Date: 7月 19th, 2016
Cate: 五味康祐
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続・無題(その3)

五味先生は音楽評論家ではない、
オーディオ評論家でもない。

中にはオーディオ評論家と思いこんでいる読み手がいるが、
どうしてそう思えるかが不思議に思う。

五味先生は小説家であり、オーディオ、音楽について書かれているのは、
小説ではないから(そこには小説的要素が含まれていようとも)、物書きであるわけだが、
けれどグレン・グールドのモーツァルトについて書かれたものを読んでいると、
これに匹敵する音楽評論を読んだ記憶が私にはない。

グレン・グールドに関するものはかなりの数読んできた。
レコード評を含めて読んできた。

モーツァルトのピアノソナタに関しても、そうやって読んできたが、
五味先生によって書かれたもの以上には、いまのところ出合っていない。
あるのかもしれない、私が単に読んでいないだけ、という可能性はあるけれど、
それでもなお、これ以上のものが今後読めるだろうか……、と思ってしまう。

冒頭に、五味先生は評論家ではない、と書いておきながら、
これこそが評論だ、と思うわけだ。
いわゆる職業評論家による評論(表論)ではない「評論」が、ここにある。

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