4343とB310(その7)
セレッションのSL6の登場が、小型スピーカーシステムの存在を大きく変えた。
LS3/5Aや、ヴィソニックのDavid50などの小型スピーカーシステムは、
大型のモノからは得にくい性質(たち)の音をたやすく出してくれるし、
音量を限定さえすれば、大型スピーカーシステムの上にさりげなく置き、黙って、何も知らない人に聴かせれば、
その質の高さに、大型のほうが鳴っていると錯覚させることはできる。
ただ、ひっそりという音量において、であり、ボリュウムをあげていけば、破綻の色が濃くなってきた。
ところがSL6は、むしろひっそりとした音量で映えるスピーカーというよりも、サイズの小ささを意識させない、
ゆえに小ささゆえに成り立っていた特色は薄れている。
LS3/5AとSL6、どちらが優れた小型スピーカーシステムかは、一概には判断しにくい。
深夜、ひっそりとした音量でインティメイトな雰囲気で、好きな歌い手のレコードを、
その吐息がかかるような至近距離で、濃密に感じとりたいとき、
ややヘッドフォン的な聴き方に近くなるものの、LS3/5Aの醸し出す世界は、おそらくいまでも魅力的だろう。
SL6以降、そのエキスパンドモデルのSL600(SL700)、
セレッションと同じイギリスのアコースティックエナジーのAE1(2)……などが登場した。
これらのスピーカーシステムは、LS3/5A的小型スピーカーではない。
そして、空気の硬い空間においても、本領を発揮できるスピーカーシステムに成長している。