D130とアンプのこと(続々・音量のこと)
Nさんが、MC2300から次にどういうパワーアンプへとうつられたかについては別項にてすこしふれている。
記憶されている方もおられるだろうが、もういちど書いておく。
Nさんはあるところでウェスターン・エレクトリックの350Bのプッシュプルアンプを聴いて、
それ以来、ウェストレックスのA10の回路をベースとしたアンプづくりへと、大きくシフトした。
そのNさんのところで、350Bと同じくウェスターン・エレクトリックの349Aのプッシュプルアンプを聴いた。
伊藤先生が無線と実験に発表されたアンプそのものである。
出力は8W、回路構成はウェストレックスのA10そのまま、使用真空管に違いがだけだ。
このとき鳴ってきた音は、いまでもはっきりと憶えている。
スピーカーは変っていない。2220に2440の2ウェイ。
MC2300で鳴らしていたときには、しっとりとした音は、
このウーファーとドライバーの組合せからは出てこないんだなぁ、と短絡的にも思いたくなるほど、
私が求めている音、好む音とはベクトルが違っていた。
それが、なんともいい音で鳴ってくれる。
これならば、クラシックも聴ける、というよりも、この音が欲しい、とすら思えるほどの変りようだった。
音量は控え目だった。
良質の蓄音器を思わせる音だった。
低域も高域もそれほどのびていない。
はっきりいえばナローレンジの音なのに、
MC2300で鳴らしたときよりもナローであることを意識させない。
無線と実験に載っている349Aのプッシュプルアンプの周波数特性はそれほどよくない。
このアンプもまたナローだった。