妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その8)
ステレオLPが登場したのは1958年(実際には前年暮にフライング発売したレーベルはある)。
デッカは1955年にはステレオ録音を行なっている。
実験的な録音ではなく、実際にLPとして発売されているし、CDにもなっている。
エーリッヒ・クライバー指揮のモーツァルト「フィガロの結婚」である。
BBCに関する詳しい資料をもっていないため推測で書くことになるが、
BBCもデッカと同じころか、
もしくはその前からステレオ録音・再生システムについて研究・実験をしていた可能性は充分に考えられる。
1981年春にステレオサウンド別冊として出た「ブリティッシュサウンド」号に、
岡先生が、BBCのモニタースピーカーに関する開発者ショーターの論文の要点をまとめられている。
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スピーカーの性能基準を客観的に定めるのはむずかしいことだが、リファレンスとなり得るスピーカーは、指向特性、帯域の広さ、位相特性、リニアリティ、高調波および混変調歪のそれぞれにおいて、すぐれていないければならないとする。
それらの諸特性の測定とあわせて、最終的にはヒアリングテストで判断されなければならない。ヒアリングテストは、主観的な性格をもつものだが、ノイズ(ランダムのイズ)、スピーチ、音楽の種々のソースによって、多角的に行なわなければならないとする。ノイズテストは、二種類のスピーカーをきりかえながら、ノイズのスペクトルを判断するのが有効な方法であり、スピーチは男声がとくにこの目的にふさわしいといっている。
音楽のソースのテストは、スタジオに隣接したリスニングルームで、たとえば音楽のリハーサル中に、スタジオとリスニングルームを自由に出入りして、ナマと再生音を自由に聴き比べる条件をもったところであることが望ましいが、奏法の遮音が充分なされている必要があり、超低域においては少なくとも35dBはとれている必要が或る。
さらに、マイクロフォン(の位置とその指向性)やミキシング・バランスがいかになされているかという考慮も念頭におくべきだとする。スピーチテストでも、話し手とマイクの間隔は不自然なバランスにならない位置にとられていなければならない。
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このショーターの論文が発表されたのは、1958年である。
すでにLS5/1の最初のモデルは完成していた。
BBCモニターのLSナンバーの区分については、BBC engineering のサイトのページを参照されたし。
このページをめくっていくと気がつかれるはすだが、LSS/1とかLSS/2という型番がでてくる。
これはLS5/1、LS5/2のことである。
どうもこれらのページは、印刷物をスキャンしてOCRソフトでテキスト化したもののようで、
校正が不十分で、5がSと誤認識されたまま公開されている。