JBL 4320(その7)
アクースタットのコンデンサー型スピーカーは、
同じコンデンサー型であってもイギリスのQUADのESLとは違うところがある。
以前、瀬川先生がステレオサウンド 52号で、
マッキントッシュのアンプとQUADのアンプの違いについて書かれていることが、ここでもあてはまる。
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ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万五を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
けれどこんにちのマッキントッシュは、決して大河小説のアンプではなくなっている。その点ではいまならむしろ、マーク・レビンソンであり、GASのゴジラであろう。そうした物量投入型のアンプにくらべると、マッキントッシュC29+MC2205は、これほどの機能と出力を持ったアンプとしては、なんとコンパクトに、凝縮したまとまりをみせていることだろう。決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても、C29+MC2205は、その音もデザインも寸法その他も含めて、むしろQUADの作る簡潔、かつ完結した世界に近くなっているのではないか。というよりも、QUADをもしもアメリカ人が企画すれば、ちょうどイギリスという国の広さをそのまま、アメリカの広さにスケールを拡大したような形で、マッキントッシュのサイズと機能になってしまうのではないだろうか。
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アメリカという国とイギリスという国の広さの違いが、
アクースタットのコンデンサー型とQUADのコンデンサー型との違いといえる。
アクースタットのModel3でもQUADのESLよりも振動板の総面積は確保している。
さらに黒田先生はModel3の次に倍のサイズのModel6を入れられている。
Model6までくると、そのままアメリカとイギリスの国の広さの違いにより近くなってくる。
そういうコンデンサー型スピーカーだから、音のエネルギーはQUADよりも出してくる。
けれど、アクースタットの音は本質的にうつむきがちであり、決して背筋のぴんとした印象ではない。
黒田先生もそのことは、アクースタットと出合ったSound Connoisseurでも語られているし、
ステレオサウンド 100号でも、また語られている。