JBL 4320(その4)
4320の系譜といえるJBLの2ウェイのスタジオモニターには、4325、4331がある。
4320を含めて中高域には2420コンプレッションドライバーと音響レンズつきの2307-2308ホーンを採用している。
エンクロージュアも共通といえる。
この3モデルの違いは主にウーファーにある。
4320は2215B、4325は2216、4331は2231Aであり、
クロスオーバー周波数は4320と4331が800Hz、4325は1.2kHzとなっている。
いずれも15インチ口径で、コルゲーションがはいったコーン型である。
f0は2215が20Hz、2216が24Hz、2231Aが16Hz。
再生周波数帯域は2215と2216が35~1200Hz、2231Aが25~2000Hz。
出力音圧レベルは2215が94dB/W/m、2216が96dB/W/m、2231Aが93dB/W/m。
磁束密度は2215と2216は11000gauss、2231Aは12000gauss。
参考までに1977年の時点で、2231Aが68000円、2215が82500円、2216が87800円となっている。
こんなスペックを書いたところで、それぞれのウーファーの音の違い、
さらにはこれらのウーファーを搭載した4320、4325、4331の音の違いがはっりきとしてくるわけではない。
それでも4320と4325のクロスオーバー周波数の違いはウーファーの違いに密接に関係していることで、
4320と4325の音の違いでもある。
4325は4320の改良モデルと受けとめている人もいるが、
4320と4325は実際には併売されていた事実からすると、
4325は4320のヴァリエーションのひとつという見方もできる。
4325の音について、井上先生がステレオサウンド 62号に書かれている。
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聴感上では、クロオーバー周波数が上がっているため、中域のエネルギーが増加して、いわゆる明快な音になったのが、4325の特長である。しかし、ウーファーを高い周波数まで使っているために、エネルギー的には中域が厚くなっているものの、質的にはやや伴わない面があり、4320ほどの高い評価は受けなかったのが実状である。
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もし黒田先生が4320ではなく4325を鳴らされていたら、
4343の導入時に手離されたのではないだろうか。
4331でもおそらくそうだった、と思う。
4320だから、譲るのをやめられたのであり、4320と4331の違いがはっきりとある。