私的イコライザー考(その12)
なぜかオーディオの世界では、振幅特性のみを周波数特性といってきた。
けれど周波数特性には、振幅項(amplitude)と位相項(phase)があり、
それぞれを自乗して加算した値の平方根が周波数特性となる。
数学に詳しいひとにきくと、このことはオイラーの公式からわりと簡単に導き出せることだそうだ。
大事なのは、周波数特性は振幅特性だけでもなく、位相特性だけでもないということ。
振幅特性が変化すれば位相特性も変化するということ。
このことを頭に入れておけば、この項の(その11)で書いたようにグラフィックイコライザーの試聴をやるとして、
その出力(つまり振幅特性)を測定し、他の機種も同じ振幅特性にしたところで、
それぞれの回路構成が違うことにより、位相特性まで同じになるわけではない。
つまり「周波数特性」は微妙に異っていることになり、
その異っている周波数特性に調整したグラフィックイコライザーを比較試聴したところで、
グラフィックイコライザーの何を聴いているのか、そのことをはっきりと指摘できる人はいないはずだ。
おそらく一台ごとに帯域バランスが変化すると思われる。
これと同じことは、マルチアンプに必要なエレクトロニッククロスオーバーネットワークにもいえることだ。
エレクトロニッククロスオーバーネットワーク(チャンネルデバイダー)の比較試聴をやろうとして、
グラフィックイコライザーと同じように出力をどんなに正確に測定し、同じ値になるように調整したところで、
周波数特性が振幅特性と位相特性から成り立っている以上、
実際の試聴では音を聴きながら帯域バランスを微調整して、ということが要求される。