QUAD・ESLについて(その16)
最近のオーディオ誌では、ほとんど伝達関数という言葉は登場しなくなったが、
私がオーディオに興味をもち始めた1976年ごろは、まだときどき誌面に登場していた。
チャンネルデバイダーがある。
入力はひとつで、2ウェイ仕様なら出力は2つ、3ウェイ仕様なら3つあるわけで、
通常なら、それぞれの出力はパワーアンプへ接続される。
このチャンネルデバイダーからの出力を合成したとしよう。
当然、入力信号と振幅特性、位相特性とも同じになるのが理想だが、
これができるは、遮断特性が6dB/oct.だけである。つまり伝達関数:1である。
12dB/octのカーブでは振幅特性にディップが生じ、位相特性も急激に変化する。
18dB/oct.のカーブでは振幅特性はほぼフラットでも、位相特性はなだらかにシフトする、といったぐあいに、
6dB/oct.カーブ以外、入力と合成された出力が同じになることは、アナログフィルターを使うかぎり、ありえない。