妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その11)
丸いコーン型ウーファーの開口部を四角にすることのメリット・デメリットは、
音量によって、そのバランスが変化してくる。
このごろはどうなのか知らないが、1970年代ではイギリスから来日したオーディオ関係者が、
日本で耳にした音量の大きさに「われわれの耳を試しているのか」と驚いたという話があったし、
ヨーロッパでのレコーディング時のモニターの音量は、アメリカ、日本の感覚すると、
こんどはアメリカ人、日本人が驚くほど小さい、といわれていた。
事実、ヨーロッパでは、QUADのESLがモニタースピーカーとして使われていた、という話もある。
そういうひっそりとした音量では、開口部を四角にして、ウーファーの一部を隠すようなかたちになっても、
このことによるデメリットよりも、メリットのほうに傾くだろう。
反対に音量レベルをあげていくにしたがって、徐々にデメリットのほうに傾いていくだろうし、
あるレベルの音量を超えたら、メリットよりもデメリットのほうが大きくなることだろう。
だから、四角の開口部は、いかなる場合にでもすすめられる手法ではないけれど、
それほど音量をあげないのであれば、しかもあまり帯域分割をしないマルチウェイのスピーカーにおいては、
いまでも有効な手法だと、捉えている。
そして、このことは、瀬川先生がなぜ4ウェイ構成を考えられていたのか、
KEFのLS5/1Aを高く評価されていることとも関係してくる。
瀬川先生の音量は、ひっそりしたものだった。