賞からの離脱(その45)
格付けが悪いわけではない。
すべてのオーディオ機器、どれも素晴らしいですよ、と横並びで紹介するのは無理なことであり、
そんなことをやって何になるというのだろうか。
だが、こんな項をたてて書こうとしているのは、
賞(格付け)を否定したいからではない。
賞(格付け)が変ってきていると感じているからである。
State of the Art賞もベストバイも、
瀬川冬樹という存在があったころまでは、納得できる格付けであった。
ステレオサウンド 49号での第一回のState of the Art賞のすべての機種が、
State of the Artの名にふさわしいとは思えないまでも、
複数の人の投票による選考なのだから、その結果は理解できる。
このころまではステレオサウンドによる格付け、とはっきりといえた。
ステレオサウンドのメイン筆者による格付け、ともいえた。
ここで私よりも一世代、二世代下の人たちとは違ってくるのかもしれない。
49号でのState of the Art賞の選考委員は、
岡先生を委員長に、井上卓也、上杉佳郎、菅野沖彦、瀬川冬樹、長島達夫、柳沢功力、山中敬三だったが、
現在のStereo Sound Grand Prixでは柳沢氏だけで、あとは皆入れ代っている。
49号は1978年12月発売だから、30年以上の月日が経っているのだから、入れ代りは当然である。
けれど賞は格付けである以上、どういう人がどういう考え・基準で選ぶかがことさら重要なことである。
はっきりと書こう。
以前はステレオサウンドによる格付けだった。
だが、いまはステレオサウンドのための格付けに変ってきている。
さらに書けば、ステレオサウンドを格付けするための賞になってきている。