老いとオーディオ(とステレオサウンド・その5)
ステレオサウンドは老いていっている、
というのが、私の本音である。
そして、そんな老いていくステレオサウンドの、
いわば先輩にあたるのがスイングジャーナルであった、とも思っている。
スイングジャーナルは1947年に創刊している。
ステレオサウンドよりも19年早い創刊である。
スイングジャーナルは,2010年6月発売の7月号で休刊(廃刊)になった。
当時、twitterで休刊のニュースを知った。
特に驚きはなかった。
スイングジャーナル社発行のアドリブが5月に休刊していたし、
そのことがなくても、
休刊までの20年分くらいのスイングジャーナルの内容を知っている人ならば、
休刊やむなし、と思ったであろう。
2010年7月号のスイングジャーナルを、書店で手にとった。
パラパラをめくってみただけだった。
なのではっきりと記憶があるわけでなはい。
60年以上続いた雑誌の最終号とは、誰も思わないであろう、
いつも通りの内容だったな、という印象だけしか残っていない。
ジャズの熱心な聴き手でない私、
スイングジャーナルを定期購読したことはなかった私には、
感慨なんて、最終号を手にしても、まったくなかった。
自然消滅、自然淘汰されたぐらいにしか感じなかった。
ここでのことに関係して思い出すのは、
黒田先生の「聴こえるものの彼方へ」のなかの
「ききたいレコードはやまほどあるが、一度にきけるのは一枚のレコード」に、
フィリップス・インターナショナルの副社長の話だ。
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ディスク、つまり円盤になっているレコードの将来についてどう思いますか? とたずねたところ、彼はこたえて、こういった──そのようなことは考えたこともない、なぜならわが社は音楽を売る会社で、ディスクという物を売る会社ではないからだ。なるほどなあ、と思った。そのなるほどなあには、さまざまなおもいがこめられていたのだが、いわれてみればもっともなことだ。
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「ききたいレコードはやまほどあるが、一度にきけるのは一枚のレコード」は1972年の文章、
ほぼ50年前の、フィリップス・インターナショナルの副社長のこたえである。