Archive for category Studio Monitor

Date: 5月 2nd, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その10)

JBLの4320から4343、4343からアクースタットへのスピーカーの移り変りについて、
つまり「スピーカーが変ってきた背景では、音楽の状況そのものも変ってきた」とされ、
オリジナル楽器による演奏が増えたきたこと、そして、いまもJBLであったなら、
「ああいう変則的な倍音を使った楽器の音が、あそこまでおもしろいとはおもえなかったかもしれない……」
とも書かれている。

こういうふうに「音楽とハードが持ちつ持たれつ変っていく」わけである。
だから黒田先生は「幾つになってもXとYを可変の状態においていたい」とされている。

変るのは音楽の状況とスピーカー(ハードの変化)だけではない。
聴き手もまた変っていく。変っていくスピードは違っていても。

このことはなにも聴き手側・再生側だけの話ではない。
送り手側・録音側にもいえることであり、
この送り側にはレコードという送り手とオーディオ機器という送り手がある。

送り手にも可変のXと可変のYが存在する。
スピーカーシステムの製作者にも可変のXと可変のYがあり、
このふたつが掛け合されるところでスピーカーが生まれてくる、ともいえよう。

しかもこのことはコンシューマー用スピーカーよりも、
録音の現場で使われるスピーカー(プロフェッショナル用スピーカー)のほうが、
可変のXと可変のYを無視するわけにはいかない。

JBLの4320とほぼ同じといえるユニット構成である4331、
同じJBLのスタジオモニターでも4320と4343の違いを語るとき、
可変のXと可変のYを抜きにしては、だから無理である。

Date: 4月 30th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その9)

「音に淫してしまうような」のところを読んで、
あの当時、アクースタットの世界にまいってしまった者のひとりとして思い出すことがある。

ある試聴のとき、アクースタットのことが話題になった。
よく出来ているコンデンサー型スピーカーとして認めるけれども……、とある人がいわれた。
これは記事にはなっていないし、誰の発言なのかにはふれない。

そう、こんなことをいわれた。
「女だと思って服を脱がしてみたら男だった。そういうところがアクースタットの音にはある」

このとき他の方も同席されていて、「たしかにそういうところがある」と同意されていた。

そのころの私はアクースタットにまいっていたものの、
もうひとつ買う決心がつかないままでいた。
そこに、この発言だった。

これに対して、半分は反論したかった気持と、それが決心を鈍らせていたのかも、と思った。

何もスピーカーは擬人化で女性である必要はない。
男性的であるスピーカーもあるし、いい音であるならば男性的なスピーカーにだって惚れる。

けれどアクースタットのように性別が不明、とでもいおうか、
そういう性格の音に対しての敏感さは、当時の私にはまだなかった。

「音に淫してしまうような」アクースタットの音は、そういうところなのかもしれない。

念のため書いておくが、だからといってアクースタットの音を否定したいのではない。
いまふり返ってみて、アクースタットの登場は、
あきらかにそれまでのアメリカのスピーカーということにとどまらず、
ヨーロッパのスピーカー、日本のスピーカーにもなかった性格を持っていた、ということがはっきりとしてくる。

Date: 4月 30th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その8)

ステレオサウンド 100号には、こう書かれている。
     *
 しばらくして『ステレオサウンド』の試聴室でアクースタットに出会う。声を聴いたときの独特の生々しさ、ある色っぽさにほろっとまいってしまった。すこし潤んだような目で見つめられたような感じであった……きつめの女につき合ってきて、すこし疲れていたのかもしれないし、僕のほうもエネルギーが落ちていたのかもしれない。
 だが、これは「暗い」というか、「うつむきかげん」というか……聴くものも完全にそっちへ振られてしまった。あの時代、聴いていたのは圧倒的に歌と弦、ジャズはあまり聴かなかった。ポップスを聴いても女性ヴォーカル、なにか音に淫してしまうようなところがあった。
     *
黒田先生がアクースタットと出会われたのは1982年だから、
1938年1月生れの黒田先生は44歳。
40代の後半をアクースタットという「うつむきかげん」のスピーカーで、
歌と弦を圧倒的に聴かれていたことになる。

このとき、黒田先生にとっての「怒る勇気を思い出し、怒るという感情の輝きを再確認」する音楽である、
チャールス・ミンガスは聴かれていたのだろうか……。
「音楽への礼状」で、
「ぼくは、怒ることを忘れるほどに疲れたとき、これからもずっと、あなたの音楽をききつづけます。」
とまで書かれている。

アクースタットでは、ジャズはあまり聴かなかった、とある。
ここでのジャズにミンガスは、きっと含まれている。

Date: 4月 29th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その7)

アクースタットのコンデンサー型スピーカーは、
同じコンデンサー型であってもイギリスのQUADのESLとは違うところがある。

以前、瀬川先生がステレオサウンド 52号で、
マッキントッシュのアンプとQUADのアンプの違いについて書かれていることが、ここでもあてはまる。
     *
 ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万五を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
 けれどこんにちのマッキントッシュは、決して大河小説のアンプではなくなっている。その点ではいまならむしろ、マーク・レビンソンであり、GASのゴジラであろう。そうした物量投入型のアンプにくらべると、マッキントッシュC29+MC2205は、これほどの機能と出力を持ったアンプとしては、なんとコンパクトに、凝縮したまとまりをみせていることだろう。決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても、C29+MC2205は、その音もデザインも寸法その他も含めて、むしろQUADの作る簡潔、かつ完結した世界に近くなっているのではないか。というよりも、QUADをもしもアメリカ人が企画すれば、ちょうどイギリスという国の広さをそのまま、アメリカの広さにスケールを拡大したような形で、マッキントッシュのサイズと機能になってしまうのではないだろうか。
     *
アメリカという国とイギリスという国の広さの違いが、
アクースタットのコンデンサー型とQUADのコンデンサー型との違いといえる。

アクースタットのModel3でもQUADのESLよりも振動板の総面積は確保している。
さらに黒田先生はModel3の次に倍のサイズのModel6を入れられている。

Model6までくると、そのままアメリカとイギリスの国の広さの違いにより近くなってくる。
そういうコンデンサー型スピーカーだから、音のエネルギーはQUADよりも出してくる。

けれど、アクースタットの音は本質的にうつむきがちであり、決して背筋のぴんとした印象ではない。
黒田先生もそのことは、アクースタットと出合ったSound Connoisseurでも語られているし、
ステレオサウンド 100号でも、また語られている。

Date: 4月 28th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その6)

ステレオサウンド 100号を読めば、その理由の一端がわかる。
     *
(4320は)しかし、いくら眼がぱっちりといっても、細やかさがすこさし足りないように思えた。次に買った4343はそれをうまく補ってくれたが、4320のあのパーンと音の出る、響きのある開放感は抑え込まれてしまった。
     *
4320は黒田先生が書かれているように、ピアニストのポリーニが出てきたころに登場している。
「かれのあのピーンと張った音と4320が合った」ことで手に入れられたわけである。

ステレオサウンド 100号では、
「究極」とは可変のXと可変のYを掛け合せているようなもの、と書かれている。
「可変のYの部分が、機器そのものによって変化させられてしまう」し、
「音楽とハードが持ちつ持たれつ変っていく」わけだ。

黒田先生は「幾つになってもXとYを可変の状態においていたい」から、
黒田先生のスピーカー遍歴はある。

「なよなよしたスピーカーはきらい」で、
「背筋がぴんとしていて目がきっとしている……そんなスピーカーにいつも惹かれてきた」黒田先生が、
4343のあとに入れられたのはアクースタットのModel3だった。

スピーカーから出てくる音の感じとり方は人によって違うのはわかっている。
アクースタットのコンデンサー型スピーカーの音を、どう受けとめるかも人によって違うのを知っている。

そのうえで書けば、アクースタットは「なよなよした」ところをもち、
「背筋がぴんとして」いるとは言い難い面をもつスピーカーである。
そういうスピーカーを、黒田先生は4343の次に迎え入れられている。

Date: 4月 24th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その5)

「なよなよしたスピーカーはきらい」で、
「背筋がぴんとしていて目がきっとしている……そんなスピーカーにいつも惹かれてきた」黒田先生。

ステレオサウンド 100号の「究極のオーディオを語る」によれば、
ワーフェデールが最初のスピーカーで、次に岡先生から譲られたアコースティックリサーチのAR3。
この次がJBLの4320。

4320の次は同じJBLの4343。
その後、アクースタット、アポジーとつづく。

4320と4343。
同じJBLの、それも同じスタジオモニターとして開発されたスピーカーシステムなのだから、
例えばAR3と4320、4343とアクースタットの違い、アクースタットとアポジーDivaとの違い、
これらの違いにくらべれば、近い音のするスピーカーといえなくもない。

けれどそんな4320から4343へのスピーカー遍歴において、
黒田先生は4320を手元に残されている。

4343からアクースタットModel3へのとき、4343は手離されている。
アクースタットModel6からアポジーDivaへのときも、Model6は手離されている。
その黒田先生が、4320だけは、松島の家で鳴らされているわけである。

ここに4320のというスピーカーシステムの魅力があられわている。

Date: 4月 23rd, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その4)

4320の系譜といえるJBLの2ウェイのスタジオモニターには、4325、4331がある。
4320を含めて中高域には2420コンプレッションドライバーと音響レンズつきの2307-2308ホーンを採用している。
エンクロージュアも共通といえる。

この3モデルの違いは主にウーファーにある。
4320は2215B、4325は2216、4331は2231Aであり、
クロスオーバー周波数は4320と4331が800Hz、4325は1.2kHzとなっている。

いずれも15インチ口径で、コルゲーションがはいったコーン型である。
f0は2215が20Hz、2216が24Hz、2231Aが16Hz。
再生周波数帯域は2215と2216が35~1200Hz、2231Aが25~2000Hz。
出力音圧レベルは2215が94dB/W/m、2216が96dB/W/m、2231Aが93dB/W/m。
磁束密度は2215と2216は11000gauss、2231Aは12000gauss。

参考までに1977年の時点で、2231Aが68000円、2215が82500円、2216が87800円となっている。

こんなスペックを書いたところで、それぞれのウーファーの音の違い、
さらにはこれらのウーファーを搭載した4320、4325、4331の音の違いがはっりきとしてくるわけではない。

それでも4320と4325のクロスオーバー周波数の違いはウーファーの違いに密接に関係していることで、
4320と4325の音の違いでもある。

4325は4320の改良モデルと受けとめている人もいるが、
4320と4325は実際には併売されていた事実からすると、
4325は4320のヴァリエーションのひとつという見方もできる。

4325の音について、井上先生がステレオサウンド 62号に書かれている。
     *
聴感上では、クロオーバー周波数が上がっているため、中域のエネルギーが増加して、いわゆる明快な音になったのが、4325の特長である。しかし、ウーファーを高い周波数まで使っているために、エネルギー的には中域が厚くなっているものの、質的にはやや伴わない面があり、4320ほどの高い評価は受けなかったのが実状である。
     *
もし黒田先生が4320ではなく4325を鳴らされていたら、
4343の導入時に手離されたのではないだろうか。
4331でもおそらくそうだった、と思う。
4320だから、譲るのをやめられたのであり、4320と4331の違いがはっきりとある。

Date: 4月 22nd, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その3)

タンノイ・オートグラフは五味先生、JBL・4343は瀬川先生、マッキントッシュ・XRT20は菅野先生、
ボザーク・B310なら井上先生、エレクトロボイス・パトリシアン600は山中先生、JBL・パラゴンはやはり岩崎先生、
というように(他にもいくつもあげられる)、
私の中ではいくつかのスピーカーは、特定の人と分ち難く結びついている。

JBL・4320はというと、私の中では黒田先生ということになる。
ステレオサウンド 38号をみれば、菅野先生も4320を使われていたことがわかる。
JBLの375+537-500を中心とした3ウェイ・システムの他に、
ブラウン・L710、JBL・L26(4チャンネル用システム)と一緒に4320(2405を追加されている)がある。

菅野先生のリスニングルームは、その後60号に登場している。
このときには4320もL26もL710もなくなっていた。
その後わかったことだが、菅野先生の4320は井上先生のところにいっている。

菅野先生も使われていた4320なのだが、それでも私の中では4320といえば黒田先生がまず浮ぶ。
黒田先生といえば、人によっては同じJBLのスタジオモニターの4343、
4343の後にいれられたコンデンサー型のアクースタット、
さらにその後のアポジーDivaを思い浮べる人の方が多いように思う。

私も、黒田先生といえば、ということになると、4320よりもDivaやアクースタットを思い浮べる。
けれど、ここでは逆である。
JBL・4320といえば……、であるからだ。

ステレオサウンド 100号での黒田先生の文章が強く私の中で残っている。
     *
4343が運び込まれたとき、4320はある友人に譲る約束がしてあって、トラックの手配までしてあったが、なぜか別れ難かった。女房が「こんなにお世話になったのに悪いんじゃないの」と言ってくれたのを渡りに船と、「そうか」と譲るのをやめた。いまも松島の家で鳴っている。
     *
「究極のオーディオを語る」の中での一節だ。

Date: 4月 21st, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL Studio Monitor (4300series)

このところJBLの1970年代のスタジオモニターのことを立て続けに書いている。
4301、4311、4315、4320のことを書き始めた。

4301のことは昨年のいまごろ、「世代とオーディオ」というテーマで書いている。
(その6)まで書いている。実はこれで4301については終りだった。
それをまたひっぱり出して続きを書き出したのは、ちょうど4301本目だったからである。

2008年9月から書き始めた、このブログも4300本以上になった。
4300という数字は、特に切りの良い数字ではないけれど、
1970年代後半からオーディオに夢中になった者にとって、4300という数字は特別である。
もちろんまったくそんなことは感じないという人も少なくないのはわかっている。
それでも瀬川先生の文章を読み、JBLの4343に夢を抱いてきた私にとっては、
4300台の数字は無視して通りすぎることはできない。

だから4301本目に4301のことを、
4311本目に4311のこと、4315本目に4315のこと、4320本目に4320のことを書き始めた。
4350本目に4350を書き始めるまでは、これが続く。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その2)

JBL・4320は、いまのところ聴く機会がない。
4331、4333は何度かあったけれど、4320は見かけるだけで終ってしまっている。

ユニット構成、エンクロージュアから安直に判断すれば4320は、4331を聴けば十分だろう、ということになる。
けれどほんとうにそうのだろうか。

ステレオサウンド 62号には、井上先生による「JBLスタジオモニター研究」が載っている。
4320について書かれている。
     *
 余談ではあるが、当時、4320のハイエンドが不足気味であることを改善するために、2405スーパートゥイーターを追加する試みが、相当数おこなわれた。あらかじめ、バッフルボードに設けられている、スーパートゥイーター用のマウント孔と、バックボードのネットワーク取付用孔を利用して、2405ユニットと3105ネットワークを簡単に追加することができたからだ。しかし、結果としてハイエンドはたしかに伸びるが、バランス的に中域が弱まり、総合的には改悪となるという結果が多かったことからも、4320の帯域バランスの絶妙さがうかがえる。
 ちなみに、筆者の知るかぎり、2405を追加して成功した方法は例外なく、小容量のコンデンサーをユニットに直列につなぎ、わずかに2405を効かせる使い方だった。
     *
このことが、62号を読んだ時にひっかかった。
4320と4331が同じような音(性格)のスピーカーだとしたら、
2405の追加はJBL純正のネットワークでうまくいくはず。
なのに、井上先生は
「例外なく、小容量のコンデンサーをユニットに直列につなぎ、わずかに2405を効かせる使い方」とされている。

4331に2405を追加した4333のネットワークは、そういう仕様にはなっていない。
けれどうまくいっている。
ということは4320と4331は、見た目こそよく似ているけれど、ずいぶんと性格に違いがあるのではないか。

井上先生の記事を読んで、そう思うようになった。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その1)

数あるJBLのスタジオモニター、4300シリーズ中、もっとも名が知られているのはどれなのか。

4343の名前を真っ先に挙げたいところだが、
確かに日本のコンシューマー市場においては4343がそうなるだろうが、
世界的に見て、そしてコンシューマー市場だけではなくプロフェッショナルの世界まで含めると、
4320ということになるのではないだろうか。

4320は4300シリーズの最初のモデルである。
1971年に登場している。
4310も、この年である。

ウーファーは2215B、中高域ユニットには2420ドライバーに2307ホーン+2308音響レンズを採用。
2215BはD130に代表されるマキシマム・エフィシェンシー・シリーズではなく、
能率を多少犠牲にしても、
低域のレスポンスの拡大を図ったハイコンプライアンス型のリニア・エフィシェンシー・シリーズに属する。
クロスオーバー周波数は800Hz。

4320は1970年代のプロフェッショナル界において、
スタジオモニター市場をほぼ制圧したといえるほど、成功した(売れた)ときいている。

その後、4320は4325になり、
4320をベースの3ウェイ・モデルの4333と同時に登場した4331へと引き継がれていく。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4315(その2)

JBLの4315がいったいどういうスピーカーシステムなのかは、ステレオサウンドだけを読んでいてはわからなかった。
ステレオサウンドがその当時出していたHi-Fi STEREO GUIDEを、その年はじめて買って、やっとわかった。

4ウェイのスタジオモニターだった。
ウーファーは12インチ口径、ミッドバスは8インチ口径、ミッドハイは5インチ口径のコーン型で、
トゥイーターのみがホーン型の2405だった。

JBLのスタジオモニターの4300シリーズのユニットは、
他の機種に関しては型番の表示がHi-Fi STEREO GUIDEに載っていた。
4315に関しては2405の型番しか載っていなかった。

ずいぶん後でわかったことだが、ウーファーは4315専用に開発された2203、
ミッドバスも新開発の、3インチのボイスコイル系の2108、
ミッドハイはユニット単体で発売されていた2105である。

これらのユニットをW52.0×H85.0×D28.0cmのエンクロージュアにおさめ、
クロスオーバー周波数は400Hz、2kHz、8kHzとなっている。
4315もほかの4300シリーズ同様、ウォールナット仕上げの4315WX(470000円)が用意されていた。

4315を知ったばかりの、このころの私には4343のスケールダウンモデルに思えて、
4333Aや4331Aよりも聴いてみたいスピーカーシステムだった。

Date: 4月 19th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4315(その1)

オーディオに興味を持ちはじめて1年経つか経たないかという私にとって、
ステレオサウンド 43号はいろんなオーディオ機器を知る上でも役に立った一冊だった。

43号の特集はベストバイで、
このころのベストバイはいまのステレオサウンドの誌面構成・編集方針と違い、
ベストバイに選ばれたオーディオ機器については、選んだオーディオ評論家によるコメントがすべてついていた。

ただひとりだけが選んだモノに関しては、
ブランド名、型番、価格と選んだ人の名前だけだった。

それだけでも、世の中にはこんなに多くのスピーカーやアンプ、カートリッジがあるのか、
写真もスペックもないブランド名と型番、価格という、限られた情報からいったいどんな機種なのか、
そんなことを空想もしていた。

スピーカーシステムのベストバイの、この欄にJBLの4315があった。
山中先生だけが選ばれていた。
1977年の4315の価格は455000円。

何も知らない者にとって、4315という型番はブックシェルフ型のようにも思われた。
けれど価格は決して安くない。
4333Aがこのとき559000円、2405がついていない2ウェイの4331Aが488000円。

価格からのみ判断するとフロアー型なのか。
フロアー型とすれば、どういうユニット構成なのかが気になる。

Date: 7月 12th, 2009
Cate: BBCモニター, JBL, Studio Monitor

BBCモニター考(その15)

JBLの4343もモニタースピーカーだし、ロジャースのLS3/5AもLS5/8も、やはりモニタースピーカーである。

モニタースピーカーとはいったいどういう性格の、性能のスピーカーのことをいうのだろうか。
コンシューマー用スピーカーとの本質的な違いは、あきらかなものとして存在するのであろうか。

たとえばヤマハのNS1000Mの型番末尾の「M」はMonitorの頭文字である。
だからといって、NS1000Mが、モニタースピーカーとして企画され、開発製造されていたとは思わない。
あきらかにコンシューマー用スピーカーなのだが、1970年代、スウェーデンの国営放送局が、
このスピーカーをモニタースピーカーとして正式に採用している。
そうなると、単なる型番の名称ではなく、「モニタースピーカー」と堂々と名乗れる。

QUADのESLも、純然たる家庭用スピーカーの代表機種にもかかわらず、
レコーディングのスタジオモニターとして採用されていたこともある。

スタジオモニターといえば、大きな音での再生がまず絶対条件のように思われている方もおられるかもしれないが、
モニタリング時の音量は、アメリカ、日本にくらべるとイギリス、ドイツなどは、かなり低めの音量で、
一般家庭で聴かれているような音量とほとんど変らないという。

だから、ESLでも、多少の制約は、おそらくあっただろうが、
もしくはESLで、なんら制約も感じないほどの音量がイギリスでのモニタリング時の一般的な音量なのだろう。
とにかくESLは、十分モニターとしての役割を果していた。

Date: 10月 17th, 2008
Cate: JBL, Studio Monitor, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その20)

C50SMから4333Aにいたる間での変遷とほぼ並行して、
JBLは、ワイドレンジ・スピーカーを追究している。

1973年に発表された4350、翌74年の4340/4341の開発である。

ステレオサウンド刊「JBL 60th Anniversary」に収録されている「JBLの歴史と遺産」によると、
4350の開発を担当した人物は、JBLに入社まもないパット・エヴァリッジ(Pat Everidge)で、
4340/4341も開発している。
4330/4331、4332/4333の開発担当はグレッグ・ティンバース(Greg Timbers》だ。
彼は現在、JBLコンシュマー・プロダクツのチーフ・エンジニアである。
ティンバースの入社は72年7月で、この頃のJBLの、システムをまとめ上げられるエンジニアは、
有名なエド・メイの他に、パット・エヴァリッジ、ティンバースの3人だけだったと、
ティンバース自身が語っている。
彼によると、4350、4343を除く、ブルーバッフルのスタジオモニターは
彼が手がけたものだ。4315、4345もそうだ。

ということは、4350、4341を手がけたエヴァリッジが、間違いなく4343も手がけたのだろう。
そして4343の外観のデザインは、おそらくダグラス・ワーナー(Douglas Warner)だ。
彼は、パラゴンやL88 Nova、SA600やSG520をデザインしたアーノルド・ウォルフが
経営していたコンサルタント会社でウォルフの助手をしていた人物で、
「JBL 60th Anniversary」によるとL200は彼のデザインで、
ウォルフがJBLの社長に就任した際に、彼の会社をワーナーが引きつぎ、
ワーナー・アンド・アソシエイツと改称し、
1980年代半ばまでのJBLのインダストリアルデザインに大きく貢献した、とある。

「JBL 60th Anniversary」には、4343のデザインした人物については何も書いてない。
だから、あくまで推測にすぎないが、ウォルフの手直しや助言があったのかもしれないが、
4343はワーナーのデザインと見て間違いないと思う。