JBL 4320(その10)
JBLの4320から4343、4343からアクースタットへのスピーカーの移り変りについて、
つまり「スピーカーが変ってきた背景では、音楽の状況そのものも変ってきた」とされ、
オリジナル楽器による演奏が増えたきたこと、そして、いまもJBLであったなら、
「ああいう変則的な倍音を使った楽器の音が、あそこまでおもしろいとはおもえなかったかもしれない……」
とも書かれている。
こういうふうに「音楽とハードが持ちつ持たれつ変っていく」わけである。
だから黒田先生は「幾つになってもXとYを可変の状態においていたい」とされている。
変るのは音楽の状況とスピーカー(ハードの変化)だけではない。
聴き手もまた変っていく。変っていくスピードは違っていても。
このことはなにも聴き手側・再生側だけの話ではない。
送り手側・録音側にもいえることであり、
この送り側にはレコードという送り手とオーディオ機器という送り手がある。
送り手にも可変のXと可変のYが存在する。
スピーカーシステムの製作者にも可変のXと可変のYがあり、
このふたつが掛け合されるところでスピーカーが生まれてくる、ともいえよう。
しかもこのことはコンシューマー用スピーカーよりも、
録音の現場で使われるスピーカー(プロフェッショナル用スピーカー)のほうが、
可変のXと可変のYを無視するわけにはいかない。
JBLの4320とほぼ同じといえるユニット構成である4331、
同じJBLのスタジオモニターでも4320と4343の違いを語るとき、
可変のXと可変のYを抜きにしては、だから無理である。