4343とB310(その11)
High Technic シリーズは、数あるステレオサウンドの別冊のなかで、
発行されるのが、とにかく待遠しくいちばん楽しみにしていた本だ。
4冊出ている。
Vol. 1がマルチアンプの特集、Vol. 2がMC型カートリッジについて長島先生が一冊まるごと書かれたもの、
Vol. 3はトゥイーターの、Vol. 4はフルレンジの特集号である。
Vol. 5、Vol. 6……とつづいていっていたら、ウーファーの特集号もあっただろうし、
マルチアンプの続編となる号も出ていたことだろう。
High Technic シリーズだけは、瀬川先生がいきておられたあいだは、つづけて発行してほしかった。
Vol. 4で、菅野、岡両氏との座談会の中で、フルレンジの魅力について瀬川先生は語られている。
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一つのユニットで音楽再生に必要な帯域をカバーしようというからには、スピーカーユニットの構造としての基本であるスピーカーコーンを、あまり重く作れないわけですから、反応の早い明るい音が得られると思います。特にその持ち味が、音楽再生で重要な中低域に発揮され、人の声までを含む広いファンダメンタル領域がしっかり、きれいに再生されるのが、ある意味ではフルレンジの最大の特徴であり、魅力ではないかと思います。
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いうまでもないことだけど、重要な中低域は、音楽においての「メロディの音域」のこと。
大口径のウーファーユニットが苦手としはじめる帯域こそが、
フルレンジユニットにとっての得意の帯域となっている。
つまり15インチ(38cm)の大口径のウーファーと、16cmから20cmぐらいのフルレンジを、
200〜300Hzを境にして組み合わせる。
フルレンジユニットも、ウーファーと同じコーン型ゆえに、
やはり口径からくる指向性の劣化が生じはじめる周波数がある。
どんなに高性能で理想的な新素材を振動板に採用しても、
コーン型の形状をとるかぎり指向性の劣化はさけられない。16cmのフルレンジでも、2kHzぐらいまでだ。