私的イコライザー考(その13)
グラフィックイコライザーはスライド式のツマミが横にいくつも並ぶ、というのが通常のスタイルだ。
ある周波数のツマミを上げたり下げたりして、複数のツマミがカーヴを描く。
そこから、グラフィックイコライザーという名前がきているわけだが、
ここまで述べてきたように、ツマミを動かすことで変化するのは、振幅特性と位相特性であって、
ツマミが表わしているのは、振幅特性のみ、となる。
これでは片手落ちの「グラフィック」である。
(その12)に書いたように、
周波数特性は振幅項と位相項をそれぞれ自乗して加算した値の平方根であるからだ。
そしてもうひとつ。再生側でグラフィックイコライザーを使用する際は、
おもにスピーカーシステムの特性をふくめて、リスニングルームの音響特性を補整する。
たとえば中域を抑えたいと思い、グラフィックイコライザーでそのへんの帯域のツマミのいくつかをまとめてさげる。
グラフィックイコライザーのツマミの並びは、中域のレベルを下がった状態を示している。
けれど目指している音は、基本的にはフラットな音であって、そのために中域を下げたわけである。
つまりスピーカーシステムの特性、部屋の特性を補整するために使い、
ツマミの並び方は、その補整カーヴであって、
いま出ている音のおおまかな傾向を表しているわけではない、ということだ。
ようするに補正後の特性(つまりスピーカーシステムから出てくる音の特性)を表示しているわけではない。
このふたつの理由から、私は、グラフィックイコライザーのデザインは、
再検討されるべきものだと考える。