ステレオサウンドについて(その30)
ステレオサウンド 46号、瀬川先生のK+HのOL10の試聴記を読んでいて、
まず感じたのは、このスピーカーのバランスは、瀬川先生にとってかなり理想に近いものだということ。
OL10の価格は80万円(一本)。
エンクロージュアに三台のパワーアンプ(低域120W、中域60W、高域30W)が内蔵されているとはいえ、
JBLの4343よりも高い。
ユニットはウーファーが25cm口径のメタルコーン型を二発、
スコーカーもメタルコーン使用の13cm口径、トゥイーターがホーン型で、
ユニット単体の写真はないけれど、
おそらくというか、ほぼ間違いなくJBLのユニットと比較すると、
物量の投入のされ方などに、モノとしての凄みは感じられないはずだ。
オーディオマニア心をくすぐるユニット群ではない、といえる。
見た目もそっけない。
同じプロフェッショナル機器(モニタースピーカー)であっても、
JBLの4343に代表される4300シリーズとは洗練のされ方が違う。
写真だけを見ていてはそれほど魅力的なスピーカーとは思えてこなかったのが、
瀬川先生の試聴記を読むにつれて、
これ(OL10)はホンモノのモニタースピーカーだ、ということが伝わってきた。
《ブラームスのベルリン・フィル、ドヴォルザークNo.8のチェロ・フィル、ラヴェルのコンセルヴァトワル、バッハのザルツブルク……これらのオーケストラの固有のハーモニィと音色と特徴を、それぞれにほどよく鳴らし分ける。この意味では今回聴いた17機種中の白眉といえるかしれない。》
《いわばアトモスフィアを大切にしたレコード場合に、OL10では、とても暖い雰囲気がかもし出される。》
《またバッハのヴァイオリン協奏曲の場合にも、独奏ヴァイオリンの音色の良さはもちろんだが、バックの室内オーケストラとの対比もきわめてバランスがよく、オーケストラがとても自然に展開してディテールがよく聴き分けられる。》
このあたりを読みながら、その音を想像していた。
そして試聴記の最後に、もう一度引用するが、
《私がもしいま急に録音をとるはめになったら、このOL10を、信頼のおけるモニターとして選ぶかもしれない。》
が来る。
瀬川先生がオーディオのプロフェッショナルとして、
OL10というモニタースピーカーを信頼されていることが、強く伝わってきた。