ステレオサウンドについて(その32)
ステレオサウンド 46号の特集は、もうひとつある。
井上先生による「最新MC型カートリッジ 昇圧トランス/ヘッドアンプ総テスト」だ。
スピーカーの特集が三号続いたからこその、音の入口にあたるカートリッジの特集だったのか。
カートリッジの記事はこれだけではない。
「オーディオの名器にみるクラフツマンシップの粋」でも、カートリッジが取り上げられている。
井上卓也、長島達夫、山中敬三の三氏による鼎談で、
製造中止になっているカートリッジが紹介されている。
「フォノカートリッジの名門」と題された、この記事の最初に登場するのは、
ウェストレックスの10Aである。
10Aが紹介されているページの右側のカラー口絵では、ノイマンのDST、DST62、PA2aがある。
ウェストレックスの10A、ノイマンのDST、
どちらもカッターヘッドを開発・製造していたメーカーのカートリッジであり、
ラッカー盤のモニター用として開発されたモノだ。
当時の編集部がどれだけ意図してのものだったのかはわからないが、
音での出口であるスピーカーシステム、
その中でもモニタースピーカーは、プログラムソースをつくるための音の出口であり、
その音の出口によって確認されたモノを、再生側ではカートリッジでトレースする。
つまりモニタースピーカーが、通常のスピーカーとは違うのは、
カートリッジの前段階のスピーカーというところにある。
そして10A、DSTも通常のカートリッジの前段階にあるモノであり、
モニターカートリッジとも呼べるモノでもある。
カートリッジとスピーカーという対照的なモノでありながらも、
プロフェッショナル用として、モニター用としての共通点ももつスピーカーとカートリッジが、
同じ号で取り上げられているいたわけだ。