Date: 1月 5th, 2013
Cate: CN191, VITAVOX, Wilhelm Backhaus
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バックハウス「最後の演奏会」(続×六・VITAVOXの復活)

10年とは、
結局、一つのスピーカーの出す音の美しさを聴き出すまでに必要な時間なのかもしれない。
五味先生のいわれたことを、この歳になってなぞっていることを実感している。

五味先生はステレオサウンド 51号で、
「ハーモニーの陰翳とでも言うほかないこの音のニュアンスは、かなり使いこまねば出てこない」
と書かれている。

一つのスピーカーを鳴らすのに10年もかかるなんて、よほど使いこなしの腕が未熟なんだろう、
そんなことを言う人も、きっといるはず。
そういうことではない。

そういうことではない、ということをわかっていない人が、
短ければ数ヵ月、長くても1年程度で、このスピーカーを鳴らしきった、と勘違いしたまま、
次のスピーカーへと目移りし買い替える……。

そういう人は、
愛情をこめて10年鳴らしてきたスピーカーが出す、
ハーモニーの陰翳を聴きとる耳をもつことが生涯できないのかもしれない。

10年、一つのスピーカーで音楽を聴いてくるということは、
そういう耳を、スピーカーとともにつくっていくことなのではないのか。

だから私は、スピーカーを買い替えていくだけの者の耳を、
そういう意味ではまったく信用していない。

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