ナロウレンジ考(その12)
リズム(rhythm)といえば、音楽を構成する要素のひとつであるわけだが、
私がここでいいたいリズムは、もちろんオーディオは音楽を再生するものであり、
しかもソプラノ歌手の声、とか、楽器の音色、とかいっているわけだから、それは音楽のことであり、
音楽のリズムのことでもあるのだけれど、
それだけではなく、歌手、演奏者の鼓動という意味でのリズムについても、である。
どのスピーカーシステムがそうだとは書かないけども、
スピーカーによってリズムのきざみ、打ち出される音の強さ、といったことは変化し、
まったく苦手としているのではないか、と思いたくなるスピーカーがないわけではない。
もちろんスピーカーシステムの責任ばかりなく、使いこなしにあったり、
アンプにも、そういう傾向のモノがやっぱりある。
とはいえスピーカーにあることが少なくないのも、やはり事実である。
そういうスピーカーでは、どんなに歪の少ない音が出てきても、
周波数特性(振幅特性)的にワイドレンジであっても、
音場感がきれいに左右に拡がってくれようとも、
音楽を聴いていてつまらなくなる、というか、
ボリュウムをしぼりたくなる。
同じレコードをかけてもスピーカーが変れば、そこでのリズムがまったく同じということは絶対にない。
リズムを打ち出す力、リズムをきざむ力は、一様ではない。
リズムは、やはり力だと感じる。
それゆえにスピーカーによって、この力の提示はさざまであり、
しなやかで軽やかにリズムを聴かせるスピーカーもあれば、
力強く、強靭とでもいいたくなるようなリズムを聴かせるスピーカーもある。
この力が、音楽の推進力を生んでいる。
オーディオで音楽を聴く、ということ、
つまりスピーカーを通して音楽を聴くという行為において、
この音楽の推進力が著しく損なわれると、そこで鳴っている音楽の印象は稀薄になり、
聴き手の心に刻まれなくなる。