Archive for category テーマ

Date: 5月 15th, 2020
Cate: ショウ雑感

2020年ショウ雑感(その18)

誰のためのオーディオショウなのか。
コロナ禍でいくつものオーディオショウが中止になっている。
これから先、さらに中止になる可能性もあるだけに、
この機会に、きちんと考えてみるのもいいのではないだろうか。

オーディオマニアのため、なのか。
私の周りの熱心なオーディオマニアは、行く人もいればまったく行かない人もいる。

私はずっと行かなかった時期がある。十年くらいまったく行かなかった。
行けば楽しい、とは思っている。

それでも、一昨年あたりから、そろそろ行くのをよそうかな、と思い始めてもいる。
天気が悪かったりすると、今日はやめた、と思う。

どうしてなのか、と考える。
熱気が薄れてきているような感じを、毎年、少しずつ感じている。

出展社のスタッフによるプレゼンテーションでも、
熱いおもいが伝わってこない、と感じることが増えてきた。

仕事だから、やっています──、
そんな人が増えてきているように感じているのは私だけなのか。

話していることも、
オーディオ関係のウェブサイトや雑誌で読んだことのくり返しばかりだと、
音を聴く前に、もういいや、という気持がいっぱいになる。

きちんとやっているところ、
なにかが伝わってくるところはある。

でも、そうでないところのほうが、いまでは多いのではないのか。

こんなふうに考えていると、
オーディオショウは、出展社のため、とも思えなくなってくる。
となると、オーディオ評論家のためなのか。

Date: 5月 15th, 2020
Cate: ショウ雑感

2020年ショウ雑感(その17)

10月17日、18日に開催予定だった真空管オーディオフェアも、中止になった。
ぎりぎりまでのばさずに、この早い時期での中止の決定はなかなかできることではないと思う。

オーディオショウは東京ではいくつか開催されている。
けれど、そのすべてに行く、という人はあまりいないように思う。

私はすべてのオーディオショウに行っているわけではない。
真空管オーディオフェアには、まだ行ったことがない。

OTOTEN、インターナショナルオーディオショウのような規模ではないが、
かなり多くの人が来場すると、行ったことのある友人からきいている。

真空管オーディオフェアだけに行くという人も、きっといるはずだ。
OTOTEN、インターナショナルオーディオショウとはかなり趣が異るだろうから。

11月開催のインターナショナルオーディオショウが、どうなるのか、
いつごろ決定になるのか、私はまったく知らない。

ぎりぎりまでのばしたほうがいいのか、それとも早めに決断したほうがいいのか。
その判断もむずかしいところなのだろう。

誰もいわないだろうが、出展社の本音はどうなのだろうか。
毎年出展しているところでも、二年に一度くらいでいい、とか、
毎年出展しても……、と思っているところがあるのかないのか……。

出展にはお金がかかる。
オーディオフェアのころに比べれば、その予算は少なくてすんでいるだろうが、
それでも負担と感じている出展社がいない、といいきれるだろうか。

インターナショナルオーディオショウの初日に行くと毎回感じていることがある。
オーディオ業界にずっといる人たちの同窓会のような雰囲気が、初日は特に強く感じる。

気づけば、一人欠け、二人欠け……、といつかはなっていく。
そう遠い日のことではないはずだ。

Date: 5月 15th, 2020
Cate: High Resolution

MQAのこと、MQA-CDのこと(その11)

カルロス・クライバーのMQA-CDは、ベートーヴェンの第五番と七番のカップリング、
シューベルトの第三番と八番のカップリングの二枚がある。

どちらもアナログディスクでもCDでも、くり返し聴いてきた。
どちらもおすすめなのだが、
特にシューベルトは、こんなにすごかったのか、と認識を改めるほどである。

MQA-CDは、2.8MHzのDSDマスターを352.8kHz、24ビットのMQAに変換したものだ。
e-onkyoでも、クライバーのベートーヴェン、シューベルトともに配信されている。
こちらは96kHz、24ビットである。

単純に考えれば、MQA-CDのほうがいい、ということになる。
けれどここで考えたいのは、e-onkyoで配信されている音源は、
MQA-CDとは違うプロセスを経ているかもしれない、ということだ。

つまりアナログ録音を一度DSDにして、さらにPCM変換して、というプロセスではないはずだ。
e-onkyoのどこにも詳細な情報はないから推測にすぎないが、
おそらくe-onkyoの音源は、アナログ録音をPCM(96kHz、24ビット)に変換したものだ。

MQA-CDはアナログ録音→DSD(2.8MHZ)→PCM(352.8kHz、24ビット)→MQA、
e-onkyoの音源はアナログ録音→PCM(96kHz、24ビット)→MQA、
確証はないが、こうだと思っている。

もう一つ違いがあって、MQA-CDはMQA Studio、e-onkyoはMQAである。
メリディアンの218はフロントパネルの右端のMQAのLEDが、
青色のときはMQA Studioで、緑色のときはMQAである。

この違いはさほど気にすることはないが、
変換プロセスの違いは、少なからぬ音の違いになっているであろう。

クライバーに限らず、ユニバーサルミュージックのMQA-CDで、
DSDからのMQA化のものに関しても、同じことがいえるはずだし、
そのなかで私にとってクライバーのシューベルトはe-onkyoでも買うことになりそうだ。

Date: 5月 14th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・追補)

ヤマハのアンプのラインナップから、
プリメインアンプの本格的なモデルが製造中止になっている、と(その2)で書いた。

A-S2100は2014年の登場だから、そろそろ新製品が出るのか、
コロナ禍で中止になったが6月にはOTOTENだったのだから、
それにあわせて新製品が出るのかもしれない──、そう思ってもいた。

今日(5月14日)、やはり新製品が発表になった。
A-S3200、A-S2200、A-S1200の三機種である。

六年経っているわけだから、
A-S2100よりもA-S2200はよくなっているはずだ。

そうだとして、今回のA-S2100の選択は失敗だったか、というと、
むしろ逆だと思っている。

ヤマハのウェブサイトをみてもらうとわかるが、
A-S2100は250,000円(税抜き)だったのが、A-S2200は350,000円になっている。
A-S1200が240,000円で、最上機種のA-S3200は640,000円となっている。

けっこうな価格の違いがあるのをどう判断するのかは、
音を聴いてみないことには何もいえない。

新製品だと、今回のような値段では買えなかった。
A-S1200でも予算オーバーとなる。

いいタイミングでの買物だった、と結果的に思っている。

Date: 5月 13th, 2020
Cate: トランス, フルレンジユニット

シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その2)

池田圭氏の「盤塵集」に、こんなことが書いてある。
     *
このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上の周波数特性とかひずみ率などの問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
 たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる。
     *
ここではテープデッキの出力となっているが、
CDプレーヤー、チューナー、コントロールアンプの出力の場合もだ。

その出力にライントランスの一次側だけを並列に接続する。
二次側は開放のままである。

「盤塵集」を読んで数年後に試したことがある。
タムラのライントランスで、一次側が20kΩ、二次側が600Ωの仕様だった。

たしかに池田圭氏の書かれているとおりの音になる。
音の静けさも変化してくる。

タムラのトランスは、別のことに使うことになり、取り外したが、
また追試してみよう、とは思っている。

なぜ、そのように音は変化するのか。
トランスは一次側の巻線を信号経路に並列にするだけである。

あれこれ、その理由を考えた時期がある。
結局、これも直流域での抵抗が低さが効いているのではないだろうか。

一次側が20kΩだと、直流抵抗はそれほど低くはない。
それでもアンプのライン入力インピーダンスの一般的な値よりはずっと低くなる。

そういえば池田圭氏は、なるべく太い巻線のトランスのほうが、より効果的とも書かれていた。
つまりは直流抵抗がより低いトランスのほうが、ということでもある。

Date: 5月 13th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その5)

前々から感じていても、現実に誰かの買物につきあって、
あれこれ検討してみると、選択肢の少なさは、
アンプのデザインについてもいえることを強く感じた。

今回の予算内にはおさまらないので選択肢から最初から外したが、アキュフェーズとラックスマン、
それに今回の選択肢の一つだったマランツ。
なぜ、こうも左右対称のフロントパネルばかりなのだろうか。

左右対称だから、どれも同じ、とまではいわないが、
左右に大きなツマミ(ボリュウムと入力セレクター)があるのは共通している。

アキュフェーズは、コントロールアンプのC280から、このスタイルである。
コントロールアンプもプリメインアンプも、基本的に同じである。
それ以前は、そうではなかった。
C200、C240、C220といったコントロールアンプは、それぞれのスタイルを持っていた。

ラックスのプリメインアンプはもっとヴァリエーションが豊富だった。
すべてが優れたデザインとはいえなくとも、意欲的だったことは確かだ。

マランツは左右対称のデザインは、伝統的ともいえる。
それでも1980年代からは、左右対称ではないアンプも登場していた。
それがいまではどうだろう。

アキュフェーズは、これから先も、デザインに大きな変更はないように思う。
マランツもそうかもしれない。

ラックスはどうだろうか。
コントロールアンプのCL1000の登場は変化の兆しとなるのだろうか。

とにかくデザインに関しても選択肢が少なくなってきている。
これで豊かになってきている、
よくなってきている、といえるだろうか。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 録音

PCM-D100の登場(その8)

オーディオの世界で自作といえば、ハードウェアの自作のことを指している。
ソフトウェアの自作ということについては、
ほとんど、というか、これまでまったく語られることはなかったけれど、
録音こそ、ソフトウェアの自作である。

1970年代に生録がブームになっていた。
生録を特集するだけで、そのオーディオ雑誌の売行きが増すほどにブームだった──、
と話にきいている。

そうやって録音してきた音源は、そのままでソフトウェアの自作といえるだろうか。
オーディオの世界でのソフトウェアの自作という意味では、
そのままでは、ただ録ってきただけであり、
もちろん、少しでもいい音で録るために工夫しているとはいえ、
録りっぱなしでは、ソフトウェアの自作と呼ぶには抵抗がある。

やはり、なんらかの編集が必要だ。

2013年9月に、ソニーのPCM-D100が登場した。
嬉しいことに、いまも現役の録音機である。

マイクロフォンがついていて、これ一台で、
PCM(192kHzまで可能)でもDSD(2.8MHz)でも録音ができる。

オーディオマニアのなかには、PCM-D100MKIIになって、
PCMで384kHz、DSDで5.6MHzでの録音を可能にしてほしい、と思う人もいよう。

私にも、そういう気持がないわけではないが、
ソフトウェアの自作ということに関して、優れた編集ソフトが必要となる。

PCM-D100には、Sound Forge Audio Studio 10 LEという編集ソフトが付属している。
使ったことはないので、このソフトについては触れないが、
つい最近、イギリスからHit’n’Mix Infinityというソフトウェアが出てきた。

どんなソフトなのかは、リンク先をクリックしてほしいし、
“Hit’n’Mix Infinity”で検索してほしい。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・余談)

ゴールデンウィークは終っているから、電車は多少は混んでいるのか、と思っていたが、
昨日の昼間は、一車輌に十人くらいしか乗ってなかった。

秋葉原も人は少なかった。
ほぼ二ヵ月ぶりの秋葉原だったが、まずラジオ会館が閉まっていた。
当面の間、休業する、ということだった。

予想していたことだが、閉まっている店が多い。
昨日は、ヨドバシでプリメインアンプの購入という目的のほかに、
部品を買うという用事が、私にはあった。

ラジオデパートに行くと、一階の店舗はほとんど閉まっている。
ラジオデパートそのものも休業しているのかと勘違いするほどで、
後日出直すしかないのか、と一瞬思ったけど、シャッターはわずかだが開いていて、
目的の店舗(海神無線)は営業していた。

秋葉原にそんなに長い時間いたわけではないし、
歩きまわったわけでもないが、こんなにひっそりとした秋葉原は初めてである。

ヨドバシも19時閉店だった。
店内も、近所のスーパーのほうが混雑しているくらいに人が少ない。

買物すべてを終えて、三人で食事をすることになった。
誰かと食事をすること、親しい人たちと食事をすることは一ヵ月ぶり。

外に出るのも面倒だし、リスクもあるからということで、
ヨドバシの八階に移動する。

売場よりも人が少ない。
換気がいいだろうから、という素人考えで、焼き肉店に入る。
われわれ三人の他は、客は一人だけ。

普段だったら、かなりにぎわっているはずである。
なのに、こういう状況下でひっそりとしている。

食事を終え、秋葉原から電車に乗ろうと思ったが、
こんな東京は初めてだから、東京駅まで歩くことにした。

秋葉原から神田、日本橋を経て東京駅まで、人はいる。
秋葉原よりも多くの人がいるけれど、いつもよりはずっとずっと少ない。

20時前なのに、大半の店が早じまい、もしくは閉店していた。

それに空気が澄んでいのだろう、
通りがいつもよりきれいにライトアップしているような印象さえある。

こういう東京が日常化していくのだろうか。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その4)

先に書いてしまうと、
購入したのはヤマハのA-S2100である。

製造中止になっているが、秋葉原のヨドバシのアウトレットコーナーには、
A-S2100、A-S1100、どちらも複数台あった。

アウトレットだから、いうまでもないが中古ではない。
けっこう安くなっている。

しかもヨドバシだから、10%のポイント還元がある。
現行製品の新品ならば、A-S2100は予算オーバーとなるが、今回はそうではない。

予算内におさまり、それだけでなく、プリメインアンプらしいプリメインアンプである。
フォノ入力もMM型だけでなくMC型にも対応している。
トーンコントロールもついている。

リモコン操作もできる。
そんなもの必要ない、というオーディオマニアもいようが、
今回、プリメインアンプを買う人は、くり返すがオーディオマニアではない。

テレビも接続するわけだから、
A-S2100のようなプリメインアンプらしいプリメインアンプが望ましい。

それが製造中止になっていたおかげで、予算といういちばん重要な条件も満たせた。
もちろん他の機種も見てもらった。

A-S2100のデザインが気に入った、ということも、購入につながっている。
ヨドバシのアウトレットコーナーに、A-S2100があるとは思っていなかった。

なにかいいモノがあればいいなぁ、ぐらいの期待だっただけに運が良かったといえる。

以前ならば、秋葉原に行ったら、数軒のオーディオ店をまわって、ということになったはずだ。
選択肢が多かった時代ならば、そういう買い方をしたはずだ。

そのころにはヨドバシのような大型量販店は、秋葉原にはなかったし、
大型量販店も変化してきているから、
大型量販店でオーディオを買う、ということに、私は抵抗はない。
もちろんすべての大型量販店がそうだ、とはいわない。

少なくともヨドバシで買うことに抵抗はないから、
今回、最初からヨドバシに行ったわけである。

選択肢も減った、
買い方も変った。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その3)

今回のことがなくても気づいていたことなのだが、
今回のような相談をされたときに、現行製品を一覧できるところがない、ということだ。

ずっと以前はステレオサウンドが、HI-FI STEREO GUIDEを出していたから、
数ヵ月のズレはあるというももの、ほぼすべての現行製品が、すぐにわかった。

いまはインターネットがあるじゃないか、といういわれそうだが、
現行製品を一覧できるウェブサイトがあるだろうか。

日本オーディオ協会のウェブサイトにも、そういうページはない。
オーディオ雑誌を刊行している出版社のサイトにもない。

今回、実際に買いにいったヨドバシ、それからamazonなどのサイトで検索して、
それを参考にすればいい、ということなのか。

でも、やはり日本オーディオ協会のサイトに、
現行製品を、ジャンル別に、価格順に一覧できるページがあってほしい──、
というよりも、私はあるべきだ、と考えている。

個々の製品をクリックすれば、
そのメーカーのサイトにアクセスできるようにリンクされていればいい。

メーカー、それから出版社と協力すれば、実現できることである。
なぜやらないのだろうか。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その2)

私が自分のために20万円という予算の枠でプリメインアンプを選ぶなら……、
それは新品に限らず、中古を含めてということになるから、
選択肢はそこそこあることになる。

けれど、今回はそういうわけにはいかない。
いい製品であること。
これはつまりこわれにくい、ということがまずあるし、
仮にこわれた場合のアフターサービスのことも含まれる。

そうなると海外製品はすすめにくい。
国産のプリメインアンプということに、自然となってしまう。

ラックス、アキュフェーズは予算的に少しオーバーしてしまう。
ヤマハは……、というと、今回ヤマハのウェブサイトを見て驚いたのは、
この価格帯のアンプが製造中止になっていたことだ。

ヤマハのアンプのフラッグシップとして、セパレートアンプの5000シリーズがある。
その下には、これまでA-S3000があって、A-S2100、A-S1100があったはずなのに、
三機種とも、すでに製造中止なだけでなく、後継機種がない。

この下となると10万円未満の製品ばかりだ。

こうなってくると、デノンとマランツぐらいしかない。
この二社のプリメインアンプで、アナログプレーヤーも再生可能なのは、また限られる。

これが、日本のオーディオの現状なのか、と思ってしまうほどだ。
けれど実際の買物は、もう少しだけ幅がある。

販売店にいけば、アウトレットと称して、けっこう割り引いてくれるモノがある。
これは多少の運任せの面があるが、買うということは、そういうことでもある。

なので昨日は、三人で秋葉原のヨドバシに行っていた。

Date: 5月 12th, 2020
Cate: 選択

オーディオ機器を選ぶということ(プリメインアンプの場合・その1)

私にとって二冊目のステレオサウンドは42号。
特集はプリメインアンプの総テストだった。

53,800円(オンキョーIntegra A5)から、
195,000円(マランツModel 1250)までの35機種がとりあげられていた。

試聴記、解説、測定データなどを含めて、一機種あたり五ページが割かれていた。
当時、中学生だった私には、充実した記事だった。

ステレオサウンドは57号でもプリメインアンプの総テストを行っている。
こちらは、56,800円(オンキョーIntegra A815)から、
270,000円(ケンウッドL01A)までの34機種。
このころは高校生だった。

いまステレオサウンドがプリメインアンプの総テストをやるとしたら、
いったい何機種とりあげるのか。

別項で、いまのステレオサウンドの編集方針を、幕の内弁当にたとえているが、
ここでいいたいのはそのことに関することではなく、
単純に、市場からプリメインアンプの製品数が、
私が中学生、高校生だったころからは大きく減ってきている、という事実である。

四十年ほど経っているのだから変化していて当然なのだが、
選択肢の少なさに、つい先日、ちょっと驚いてしまった。

20万円までの予算で、プリメインアンプが欲しい、という相談があった。
オーディオマニアからではない。
音楽好きの人からである。

いくつか条件があった。
もちろん価格。
それから入力の数。
アナログプレーヤーの接続するし、テレビも接ぐとのこと。

他にもちょっとあるけれど、もうこれだけでも選択肢はいくつもない。
選択肢(製品の数)が多ければ、それでいいわけではないが、
極端な減り方のように感じてしまった。

Date: 5月 11th, 2020
Cate: Jazz Spirit

Jazz Spirit Audio(その7)

音楽のジャンル分けに、どれだけの意味があるのかはひとまず措くとして、
“Friday Night in San Francisco”も幻想交響曲も、
いわゆるジャズと呼ばれるジャンルの音楽とはいえない。

にもかかわず、「Jazz Spirit Audio」というテーマであえて取り上げているのは、
Jazz Spiritが必要となるのは、なにもジャズと呼ばれている音楽だけに限らないからだ。

もちろん人によって、そのへんの考え方は違ってくる。
でも私は、私の好きな音楽に関してはJazz Spiritと、
私が感じているものが必要となってくることがある。

そんな気持をこめてのオーディオだから、Jazz Spirit Audioでもある。

少なくとも毎月第一水曜日に、
四谷三丁目のジャズ喫茶、喫茶茶会記でaudio wednesdayをやっているのだから、
Jazz Spirit Audioという気持は絶対に忘れないようにこころがけている。

Date: 5月 11th, 2020
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その18)

実際にパワーアンプの動的な出力インピーダンスの変動を測定していないし、
そういう測定器データをみたことがないけれど、
おそらくA級動作とB級動作とでは変動の仕方に違いがある、と考えられる。

そしてA級動作のほうが、変動の幅も小さいはずだ。

そして、これも推測でしかないのだが、
出力段の回路構成だけではなく、電源によっても変動の仕方は変化しているはずだ。

さらに負荷インピーダンスの急激なインピーダンス変化でも、
出力インピーダンスは変化しているのではないだろうか。

そんな推測を立てて、ステレオサウンド 64号の測定データをみると、けっこう納得がいく。
これをこじつけと捉える人もいるだろうが、
だからといって、パワーアンプの出力インピーダンスが、
信号の変化、出力段の構成と動作、電源部の設計とコンストラクション、負荷インピーダンスの変化、
これらの要素によって、動的に変動しない、とはいえないはずだ。

ケンウッドのL02Aは、64号での測定で、もっとも優れていた。
ということは、L02Aは動的な出力インピーダンスが安定している、ということなのか。

Date: 5月 10th, 2020
Cate: Jazz Spirit

Jazz Spirit Audio(その6)

数年前のインターナショナルオーディオショウでの、
とあるブースでかかっていた“Friday Night in San Francisco”。

そこで鳴っていた音は、聴けば聴くほどに、こちらを冷静にさせてしまう音だった。
その数年後、やはりインターナショナルオーディオショウでの別のブースでもそうだった。

そこではドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニーによる
ベルリオーズの幻想交響曲(ライヴ録音)が鳴っていた。

CDではなく、ハイレゾ音源をダウンロードしたものによる再生だった。
この時の音については別項でも少し触れているが、
聴いていて、冷静な幻想交響曲だな、と思っていた。

そして曲が終って、拍手が鳴り出した。
そこでやっとライヴ録音だったことを知った。

盛大な拍手だった。
聴衆はドゥダメルの演奏に熱狂しているようだった。

観客の拍手から判断するに熱演だったようだ。
でも、そんなことは幻想交響曲が鳴っている最中は、まったく感じなかった。

ここでも、聴けば聴くほどに、こちらを冷静にさせてしまう音だったのだ。

冷静になってしまう、というのは、私としては抑えた表現である。
本音は聴けば聴くほどしらけてしまう音なのだ。

その2)で、鳴り終ったあとに、聴いていた人同士で話が弾む、と書いた。
インターナショナルオーディオショウでの“Friday Night in San Francisco”、
ドゥダメルの幻想交響曲は、そうではなかった。

それに鳴り終ったあとに、とも書きたくない気持がこちらの心に残る。