Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 3月 12th, 2013
Cate: audio-technica

松下秀雄氏のこと(その1)

夕方ごろだったか、twitterでオーディオテクニカの創業者である松下秀雄氏が逝去されたことを知った。
松下氏のことを書こう、とおもった。

松下氏にお会いしたことはない。
ステレオサウンドにいたころに、数人の方から松下氏について断片的なことをきいていたくらいであるから、
なにかを書けるわけでもないのだが、それでも書かなければならない、とおもっていた。

オーディオテクニカはVM型のカートリッジで知られる。
VM型はいわばMM型カートリッジに属していても、
シュアー、エラックがもつMM型の特許には関係なく海外で販売されている。

シュアー、エラックによるMM型カートリッジの特許は日本では認められていない。
この件に関する、いわゆる裏話を瀬川先生からきいたことがある。
どんなことなのかはここで書くようなことではないから省くけれど、
日本のメーカーが大慌てで、シュアー、エラックの特許に対抗したわけだ。

特許は認められなかったけれど、
海外各国では認められているわけだから、日本製のMM型カートリッジは海外では販売できない。
それではカートリッジ専門メーカーであるオーディオテクニカは世界に進出できない。
そこでオーディオテクニカは独自のVM型を開発、特許をとり堂々と海外で販売してきた。

シュアー、エラックの特許申請に対して日本の大メーカー各社がとった手段と、
それら大メーカーと比較すれば小さな会社といえたオーディオテクニカがとった行動、
ここにオーディオテクニカという会社の気骨とでもいおうか、スピリットといったらいいだろうか、
それに近いものを感じる。

Date: 3月 11th, 2013
Cate: SME

SME Series Vのこと(その5)

SMEのSeries Vと同じく絶賛したいのは、タンノイのウェストミンスターだ。
私がまだステレオサウンドにいたころ、それもはやい時期に登場した、このウェストミンスターは、
数度の改良が加えられ、ほんとうにいいラッパ(ウェストミンスターにはラッパのほうがにあう)になった。

最初のウェストミンスターをステレオサウンドの試聴室で聴いた時から、
いいラッパだな……、とおもっていた。
当時はまだ若かったし、ウェストミンスターをおさめられるだけのスペースの部屋には住んでいなかったから、
手に入れたい、とは考えなかったし、
それに何度か書いてきているように、五味先生の文章からオーディオにはいってきた私にとって、
ウェストミンスターの原型となるオートグラフには、特別な思い入れがあり、
どうしても心の中で、ふたつのラッパを比較してしまう。

オートグラフの存在がなかったら、ウェストミンスターにいつかは手を出していたかもしれない。
これも書いているけれど、ウェストミンスターは一年に一度は、その音を聴きたい。

ウェストミンスターは高価なスピーカーシステムである。
しかも大きなスピーカーであるから、
このラッパを買えるくらいの予算ができたとしても、
それだけでは不充分で、やはりウェストミンスターに見合うだけの空間も用意する必要もある。
それはさほど大きな空間でなくてもいい、けれどある程度の空間は欲しい。
だから、そのための費用も必要となる。

この点がSeries Vよりも、手に入れるまでが人によっては大変になる。
けれどウェストミンスターはずっと現役のラッパとして存在してくれている。
まだまだこれからも存在してくれはずだ。
夢を持ち続けられる。
この素晴らしさを与えてくれる。

今日は二年目である。
このラッパを、あの日失った人もおられるだろう、きっと。
ウェストミンスターは、もう一度手に入れることができる。
このことがもつ意味は決して小さくない。
だからずっと現役であってほしい。

Date: 3月 7th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×八・音量のこと)

岩崎先生にとってビリー・ホリディの”Lady Day”が、特別な一枚であったことは、
「オーディオ彷徨」おさめられている「仄かに輝く思い出の一瞬──我が内なるレディ・ディに捧ぐ」、
それに「私とJBLの物語」を読めばわかる。
     *
その時には、本当にビリー・ホリディを知っていてよかったと心底思ったそして、D130でなくてもよいけれどそれはJBLでなければならなかった。
     *
このとき岩崎先生は、D130で”Lady Day”を聴かれている。
「JBLによって、ビリー・ホリディは、私の、ただ一枚のレコードとなり得た」、
その”Lady Day”を聴かれた音量は、ひっそりとしたものだったではないか、
そういう音量でも聴かれたのではないか、とおもうことがある。

Date: 2月 18th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その1)

「EMTの930stって、ほんとうに音のいいプレーヤーですか」
そんな声を、まったくきかないわけではない。

927Dstはデッキ部はアルミ鋳物製なのに対して、930stではベークライト系の合成樹脂、
アルミ製のターンテーブルプラッターの上にのる円盤も、
927Dstはガラスの正面にゴムを貼りつけたものなのに対し、
930stではプレクシグラスにフェルトを上面だけに貼ったもの。

「EMTの930stって、ほんとうに音のいいプレーヤーですか」と思っている人には、
まず、この部分が気になるらしい。

それから927Dstにもついているトーンアームのリフター機構。
この便利な機構は、EMTのプレーヤーを自分のモノとして愛用していた人ならば、
これが実に良く出来た機構であり、EMTのプレーヤーの魅力のひとつとなっていることは理解されていようが、
そうでない人にとっては、このリフター機構は、いわば雑共振の発生源というふうにみなされる。

このリフター機構に関係することなのだが、
EMTのトーンアームのパイプ部には軸受け近くに鉄板が外周1/4ほどではあるが貼りつけてある。
この鉄板がリフターの磁力にぴたりとくっつき、
トーンアームはリフターから簡単には離れないようになっている。
いわばロック機構である。

けれどトーンアームのパイプの中はケーブルが通っていて、
そのケーブルはカートリッジが発電した微小な信号のためにあるもの。
その周囲に鉄板という磁性体があるのは、それだけで音を濁してしまう──、ということになる。

こんなふうに書いていったら、他にもいくつも出てくる。
「EMTの930stって、ほんとうに音のいいプレーヤーですか」といっている人が気づいていないことも、
まだいくつも指摘しようと思えばできる。

そして、それらを理由として930stは音のいいプレーヤーとはいえない、
そう主張する人がいても、さほど不思議とは思わない。

そういう見方をしていった場合、930stは音のいいプレーヤーとは呼び難いのは事実といえば事実であろうが、
そういう見方ばかりがプレーヤーの見方ではない。
それらのことだけでプレーヤーの音が決っていくものでもない。

930stにはいくつもの欠点があるのは事実だ。
それでも、930stは音のいいプレーヤーであることは確かである。

Date: 2月 18th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×七・音量のこと)

アメリカでは1941年にテレビ放送が始っている。
アメリカでのテレビの価格がどの程度だったのか知りはしないけれど、
やはりこの時代のモノとしては非常に高価だったであろうと思う。

テレビはその後急速に普及していくけれど、この時代、
各家庭に一台あったとは思えない。
それにテレビ放送の内容も、いまとはずいぶん違っていたであろう。
24時間放送ということもなかったはず。

ランシングが生きていた1949年までは、テレビはアメリカでもそういうモノだったとしたら、
家庭の静けさは、テレビがひとり一台といっていいぐらい普及している時代とではずいぶん違ってくる。

それから日本では多くのところでBGMが流れていることが多い。
1940年代のアメリカでは、どうだったのだろうか。
LPも登場していない、テープ録音器もまだない時代では、
長時間を音楽を流しっ放しにしておくのは面倒なことである。
街中でBGMが流れていることはなかったのではなかろうか。

こんなことを考えていると、ランシングが生きていたころには、
いまの時代のような騒々しさはなかったようにおもえてくる。

すくなくともスピーカーから出てくる音による騒々しさはなかったはず。

そういう時代において、SPを音源として音楽を聴くときに、
音量が大きかったとは想像しにくい。
D130であっても、意外にも控え目な音量で音楽を鳴らしていたのではないか──、
そうおもえてならない。

Date: 2月 17th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×六・音量のこと)

アクースティック蓄音器といっても、卓上型のさほど大きくないものから、
クレデンザのような大型のものまである。
アクースティック蓄音器の音量は、蓄音器そのもの大きさとほぼ比例関係にある。

アクースティック蓄音器はあまり音量が大きいものではない、というイメージを漠然ともっている人は、
クレデンザを聴けば、音量の意外なほどの大きさに驚かれるかもしれない。

とはいっても電気蓄音器になり現在のように数100Wの出力が安定して容易に得られるようになり、
ボリュウムのツマミを時計回りにまわせば、
アクースティック蓄音器しか聴いたことのない人は心底驚くほどの音量を実現している。

アクースティック蓄音器には音量調整がないわけだから、
仮にもっと大きな音量が可能だとしても、家庭で音楽を聴くにふさわしい音量としている、とも考えられる。

蓄音器で鳴らすのはSP。
SPは、現在のハイビットのプログラムソースと比較すれば、ずっとダイナミックレンジは狭い。
16ビットのCDと比較しても、アナログディスクのLPと比較しても狭い。

音量の設定は人それぞれではあるが、
それでも聴きたいディスク(プログラムソース)に記録されているもっとも小さな音が聴こえるようには、
最低でも音量を設定する。

その最低音量から上は、聴く音楽によっても、聴く部屋の条件、聴く(鳴らす)人の好みによっても、
その日の気分によっても変ってこようが、
すくなくとももっとも小さな音は聴きとれるようにはしよう。

そうすればダイナミックレンジが広いほど、最大音量も必然的に大きくなってくる。
SPではダイナミックレンジもそう広くないから、最低音量をハイビットのソースやCDと同じにしても、
最大音量は控え目な音量となる。

Date: 2月 15th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×五・音量のこと)

ランシングは1902年生れ。
ランシングと同世代ののアメリカの人たちが、家庭で音楽を聴くときはなんだったのだろうか。

アメリカでは1920年にAM放送が始まっている。
これ以前となるとアクースティック蓄音器ということになる。
ディスクはいうまでもなくSPである。
アクースティック蓄音器は、アンプ、スピーカーを搭載して、いわゆる電蓄になる。
ここでもまだディスクはSPである。

1939年、アメリカでFM放送が開始される。
1948年、コロムビアが長時間レコード,つまりLPを発表する。

1949年まで生きていたランシングにとって、
家庭で音楽を聴くための手段としてあったのは、上に挙げたものということになる。

D130はLP以前に登場したスピーカーユニットである。
D130で家庭で音楽を聴くということは、
SPだったり、ラジオ(AMとFM)ということになり、
この流れの中で音楽を聴き、音量を聴き手は設定していた、といえよう。

となるとアクースティック蓄音器での音量というのが、
1902年ごろに生れたアメリカの、家庭で音楽を聴いてきた人にとっての、ひとつの基準となっている。
そう考えることはできないだろうか。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その13)

こういう考え方もできるのではないだろうか。
つまり、ウーファーの口径を小さくしたからこそ、
LS3/5Aとのクロスオーバー周波数を300Hz近辺からさげることが可能になった、と。

瀬川先生の話で重要となるのは、くり返しているように聴感上のエネルギーバランスである。
ウーファーならば、20cm口径よりも30cm口径のもの、
30cm口径よりも38cm口径のもののほうが、低音域のエネルギーの再現においては有利である。

口径が小さくなければ高域の再生周波数はのびるけれど、
低音域の、聴感上のエネルギー量は減っていく、といえよう。

38cm口径のウーファーのエネルギーに対して、20cmであろうと25cmであろうと、
充分につながるには300Hzあたりまでクロスオーバー周波数をもってこなければならない。
だとしたらウーファーの口径が小さくなれば、
一般的にはスコーカー(もしくはミッドバス)とのクロスオーバー周波数を上にもってきがちになるが、
考えようによっては、スコーカー(ミッドバス)が充分に下までのびているユニットであれば、
ウーファーの口径を小さくすることでエネルギーがおさえられることによって、
300Hzあたりより低い周波数でも、聴感上のエネルギーバランスがとれる、ということだって考えられる。

仮にそうだとしたら、ロジャースがReference Systemのウーファーに33cmという、
やや中途半端な感じのする口径を採用したのは、
できるだけLS3/5Aの持味を生かした上で(できるだけ低いところまで受け持たせた上で)、
サブウーファーによって低音の再生領域をできるだけひろげようとしたことからうまれた、
絶妙な口径である──、そんなことも考えられる。

ほんとうのところはどうなのかは、やはり音を聴いてみるしかないのだが、
いままでReference Systemの実物は中古でもみたことがないし、
このReference Systemを鳴らしている人を、オーディオ雑誌上でもみかけたことがないから、
Reference Systemの、LS3/5Aとのクロスオーバー周波数が150Hzが妥当な値なのかどうかは、
これからさきも結論が出せないままになるかもしれない。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その12)

各ユニット間の音のつながりは、なにもクロスオーバー周波数だけで決定されるものではないことはいうまでもない。
同じクロスオーバー周波数でも遮断特性の違いも関係してくるし、
同じ回路構成・同じクロスオーバー周波数であっても使用部品によっても、
部品の配置によっても音は必ず影響を受けるものだから、
この値だからいい、この値から外れているからだめ、ということは言いにくいのはわかっている。

それでも瀬川先生は、「かつてマルチアンプをさんざん実験していた」ともいわれている。
私の、スピーカーユニットの経験などよりずっと多くのことを実験されてきた上で、
ウーファーに15インチぐらいの口径をもってくると、
クロスオーバー周波数は上のユニットが10cmであろうと20cmであろうと、
エネルギーとして聴感上うまくクロスオーバーするポイントが250Hzから350Hzあたりといわれているわけだ。

ロジャースのReference Systemのユニットは33cm口径と発表されている。つまり13インチ口径である。
中途半端な印象をうけるサイズを採用している。
30cmでもなければ38cmでもない。なぜ33cmという口径をロジャースはとったのか、ということと、
LS3/5Aとのクロスオーバーが150Hzということは、けっして無関係と考えにくい。

これは想像でいうことなのだが、33cmという、38cm口径よりも小口径ウーファーだからこそ、
150Hzという値に設定できたという可能性を否定できない面がある。

瀬川先生の発言で重要なのは、
15インチ口径のウーファーを使った場合、クロスオーバー周波数を250Hzから350Hzあたりにもってこないと、
聴感上のエネルギーのバランスがうまくとれない、ということである。
周波数特静的、音圧的には38cm口径ウーファーに10cm口径のスコーカーをもってきても、
問題なくつながる。

それが聴感上のエネルギーのバランスということになると、そうはいかなくなる、ということだ。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その11)

ロジャースのReference Systemの音がどうであったのか。
もっといえば、瀬川先生はどう評価されていたのか。
それを知るには、「コンポーネントステレオの世界 ’79」をくり返し読んでも答は出ない。

私がずっとステレオサウンドの読者のままであったら、
Reference Systemの音をきちんと聴くまでは、実際のところはわからない、ということになるけれど、
すくなくとも編集部にいた経験からいえば、こういう場合、音があまり芳しくないこともある。

Reference Systemもそうではないか、という気がする。
とはいっても、聴いたことがないのではっきりとしたことはいえない。
それにスピーカー、それもバイアンプ駆動で、
メインスーカーとサブウーファーが別々のエンクロージュアというシステムでは、
使い手・鳴らし手の腕次第、愛情次第で鳴り方は、大きく違ってくることもある。

これは別項の「現代スピーカー考」でも書いていることのくり返しだが、
LS3/5Aのウーファー(つまりKEFのB110)と、
KEFの3ウェイのModel 105のスコーカーは、見た目良く似ている。
Model 105のスコーカーを金属ネット越しに写っている写真をみていると、
同じKEFだから、多少はスコーカー用としてモディファイしているのかもしれないけれど、
ベースとなっているのはB110だと考えていいはず。

となるとModel 105はLS3/5Aに30cm口径のウーファーを足したモデルという見方もできる。
Model 105のウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数は400Hz。
JBLの4343、4350のウーファーが38cmで300hz、250Hzだったことを考えても、
Model 105の400Hzは妥当な値ともいえよう。

Date: 2月 12th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その10)

組合せのみっつめは、コントロールアンプを重視したもので、
アキュフェーズのC240(39万5千円)を使い、
パワーアンプはサンスイのBA2000、C240の価格の約1/3(12万円)である。
スピーカーシステムはスペンドールのBCIII、
プレーヤーはラックスのPD121、フィデリティ・リサーチのFR14を組み合わせ、
カートリッジはエラック(エレクトロアクースティック)のSTS455Eで、合計は114万円強。

組合せのよっつめは、スピーカーシステムを重視したもの。
JBLのL300(40万円)を、トリオのプリメインアンプKA9900(20万円)で鳴らす。
ここまでで予算の大半にあたる100万円をつかっているため、
プレーヤーは少しでも抑えるためにPD121の弟分にあたるPD131。
正確にはPD131のキット版であるラックスキットのPDK131にSMEの3009/S2 Improved、
カートリッジはオルトフォンMC20とヘッドアンプMCA76で、合計は119万9千9百円。

こういう組合せをつくられる瀬川先生だから、
LS3/5Aのグレードアップとしてサブウーファーを追加することにしても、
純正のReference Systemをそのままもってくることは、おもしろくないと感じられたこととおもう。

だから、あえてJBLの136Aをもってきてのサブウーファーの追加という組合せにされたと考えることはできる。
それでも、ロジャースのReference Systemの音がどうだったのか、ということを考えないわけにはいかない。

Date: 2月 12th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その9)

「コンポーネントステレオの世界 ’79」で瀬川先生は予算120万円の組合せを4つ、つくられている。
予算60万円の組合せからのグレードアップの120万円の組合せではなく、
最初から120万円の予算の組合せである。

この時代はCDプレーヤーはまだ登場していないから、プレーヤーといえばアナログプレーヤーのことを指す。
組合せにはプレーヤー、アンプ、スピーカーシステムが最低でも必要になり、
スピーカーシステムはステレオ再生だから2台必要。
つまりプレーヤー、アンプ、スピーカーシステム×2ということで、4台のオーディオ機器から組合せは成る。

ということは全体のバランスを重視すれば、120万円を4で割った値(30万円)の、
プレーヤー、アンプ、スピーカーシステムを選ぶ、ということになる。
瀬川先生の120万円の最初の組合せは、これに近い。

エレクトロボイスのInterface:Dに、マランツのプリメインアンプPm8、
リンのLP12にオーディオクラフトのAC3000MC、カートリッジはスタントン881Sで、
組合せの合計は約114万円。

Interface:Dは1本30万円、Om8は25万円、LP12は16万円、AC3000MCと881Sは6万5千円と6万2千円。
スピーカーシステム、アンプ、プレーヤーが30万円前後のものとなっている。

組合せのふたつめは、プレーヤーを最重視したもので、EMTの928(70万円)を使われている。
928は他のEMTのプレーヤー同様フォノイコライザーアンプを内蔵しているので、
思いきってコントロールアンプを省略してパワーアンプへのダイレクト接続。
そのパワーアンプはルボックスのA740(53万8千円)。
もうこれだけで120万円の予算をすこしこえている。

それで多少ルール違反とそしられるのを覚悟のうえで、
スピーカーシステムにヤマハのNS10Mを選び、なんとか合計金額を120万円台に収められている。
それでも予算に余裕のある方に、ということで、
スピーカーシステムをチャートウェルのLS3/5Aにすることをすすめられている。
こうなると合計金額は140万円ぎりぎりまで近づく。

Date: 2月 11th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その8)

ロジャースのReference Systemはステレオサウンド 48号の新製品紹介のページにはじめて登場している。
48号は1978年9月に出たステレオサウンドであり、
「コンポーネントステレオの世界 ’79」はその三ヵ月後の12月に出た別冊である。

「コンポーネントステレオの世界 ’79」の取材時にはReference Systemは登場していた。
出て間もない製品でもあった。
当然、Reference Systemについて、瀬川先生は知っておられた。
     *
現実にロジャースのLS3/5Aに関しては、すでにリファレンス・システム(¥500000)という名称で、専用のウーファーに、エレクトロニック・クロスオーバーとパワーアンプが内蔵された追加システムが、新製品として紹介されています。だから、このやりかたは、ぼくの独特の考え方ではなく、だれもが頭にひらめくことなのでしょう。
そのリファレンス・システムを、そのまま買ってくるという手もありますが、ここではひとひねりして、バラバラにパーツを買ってきて、自分で組み上げることにしました。面倒くさいといえばそのとおりでしょうが、それだけ楽しいという方もいらっしゃると思うんですね。
     *
「コンポーネントステレオの世界 ’79」の組合せには予算の制限がある。
けれどロジャースのReference Systemは50万円だから、
LS3/5Aを使った60万円の組合せを、120万円の組合わせへとグレードアップするのに予算の制約は関係ない。
なのに瀬川先生は、使われていない。

ひとつはReference Systemのトータルの音が、あまり芳しくなかったことが考えられ、
もうひとつは単に、そのまま純正のシステムを使っては、組合せの記事としての面白みに欠けるから──、
理由はこのふたつのどちらかであろう。

Date: 2月 11th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その7)

このころ(1978年)ロジャースには、LS3/5A専用のサブウーファーが用意されていた。
わりと知られているAB1というサブウーファーではなく、L35Bという型番をもつモデルで、
専用のデヴァイダーとパワーアンプを同一筐体におさめたXA75から成るシステムで、
Reference Systemと名づけられていた。

このシステムのLS3/5Aとのクロスオーバー周波数は150Hzである。
瀬川先生が「コンポーネントステレオの世界 ’79」での組合せでのクロスオーバー周波数よりもずっと低い。
ちょうど半分の周波数で、瀬川先生の体験からすれば、
聴感上・感覚的なエネルギーがうまくつながらない(にくい)周波数ということになる。

ロジャースのReference Systemを聴く機会はなかった。実物を見たこともない。
実際にLS3/5Aとうまくつながるのだろうか。

1990年代なかばに出たAB1は聴く機会があった。
自分で調整した音ではないのでこまかなことはなんともいえないものの、
LS3/5A専用を謳っているものの、これならばLS3/5A単体で鳴らしたほうがいいと、私は感じていた。

AB1はLS3/5A搭載と同じウーファー(つまりKEFのB110)を使っている。
Reference SystemのL35Bで使われているのは33cm口径のユニットである。
これを密閉型のエンクロージュアにおさめ、
エンクロージュアの天板にはLS3/5Aを置く位置が指定してある。

エンクロージュアの寸法はW46×H83×D42cmで、けっこう大きなサイズである。
この上にLS3/5Aがのるわけだが、見た目はすくなくとも専用ウーファーとは思えない。

Date: 2月 10th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その6)

見落しといえば、これも見落しなのかもしれない。

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
瀬川先生がチャートウェルのLS3/5Aで組合せをつくられているのは、別項で書いているとおり。

この年の「コンポーネントステレオの世界」は実践的オーディオシステム構成法として、
バランス型のステップアップ型の組合せを予算に合せて、評論家が考えるという企画である。

LS3/5Aの組合せでは予算60万円でまとめられ、
次のステップとして予算が倍の120万円となる。
60万円でまとめたLS3/5Aの組合せをどういうふうにステップアップしていくのか、
瀬川先生はふたつのプランを用意されていた。

そのひとつとしてLS3/5Aにウーファーを足すことで、グレードアップをはかるというもの。
ウーファーにはJBLの136A、
エンクロージュアには当時JBLの輸入元だったサンスイがJBLの強力を得て開発したECシリーズを使い、
専用アンプを用意してバイアンプ駆動する、というもの。

この組合せについて、こう語られている。
     *
マルチアンプそれから3Dの場合、大型のウーファーをあとから追加するときに、よく、できるだけ低いところから足したほうがいいだろう、とお考えになる方が多いでしょう。最近はスーパーウーファーばやりで、数多い製品が登場してきていますが、そうしたものが大体100Hzか、それ以下の80、70Hzといったところから下で使っているので、そうお考えになるのも無理からぬところだと思います。
じつはぼく自身が、かつてマルチアンプをさんざん実験していたころ、たとえばウーファーに15インチぐらいの口径のものをもってきて、その上に小口径のコーン型ユニットを組み合わせた場合、理論的にはその小口径のコーンだって100Hz以下の、70とか60Hzのところまで出せるはずです。特性をみても実際に単独で聴いてみても、100Hz以下が十分に出ています。
したがって、たとえば100Hzぐらいのクロスオーバーでつながるはずですが、実際にはうまくいかない。ぼくにはどうしてなのかじつはよく分らないんだけれど、15インチ口径のウーファーで出した低音と、LS3/5Aのような10センチぐらいの小口径、あるいはそれ以上の20センチ口径ぐらいまでのものから出てくる中低音とが、聴感上のエネルギーでバランスがとれるポイントというのは、意外に高いところにあるんですね。
いいかえると、100Hzとか200Hzあたりでクロスオーバーさせていると、ウーファーから出てくるエネルギーと、それ以上のエネルギーと、バランスがとれなくてうまくつながらないわけです。
そして、ぼくの経験では、エネルギーとして聴感上、あるいは感覚的にうまくクロスオーバーするポイントというのは、どんな組合せの場合でも、だいたい250Hzから350Hzあたりにあるわけです。それ以上に上げると、こんどはウーファーの高いほうの音質が悪くなるし、それより下げると、こんどはミドルバスのウーファーに対するエネルギーが、どうしてもつながらない。ということで、この場合でも、300Hzでいいんですね。
もちろん、そうしたことを確認するなり実験するなりしたい方には、クロスオーバーをもっと下げられたほうが面白いわけで、そういう意味では100Hz以下まで下げられるデバイダーをお使いになるのは、まったくご自由ですよ、ということですね。
     *
「コンポーネントステレオの世界 ’79」は出た時に買って読んでいた。
引用したところも読んでいた。
そして、そうなんだとおもっていた。
にもかかわらず記憶の中から、どこかに落してきてしまっていた。