Archive for 9月, 2015

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その6)

マークレビンソンの最初の、そして代表的なアンプといえば、やはりLNP2となる。
LNP2は、Low Noise Preamplifierの略である。

LNC2は、Low Noise Crossover Networkの略だと思う。
LNC2を知った中学生のころは、Low Noise ChannelDividerだと思っていた。
日本ではマルチアンプシステムを組み場合に必要となるエレクトリッククロスオーバーネットワークを、
チャネルデバイダー(略してチャンデバともいう)と呼ぶことが多い。
けれどアメリカでは、そうは呼んでいない。
だから、おそらくCrossover Networkの方だと思われる。

ヘッドアンプのJC1、薄型のコントロールアンプJC2は、設計者のJohn Curlの頭文字である。

JC2は1977年にML1と型番が変更された。
MLとは、いうまでもなくMark Levinsonの頭文字である。
つまりMLシリーズは、設計者がジョン・カールではなくマーク・レヴィンソンに変ったことを意味している──、
そう日本では当時伝えられていた。

ジョン・カールとマーク・レヴィンソンが仲たがいしたのは、
この件が大きかった、とジョン・カールに以前にインタヴューしたときに聞いている。

そういえはディネッセンから1980年代に登場したコントロールアンプは、
ジョン・カールの設計で型番はJC80だった。

ジョン・カールがJCという型番にこだわるのは、それだけプライドがあってのことだろうが、
それにしても……、と思うところも正直ある。
レヴィンソンに関しては、会社名にも型番にも自分の名前をつけるのは、いかがなものか、と、
いまは思う。

そういまは思う、のだ。
マークレビンソンのアンプを知った中学生のころは、
その会社(ブランド))名、型番もカッコイイと思っていた。
そんな時期があった。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その5)

マーク・レヴィンソンが興した会社はMark Levinson。
自身の名前をつけている。
マークレビンソン以前にも、創立者の名前をブランドにしたメーカーはいくつもある。
マランツ、マッキントッシュ、ボザーク、グラドなどがあり、JBLもそうである。
けれどどのメーカーも、フルネームをメーカー名にしていたわけではない。

JBLはフルネームといえなくもないが、あくまでも頭文字だけである。
マーク・レヴィンソンはメーカー名をLevinsonではなくMark Levinsonにしている。

ジェームズ・ボンジョルノはGAS(ガス)、それにSUMO(スモ)である。
GASは以前書いたようにGreat American Soundであり、
SUMOは相撲である。

ステレオサウンド 52号のインタヴューでも、社名について答えている。
     *
 私は世界中で最も日本が好きだし、その国技である〝相撲レスリング〟が大好きだから、〝SUMO〟というネーミングにしたのです。ある人から「お前が今度作ったパワーアンプを聴いたけれど、〝SUMO〟というブライドにしたのがなんとなくわかるような音だ」といわれました。しかし、私としては日本が好きで、相撲が好きだから、〝SUMO〟としただけで他意はないんです。
     *
こういうセンスはマーク・レヴィンソンからはまったく感じられない。
GAS、SUMOを、人を喰ったようなネーミングだと感じ、
そのことに対して、やっぱりボンジョルノだな、と感心する人もいれば、
不真面目な、と思う人もいる。

ボンジョルノがつくりあげたアンプの音を聴いていれば、
GAS、SUMOに対する感じ方も変ってくる。
少なくとも私はそうだった。

AMPZiLLA、THAEDRA,THE POWER、THE GOLDの音を聴き、
THAEDRAとTHE GOLDは自分のモノとしていた私は、
GAS、SUMOという会社名をボンジョルノらしいと思っているし、
この会社名を含めてのAMPZiLLAであり、THE POWER、THE GOLDである。

つまりAMPZiLLAという型番は、 GASという会社(ブランド)名といわば対だから映える、
THE POWER、THE GOLDもSUMOという会社(ブランド)名と対だから映えるのではないだろうか。

絶対にありえないことだがMark LevinsonのAMPZiLLAだったら、どう感じるか。
そぐわない。
やっぱりGASのAMPZiLLAであるべきだし、
SUMOのTHE POWER、SUMOのTHE GOLDであるべきだ。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: audio wednesday

第57回audio sharing例会のお知らせ

10月のaudio sharing例会は、7日(水曜日)です。

テーマはまだ決めていません。
時間はこれまでと同じ、夜7時です。

場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: High Resolution

Hi-Resについて(ソニー・クラシカルの場合)

9月11日にグレン・グールドの81枚組CDボックスが発売になった。
10月30日には、この81枚組ボックスからインタヴュー音源を省いたものが、USBメモリーで発売になる。
ソニーのサイトによれば、USBメモリー版はハイレゾ 24bit/96kHz FLACと書いてある。

おおっ、と誰もが思うことだろう。
だがこのサイトからリンクされている販売サイト(amazon、HMV、タワーレコードなど)をみると、
24bit/44.1kHz FLACとある。サンプリング周波数に違いがある。
ビット数が増えているから、これでもハイレゾ音源と呼べるわけだが、
なんとも出し惜しみ感たっぷりの中途半端なハイレゾという感じがつきまとう。

それにしてもどちらが本当なのだろうか。
ソニーは制作元である。しかもニュースリリースの日付は9月11日になっている。
けれどディスクユニオンのサイトをみると、
当初24bit/96kHzとお知らせしておりましたが、その後制作元より24bit/44.1kHzに訂正されました、と書いてある。

グレン・グールドのサイトにも、24bit/44.1kHzとある。

やはり24bit/44.1kHzなのだろうか。
そうなると制作元のソニーでは、古い情報をいまだ変更せずにいることになる。
そんなことがあるのだろうか。

もしかするとまた変更になり、当初のリリース通りに24bit/96kHzで出るのかもしれない。
可能性としてはかなり低いと思うけれど……。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その6)

ステレオサウンド 52号のインタヴューで、ジェームズ・ボンジョルノはこう語っている。
(ききては長島先生)
     *
ボンジョルノ 従来のアンプですと振動板の持っているイナーシャが、信号に確実に比例した動きに逆らおうとする力として働くのです。もちろん逆起電力によってもブレーキがかかるわけですが、その時点で次の入力信号に合わせて振動板を駆動しなければならないという、じつにやっかいな仕事を強いられていたわけです。
〝ザ・パワー〟では、新しく開発した〝フォア・クォドラント差動平衡型ブリッジ回路〟によって、いままでのパワーアンプの問題点を解決したつもりです。
長島 その新しく開発された回路の基本的な考え方というのは、どういうことなのですか。
ボンジョルノ それは平衡型ブリッジの四隅から同時にフィードバックをかけることで、スピーカーの+、−側にアンプから4組の独立したプッシュプル・フィードバックをかけ、スピーカーの振動板を強制的に入力信号に比例するように動作させるというものです。
長島 今おっしゃったフルブリッジ回路によって、従来のパワーアンプとは格段の動的忠実度を達成できたんですね。
ボンジョルノ そうです。これこそ〝コンピューター・サーボ〟と呼ぶにふさわしい、本格駆動方式なのです。
     *
GASからは1978年にTHE BRIDGEが出ている。
どんな製品だったっけ……、と思われる人もいるだろう。
THE BRIDGEは、いわゆるブリッジアダプターで、トランスを使っているため電源は必要としない。
SUMOからもブリッジアダプターは出ている。
THE MOATという。こちらはゲイン0dBのユニティアンプを使っている。

THE BRIDGEを出したころは、ボンジョルノはまだGASにいたのどうか微妙になってくる。
つまりこのころから(もしくはそれ以前から)、パワーアンプのブリッジ化を考え、
AMPZiLLAを二台用意してのブリッジ接続による実験で、なんらかの手応えを得ていたのではないだろうか。

そのためのTHE BRIDGEであるわけだが、THE MOATとは内部が違いすぎる。
けれどTHE BRIDGEには、定冠詞のTheがついている。
GASの製品の型番にTheがついてるのは、THE BRIDGEだけである。

ということはTHE BRIDGEまでがボンジョルノが手がけたのだろうか。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(附録)

ジェームズ・ボンジョルノがGAS創立からSUMO創立までに手がけたアンプが、
ステレオサウンドの新製品紹介ページに登場した号をまとめておく。
(確固内はステレオサウンドの発売月)

36号(1975年9月) AMPZiLLA
37号(1975年12月) THAEDRA
38号(1976年3月) SON OF AMPZiLLA
41号(1976年12月)THOBE, GOLIATH
42号(1977年3月) AMPZiLLA II
45号(1977年12月)THALIA, GRANDSON
46号(1978年3月) THAEDRA II
47号(1978年6月) THE BRIDGE
48号(1978年9月) AMPZiLLA IIA
51号(1979年6月) GODZiLLA
52号(1979年9月) SUMO:THE POWER
54号(1980年3月) THAEDRA IIB, GAS500 AMPZILLA
55号(1980年6月) SUMO:THE GOLD, THE HALF

50号には井上肇氏による’79米国CEショー見聞記があり、
463ページにGASのGODZiLLAとSUMOのTHE POWER(プロトタイプ)の写真が隣同士で掲載されている。

36号ではSAEのMark2500も取り上げられている。
AMPZiLLAの回路図とMark 2500の回路図を比較するとはっきりすることだが、
ボンジョルノの設計がそこから読みとれる。

Mark 2500はボンジョルノが設計したわけではないが、
基本的な回路構成はボンジョルノのものといえるところがある。

そのことが関係してのことだと私は受けとっているのだが、
37号でのTHAEDRAの記事では、
試しにMark 2500を組み合わせてみたら、ひじょうにいい結果が得られた、とある。

Date: 9月 15th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その5)

GASのGODZiLLAに続いて登場したSUMOのTHE POWER、さらに少し後に登場したTHE GOLD。
GODZiLLAにA級とAB級があるように、SUMOのAB級がTHE POWERでありA級がTHE GOLDである。

これら四機種は入力にアンバランスとバランス両方をもつ。
GODZiLLAが登場した1979年当時の情報でははっきりとわからなかったけれど、
その後の情報でGODZiLLAもSUMOのアンプと同じように、
フルブリッジ回路(バランス回路)であることがはっきりとした。

つまりパワーアンプ本体はバランス回路で、バランス入力で、
アンバランス入力に対応するためにアンバランス/バランス変換回路が前段に設けられているのは、
GODZiLLAもSUMOのアンプも同じである。

そして出力。
GODZiLLA Aは90W+90W、GODZiLLA ABは350W+350W、
THE GOLDは125W+125W、THE POWERは400W+400Wと近い。
GODZiLLAもSUMOも空冷ファンを使っている。

つまりGASのGODZiLLAとSUMOのTHE GOLDとTHE POWERは、仕様がほほ同じといえる。
これは単なる偶然とは思えない。
ジェームズ・ボンジョルノがSUMOを創立する直前までいた会社からも、
同じ仕様、コンセプトのパワーアンプが二機種登場するということは、
GODZiLLAの開発コンセプトはボンジョルノがGASにいたときからあったものと推測してもいいのではないだろうか。

Ampzillaの上級機というよりも最終形態として、ボンジョルノが構想したものがGODZiLLAだとすれば納得がいく。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その4)

ステレオサウンド 51号の新製品紹介のページにGASのGODZiLLA、
52号の同ページにSUMOのTHE POWERが取り上げられている。

このころのステレオサウンドの新製品紹介のページは、井上先生と山中先生の対談によるものだった。
51号と52号のあいだは三ヵ月。
52号のTHE POWERの記事を読んでの既視感に、
やはり同じ血筋の、同じ遺伝子をもつパワーアンプなんだ、と思っていた。

51号、GODZiLLAのところには、こう書いてある。
     *
井上 マーク・レビンソンが硬めのエネルギー感とすれば、ゴジラは柔らかめのエネルギー感ですね。前者が激流としたら、ゴジラは海のように広い大河だと思う。
山中 最初はマーク・レビンソンのLNP2Lと組合せて聴いたのですが、これをテァドラに変えた時に、大河のようにとうとうたるパワー感がよく出ました。
 クラスAとクラスABを比べると、クラスAの方が音がよく磨きあげられているという感じですね。
井上 マーク・レビンソンを金属、あるいは硬質ガラスを磨き上げたような、硬さをもったつややかさとすると、ゴジラAは黒檀とか樫のような堅い木を磨きあげたような印象です。クラスAとクラスABの最大の違いは、クラスAの方が中域のエネルギー感がより強烈に出てくることですね国産のAクラスアンプとは違った力強さを十分にもっています。
     *
51号のGODZiLLAの記事は1ページだった、
52号のTHE POWERは2ページ使って取り上げられている。
これだけで注目度に違いがあることがわかる。

読めばわかるのだが、実際に評価は高い。
     *
井上 JBLの4343が、ころころと鳴らされてしまいますからね。ワイドレンジだし、特に中低域の迫力はすごい。一方、スピーカーが勝手に鳴らないように、うまくコントロールしている部分もあって、こういう性格のアンプですと一言でいいにくい面をもった製品です。大まかにいえば、マッキントッシュ的なサウンドバランスといえるかもしれません。
山中 しかし、実は全然違うのですね。
井上 そうなのです。音に対する反応は、もっと速いし。そういう意味で、非常に魅力を感じました。
山中 ちょっと聴きには当りが柔らかそうに感じるのですが、トータルなエネルギーはすごいですからね。エネルギー感のよく出る最近のアンプとしては、マーク・レビンソンのML2Lがあるのですが、この場合にはもっととぎすまされたエネルギー感でしょう。ザ・パワーの場合には、マスのある、たっぷりしたエネルギーが猛烈なスピードでぶつかってくるという感じ。ですから、ものによっては、本当に弾き飛ばされそうな印象があります。
井上 ごく初期のアンプジラにあったキャラクターがより凝縮され、よりパワフルになったというのが、一番わかりやすい説明ではないでしょうか。
 たとえば、マーク・レビンソンのコントロールアンプと組み合わせた場合は、それほど魅力は発揮されなかったと思うのですが、テァドラで鳴らしたら、途端に音の鮮度や躍動感が出てきたのです。このことからいっても、組み合わせるコントロールアンプをかなり選ぶと思います。
     *
マークレビンソンML2との対比で語られるエネルギー感のすごさ、
マークレビンソンのLNP2のときの音とTHAEDRAと組み合わせた、いわはど純正組合せといえるときの音の対比、
まったく同じことが51号と52号に書いてあるではないか。

このふたつの記事を、自分自身でTHAEDRAを使った経験を持った後で読み返すと、
GASのGODZiLLAも、ボンジョルノの設計だと思えてくる。

最終的な仕上げまでボンジョルノが手がけたかどうかは、おそらく違うであろう。
けれどアンプの核となるところの設計はボンジョルノの手によるものだからこそ、
51号と52号の記事のようになるのだろう。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その3)

THAEDRAの、初期モデル、それもそうとうに程度のいいモノを使っていた。
自宅に持って帰る前にステレオサウンドの試聴室でいくつかのパワーアンプに接続してみたことがある。
自宅ではSUMOのTHE GOLDにつないで聴いた。

GASのTHAEDRAを、いくつかのパワーアンプと組み合わせて聴いた経験のある人なら、
きっと感じていることがあると思う。

コントロールアンプをTHAEDRAにすると、
パワーアンプの音がずいぶん変る印象を持っている。
こんなに実力のあるパワーアンプただったのか、と見直すようなこともあった。

THAEDRAはかなり熱くなるコントロールアンプである。
AMPZiLLAのごく初期モデルは入力インピーダンスが7.5kΩだった。

いまでは10kΩの入力インピーダンスが一般的になってきているから、
特に低い値とは感じないが、AMPZiLLAが登場した1974年、7.5kΩはそうとうに低い値だった。

たいていのアンプは100kΩか50kΩ(日本は47kΩが多かった)だった。
パワーアンプの入力インピーダンスが低ければ、
それだけコントロールアンプには電流を多く供給することが要求される。

といってもさほと大きな電流値ではない。
THAEDRAほどの発熱(ラインアンプの終段のアイドリング電流の多さ)は、
理屈の上では必要ないということになる。

そんなことは説明されなくともわかっている。
けれどTHAEDRAをつないで聴いたことがあれば、
それは理屈でしかないことを経験できる。

ボンジョルノは、それまでの経験からTHAEDRAを開発したのであろう。
そしてTHAEDRAは、やはりボンジョルノ設計・開発のパワーアンプの魅力・特質を、
実によく抽き出してくれる。

このことをよく知っているからこそ、
ステレオサウンドに掲載されたGODZiLLA、THE POWERの試聴記事を読むと、
GODZiLLAも、ボンジョルノが手がけたモノだという感じを受ける。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その2)

GASのGODZiLLAを聴く機会はなかった。
実物を一度見たことがあるだけだ。

いったいGODZiLLAは、どれだけ日本に入ってきたのだろうか。
それ以前に、どれだけ製造されたのだろうか。

Googleで画像検索しても、あまりヒットしない。
しかもそれらの写真は実物を撮ったものは、さらに少なくなる。
どうもアメリカでも、それほど売られていなかった(製造されていなかった)のではないか、
と、だから思ってしまう。

おそらくGODZiLLAを聴く機会は、これから先もないようだ。
もしあったとしても、そのGODZiLLAのコンディションが万全であるとはいえないだろうから、
GODZiLLAの音がどうであったのかは、ステレオサウンドに頼るしかない。

それでも一度はGODZiLLAを聴きたいと思っている。
それもGASのAmpzillaの各ヴァージョン、
それにジェームズ・ボンジョルノがGASを去った後に設立したSUMOのアンプ、
そしてコントロールアンプにはGASのTHAEDRAを用意して、これらのパワーアンプを聴いてみたい。

ステレオサウンド 52号にはボンジョルノのインタヴュー記事が載っている。
そこに略歴がある。

ハドレー、マランツ、ダイナコ、SAEでボンジョルノが手がけた製品名とともに、
GAS、SUMOでの製品名もとうぜんのことながら載っている。
だが、そこにはGODZiLLAの表記はないのである。

そういえば51号での新製品紹介記事にもボンジョルノの名前は出て来ていない。
52号の特集の試聴記事にもボンジョルノの名前は出て来ない。

ということはGODZiLLAは、ボンジョルノ設計ではないということになるのか。
ここを自分の耳で確認したいから、昔以上にいまボンジョルノのアンプを集めて聴きたいと思うのだ。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その1)

ステレオサウンド 51号(1979年6月発売)の新製品紹介のページに、GASのGODZiLLAが登場した。

Ampzillaの上級機としてGodzillaが出る、というウワサはきいていた。
CESでプロトタイプが発表されていた写真も見ていた。

ついにGodzilla(ゴジラ)が登場したのか、と思った。
51号のバブコ(GASの輸入元)の広告には、ゴジラの写真が使われている。

ゴジラ襲来!
日本全域が、その足跡に蹂躙されるのは、時間の問題か!?

とてもオーディオ機器の広告のコピーとは思えないものだった。
けれど、ふしぎなことにGODZiLLAの写真はなかった。

同じ号の記事には登場しているのに、輸入元の広告には写真がない。
理由は52号ではっきりとする。

52号の特集は「いま話題のアンプから何を選ぶか」であり、
GASのアンプは、コントロールアンプのTHAEDRA IIとパワーアンプのGODZiLLA ABが取り上げられている。

GODZiLLAには、二つのヴァージョンがあった。
A級動作で90W+90WのGODZiLLA A、AB級動作で350W+350WのGODZiLLA ABであり、
価格はどちらも1580000円だった。

ただ51号に登場したGODZiLLAと52号に登場したGODZiLLAとでは、外観に少し変更が加えられている。

51号のGODZiLLAにはメーターがある。それからインプットレベルコントロール(左右独立)もあったが、
両方とも52号のGODZiLLAからは省かれている。
左右独立の電源スイッチ、動作状態を示すLEDは共通している。
おそらく51号のバブコの広告にGODZiLLAの写真が載っていなかったのは、
外観の最終版が間に合わなかったためであろう。

メーターもレベルコントロールも省かれたGODZiLLAの外観は、
Ampzillaの、あの独特の外観とは違い、
いたって一般的な、19インチ・ラックマウントのパワーアンプの外観である。

Date: 9月 13th, 2015
Cate: 新製品

新製品(その15)

新製品の登場には、期待して、わくわくしてしまうのだろうか。

先日、Appleから新しいiPhoneとiPadの発表があった。
毎年、この時季には新しいiPhoneが発表されるのが恒例になっているし、
これまでの変遷から型番がどうなるのかは誰にでもわかることである。
しかも、インターネットでは新しいiPhoneが出てしばらくする来年のiPhoneについての予測記事が出る。
発表間近になると、かなり正確な情報が、どこから漏れてくる。
それでだいたいの予想はつくし、大きく外れることはない。

それでも新しいiPhoneの発表には、わくわくするところがまだある。
いったい新製品に、何を期待しているのだろうか。

1979年のオンキョーの広告がある。
チューナーのIntegra T419の広告である。

そこにはこう書いてあった。
     *
新製品というよりは
〝新性能の登場〟がよりふさわしい。
     *
この広告を見て、感心した。
新製品とはいったい何か、のある一面を見事に言い表している、と思ったからだ。

新製品の登場は、新性能の登場である。
たまには旧性能の登場といえるモノもないわけではないが、
基本的には、新製品は新性能の登場である。

オーディオマニアが新製品にわくわくしてしまうのは、
それが新製品だから、ということと同じくらい、もしくはそれ以上に、
その製品がどれだけの新性能を持っているのかに期待しているから、ともいえよう。

オーディオ機器の場合「新性能」とは、物理的な性能だけではない。
その製品が聴かせてくれる「音」もまた性能である。大事な性能である。

そして新製品の登場は、新性能の登場だけではない。
iPhoneがそうであるように、新機能の登場の場合もある。

それまでの製品にはなかった機能を搭載しての新製品(オーディオ機器)は、これまでにもいくつもあった。
目立つ新機能もあれば地味な新機能もあった。
消えてしまった機能もあれば、生き残り進歩している機能もある。

オンキョーの広告を見て以来、
新性能と新機能の登場ということは、わりとすぐに考えていた。

けれど新製品は、新性能と新機能の登場だけではないことに、
かなり経ってから気づかされた。

川崎先生の「機能性・性能性・効能性」をきいたことによって、気づいた。

Date: 9月 12th, 2015
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その3)

ステレオサウンド 44号のヤマハの広告は8ページ続く。
このカラー8ページの広告で紹介されているのは、
スピーカーシステムがNS100M、NS10M、FX1、
コントロールアンプのC2、パワーアンプのB2、B3、
プリメインアンプがCA2000、A1、CA-G1、
チューナーはCT7000、T1、T2、CT-G1、
アナログプレーヤーはYP-D10と YP-D9、それにリニアトラッキングアーム搭載のPX1、
その他にヘッドフォンのHP1000、カセットデッキのTC1000の19機種である。

この19機種の型番は、新製品は赤、従来のからの製品は黒で区分けされている。
それぞれの製品の写真はそれほと大きくなく、余白の多いレイアウトで、
それぞれに製品解説文がつく。

ヤマハはGlobal&Luxurious groupとEssential&Fidelity groupとに分けて、
新製品を登場させる、と広告の冒頭で謳っている。

ただ44号の広告を見るかぎりでは、どの製品がGlobal&Luxurious groupなのか、
Essential&Fidelity groupに属するのはどの製品なのかは、はっきりとしない。

その2)でも引用しているように、
ヤマハにとってFidelityとLuxuryは製品を不可分に支えるスピリットであり、
一本の線で明確に分類するといったことは不可能なことではあっても、
そのいずれかをさらに意識的にアクセントして行こうかという発想、とある。

つまりFidelityかLuxuryのどちらにアクセントがおかれた製品なのか。
そういう視点で見れば、プリメインアンプでいえばCA2000はGlobal&Luxurious groupとなり、
この時の新製品であるA1はEssential&Fidelity groupということになる。

チューナーでいえばCT7000はGlobal&Luxurious group、T1はEssential&Fidelity group、
アナログプレーヤーのPX1はEssential&Fidelity groupで、
YP-D10、YP-D9はGlobal&Luxurious groupというところか。

スピーカーシステムはどうだろうか。
NS1000MとFX1はEssential&Fidelity groupといえるが、
NS10Mはどちらになるのだろうか。

型番の末尾にMonitorの「M」がついているし、エンクロージュアの仕上げもNS1000Mと同じ黒塗装、
Fidelityにアクセントが置かれているけれど、
Global&Luxurious groupでもよそうな気も捨てきれない。

セパレートアンプは、プリメインアンプよりも形態的にも忠実度を追求しているわけだから、
必然的にEssential&Fidelity groupということになるわけだが、
B3を見ていると、そのアクセントはどちらなのか迷ってしまう。

ヤマハのセパレートアンプとしてすでに知られていたBI、B2とははっきりと形態が違う。
B3と同様の形態のパワーアンプは、それ以降登場していないことも考え合わせると、
どうもGlobal&Luxurious groupの新製品として見えてくる。

Date: 9月 11th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その4)

ジェームズ・ボンジョルノは1943年、マーク・レヴィンソンは1946年生れだから、
同世代といってもいいだろう。

ボンジョルノはその名前からわかるようにイタリア系アメリカ人ときいている。
レヴィンソンはユダヤ系アメリカ人とのことだ。

レヴィンソンはコネチカット州だからアメリカ東海岸。
ボンジョルノは、そのへんのことがよくわからない。

GASを設立する前は、いくつかの会社にいてアンプを設計している。
マランツにもいて、Model 15はボンジョルノの設計である。
だから東海岸に住んでいた時期もあるわけだ。

GASはロスアンジェルスにあった。
GASのあとに設立したSUMOもロスアンジェルスだった(ただし本社は税金対策で香港におかれていた)。
ということはボンジョルノはアメリカ西海岸といえる。

レヴィンソンはアンプの設計はできなかったが、楽器は演奏していた。
ベース奏者としてポール・ブレイとのレコードがあるし、
トランペットもやっていた、と聞いている。

ボンジョルノはピアノとアコーディオンを演奏する。
《その腕前はアマチュアの域を超えている》と菅野先生が、ステレオサウンド 53号に書かれている。

ステレオサウンド 45号にレヴィンソン、52号にボンジョルノのインタヴュー記事がのっている。
ページ数が大きく違うし、聞き手も違うから単純な比較はできないのはわかっていも、
記事から感じられるのは生真面目な性格のレヴィンソンであり、陽気な性格のボンジョルノである。

レヴィンソンは1970年代、完璧主義、菜食主義といったことが伝えられていた。
これはつくられたイメージであることが、その後わかってきたけれども。

ボンジョルノは昔来日したときに、紫色の革靴を履いていた、と井上先生からきいたことがある。
52号には、菅野先生はボンジョルノについて、
《アンプ作りの天才ともいわれるが、そのネーミングのセンスの奇抜さからも想像出出来るように、きわめて個性的な発想の持主だ。エンジニアとしては型破りのスケールの大きな人間味豊かな男である。》
と紹介されている。

ボンジョルノのアンプのネーミングのセンスとは、
レヴィンソンとは正反対ともいえる。

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

AMPZiLLAなワケ

アンプジラは、AmpzillaでもAMPZILLAでもなく、AMPZiLLAとiだけが小文字なのか。
iは上下逆転させると、!(エクスクラメーションマーク)になる。

エクスクラメーションマークのロゴで、すぐに思い浮ぶのはJBLである。
GASの設立者であり設計者であるジェームズ・ボンジョルノ(James Bongiorno)のイニシャルは、JB。

ボンジョルノがGASを興したとき、どんなスピーカーを鳴らしていたのか、まったく知らない。
けれど、JBLではなかったのか、と、
AMPZiLLAの表記を見るたびに、そう思えてくる。

ほんとうはiを上下逆転させ、AMPZ!LLAとしたかったのかも……、と勝手に思っている。
なんの根拠もない、私の勝手な妄想にすぎないのはわかっているけど、
それでも、この妄想を完全に消し去ることができないままでいる。

それにGASは、Great American Soundの略である。
アンプジラがAMPZiLLAであることに気づく前は、
GASのアンプの音のことを、ボンジョルノは”Great American Sound”とするのだな、と思っていた。
けれど、もしかするとボンジョルノが”Great American Sound”と呼ぶのは、JBLの音なのでは……。
(もう確かめようはない)