妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その13)
AmazonのA.M.T. Oneの、その型番が示しているように、
Air Motion Transformer型のトゥイーターを搭載している。
AMT型トゥイーターは、ハイルドライバー型を原形とするもので、
ドーム型、コーン型、コンプレッションドライバーなどが、振動板を前後方向にピストニックモーションさせて、
音の疎密波をつくりだしているのに対して、AMT(ハイルドライバー)型は、
振動板(というよりも膜)をプリーツ状にして、この振動膜を伸び縮みさせることで、
プリーツとプリーツの間の空気を押しだしたり、吸い込んだりして疎密波を生む。
これも、ジャーマン・フィジックスのDDDユニット、マンガーのMSTユニットと同じように、
ベンディングウェーブ方式の発音方式であり、
この動作方式は古くはシーメンスのリッフェル型から実用化されている(日本への紹介は1925年)。
つまりシーメンスも、ジャーマン・フィジックスも、マンガーもドイツである。
ハイルドライバーはアメリカで生まれているが、開発者のオスカー・ハイルはドイツ人である。
ハイルドライバーはアメリカのESS社のスピーカーシステムに搭載されて、1970年代に世に登場した。
のちにスレッショルドを興したネルソン・パス、ルネ・ベズネがいた時代である。
ESSからはずいぶん大型のハイルドライバーまで開発され、
同社の1980年代のフラッグシップモデルTRANSAR IIでは90Hzと、かなり低い帯域まで受け持っている。
オスカー・ハイル博士は、ドイツにいたころ、このAMT方式を考え出したものの、
当時の西ドイツでは製品化してくれるところがなく、アメリカにわたってきている。
ESSはハイル博士の、その情熱に十分すぎるほど応えているといえたものの、
日本ではそれほど話題にならず、ほとんど見かけることはなくなっていった。
そのハイルドライバーがAMTと呼ばれるようになり、ドイツでは、いまや定着したといえるほどになっている。
ELACのCL310に搭載された JETトゥイーターもそうだし、
ムンドルフ、ETONといったドイツのメーカーからも単体のAMTユニットが登場している。
ドイツではないが、スペインのメーカー、beymaもAMT型トゥイーターを出している。
これら以外にも、もうすこしいくつかの会社がAMT型のユニットを作っている。