五味康祐氏とワグナー(その3)
1976年ごろのHI-FI-STEREO GUIDEには、
ルボックスのA700は688,000円と載っている。
テレフンケンのM28Aは載っていないが、M28Cは載っている。
1,300,000円である。
スチューダーのC37は管球式のマスターレコーダーで、すでに製造中止。
ソリッドステート時代のマスターレコーダーとしてA80MKIIが載っていて、
3,300,000円である。
A700、M28Cは、この時代のオープリンリールデッキに詳しくない人でも、
そのスタイルは容易に想像がつく。
つまり一般的なオープンリールデッキの恰好である。
C37、A80となるとコンソール型である。
その大きさからいっても、家庭に持ち込むモノではないことはあきらかだ。
ちなみにこの時代、EMTの930stは1,050,000円、
927Dstは2,500,000円であり、
価格的にも927DstはC37クラスといえ、930stはA700、M28Aクラスといえる。
くり返すが、五味先生はオープンリールデッキに関しては、927DstクラスのC37まで手を伸ばされている。
アナログプレーヤーは927Dstの下、930st留り(あえてこう書いておく)である。
このことはずいぶん考えてきた。
なぜなのか。
プログラムソースとしての比重は、五味先生にとってもLP(アナログディスク)が大きかったはずだ。
ならば先に927Dstで、その後にC37だったならば、五味先生の行動はすんなりわかる。
けれど違うから、考えていた。
答(らしきもの)は、オーディオだけの側面で考えていてはたどりつけない。
五味先生にとってのワグナーが、答につながるものを提示してくれた、といえる。