オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その2)
ヤマハのA1は、ステレオサウンドでは44号の広告が最初だった。
そして45号の新製品紹介で取り上げられている。
45号のヤマハの広告では、
A1のことを”Disk straight DC Amp.”と呼んでいる。
A1のフロントパネルにある三つのプッシュボタンは、
フロントパネル右側からPOWER、SPEAKER、DISCの潤で並んでいる。
POWERは電源スイッチ、SPEAKERはスピーカーのON/OFFスイッチ、
DISCボタンを押すと、
MC型カートリッジ用ヘッドアンプ、イコライザーアンプ、ハイゲイン・パワーアンプという構成になる。
ヒンジドパネル内におさめられているトーンコントロール、フィルター、入力セレクター、テープセレクターは、
DISCボタンが押されている状態ではすべてパスされる。
CA2000の設計方針とは違ったものとなっている。
フロントパネルのデザインも違うだけでなく、天板の放熱用の穴も、
CA2000とA1とでは違う。
A1は、ヤマハにとって新しいプリメインアンプの形態を提案(模索)するためのモデルでもあった。
そういえるのはステレオサウンド 44号の広告を読んでいるからだ。
A1の写真を大きく扱っているページには、こうある。
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手に入れるまではどうしようもなく落ちつきを失わせてしまい、手に入れてからは限りない満足感を増大して行くようなオーディオは、(信念とも呼べる)哲学と(稚気とも呼べる)狂気とから生まれてきます。
理想を求めて素材から創造せずにおれず、独想的でリーゾナブルで明らかに傑出している回路・設計技術で創造せずにおれず、十分に丁寧で贅沢で堅牢な構造・構成で物を創造せずにはおれず、そうして常に世界の最高のレベルを超える特性で創造せずにはおれず、しかもそうしたことがどの一個をとっても偽りなく公表通りのものでなければならないという。《Fidelity》についてのヤマハの狂気と哲学──。
その音は息をのむほどの品位と感動性を持っていなければならず、そのデザインは遠くから眺めても接して覗いてもあくまで個性的に美しくなければならず、その仕上げは外見はもとより触れるほどに精妙でなければならず、そうしてロマンを限りなく広げるユニークで実用的な機能性を持っていなければならず、しかも満足感に見合った適正な価格で提供するという、《Luxury》についてのヤマハの哲学と狂気──。
ヤマハのオーディオは、今でも──そしてこれから、ヤマハのphilosophyとenthusiasmに基く、突き抜けたFidelityと惜し気ないLuxuryという二つの支柱によって、他から容易に差別できる実に《魅力的な個性》を持ち続けるでしょう。
そして今、ヤマハは、ヤマハが果たすべき責任とヤマハに寄せられる期待をあらためてしっかりと自覚し、突き抜けた忠実性と惜し気ない贅沢性という二つの面から今までの作品もこれからの作品も見直し、限りないFidelityの上に夢のようなLuxuryを惜し気もなく注ぎ込んだグループと、そうして限りないFidelityを限りなく信じ難く突きつめたグループとに分けて、いまさらのようにヤマハの狂気と哲学を加速します。
もとより、FidelityとLuxuryはヤマハのあらゆる作品を不可分に支えるスピリットであり、一本の線で明確に分類するといったことは不可能なことに違いありませんが、ベーシックにFidelityとLuxuryの両者を存分に実現した上で、そのいずれかをさらに意識的にアクセントして行こうかという発想です。
一つは、日本というやや狭隘な環境をはるかに飛躍して、Globalにというレベルと雰囲気を指向し、世界性を持って世界中のオーディオ・ファイルを狂喜させ、そしてLuxuriousに徹して趣味性と個性とを大胆に追求して世界中のオーディオ・ファイルを歓喜させようかという、Global&Luxurious group──。一つは、ひたすらオーディオの本質をオーソドックスにピュアに堀り下げ、オーソドックスにバランスのとれたキャラクターで、あらゆる人にEssentialに愛用され、そして、さらにさらに忠実度の壁を突き抜けて桁違いの次元を拓き続け、その絶対的に信用できるFidelityによってあらゆる人に愛用されようかという、Essential&Fidelity groupです──。
この秋、ヤマハは、GL groupとEF groupとに分けて、あらゆるジャンルに20機種に近い新製品を登場させます。それらは──それぞれが魅力的な個性を鮮やかにして、大方の期待をはるかに裏切る高次元に登場することになるでしょう。そこに──ヤマハオーティオのエレクトロニクス・エンジニアリングの限りない情熱と鹿知れぬ未来性を垣間見ていただけることでしょう。