4343とB310(その5)
実際に体験したわけではないけれど、傅さんから以前聞いた話では、ヨーロッパの石造りのりっぱな部屋に、
スパイクつきのスタンドに設置された小型スピーカーシステムは、
サイズを意識させない鳴り方をする、とのことだ。
スパイクを通じてがっしりした床に伝わる振動が、石造りの構造と重量にうまく作用しての結果らしい。
小型スピーカーシステムをスパイクつきのスタンドで使っていても、日本での一般的な部屋と、
ヨーロッパのそういう部屋とでは、スパイクの意味合い(効用)に違いが生じても不思議ではない。
木造の部屋では、特にそうだろう。
小さな部屋といってもさまざまだ。
木造の和室では、音はこもらずに逃げていくことが多いのに対し、
頑丈な造りのマンションの洋室では、音が逃げていく場があまりない。
私がステレオサウンドで働くようになったとき、先輩編集者の話によく出ていたのが、部屋の空気の硬さ、だった。
同じ容積の小さな部屋でも、木造和室とマンションの洋室とでは、空気の硬さは違うはず。
音が逃げていくことの多い木造和室の空気は比較的やわらかく、密室に近い部屋では硬いはず。
同じような造りの部屋でも、容積が違えば、とうぜん広い空間のほうが空気はやわらかい。
あくまでも感覚的な話ではあるが、部屋の空気の硬さの違いがあるだろう、ということだった。