妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その19)
BBCモニター系列のスピーカーシステムが、LS5/1から採用してきた、
ウーファーの開口部を矩形にすることを、ストロットと呼ぶ。
LSナンバーをもつBBCの正式モニターでは、このストロットを採用したのはLS5/8が最後だが、
1981年にスペンドールから登場したSAIIIにもストロットは採用されている。
さらに日本のオーディオクラフトが、LS5/8の原型となったチャートウェルのPM450Eを設計し、
ポリプロピレンのコーン型スピーカーに関する特許をもつステビング氏を招いて、
スピーカーシステムの開発を行なっていた。
1982年ごろのことだ。ステレオサウンド 65号のオーディオクラフトの広告で、そのことが触れられているし、
この年のオーディオフェアでも試作品が展示されていた。
型番はAP320で、ロジャースのPM510とほぼ同じ構成で、30cm口径のポリプロピレン・コーン型ウーファー、
ソフトドーム型トゥイーターの2ウェイ構成。
PM510との相違点はトゥイーターが片チャンネルあたり2発使われている。
といってもLS5/1的な使い方ではなくて、フロントバッフルを見る限りは通常の2ウェイ・システムだが、
表から見えるトゥイーターの後ろ側にもう1発のトゥイーターがあり、
表側のトゥイーターの周囲にいくつも開けられている小孔から、そのトゥイーターからの音が放射されるもの。
製品化を待っていたスピーカーシステムだったが、登場することはなかった。
このAP320も、ウーファーの開口部はストロットである。
LS5/1のときは矩形だったストロットは、LS5/8のときには四隅を斜めにカットした形状に変更されている。
この項の(その12)に書いたAmazonのA.M.T. Oneは、
BBCモニターのようにフロントバッフルの裏側からウーファーを取り付けるのではなく、
表側からとりつけ、エンクロージュアの両端にサブバッフルを用意することで、ウーファーの左右を覆っている。
これもAmazon流のストロットといえる。
しかもエンクロージュアの横幅は、これもBBCモニターと同じようにぎりぎりまで狭めている。
Amazonのサイトでは日本の取扱いはスキャンテックになっているが、
スキャンテックのサイトには、取扱いブランドにAmazonはない。
いま日本には輸入代理店がない状態のようだが、A.M.T. Oneは興味をそそるスピーカーシステムだ。