならないが、
転がってしまう形状である。
しかもホーンの開口部の直径が大きいから、そのままでは開口部は斜め上を向く。

2397+2440だと、そのままでは斜め下を向くことになる。
少なくともホーン開口部側をもちあげないと、そのままでは使えない。

それにJBLのスラントプレートの音響レンズの場合、
レンズ後方にバッフルが必要とするわけだから、
そのままでも鳴らせるけれど、バッフル前提となる。

JBLでは2インチ・スロートのドライバー用の可変式スタンドとして2505があった。
537-500+375では、375とホーンと2305を通しボルトで固定している。
同じ形状の、もっと大型のスタンドが蜂の巣状の音響レンズの後を支える。

このふたつのスタンドが用意されているから、
537-500+375は、多くのオーディオマニアが手を出したともいえるのでないだろうか。
JBL純正のスタンドがまったく用意されていなかったら、どうなっていただろうか。

JBLはHL89用にMA25というバッフル板も用意していた。
といってもすべてのホーンに対して、なんらかのスタンドがあったわけではなく、
2397では、使い手の工夫が必要となる。

Date: 10月 4th, 2018
Cate: Noise Control/Noise Design

聴感上のS/N比と聴感上のfレンジ(その13)

聴感上のS/N比をよくするには、
スピーカーの場合、不要輻射を極力抑えることは有効である。

そのことからすると、喫茶茶会記のホーンにバッフルを取り付けたことは、
不要輻射面積を増やすことでもあり、
そのことによる聴感上のS/N比の劣化はある、といえばある。

それでもアルテックの811Bホーンは、
そのままではホーンの縁を指ではじければ、けっこうな鳴きがある。

今回は30mm厚の合板をバッフルとした。
バッフルに取り付けたからといって、鳴きが完全に無くなるわけではないが、
鳴きの余韻の長さは違ってくる。

このことによる聴感上のS/N比は、少しよくなっている。
それはホーンとドライバーの置き方、支え方も変更した。

これまでの置き方よりも、エンクロージュアとの接触面積は、そうとうに小さくなっている。
それにドライバーの横に置いていた075を、インライン配置にしたことで、
ドライバーの周りがすっきりと片づいている。

バッフル板、支持のための部材を含めると、これまでよりも天板への荷重は重くなっている。

それによるエンクロージュアの天板の振動は、測定しているわけではないが、
ずいぶんと変化している。

天板の振動の変化は、音場感の変化にもつながる。
バッフルによる不要輻射面積が増えたことに関しては、
次回、対応する予定でいる。

Date: 10月 4th, 2018
Cate: audio wednesday

第94回audio wednesdayのお知らせ(歌謡曲を聴く)

11月のaudio wednesdayは、7日。
昨晩のaudio wednesdayは、アルテックの811Bにバッフルを付けて、
三つのユニットすべてをインライン配置にする、というテーマだった。

当日夕方から作業を開始したけれど、
大きく加工しなければならないところがあって、昨晩は結局音を出せなかった。

私は作業をしながら、来てくださった方たちはとしゃべっていた。
他愛ないオーディオの話は、これはこれで楽しい。

21時すぎまで作業していたければ、工具を買ってこないと効率が上がらないで、終了。
今日、午後から喫茶茶会記に行き、作業を終らせてきた。

仕上げは、後日やるとして、組み上がっての音出し。
時間のないことなので、セッティングは喫茶茶会記の通常のまま。
アンプ、CDプレーヤーも電源を入れてすぐの音出し。

それでも、あきからに良さが感じられる。
音の伸びが、とにかくいい。
フォルティシモで、ぐんと音がのびる。

細かいセッティングではないし、気になる点も残っているけれど、
少なくともバッフルとインライン配置の採用は、いい結果をもたらしてくれそうである。

なので11月7日のaudio wednesdayは、きちんとしたセッティング、
直列型ネットワークでの音出しになる。
仕上げを含めて、細かな詰めも済んでいる予定。

テーマは、歌謡曲である。
昨晩、そういうリクエストがあったからだ。

J-Popを含めて、日本語の歌を聴く。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時からです。

Date: 10月 3rd, 2018
Cate: 進歩・進化

メーカーとしての旬(その5)

オーディオメーカーの旬ということを考えるようになったのは、
フランスのオーディオメーカー、マイクロメガの1990年代前半の製品を見て聴いて感じたことだった。

そのころのモデルの後継機種は存在しないが、マイクロメガは、いまでは輸入されていないが、いまも活動している。

あのころはMicroAmpというパワーアンプが、特に印象に残っている。
片手で持てるサイズで、A級動作。
リアパネルいっぱいにヒートシンクのフィンが伸びていた。

筐体の奥行きの1/3くらいはヒートシンクのような感じさえ受けた。
形状は違うものの、なんとなくマークレビンソンのML2のミニサイズのようにも感じた。

MicroAmpと同寸法の筐体で、コントロールアンプ、D/Aコンバーター、CDトランスポートもあった。
MicroAmpのヒートシンクは後に飛び出ているかっこうだから、
すべてを積み重ねても放熱に影響はしなかった。

このシリーズに触って、音を聴いて、
「旬なんだなぁ、このメーカーは」ということを思っていた。
それまでは旬ということについて考えることはなかった。
それから、いくつかのメーカーの旬について、ふり返ってみるようになった。

たとえばマークレビンソン。
LNP2、JC2によって、登場時から話題になっていた。
LEMOコネクターを採用したLタイプ、それから初のパワーアンプのML2、
ハートレー、QUAD、デッカを組み合わせた大がかりなシステムHQD、
JC2(ML1)をモノーラル化したML6、
それまでのモジュール構成を一変したML7とそのモノーラルヴァージョンのML6A、
ここまでマークレビンソンの勢いは続いていた。

でも、そのころは、勢いがある、と感じていたが、
旬というふうには感じていなかった。

Date: 10月 2nd, 2018
Cate: デザイン

簡潔だから完結するのか(デザインの強度・その1)

この半年ほど感心しているのが、ポケットモンスターのキャラクターのピカチュウである。
ピカチュウの説明は要らないだろう。

電車に乗っているとき、街中を歩いているとき、
若い女性のカバンに、ピカチュウがついているものを、割と見る。

そういった若い女性が好んで行きそうな雑貨店には、
ピカチュウをモチーフとした、いろんなものが売っている。

ぬいぐるみだけでなく、小物入れや財布などなど、
ピカチュウはさまざまな形態になっている。

それでもパッとみて、ピカチュウはピカチュウであり、
ピカチュウの特質を、ほとんどの、そういったものは損っていない。

これは、意外にすごいことではないかのか──、
ここ半年ほど、そんなことを考えていたりする。

つまりピカチュウは、デザインされている。
ピカチュウこそグッドデザインといえるのではないか、とも思いはじめている。

そんなことを思っていた先週末、やはり電車に乗っていた。
目的の駅に着いて改札に向っていたら、
前を歩いている人のTシャツの背中のイラストが視界に入ってきた。

太い黒い線で描かれた女性の顔である。
ウェーブのかかった紙、顔の輪郭、赤く塗られた唇、それにホクロがひとつ。
それだけの、実にシンプルなイラストだった。

目も鼻も耳も、そこには描かれていない。
それが誰なのか、Tシャツには、文字もない。

けれど、すぐに誰なのかはわかる。
マリリン・モンローである。

これ以上の省略は無理、というほどのシンプルなイラストなのに、
モンローだと、わかる。

とういことは、このイラストはデザインといえるのか、
さらには、マリリン・モンロー自身がデザインなのか──、
そんなことを考えるようになった。

Date: 10月 2nd, 2018
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNS = SESか・その7)

facebookで、毎月第一水曜日にやっているaudio wednesdayは、オーディオクラブか、というコメントがあった。

私はそう思っていない。
けれど、私自身、どこかのオーディオクラブに属していたことがない。
なんとなく、こんな感じなのか、と、オーディオクラブのこと想像しているにすぎない。

その想像するところと違うから、そう思っていない、と答えたけれど、
質問された方にしてみれば、納得のいく答ではなかったかもしれない。

facebookにいくつも出来ているオーディオ関係のグループは、
特に、オーディオとかオーディオマニアと名乗っているグループは、
オーディオクラブとははっきりと違う。

まず参加している人の数が多い。
多いところは二千人を超えている。
そこに参加している人の中には、直接会ったことのある人もいるはずだが、
大半はfacebook(SNS)上でのつきあいではなかろうか。

そういうのを、オーディオクラブとは呼ばない。
facebookでのオーディオ関係のグループで、比較的クラブ的といえるのは、
小口径のフルレンジユニット関係のグループとか、
ヴィンテージJBLとか、対象を絞ったグループの方だろう。

それでもオーディオクラブだ、とは私は思っていない。

audio wednesdayは、どうなのか。
毎月定期的に集まっている。
ときおり初めての方も参加されるが、常連の人たちがいる。
といっても大勢の集まりではない。
こぢんまりした集まりであり、
その点は、オーディオクラブ的に、外からは見えるかもしれない。

毎月第一水曜日に集まって、音を四時間ほど聴く。
何が、私が想像しているオーディオクラブと違うのだろうか。

Date: 10月 2nd, 2018
Cate: 複雑な幼稚性

「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(その60)

別項で「オーディオ評論家は読者の代表なのか」を書いている。
その18)では、編集者は、必要な時は、強く代弁者であるべきだ、と思う、とも書いた。

では、編集者は読者の代表なのか。
実をいうと、編集者だったころに、こんなことは考えたことはほとんどなかった。
まったくなかった、といってもいいかもしれない。

こんなことを考えるようになったのは、ステレオサウンドを離れて、
さらに「バクマン。」というマンガを読んでからだった。

「バクマン。」は2008年から少年ジャンプに連載が始まった。
NHKでアニメになっているし、映画にもなっているから、
「バクマン。」というタイトルだけはみた記憶があるという人もいるだろう。

二人の高校生が、一人は原作、一人は作画という協同作業をすることで、マンガ家となっていく。
少年ジャンプが、物語の舞台としても登場してくる。
マンガ家と編集者とのやりとりも、そうとうに描かれている。

少年ジャンプは、読者ハガキに人気投票欄がある。
その集計が連載を続けるか打ちきりになるかを決定する──、
そんなふうにいわれていた、その内情についても描かれている。

面白いだけでなく、興味深いマンガでもある。
その「バクマン。」を読んでいて、編集者は読者の代表なのか、ということを考えていた。

Date: 10月 1st, 2018
Cate: 進歩・進化

メーカーとしての旬(その4)

オーディオに興味をもって40年以上。
いろんなオーディオメーカーの旬があった、と感じている。

私がオーディオに興味をもったのは1976年の秋以降。
それ以前のことももちろん知っていて、旬といえそうなところがわからないわけではないが、
やはり自分で感じてきた旬に絞って書いていきたい。

その1)でヤマハの旬について少しだけ触れている。
そのヤマハから少し遅れて旬を迎えたのは、サンスイだろう。

プリメインアンプのAU607、AU707、
それに続く上級機としてダイヤモンド差動回路を採用したAU-D907、
その技術を607と707にも採用して、AU-D607、AU-D707を出してきた。
さらにAU-D907の細部から磁気歪を取り除くために、
銅メッキを細部にまで施したAU-D907 Limited、
このころはまさにサンスイの旬といえる。

しかもサンスイ(山水電気)は、JBLの輸入元でもあった。
4343を筆頭に4300シリーズのスタジオモニターはヒットしていたし、
それ以外のJBLも売れていた。

サンスイの旬はそう長くは続かなかった(少なくとも私はそう感じている)。
プリメインアンプのD607、D707、D907は、
その後も改良が加えられて、いわゆるロングセラーモデルといわれるようになったが、
型番末尾にFがついてからの、このシリーズは、変ってしまった、と感じた。

いっそのこと新しい型番と新しいパネルフェイスを与えていれば、
見方も変ったのに、なぜか頑なに変えようとはしなかった。

それでも中身は、そして音は変っていっていた。
JBLも山水電気からハーマンインターナショナルへと移っていった。

山水電気はCIへと走る。
ルイジ・コラーニによるデザインのロゴマーク。
これに支払った、といわれる金額について具体的な数字をきいている。
驚く金額だった。

それだけの予算を、開発にまわしていれば……、
と山水電気に勤めていた人は思っていたのではないだろうか。
部外者の私だって、そう思った。

コントロールアンプのC2301、パワーアンプのB2301など、
力作をサンスイは出してきた。
それでも、二度と旬を取り戻すことはできなかった。

Date: 10月 1st, 2018
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNS = SESか・その6)

昔は(といっても30年くらい前か)、オーディオクラブというものが、
全国にいくつもあった。

ステレオサウンドにも、52号のスーパーマニアに、郡山のワイドレンジクラブが登場している。
64号からの連載「素晴らしき仲間たち」は、そういうオーディオクラブを取材している。

私の周りにはそういうオーディオクラブはなかったので想像で書くのだが、
オーディオ店の常連の人たちが集まってのオーディオクラブなのだろう。

一つのオーディオ店に一つのオーディオクラブというわけでもなかったかもしれない。
そのオーディオ店でも、JBLのスピーカーを好む人たちもいれば、
イギリスのBBCモニター系列を好む人たちもいただろうから、
いくつかのオーディオクラブができあがっても不思議ではない。

1975年のダイヤトーンの広告には、
ダイヤトーンの故郷 郡山へご招待!
ダイヤトーン 1日ブレーン募集、というのをやっていた。

応募方法に、所属しているオーディオクラブ名、とあり、
各オーディオクラブから二名の5クラブで計十名を、十回にわたって百名を招待する企画だった。

いまオーディオクラブというのはあるのだろうか。
この時代からずっと続いているオーディオクラブはあるのだろうか。

別項でも書いているように、ステレオサウンドに登場したオーディオクラブのいくつかは、
1980年代に解散してしまっている。

新しいオーディオクラブが生れなければ、数は減っていくだけだ。

いまはSNSがある。
facebookには、グループ機能というのがあり、同好の士が集まれる。
オーディオ関係のグループは、いくつかあるんだろうか。
オーディオとかオーディオマニアという名のグループもあれば、
アナログディスクに絞ったグループ、真空管、JBLの古いモデル、
ウェスターン・エレクトリック……、とにかく細分化されたグループも増えてきている。

私は、audio sharingというグループをやっているし、
あとは海外のDIYのグループには参加しているが、
それ以外のオーディオ関係のグループには参加していない。

かなりの人が参加しているオーディオグループはある。
けれど、それが以前のオーディオグループにあたる集まりかといえば、
そうではないはずだ。