Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 11月 9th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その7)

VC7の音を思い出すと、語り口という言葉が浮んでくる。
VC7は、VC7ならではの、音楽の語り口をもっている。

その語り口に、私は、少なくとも気品を感じているのかもしれない。

スピーカーは、いまのところどこまでいっても、からくりであることには変わりはない。
だからこそ、からくりならではの語り口が、必然的に生れてくるように思っているのだが、
なんだか最近の一部の、ある種素っ気無さをまとっているスピーカーには、語り口を感じることはない。

オートグラフにも、オートグラフならではの語り口がはっきりとある。
いまも高い評価を得ているスピーカーは、古い新しいに関係なく、
そのスピーカーならではの語り口を、立派な語り口をもっているからこそ、人を魅了してやまないのではないか。

もちろん、その語り口が気になる人にとっては、スピーカーとして論外ということになるかもしれない。
だからといって、なんら語り口をもたないスピーカーを、私は選ぼうとは、まったく思っていない。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その42)

カートリッジが、レコード盤から音を拾ってくる。
機械的な音溝を、電気的な信号に変換する。
優秀なプレーヤーシステムを、見事に調整していれば、驚くほどの音を拾いあげる。

その拾いあげられた音を、
つまり音溝という形で眠っていた音を、完全に目覚めさせるのはコントロールアンプの役割なのかもしれない。

感覚的な表現でいえば、寝起きの乾いた体に新鮮な水を飲むのと同じように、
水を浸透させ目覚めさせるといった具合に。

コントロールアンプによっては、その水の量が足りないものがある。
水そのものが澱んでいるものもある。
細部まで水が浸透しないものもある。

軟水もあれば硬水もある。
マークレビンソンのLNP2やJC2は、硬水を音の細部にまで浸透させ、音が目覚める。

Date: 10月 21st, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その6)

スピーカーシステムの音を判断する項目、たとえば聴感上のSN比、レンジの広さ、
帯域バランスの良さ、歪感の少なさ、等々、思いつく限りこまかく挙げていき、
それぞれの項目をできるだけ良くする方向で音をまとめていく──。

そうやってつくられたスピーカーシステムは、もちろん優れたモノであるだろう。
けれど、そうやってつくられたスピーカーシステムは、なにかを失っているのかもしれない。

たとえば、ヴィルトゥオーゾと呼ばれた、往年の演奏家と、
現代の、優れたテクニックを有している演奏家との違いにも似ているような気がする。

オートグラフ、VC7に共通して、私が感じている良さは、「気品」であろう。

Date: 10月 21st, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その5)

タンノイ・オートグラフも、ベーゼンドルファー(BORDMANN)VC7も、
ユニットが発する音以外は極力抑えようというスピーカーの在り方とは正反対のところにある。

スピーカーユニットが技術的に完璧なものであって、無共振ということが、ほぼ実現できるであれば、
その在り方のみを純粋に徹底して追求していくのもいいだろうが、
現実には、まだまだスピーカーユニット自体は未完成というよりも、からくりの一種のいえるものであるし、
これから先はわからないが、無共振の素材、つまりいっさいの固有音をもたない素材で、
エンクロージュアに使えるもの、そんなものは、いまのところ、ない。

実験室レベルで、無共振スピーカーシステムをめざしていくのは、それはそれでいい。
けれど、現実のスピーカーシステムとしては、どこかで、からくりであること、
理想の素材は存在しないこと、とうまく折り合いをつけてこそ、
スピーカーでしか味わえない音楽体験が生れてくるのだと思っている。

折り合いのつけ方として、オートグラフやVC7という在り方も、
一方の極のリファレンスとして必要ではないだろうか。

Date: 10月 20th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その4)

タンノイ・オートグラフの、それぞれの受持ち帯域はどうなっているかというと、
中高域は、デュアルコンセントリック型ユニットのクロスオーバー周波数が1kHzなので、それ以上の帯域、
ウーファーは1kHz以下どこまでかというと、フロントショートホーンの開口部の大きさが関係してくることもあって、
それほど低いところまでは受け持っていないのはたしかだろう。

バックロードホーンが、それより下の帯域を受け持つことになるわけだが、
1960年代のタンノイのカタログには250Hz以下で効果を発揮している、という記述もあるし、
ステレオサウンド別冊「The British Sound」には、350Hzより下、とある。

250Hzなのか350Hzなのかははっきりしないが、300Hz近辺として、
オートグラフでは、300Hzと1kHz、
ベーゼンドルファー(BRODMANN)のVC7は、130Hzと2kHz。
わりとちかい値といえないだろうか。
しかもLCネットワークによるクロスオーバーは、どちらもひとつだけである。

そしてもうひとつ共通点として、オートグラフは同軸型ユニット採用、
VC7は、ウーファー、トゥイーターは別個のユニットではあるものの、
ユニットの放射パターンを考えると、仮想同軸配置といえなくもないわけだ。

Date: 10月 20th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その3)

200万円の予算があれば、各ブランドのトップモデルか、
トップモデルとまではいかなくても、充実した技術的内容をもつ中堅機が購入できる。

それらのスピーカーとくらべてみると、VC7は、ウーファーの口径は13cm(4発ついているものの)と、小さい。
トゥイーターはソフトドーム型ユニットが2つ。
いわばVC7の価格の大半は、エンクロージュアの代金といってもよいだろう。
この価格の比率は、往年のタンノイ・オートグラフにおけるそれに近いのではないだろうか。

どちらもエンクロージュアの響きの助けを借りて、
それぞれの、それでしか聴くことのできない低音を創り出している。

VC7は、トゥイーターが2kHz以上、エンクロージュアの両側に2基ずつのウーファーは130Hzまでを、
130Hzより下の帯域は、独自の、プレート・ホーン・レゾネーターが受け持つ。

Date: 10月 20th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その2)

優秀なモノーラル録音をきちんと再生すれば、かなりのリアリティのある音が得られる。
ただしオーケストラなどの編成の大きいものや、ひとつの楽器でも、ピアノのように大きなものではなく、
人の声、チェロぐらいの大きさの音源のソロというぐあいに限られるとはいえ、
説得力ある表現に、モノーラルでもいいかな、とそのときは思わせてくれる。

ヴァイオリンも楽器のサイズとしては小さいが、倍音成分の再現となると、
ステレオ録音に圧倒的に分がある。
とはいえ、モノーラル録音、つまり真空管全盛の時代の録音のなかには、
再生音ならではの、ヴァイオリンの美があり、これはこれで、捨て難い魅力をもつ。

ステレオ録音は、極端な表現をすれば、音源だけモノーラル録音に、
音場感というステージ(空間)が加わる。音色の美しさに響きの美しさが加わった世界である。

ベーゼンドルファーのスピーカーは、安いものではなかった。かなり高価なスピーカーシステムだった。
BRODMANNのスピーカーも、ほぼ同じ価格だろう。となるとVC7は、ペアで200万円をこえるであろう。

Date: 10月 19th, 2009
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その1)

ヤマハがベーゼンドルファーを買収したというニュースを聞いて、
危惧したのは、スピーカーシステムの製造をやめさせてしまう、ということで、
事実、2008年のインターナショナルオーディオショウのノアのブースには、
ベーゼンドルファーのスピーカーの姿はなかった。

この項の(その1)で、最後のところにちらっと書いているが、
スピーカー部門の主要スタッフは独立している。

去年暮には、BRODMANN Acoustics という会社を興している。
ウェブサイトも、すぐに公開されていたが、いつアクセスしても、
ベーゼンドルファーのスピーカーには似つかわしくない、派手なFLASHによる画面が表示されるだけで、
他のページはまったく作られていなかった。

数ヵ月経ってアクセスしてみても、同じまま。トップページのみのウェブサイトだった。
資金繰りがうまくいかず、消滅してしまうのか……とまで思ってしまうほど、
いつまで経っても、何の動きもなかった。

今日、やはり数ヵ月ぶりにアクセスしてみたら、まだまだ手つかずのページが残っているが、
トップページも変更され、ベーゼンドルファー時代のスピーカーの姿が、そこにあった。
復活していた。

Date: 10月 12th, 2009
Cate: 4343

4343とB310(その1)

B310は、井上先生がメインスピーカーとして愛用されてきたボザークのフロアー型システムで、
30cm口径のウーファーを4発、スコーカーは16cm口径を2発、
トゥイーターは、2個1組のものが4発使われており、すべてコーン型ユニットである。

いまもボザークは存在しているが、1981年だったか、一度倒産している。
そんなこともあって、スピーカーの開発・製造は行なっていない。

ユニット構成の特徴からも判断できるように、東海岸のスピーカーメーカーであり、
最高のスピーカーユニットは、それぞれ1種類のみというポリシーで、
20cm口径のフルレンジユニット、B800、30cm口径ウーファーのB199、16cm口径のスコーカーのB209A、
5cm口径トゥイーターのB200Yの4種類のユニットだけを製造し、
これらの組合せを用途に応じて変え、スピーカーシステムを構築している。
ただし普及機は違う。

ウーファー以外は、ゴム系の制動材を両面に塗布したメタルコーン、
ウーファーは、羊毛を混入したパルプコーンで、どちらも振動板の固有音をできるだけ抑えている。

Mark Levinsonというブランドの特異性(その41)

水にも、いろいろある。含有される各種ミネラル成分のバランス、量によって、
まず大きく分けて、軟水と硬水とがあり、口に含んだときの感じ方はずいぶん違う。

近い硬度の水でも、ミネラル成分の割合いによって、味は異り、
同じ水でも、温度が違えば味わいは変わってくる。
水のおいしさは、利き酒ならぬ利き水をするのもいいが、
そのまま飲んだときよりも、珈琲、紅茶、アルコールに使ったときのほうが、
違いがはっきりとわかることがある。味わう前に、香りの違いに気がつくはずだ。

料理もそうだ。
いつも口にしている料理、たとえば味噌汁を、ふだん水道水そのままでつくっているのであれば、
軟水のナチュラルミネラルウォーターでつくってみれば、何も知らずに出され口にした人は、
いつもとなにかが違うと感じるはず。

Date: 8月 27th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×十四 補足)

世の中には、何事も短絡的に捉える、受けとめることが得意な方が、
ごくごくわずかだが、いる(一人、知人にいる)。

そんな人は、トランスを、アンプの筐体内の、どこに、どう配置するかについて、私が書いたものを読んで、
重量バランスがよく、左右チャンネルの同一性・対称性が高いアンプだけが優れた音のアンプで、
それ以外のアンプはそうではない、と受けとめるのだろうか。
エソテリックのA100に関しても、否定的なことを言っている、と思っているのかもしれない。

こんなことをあらためていうまでもないのだが、決してそんなことはない。
ただ、重量バランスは、重要な要素のひとつだと言いたいだけであるし、
A100は、なかなかの力作だと思っている。

A100の音は、まだ聴いていない。
ただ、A100について、ひとつだけ書きたいのは、フロントパネルに関して、である。

Date: 8月 26th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×十三 補足)

同時期に発売されていたマッキントッシュのMC2105とMC2205とでは、
電源トランス、オートフォーマーの並びが異なる。

発売が先のMC2105では、フロントパネルの裏側に、
電源トランス、オートフォーマー、オートフォーマーと並んでいるのに対して、
MC2205では、やはりフロントパネルの裏に配置されているが、並びは電源トランスが中央で、
両端にオートフォーマーというふうに変更されている。

だから、今後、マッキントッシュのパワーアンプが、MC2301と同じ筐体構造になるとしたら、
エソテリックのA100のトランス配置と同じにはならないと判断できる。

マッキントッシュのパワーアンプは、トランス(オートフォーマー)には、
必ずケースがかぶせてある。
A100で、左右チャンネルの出力トランスをまとめて、ひとつのケースをかぶせ、
電源トランスはケースなし、となっている。

トランス(オートフォーマー)同士は干渉する。
干渉を低減させたければ、シールドケースをかぶせるのが手っとり早い方法だが、
私は、できるだけトランス(とくに信号系のトランス)にはケースはかぶせたくない、と考えている。

シールドケースを使わなければ、トランス同士の間隔を広くとることを求められる。
ならば、電源トランスだけをシールドし、中央に配置すれば、
出力トランス(オートフォーマー)同士の間隔は、必然的に広くとれる。

Date: 8月 26th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×十二 補足)

重量級パーツをうまく配置して、重量バランスをうまくとったとして、だから、
ただちに音が良くなるというものではない。

MC2301において、手なれた筐体構造を捨てることはたいへんなことだが、
新しい可能性も生まれてきているはずだ。

MC2301の音に関しても、はやく聴いてみたいのだが、
同時に、これからのマッキントッシュのアンプが、このレイアウトを採用していくのか、
それともMC2301だけで終るのか、にも興味がある。

ステレオアンプだと、どういうトランス配置にするのか。
エソテリックのA100と同じ、電源トランス、出力トランス、出力トランス、とするのか、
それとも電源トランスを中央にし、両端に出力トランス(もしくはオートフォーマー)とするのか。

私の勝手な予想では、電源トランスを中央とする配置になると思う。

Date: 8月 25th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×十一 補足)

MX10000や928、アンプジラ2000といったアンプがなくとも、
ラックの棚板の上で、アンプを前後左右に動かしたときの音の変化も、
重量バランスによる変化といえる面ももつ。

できれば、これも重量バランスの整ったアンプよりも、アンバランスなアンプ、
それもできれば重量級のアンプの方が、移動したときの音の差は大きくなる傾向があると言える。

まずは棚板のちょうど中央に置いて聴く。
今度は、音の変化量が大きくなるので、
棚板に脚部がぎぎりかかるくらいまで前に動かす(後でも、もちろんいい)。
この音を聴く。今度は反対に後に、やはりぎりぎりまで動かした音を聴く。

このとき注意したいのは、いうまでもなく音量は一定にしておくこと。
ボリュウムには決して触れないこと。

これらの音の差が充分に聴きとれたら、左右や斜めに動かしてみるのも面白い。
このことは、昔から井上先生が、よく言われていたことで、ステレオサウンドでも記事にしたことがある。

お金はかからない、一種のキャラクターコントロールとしても使える。
実際のアンプで、重量バランスを整えるために、重量級パーツのトランスの位置の変更を行なうことは、
全体のコンストラクション、配線にも変更が求められ、
それらを含めたうえでの音の差として現われるわけだから、
重量バランスの違いだけのを音として聴くのは、厳密には無理といえば無理なことだが、
それでも、大まかな傾向は共通したものがあると感じられるのと、
オーディオの経験則から言えるとも思っている。

Date: 8月 24th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×十 補足)

アンプの重量バランスによる音の違いも、アンプを自作せずとも確認できる。
たとえばフロントパネルに電源トランスを取り付けているパワーアンプを、もしお持ちならば、
このアンプの置き方を変えてみるだけで、大きく音が変化する。

現役の製品では、アンプジラ2000がそうだし、以前のアンプではヤマハのMX10000、
プライマーの928 Mono Ampがそうだった。
最重量物の電源トランスを取り付けてあるぐらいだから、MX10000も928も、
フロントパネルは厚くしっかりしたものだった。
だから、さらに重量バランスはフロントパネル側に片寄っている。

これらのアンプを、直立させてみる。
つまりフロントパネルを下にして、アンプを90度起こした状態にするわけだ。
注意しなければならないのは、放熱のことで、この状態で長時間聴くことはやめてほしい。
だから、あくまでも試しに聴くということなのだが、音のバランスが、より安定してくる。
音の輪郭もしなやかになる。

もちろん、この音の変化は重量バランスの変化によるものだけではない。
プリント基板が水平だったのが垂直になるし、それにともない部品の向きも変わる。
こまかな違いはいくつか出てくる。
それでも、井上先生が言われていたことと同じ変化が聴きとれる。