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Date: 3月 21st, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その34)

41号からステレオサウンドを読みはじめた。
ほぼ二年間、夢中になってステレオサウンドを読んでいた。

私にとっての七冊目にあたる47号。
これが私にとって、はじめて疑問を感じたステレオサウンドである。

47号の特集は、ステレオサウンド三度目のベストバイ・コンポーネントである。
この他の記事として、新連載の「ロングラン・コンポーネントの秘密をさぐる」がはじまり、
連載対談として、菅野沖彦、保柳健、二氏の「体験的に話そう──録音と再生のあいだ」もはじまった。

巻末には「物理特性面から世界のモニタースピーカーの実力をさぐる」もある。
この記事は、三菱電機郡山製作所/三菱電機商品研究所の協力を得て、
46号に登場したモニタースピーカーのいくつかと4343を加えた10機種の測定が載っている。

44、45、46号での測定協力は日本ビクター音響研究所だった。
それが三菱電機にかわり、測定項目も違っている。

音楽関係の記事では、
黒田恭一、坂清也、河合秀朋(キングレコード第二制作室プロデューサー)三氏の座談会、
「イタリア音楽の魅力」もあった。
私はこの記事で、オルネラ・ヴァノーニを知り、聴きはじめた。

一冊のステレオサウンドとして読むと面白かった、といえる。
けれど肝心の特集に、私は疑問を感じたのだった。

読み手の勝手な期待なのだが、
同じ企画ならば前回よりも今回のほうがより面白くなる、
そういうものだと思い込んでいた。

47号のベストバイ・コンポーネントは43号のベストバイ・コンポーネントよりも面白くなっているはず、
より充実して読み応えのある特集となっているはず……、
そう思い込んでいた、というより信じ込んでいた。

その期待が裏切られたから、疑問を感じたということもあるのだが、
もっと違うところでの疑問を感じていたのだが、その疑問がどこに起因してのものなのかがはっきりするのは、
もっと後のことだ。
ステレオサウンドで丸七年働き、辞めて数年経ったころだった。

47号は、現在のステレオサウンドがそうであるし、さらに色濃く(ある意味巧みに)なっているのだが、
誌面の幕の内弁当化のはじまりの号といえる。

Date: 3月 21st, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その33)

ステレオサウンド 46号の奥付のところにあるアンケートハガキは、
1978読者の選ぶベストバイ・コンポーネントの投票用紙だった。

46号を買った時点で、47号の特集はベストバイ・コンポーネントだとわかる。
また43号のようなベストバイ・コンポーネントが読めるのか、と思っていた。

投票用紙への記入も、一年前とは少し違う意味でずいぶんと考えた。
一年前には「ベストバイ」の意味を深く考えずに記入したけれど、
高校一年生にとってのベストバイとして記入すべきなのか、
それともそういった年齢的なことを考慮せずにベストバイ・コンポーネントと思うモノを記入すべきか、
そのことについても考えていた。

47号への関心は、46号の特集を読み返すたびに多くなっていった。
間違いなく瀬川先生はスピーカーのベストバイとして、
UREIのModel 813、K+HのOL10を選ばれるはず。

ここに疑問はなかった。
どう書かれるのか、そのことに強い関心があった。

それに45号に登場したKEFのModel 105も同じだ。
間違いなくベストバイ・コンポーネントして選ばれる……。

こんなふうに43号の時点では登場していなかったオーディオ機器のどれを選ばれ、
それらについてどう評価されるのかを、一方的に予測しながら発売をまった三ヵ月だった。

そしてSMEの3009/SeriesIIIにシュアーのV15 TypeIVを組み合わせた表紙の47号が出た。

Date: 3月 21st, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その32)

ステレオサウンド 46号の特集は、もうひとつある。
井上先生による「最新MC型カートリッジ 昇圧トランス/ヘッドアンプ総テスト」だ。

スピーカーの特集が三号続いたからこその、音の入口にあたるカートリッジの特集だったのか。
カートリッジの記事はこれだけではない。
「オーディオの名器にみるクラフツマンシップの粋」でも、カートリッジが取り上げられている。

井上卓也、長島達夫、山中敬三の三氏による鼎談で、
製造中止になっているカートリッジが紹介されている。

「フォノカートリッジの名門」と題された、この記事の最初に登場するのは、
ウェストレックスの10Aである。
10Aが紹介されているページの右側のカラー口絵では、ノイマンのDST、DST62、PA2aがある。

ウェストレックスの10A、ノイマンのDST、
どちらもカッターヘッドを開発・製造していたメーカーのカートリッジであり、
ラッカー盤のモニター用として開発されたモノだ。

当時の編集部がどれだけ意図してのものだったのかはわからないが、
音での出口であるスピーカーシステム、
その中でもモニタースピーカーは、プログラムソースをつくるための音の出口であり、
その音の出口によって確認されたモノを、再生側ではカートリッジでトレースする。

つまりモニタースピーカーが、通常のスピーカーとは違うのは、
カートリッジの前段階のスピーカーというところにある。

そして10A、DSTも通常のカートリッジの前段階にあるモノであり、
モニターカートリッジとも呼べるモノでもある。

カートリッジとスピーカーという対照的なモノでありながらも、
プロフェッショナル用として、モニター用としての共通点ももつスピーカーとカートリッジが、
同じ号で取り上げられているいたわけだ。

Date: 3月 21st, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その31)

瀬川先生の「モニタースピーカーと私」の終りちかくに、こう書かれている。
     *
 リファレンス・スピーカーとしてJBL♯4343を参考にしたが、それは、このスピーカーがベストという意味ではなく、よく聴き馴れているためにこれと比較することによって試聴スピーカーの音の性格やバランスを容易に掴みやすいからだ。そして興味深いことには、従来のコンシュマー用のスピーカーテストの場合には、大半を通じてシャープ4343の音がつねに最良に聴こえることが多かったのに、今回のように水準以上の製品が数多く並んだ中に混ぜて長時間比較してみると、いままで見落していた♯4343の音の性格のくせや、エネルギーバランス上での凹凸などが、これまでになくはっきりと感じられた。少なくとも部分的には♯4343を凌駕するスピーカーがいくつかあったことはたいへん興味深い。
     *
JBL・4343のもつ《音の性格のくせ》、《エネルギーバランス上の凹凸》が、
これまでになくはっきりと感じられた、つまり感じさせたスピーカーがあったということで、
その筆頭はK+HのOL10のことだと、(はっきりとは書かれていないけれど)そう受け取った。

44号、45号、この46号とスピーカーの特集が三号続いて、
なぜ、こうもスピーカーシステムというモノは、これほどまでにすべて違うのか──、
それを知ることができた、といっていい。

スピーカー特集の三号に登場したスピーカーシステムをすべて聴いたことのある人は、
ステレオサウンド関係者を含めても、そう多くはないはずだ。

これとあれは聴いているけれど……、
聴いていない機種の方が多いという人が大半だと思う。

私もそのひとりであり、聴いたことのあるスピーカーの数は少ないほうだった。
音は活字で、どこまで表現できるのか。
そのことを考えれば、スピーカーシステムというモノを、ほんとうのところはわかっていないともいえるのだが、
そうであっても、違いの多様さは確実に知ることができた。

46号の特集のおわりには、岡先生による「その他の世界のモニタースピーカー紹介」がある。
デンオンのDS103、ガウス・オプトニカのCP3830、KEFのModel 5/1AC、フォノゲンのPhonogen 1、
シーメンスのEurophon、ウェストレークのTM2が紹介されている。

ガウス・オプトニカ、フォノゲン、KEF、シーメンス、ウェストレークが、
特集の本編で取り上げられていないのは少し残念だった。

瀬川先生も《そして試聴できなくて残念だったスピーカーはウェストレーク、ガウス、シーメンスなどであった》
と書かれている。

瀬川先生が、これらのモニタースピーカーをどう評価されたのか、
それが読めなかったのはほんとうに残念である。

Date: 3月 20th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その30)

ステレオサウンド 46号、瀬川先生のK+HのOL10の試聴記を読んでいて、
まず感じたのは、このスピーカーのバランスは、瀬川先生にとってかなり理想に近いものだということ。

OL10の価格は80万円(一本)。
エンクロージュアに三台のパワーアンプ(低域120W、中域60W、高域30W)が内蔵されているとはいえ、
JBLの4343よりも高い。

ユニットはウーファーが25cm口径のメタルコーン型を二発、
スコーカーもメタルコーン使用の13cm口径、トゥイーターがホーン型で、
ユニット単体の写真はないけれど、
おそらくというか、ほぼ間違いなくJBLのユニットと比較すると、
物量の投入のされ方などに、モノとしての凄みは感じられないはずだ。

オーディオマニア心をくすぐるユニット群ではない、といえる。
見た目もそっけない。
同じプロフェッショナル機器(モニタースピーカー)であっても、
JBLの4343に代表される4300シリーズとは洗練のされ方が違う。

写真だけを見ていてはそれほど魅力的なスピーカーとは思えてこなかったのが、
瀬川先生の試聴記を読むにつれて、
これ(OL10)はホンモノのモニタースピーカーだ、ということが伝わってきた。

《ブラームスのベルリン・フィル、ドヴォルザークNo.8のチェロ・フィル、ラヴェルのコンセルヴァトワル、バッハのザルツブルク……これらのオーケストラの固有のハーモニィと音色と特徴を、それぞれにほどよく鳴らし分ける。この意味では今回聴いた17機種中の白眉といえるかしれない。》
《いわばアトモスフィアを大切にしたレコード場合に、OL10では、とても暖い雰囲気がかもし出される。》
《またバッハのヴァイオリン協奏曲の場合にも、独奏ヴァイオリンの音色の良さはもちろんだが、バックの室内オーケストラとの対比もきわめてバランスがよく、オーケストラがとても自然に展開してディテールがよく聴き分けられる。》

このあたりを読みながら、その音を想像していた。
そして試聴記の最後に、もう一度引用するが、
《私がもしいま急に録音をとるはめになったら、このOL10を、信頼のおけるモニターとして選ぶかもしれない。》
が来る。

瀬川先生がオーディオのプロフェッショナルとして、
OL10というモニタースピーカーを信頼されていることが、強く伝わってきた。

Date: 3月 19th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その29)

ステレオサウンド 46号の特集は、
44号、45号から三号続いてのスピーカーであり、
既に書いているようにモニタースピーカーという枠をもうけている。

モニタースピーカーと、簡単に口にしてしまうが、
モニタースピーカーの正確な定義となると、いまも非常に難しいところがある。

46号の特集は、
 モニタースピーカー私観(岡俊雄)
 レコーディング・ミキサー側からみたモニタースピーカー(菅野沖彦)
 モニタースピーカーと私(瀬川冬樹)
という三つの文章からはじまる。

じっくり読んでも、読み返しても、モニタースピーカーの正確な定義を簡潔に述べることは、
いまも難しいと感じる。

46号に登場するモニタースピーカーでもっとも小型なのはロジャースのLS3/5Aであり、
大きいモノではダイヤトーンの4S4002Pがある。
前者は5.3kg、後者は135kgと、カタログには載っている。
価格ではJBLの4301がもっとも安価(65000円)で、ダイヤトーンの4S4002Pがもっとも高価(100万円)だ。

日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツのモニタースピーカー17機種が載っている。
その中でもっとも聴いてみたい、と思ったのはK+HのOL10である。

UREIのModel 813も聴いてみたい、と思った。
キャバスのBrigantinにも興味をもっていた。

それでもOL10の、瀬川先生の試聴記を読むと、聴いてみたい、というよりも、
聴かなければ……、という気持のほうが強くなってくる。

OL10の試聴記の最後にこう書かれている。
《私がもしいま急に録音をとるはめになったら、このOL10を、信頼のおけるモニターとして選ぶかもしれない。》

残念ながら、聴く機会にめぐまれずいまにいたっている。

Date: 3月 19th, 2016
Cate: 映画

映画で気づくこと

映画を観ていて気づくことは多々ある。
ブルースチールもそうだし、Blue Steelに別の意味があることを、
やはり別の映画「ズーランダー」で知る。

数ヵ月前に「サタデー・ナイト・フィーバー(Saturday Night Fever)」をやっと観た。
1978年当時、話題になっていた。
でも近所の映画館では上映されていなかったし、
「サタデー・ナイト・フィーバー」を観るために、
往復で映画の入場料金をこえる金額を交通費に払えるだけの余裕もなくて、そのままずっと来ていた。

やっと観たのはHuluで公開されたからだった。
勝手にイメージしていた内容とはかなり違った映画だった。
「こういう映画だったか」と思いながら観ていた。

ジョン・トラボルタが演じるトニーがダンスコンテストに出る。
会場となったディスコには、アルテックのA7が登場する。

この時代、アメリカのディスコではA7が鳴らされていたのか、と早とちりしそうになったが、
おそらくこのアルテックのスピーカーは、1236のはずだ。

“MUSICAL SOUND LOUDSPEAKER SYSTEM”の名をもつこのシステムは、
ウーファーは421-8LF、ドライバーには808-8B、ホーンは511B、
ネットワークはN1209-8Aから構成されている。

A7、A5が”The Voice of the Theatre System”の愛称で呼ばれるとおり、
トーキー用のスピーカーシステムとして開発されたのに対し、
1236はディスコなどでの使用を考えての開発・システム構成である。

もちろんA7の可能性もある。
どちらにしろアルテックのシステムである。
それまでアルテックとディスコ・サウンドと結びつくことはなかったけれど、
そういう時代もあったのか、と思っていた。

Date: 3月 18th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その28)

このころのステレオサウンドの表紙は安齊吉三郎氏が撮られていた。
46号の約一年前野別冊「コンポーネントステレオの世界 ’77」の表紙も、
アルテックの同軸型ユニットで、安齊吉三郎氏による撮影だ。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」のアルテックは604-8Gではなく、601-8Eだ。
アルテックのユニットにあまり関心のない人だと、
604-8Gだと勘違いされるように、604シリーズ同様マルチセルラホーンをもつ。
セルの数は同じだが形状、大きさに違いがあり、ユニットの口径も12インチと小さい。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」では、この601-8Eを真正面から撮られている。
背景も46号とは対照的に明るい。

601-8Eの背面は、604シリーズとはずいぶん違う。
口径も含めてスケールダウンしたユニットであり、
46号の604-8Gと同じアングルでは、604のようには映えない。

どういう理由で、「コンポーネントステレオの世界 ’77」と46号のアングルの違いなのか。
正確なところはなんともいえないが、
約一年のあいだに、安齊吉三郎氏によるアルテックの同軸型ユニットの写真を、
この時代のステレオサウンドの読者であった人は見てきているわけだ。

Date: 3月 17th, 2016
Cate:

オーディオと青の関係(その7)

青で思い出す映画がある。
「ブルースチール(Blue Steel)」だ。
この映画で、キャスリン・ビグローという監督を知った。

「ブルースチール」が何を意味するのか知らずに観た。
映画館の大きなスクリーンに何かが大写しになるオープニングは、強烈だった。

カメラが対象物に触れんばかりに近接して、舐めるように撮っていく。
すぐには何か、わからなかった。
しばらくして、拳銃だと気付く。

すぐに気付かなかった理由は、その何かが青く光っていたからだった。
拳銃の実物は、いまも見たことがない。
拳銃といえばテレビで見るものぐらいで、日本のテレビドラマに登場する拳銃のイメージは青ではなく黒である。
モデルガンも黒だ。

「ブルースチール」を観て、
“Blue Steel”が酸化焼入れ処理を施した鋼のことであり、拳銃の錆防止の表面処理として用いられることを知った。
そういう理由から”Blue Steel”が銃の色を表し、さらには銃そのものを指す言葉としても使われることも知った。

「ブルースチール」のオープニングは、青がいままで感じたことがないほどに官能的な色であることを教えてくれた。

Date: 3月 17th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その27)

ステレオサウンド 46号の表紙はアルテックの同軸型ユニット604-8Gだった。
ユニットの全景をとらえた写真だ。

604-8Gを構成している色は黒だ。
コーン紙も黒、エッジも黒、フレームも黒。
もちろんそれぞれの黒には微妙な違いがあって立体的な陰翳を醸している。

こういうモノは被写体としてどうなんだろう。黒以外の色はない。
46号の表紙では604-8Gの下にはアルミ(と思われる板)が敷かれている。

604-8Gの写真は、これでいくつもみてきた。
46号の表紙は、その中でのベストといえる。
この表紙をみているだけで、アルテック604-8Gがほしくなる。

604-8Gからは、私が求める音は決して出て来そうにないと感じながらも、
それでも手元にあってほしいユニット(カタチ)である。

古くからのアルテックの使い手は、604-8Gを低く評価する傾向がないわけではない。
604Eまでがアルテックの音であり、
604-8Gになり、それまで受け継がれてきた604シリーズに共通する音の美点が消えてしまった……、という。

それにフレームの形状も604-8Gから変更された。
フレームの塗装もそうだ。
604Dのアルテックグリーンでもなく、604Eのグレー(磁気回路)とホワイト(フレーム)でもない。
武骨な黒になってしまった。

そんなバイアスのかかった目には46号の表紙は、どう映るのか。

46号の特集は、表紙の604-8Gが象徴しているように「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質を探る」。
46号を書店で手に取ったとき、確かに表紙は604-8G以外にない、と思った。

でもいまはUREIのModel 813も表紙の候補に挙がっていたのではないか、とも思う。
Model 813は特集でも、新製品紹介でも取り上げられている。
どちらでも高い評価を得ている。

Model 813の中核を成すのは604-8Gであり、オリジナルのマルチセルラホーンが、
UREI独自の青いホーンに換装されている。
この青のホーンは、これはこれで映えた表紙になった、と思う。
それでも46号の表紙は604-8Gであり、それでよかった、と私は思う。

Date: 3月 16th, 2016
Cate: audio wednesday, マッスルオーディオ

第63回audio sharing例会のお知らせ(muscle audio Boot Camp)

4月のaudio sharing例会は、6日(水曜日)です。

muscle audio Boot Campと名づけておいて、
単なるオーディオ機器の比較試聴、もしくは単なる音出しでは、Boot Campとは呼べない。

なにかひとつはBoot Campと呼べる内容を盛り込みたい。
どうしようかと考えていた。
もの足りなさを感じさせる内容にはしたくない。

今回のmuscle audio Boot Campは、バイアンプ駆動ではなく、LC型ネットワークでの音出しを最初は考えていた。
けれど、ありがたいことにFirst WattのパワーアンプSIT2が参加する。

となるとマッキントッシュのMA2275はプリ・パワー分離機能をもつプリメインアンプだから、
パワーアンプ部をウーファーに、SIT2をドライバーに割り合てて、
ふたたびバイアンプ駆動でやってみるのもの面白い、と考え直した。

けれど、今回は前回のaudio sharin例会でやったモノーラルの再生装置を、
最低限の器材のプラスによってステレオにするということが趣旨である。

モノーラルからステレオへの移行時代に、もしオーディオをやっていたら……。
私ならどうしただろうか。

バイアンプ駆動はいったんあきらめてLC型ネットワークで鳴らすだろう。
同時に、今回の音出しは、
そこで得られたことを、喫茶茶会記のスピーカーシステムの改善にも結びつくようにもしたい。
となるとバイアンプ駆動よりも、やはりLC型ネットワークということになる。

それにLC型ネットワークにしたほうが、
MA2275とSIT2の比較試聴もじっくりとできる。

喫茶茶会記には、アルテックのシステムを鳴らすための800Hzクロスオーバーの、12dB/octのネットワークがある。
まずこれで音を出す。

このネットワークをひとつの標準として、ネットワークの実験をやってみたい。
クロスオーバー周波数は800Hzにするか、もう少し低い値にするかはまだ決定していない。

決定しているのは6dB/octのネットワークということと、
並列型と直列型の両方を試すことだ。

世の中のほとんどのスピーカーシステムの内蔵ネットワークは並列型である。
並列型ネットワークだからバイワイアリングも可能になる。

直列型のモノは極端に少ない。
新しいところではライドーのスピーカーがそうだった。古いところではアルテックの605Bもそうだ。

6dB/octならば、並列型と直列型を簡単な配線の変更によって切り替えられる。
それに直列型のネットワークは6dB/octがメリットがあるようにも感じている。

個人的には直列型ネットワークで、SIT2で駆動した音にもっとも関心と興味がある。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 3月 15th, 2016
Cate:

オーディオと青の関係(その6)

この項を書きながら考えているのは、
ソニーのウォークマンのことだ。

初代のウォークマン(TPS-L2)は、1979年に登場した。
もしこのウォークマンの色が他の色だったら……、
赤とか黄色とか、もしくは無難な黒かシルバーだったら、あそこまでの大ヒットになっただろうか。

初代ウォークマンのボディの色も青だった。
ボディ上部のヘッドフォン端子横のボタンはオレンジだった。

JBLのスタジオモニターの色と同じである。
ブルーのバッフルに、JBLのロゴはオレンジをバックに白抜きの文字である。

1979年、JBLの4343は大ヒットしていた。

ウォークマンの青とオレンジ。
単なる偶然かもしれないし、そうでないかもしれない、と思ってしまう。

Date: 3月 14th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その26)

ステレオサウンド 45号で田中一光氏は、コントロールアンプについて語られている。
     *
 マークレビンソンにすると音が細くなるね。ジェリー・マリガンの太いバリトンサックスの感じが出てこない。音楽ソースにもオーディオ機器にも、それが生れた時代の世代観みたいなものがあるように思う。その機械がつくられた時代とレコードが録音された時代が近いとうまく鳴る。そのへんのジェネレーションギャップがあるとどうもうまく鳴らない。
 最近の録音が優れているといわれる新しいレコードの音、僕はあまり好きになれない。レンジは広いけれど、音に芯がないように僕には感じられる。僕が好きなのは、モノーラルの後期からステレオの初期、つまり50年代の終りごろの音。コンテンポラリーとかブルーノート、音がしっかりしているでしょ、音に厚みがあって……。
(中略)
 スピーカーに世代があるように、アンプにも世代がある。アンプだけグレイドアップして新しいのを持ってきても合わない。
(マッキントッシュのC22につなぎかえて)
 どうですか、アートペッパー・ミーツ・ザ・リズムセクション(コンテンポラリー)、だんぜん生き生きとして躍動感が出てくる。やはり古いスピーカーにはこういう球のアンプが合うね。昔大阪で通いつめたバードランド、あの頃に僕はマッキントッシュを聴きすぎたかな。マッキンの音が骨の髄まで滲みこんじゃったとか……。
(中略)
 こうしてLNP2とC22を聴いてみたけれど、それぞれに良し悪しがあって、マークレビンソンにすぐ飛びつくということにはならないね。かといって昔なつかしいC22は、高音が少し粗くてがさつになるところがある。しかしね、演奏会に行くとオーケストラでも案外音は粗いものだね。レコードの音はきれいすぎるかもしれない。
     *
45号当時の田中一光氏のシステムは、スピーカーはJBLのハークネス、
001システムだから130Aウーファーと175DLHドライバー/ホーン/レンズ、
N1200ネットワークということになる。

パワーアンプはマランツの510M。
これは当時のステレオサウンドがリファレンスとして使っていた。

コントロールアンプはマークレビンソンのLNP2とマッキントッシュのC22を比較されているところ。
アナログプレーヤーはヤマハのYP800で、カートリッジはピカリングのXSV/3000である。

別冊「SOUND SPACE 音のある住空間をめぐる25の提案」でも、
《プレーヤーのグレイドアップで音の腰をしっかりさせることと、良いプリアンプを見つけることが当面の課題です》
と述べられている。

《良いプリアンプ》は、
ステレオサウンド 59号の黒田先生の「ML7についてのM君への手紙」へとつながっていく。
田中一光氏のハークネスと部屋は、1993年のステレオサウンド別冊「JBLのすべて」へとつづいていく。

Date: 3月 14th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その25)

4341が大きなブックシェルフタイプということになれば、
その後継機の4343もそうなるのか。

ステレオサウンド 45号の「サウンド・スペースへの招待」を読んで、そう心の中で呟いていた。
まだそのころは4341も4343もきちんと聴いたことがなかった。

田中一光氏の発言をきちんと理解するだけのものを、まだ築いていなかった。

数年後、岩崎先生が4350を、やはり「大きなブックシェルフ」的発言をされているのを知った。
4341、4343よりも大型で、ダブルウーファーで、搭載しているユニットもより強力な4350をも、
大きなブックシェルフのようだ、ということは、すんなりとは受け容れられなかった。

同じことをいわれている田中一光氏と岩崎先生、
ふたりともハークネスを使われている、という共通点があることだけは気づいていた。

大きなブックシェルフタイプのような音とは、いったいどういう音なのか。
そのことを理解し、田中一光氏、岩崎先生の発言に納得できるようになるのは、もっとあとのことだ。

ちなみに4350は「テキサス・ブックシェルフ」というニックネームがつけられていた、
とステレオサウンド別冊「JBL 60th Anniversary」にある。

訳注には次のように書かれている。
     *
アメリカン・ジョークでは、テキサスでは何でも並外れて大きいことになっていて、州外からやってきた人間がそれに驚くというのが定番である。「テキサス・ブックシェルフ」というのは、大型スピーカーを作ることで知られるJBLでも、このプロトタイプは史上屈指の巨大システムだったのだが、「でも、テキサスなら、これくらいじゃあブックシェルフ=小型スピーカーだぜ」というジョークである。
     *
けれど日本には、ジョークではなく《大きなブックシェルフタイプといった音》と感じる人たちがいた。

Date: 3月 14th, 2016
Cate: audio wednesday

マッスルオーディオで聴くモノーラルCD(その8)

アナログプレーヤーのアクセサリーであるスタビライザーの重量は500gくらいからある。
その500gくらいのスタビライザーを天板にのせても、スピーカーから出てくる音は変化する。
まして今回のaudio sharing例会で鳴らしたJBLの2441の重量は12kg。

これだけの重量の、しかも金属の塊といえるモノがエンクロージュアの上にのる。
それも一本ではなく二本。

通常のダブルウーファーのエンクロージュアであれば、
コンプレッションドライバーの荷重はエンクロージュア後部の中央にかかる。

今回の音出しでは二台のエンクロージュアを近接させて設置した。
2441が一本ならば、二台のエンクロージュアの近接する後部のコーナーにまたがるようにのる。
二本ならばそれぞれのエンクロージュアの後部コーナーに、それぞれのドライバーの荷重がくわわる。

荷重のかかりかたが、ダブルウーファー用のエンクロージュアと、
シングルウーファー用エンクロージュア二本では、このように大きく違ってくる。

前者では後部中央、後者ではエンクロージュアの片隅という違いは、
当然天板の振動モードに大きく影響する。

振動モードのコントロールということでは、前者のほうが有利といえる。
後者はシステム全体の重量バランスを大きく崩すことにもなり、決していい条件とはいえない。
ましてドライバーは一本ではなく、よりアンバランスな状況をつくりだす二本である。

もし2441があと二本あったとしたら、
エンクロージュア後部のもう一箇所の片隅に2441を置くことは、
おもしろい結果につながっていくと思われる。

2441をあと一組用意するのはたいへんだが、
同じような重量で、同じような大きさの金属の塊があれば、それでもいいはずだ。